いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
血液中の酸素飽和度を96%以上に保つというのは
新型コロナウィルスの治療の中核になるものだと理解しています。
従って、それについて基礎的な事から詳しく考えることは、
治療の意義を理解するだけではなく
創薬にも貢献する部分があると思っています。
細胞内には2000個のミトコンドリアがいて
細胞によって異なると思いますが、
おおよそ細胞内の酸素の90%はミトコンドリアで消費される
といわれています。
残りの10%はミトコンドリア以外の
細胞小器官、たんぱく質や核酸の反応に使われる
と考えることができます。
(参考文献(2) Figure 3より)
細胞内のミトコンドリアは激しく動いていますし、
細胞小器官も脈動しているかもしれないし、
細胞内での物質の伝搬もあります。
その「動力」となるのは、
一つは「電子によるクーロン力」だと考えられます。
その電子を生み出すためには
細胞内の色んな所で反応により電子を生み出す必要があります。
またその量を制御する必要があります。
そうした時に電子の量をコントロールする必要がありますから
それを受け渡しする酸化還元反応が必要になります。
(参考文献(1) Box.2(a)参照)
その酸化還元反応が
「どういった条件で行われるか?」
それによって細胞の生死、分化、増殖、相互作用、分泌物など
様々な機能に影響を与えると考えられます。
上述したように酸素が少ない条件でも
酸素が全くゼロになるわけではありません。
仮に酸素飽和度が通常値よりも5%程度下がったとします。
さらに、ミトコンドリアで酸素が優先的に使用されるとします。
そうすると
細胞内のミトコンドリア以外の酸化還元反応は
半分の酸素量で行われる必要があり、
単純に半分の反応は酸素がない「嫌気性」である必要があります。
そうした時に
身体はそれを調整するために嫌気性の中で
糖やリンを中心した代謝、酸化還元反応で補おうとします。
そうした時に
そのような代謝では「活性酸素(ROS)」が多く生まれます(3)。
---
※
Electron transpot chainが酸素分子に電子を輸送する
といわれています(1,3)。
---
そのような活性酸素は「酸化的ストレス」と呼ばれ
心血管疾患(4)、糖尿病(5)、癌(6)、
喘息(7)、神経疾患(8,9)、老化(3)など
様々な疾患と関連があるとされています(1)。
実際に新型コロナウィルスにおいて
肺炎にかかった人の肺には
免疫細胞である単球とマクロファージが多く存在する
といわれています。
これらの細胞は新型コロナウィルス感染によって
代謝が改変され、高いレベルで糖の代謝に変えるといわれています。
それが新型コロナウィルスの増殖を促進します。
その感染が
ミトコンドリアによる「活性酸素」を生み出し、
低酸素誘導因子HIFを安定化させ
さらに嫌気性での糖代謝を推し進める事になります。
このHIFによって獲得免疫系の機能が弱まります(10,11)。
そのうちの一つであるT細胞が抑制され、
肺胞の上皮細胞の寿命が短くなり、
肺胞が炎症を起こすと考えられます。
それによって呼吸によって取り入れた酸素を
動脈に運べなくなるために酸素飽和度が下がって、
さらに酸素不足の中で各細胞は代謝機能を改変することになります。
それによって「活性酸素」が多く生み出され
身体の様々な正常な臓器、組織、細胞を
活性酸素が持つ高いエネルギーによって攻撃するようになります。
従って、エネルギー消費が大きいことから
体重が減少すると思われます。
癌でも同じように嫌気性の代謝ルートになりますから
一般的に痩せるといわれています。
それは代謝が改変する事も起因していると思います。
従って、
・「活性酸素」(のエネルギー)を無効化するような薬剤
・酸素を供給する薬剤
・嫌気性の酸化還元反応で「活性酸素」を抑える薬剤
(※電子の輸送を止めるなど)
こういった視点も創薬において大切になります。
一般的にウィルスが入ってきた時には
自然免疫系が「外敵と認識するために」
「自分の体にはない分子パターン」を認識して
その後、ウィルスを攻撃しますが、
その時にはNADPH酸化酵素(NOX)経路で
活性酸素を大量に出して
そのパワーによってウィルスを撃退するといわれています(1)。
この自然免疫系は好中球、マクロファージです。
このような自然免疫系の免疫細胞は
抗ウィルス性には欠かせませんが、
例えば、
好中球が過剰に活性化されると組織の炎症に繋がります。
また、酸素が不足すると活性化しやすい(10,11)ことから
好中球の細胞は活性酸素を生み出しやすい機構になっている
のかもしれません(12)。
従って、
・ウィルスが増える事
・酸素が不足する事
これらが重なって免疫細胞のバランスを崩すことが考えられますが、
免疫細胞のバランスが崩れたら
なぜ細胞が損傷するのか?という問いに対する一つの答えは
細胞内のミトコンドリアやそれ以外の活動による
酸化還元反応によって生まれた
「活性酸素」が過剰に出ているからである
と考えることもできます。
従って、
・酸素を供給すること
・ウィルスを減らすこと
・免疫機能を整えること
治療の上で鋭意されていることですが、
その根底にある一つのことは
