2020年12月30日水曜日

定期的なワクチン接種の効果を考える(2)

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

免疫機能は人だけが持っているのではなくて
生物全体が持っているといわれています。
植物、無脊柱動物、脊柱動物、
脊柱動物の中でも顎がある動物、顎がない動物。
それぞれ免疫機能の働き方は異なりますが、
様々な環境に適応するためには
外敵から身を守る必要がありますから
進化の過程で結果的に生き残った生物は
その環境に適した免疫機能を有していると考えられます。
多細胞動物ではなくて
単細胞生物やミトコンドリアなどは
どのような防御機能があるのか?
そういった疑問も生まれる部分があります。
このような「違い」を考えることは
複雑に機能している人の免疫細胞のもつれた糸を
ほどく上では重要になる可能性があります。
例えば、
もし自然免疫系しか持たない植物に対して
人にとって脅威であるウィルス
例えば、インフルエンザ、コロナウィルスなどを
感染させることに成功すれば、
それらのウィルスにおける
植物が持つ自然免疫系の細胞の働きを「排他的に」
調べる事ができる可能性があります。
元々、獲得免疫系を持つ動物に対して
その機能をノックアウトさせたときに現れる結果とは
異なる可能性があります。
そこから何らかの発見が生まれる可能性があります。
--

Mihai G. Netea氏,Jorge Domínguez-Andrés氏
Luis B. Barreiro氏, Triantafyllos Chavakis氏, 
Maziar Divangahi氏, Elaine Fuchs氏, 
Leo A. B. Joosten氏, Jos W. M. van der Meer氏, 
Musa M. Mhlanga氏, Willem J. M. Mulder氏, 
Niels P. Riksen氏, Andreas Schlitzer氏, 
Joachim L. Schultze氏, Christine Stabell Benn氏, 
Joseph C. Sun氏, Ramnik J. Xavier氏
Eick Latz氏による国際的な医療、研究チームは
「訓練された免疫(trained immunity)」に対する
病気や健康について総括しています(1)。
本日はその内容の一部を
詳しく追記しながら読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は私の追記、考察

//免疫を訓練するという定義//--------
「Trained immunity」免疫を訓練する事の指針、コンセプトは
自然免疫系の免疫細胞を機能を「長期間」改変する事です。
それは外的な、内的な刺激によって引き起こされます。
その自然免疫系の機能を長期間改変させ、記憶させることで
再度同じ刺激が生じた時の反応を改変する事ができます。
それは「不活性、寛容的」になる可能性もあります。
あるいは少ないエネルギー、あるいは迅速に
免疫機能を発動できるようになる可能性もあります。
より好ましい改変としては
1度目の刺激よりも2回目の方が強く自然免疫系の細胞が
反応することで、それは可能であるとされています。
何か特定の遺伝子的な、機能的な変更を意味するものよりも
もっと長期的に記憶させるような改変です。
しかしながら、確かに
-
・β- glucan
 植物、菌類、最近などで広く分布する多糖
・LPS(リポ多糖体)
 グラム陰性細菌の細胞膜
・The bacillus Calmette–Guérin (BCG) vaccine
 ウシ型結核菌を使った結核に対する生ワクチン
-
これらのような違った刺激によって
それぞれ違った「trained immunity」が誘発されます。
-
生ワクチンによって引き出された異種の病原体に対する
身体の防御反応、免疫は長期間、5年続いた
という報告もあります(2)。
しかしながら、自然免疫系の免疫細胞に対する
免疫機能の記憶化、訓練は
抗原認識を伴うエピトープ特異的な獲得免疫系の記憶化よりも
その効力を失いやすい、可逆的である(reversible)
あるいは寿命、保持期間が短いと考えられています(3,4)。
しかしながら、重要な事として
このような自然免疫系の免疫訓練の
「継代効果(transgenerational effects)」について
近年の研究において述べられています(5,6)。
-----

例えば、母親のワクチン接種が
その後、出産した子供のワクチンに対する反応に対して
影響を与える事があるというのが継代効果です。
参考文献(1) Fig.1で示すように
自然免疫系の改変として
・後天的な遺伝子の変化
・代謝機能の改変
これらが挙げられていますが、
特に遺伝子に関しては人社会でどのようなワクチンを接種したか?
それが次世代の人たちに出産を通して
どのように受け継がれていくか?
それについて考えるのが「継代効果」ということになります。
-----

//免疫記憶に関する進化的な観点//--------
T細胞やB細胞などのリンパ球の中で確認される
獲得免疫系における抗原認識などを通した
エピトープ結合をベースとした免疫機能の記憶は
脊柱動物でおおよそ5億年前に発達したといわれています。
脊柱動物とは魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類です。
一方、無脊柱動物は病原体や組織の損傷における
免疫反応、防御反応においては
「自然免疫系の免疫細胞のみ」で行われるといわれています。
-
(「顎を持つ」脊柱動物における免疫記憶)
獲得免疫系の反応は
抗体やT細胞の抗原認識によって行われいます。
この「オンデマンド」つまりその病原体の特徴に合わせた
免疫反応はリンパ球を介した特異的な免疫記憶であります(7)。
-
(「顎を持たない」脊柱動物における免疫記憶)
ロイシン(※)を多く含んだ周期構造を作り出す
遺伝子の改変によって生じた様々なリンパ球の受容体によって
免疫記憶されます(8)。
(※)
ロイシンは人では合成できないアミノ酸の一種です。
必須アミノ酸の一つで多くの食べ物より接種できます。
-----

なぜ顎の有無で分けられるかというと
顎がある事によって「餌、食べ物が変わるから」です。
顎がある事によって咀嚼することができるので
より固い食べ物を食べることができるようになります。
食べるものが変わりますから
それによって身体の構成も異なってくると考えられます。
-
このように「顎の有無」「脊柱の有無」によって
免疫機能が異なることを利用して、
それぞれの免疫機能を排他的に調べる事ができる可能性があります。
例えば、自然免疫系しか持たない植物や無脊柱動物での
人と関連のある特定の病原体の免疫応答を調べることで
獲得免疫系の働きを排除した形で
自然免疫系の働きを分析することができます。
-----
上述した顎の有無における獲得免疫系の機序は
「受容体特異性をもつか」(顎あり)
「多様な受容体で系統的に働くか」(顎なし)
これらが異なりますが、働く免疫細胞も
「T、B細胞」(顎あり)
「gnathostome lymphocytes」(顎なし)
と異なります。
-----

今の生態系で進化の中で生き残ってきた生物は
人もその生態系の中で生存を確保していますから
いわば同じ環境内で生活しているとも言えますが、
そういった中で獲得している免疫機能を調べることは
意味がある事かもしれません。
-----
このような獲得免疫系の反応なしに
進化的に生き残ることができた生物は
地球全体で見るとその生物種は97%に達するといわれています(9)。
しかし、このような免疫の記憶は
獲得免疫系を有する脊柱動物だけが有している
とは考えにくいと考えられています。
実際に、植物も免疫記憶するといわれています。
この植物やイカ、貝類などの無脊柱動物が
実際に病原体に対する再感染を防ぐことが
近年の研究でわかってきています(7-12)。
これらの自然免疫系の記憶化、免疫訓練は
獲得免疫系の記憶に比べて、
特定の病原体に対する特異性が低く
短い期間しか持続しないと言われていますが(13)、
「迅速で」「強い免疫反応」を再感染に生み出すという
免疫記憶の特徴は自然免疫系のそれでも満たしている
と考えられています。
--------

以上です。

(参考文献)
(1)
Mihai G. Netea, Jorge Domínguez-Andrés, Luis B. Barreiro, Triantafyllos Chavakis, Maziar Divangahi, Elaine Fuchs, Leo A. B. Joosten, Jos W. M. van der Meer, Musa M. Mhlanga, Willem J. M. Mulder, Niels P. Riksen, Andreas Schlitzer, Joachim L. Schultze, Christine Stabell Benn, Joseph C. Sun, Ramnik J. Xavier & Eicke Latz 
Defining trained immunity and its role in health and disease
Nature Reviews Immunology volume 20, pages375–388(2020)
(2)
Nankabirwa, V. et al. 
Child survival and BCG vaccination: a community based prospective cohort study in Uganda. 
BMC Public Health 15, 175 (2015).
(3)
Netea, M. G. et al. 
Trained immunity: a program of innate immune memory in health and disease. 
Science 352, aaf1098 (2016).
(4)
Dominguez-Andres, J. & Netea, M. G. 
Long-term reprogramming of the innate immune system.  
J. Leukoc. Biol. 105, 329–338 (2018).
(5)
Berendsen, M. L. T. et al.
Maternal priming: bacillus Calmette-Guérin (BCG) vaccine scarring in mothers enhances the survival of their child with a BCG vaccine scar. 
J. Pediatric Infect. Dis. Soc. https://doi.org/ 10.1093/jpids/piy142 (2019).
(6)
Moore, R. S., Kaletsky, R. & Murphy, C. T. 
Piwi/PRG-1 argonaute and TGF-β mediate transgenerational learned pathogenic avoidance. 
Cell 177, 1827–1841 (2019)
(7)
Hirano, M., Das, S., Guo, P. & Cooper, M. D.  
The evolution of adaptive immunity in vertebrates.  in. 
Adv. Immunol. 109, 125–157 (2011).
(8)
Cooper, M. D. & Alder, M. N. 
The evolution of adaptive immune systems. 
Cell 124, 815–822 (2006).
(9)
Purvis, A. & Hector, A. 
Getting the measure of biodiversity. 
Nature 405, 212–219 (2000).
(10)
Conrath, U., Beckers, G. J. M., Langenbach, C. J. G.  & Jaskiewicz, M. R. 
Priming for enhanced defense. 
Annu. Rev. Phytopathol. 53, 97–119 (2015).
(11)
Gourbal, B. et al. 
Innate immune memory: an evolutionary perspective. 
Immunol. Rev. 283, 21–40 (2018).
(12)
Milutinović, B. & Kurtz, J. 
Immune memory in invertebrates. 
Semin. Immunol. 28, 328–342 (2016).
(13)
Kleinnijenhuis, J. et al. 
Bacille Calmette-Guerin  induces NOD2-dependent nonspecific protection from reinfection via epigenetic reprogramming of monocytes. 
Proc. Natl Acad. Sci. USA 109, 17537–17542 (2012).


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