「活性酸素を適正な量に戻す」
ということがあるかもしれません。
それはつまり
(細胞の酸素需要)≦(酸素供給)を実現して
好気性での代謝経路を十分に確保するということです。
以上です。
(参考文献)
(1)
Jonathan Muri & Manfred Kopf
Redox regulation of immunometabolism
Nature Reviews Immunology (2020)
https://doi.org/10.1038/s41577-020-00478-8
(2)
Cormac T. Taylor & Sean P. Colgan
Regulation of immunity and inflammation by hypoxia in immunological niches
Nature Reviews Immunology volume 17, pages774–785(2017)
(3)
Finkel, T. & Holbrook, N. J.
Oxidants, oxidative stress and the biology of ageing.
Nature 408, 239–247 (2000).
(4)
Ceriello, A. & Motz, E.
Is oxidative stress the pathogenic mechanism underlying insulin resistance, diabetes, and cardiovascular disease? The common soil hypothesis revisited.
Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 24, 816–823 (2004).
(5)
Brownlee, M.
Biochemistry and molecular cell biology of diabetic complications.
Nature 414, 813–820 (2001).
(6)
Toyokuni, S., Okamoto, K., Yodoi, J. & Hiai, H.
Persistent oxidative stress in cancer.
FEBS Lett. 358, 1–3 (1995).
(7)
Andreadis, A. A., Hazen, S. L., Comhair, S. A. & Erzurum, S. C.
Oxidative and nitrosative events in asthma.
Free Radic. Biol. Med. 35, 213–225 (2003).
(8)
Jenner, P.
Oxidative stress in Parkinson’s disease.
Ann. Neurol. 53, S26–S38 (2003).
(9)
Lyras, L., Cairns, N. J., Jenner, A., Jenner, P. & Halliwell, B.
An assessment of oxidative damage to proteins, lipids, and DNA in brain from patients with Alzheimer’s disease.
J. Neurochem. 68, 2061–2069 (1997).
(10)
Cormac T. Taylor & Sean P. Colgan
Regulation of immunity and inflammation by hypoxia in immunological niches
Nature Reviews Immunology volume 17, pages774–785(2017)
(11)
Holger K. Eltzschig, M.D., Ph.D., and Peter Carmeliet, M.D., Ph.D.
Hypoxia and Inflammation
The New England Journal of Medicine 2011; 364:656-665
(12)
Christopher M. Rice, Luke C. Davies, Jeff J. Subleski, Nunziata Maio, Marieli Gonzalez-Cotto, Caroline Andrews, Nimit L. Patel, Erika M. Palmieri, Jonathan M. Weiss, Jung-Min Lee, Christina M. Annunziata, Tracey A. Rouault, Scott K. Durum & Daniel W. McVicar
Tumour-elicited neutrophils engage mitochondrial metabolism to circumvent nutrient limitations and maintain immune suppression
Nature Communications volume 9, Article number: 5099 (2018)
登録:
コメントの投稿 (Atom)

0 コメント:
コメントを投稿