いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
山中先生は
「科学は諸刃の剣である。」
というようなことを言わています。
(言葉は改変。本質的な意味を反映。)
再生科学で生み出したマウスが元気に走り回っている姿を
見られた時にもそのように感じられたのかもしれません。
科学技術の扱いには気をつけないといけません。
このような警鐘を鳴らされています。
しかし、
新型コロナウィルスでわかったように
世の中においてゼロリスクはありません。
例えば、車運転していても、飛行機に乗っていても
命を落とすリスクはゼロではありません。
確率的に極めて低いですが、脅威はあります。
自動運転になれば、事故数は減るかもしれませんが、
1つの事故に対する倫理的な問題が大きくなりそうです。
それは「ワクチン」でも同じです。
今まで「反ワクチン、ワクチン禁忌」がありました。
例えば、
今日述べるアドジュバントに関しても
アルミニウム塩の使用が脳や健康に影響を与える
可能性について考えられてきました。
もちろん科学的なデータを慎重に評価する必要がありますが、
可能性としては全くないとはいえません。
しかし、
ワクチンによって救われた命はどれほどでしょうか?
日本の子供たちがワクチンを接種したことで
陰に隠れてわからないけど
どれくらいの命が救われ、重い疾患が回避されたでしょうか?
一人の命と百人の命はどちらが重いのか?
そういう議論にはなりますが、
誰一人命を落とすことのない世の中がない以上
数に委ねるしかない部分があります。
もう一つは年齢という軸もあると思います。
つまりまずは子供を守ろうということです。
一方、ワクチンに関しても
よりリスクの少ないワクチンを継続的に研究開発
そして提供していく事は
私の取り組みも含めて求められることです。
今述べたワクチンに関して
アルミニウム塩をアドジュバントとして使ったワクチンは
1920年代に発見され、今までの接種回数は
数十億回と言われています。
非常に古い免疫補強剤ですが、
その生理機序は非常に多様で複雑であり、
まだ統一的な事はわかっていないと言われています(1-4)。
アドジュバントが作用する受容体や
今までワクチンとどう組み合わされてきたか
上述したアルミニウム塩について
どういう生理機序があるのか
それについて2013年に
Steven G Reed, Mark T Orr氏とChristopher B Fox氏によって
総括されていますので、情報共有いたします(1)。
/関連する受容体/
アドジュバントの開発は基本的には
13種類あるToll様受容体(TLRs1-13)の中で
TLR4が標的とされることが多いですが、
Nalp3、ITAM、Mincleこれらが標的とされます。
(参考文献(1) Table.1より)
---
(それぞれの受容体の機能)
・TLRs:Toll-like receptors
病原体に共通に存在する分子を認識する受容体で
免疫細胞内、細胞表面に存在します。
(詳しくは下記)。
-
・Nalp3:NLR family pyrin domain containing 3
病原体の構造内で保持される小さな分子パターンを認識する
パターン認識受容体(PRR)としての機能を持つ
自然免疫系統の機能の一部です(5)。
-
・Mincle:Macrophage inducible Ca2+-dependent lectin receptor
病原体の細胞やエンベロープ表面にある糖脂質である
コード因子(Cord factor)を認識する
パターン認識受容体(PRR)です(6)。
-
・ITAM:Immunoreceptor tyrosine-based activation motif
免疫細胞の信号変換において重要な役割を担います。
これは tyrosine-phosphorylated receptorsの
細胞質の尾部に存在します(7,8)。
T細胞、B細胞の受容体は細胞質を貫通していますが、
その細胞質の細胞側の端部に存在する受容体で
そこから物質の一部を切り離したりすることで
細胞内に受容体の変化を感知して信号を伝えることです。
--
自然免役系は基本的には抗原認識せずに
病原体に広く共通して存在する小さな分子のパターンを認識します。
例えば、単球、マクロファージ、NK細胞がそうです。
従って、免疫の初動を担うと考えられますが、
こういったパターン認識受容体に働きかけるのが
ワクチンのアドジュバント(免疫補強剤)です。
従って、B細胞で抗体を効果的に発揮するためには
自然免役系の誘発が必要であると考えることもできます。
/Toll様受容体について/
今開発されているアドジュバントは
種類としてはToll様受容体を標的としたものが多いです。
Toll様受容体は13種類ありますが、
それぞれの型によって発現されている細胞が異なります。
・単球・マクロファージ・樹状細胞
・B細胞・好中球・肥満細胞
・乳癌細胞・腸上皮細胞・NK細胞
・T細胞
これらが人で見つかっています。
標的として多いTLR4に関しては
・単球/マクロファージ
・好中球
・骨髄性樹状細胞
・肥満細胞
・B細胞
・腸上皮細胞
・乳癌細胞
これらで見つかっており広く分布している受容体になります。
従って、これに作用するアドジュバントを投薬することは
様々な細胞の機能に働きかける事になります。
例えば、抗体の発現と関係のあるB細胞のTLR4に結合すると
B細胞の細胞分裂を促したり、
細胞の特異性を生み出したりすること(isotype switching)(9)
に貢献すると考えられているので
一般的に抗原認識性を上げる可能性が考えられます。
---
(一般的な機能)
Toll様受容体はタンパク質(adaptor proteins)を
細胞質内に引き寄せて信号伝達し、
そのたんぱく質がさらに違うたんぱく質(protein kinase)を
活性化して、免疫細胞内の遺伝子の状態を改変させます。
おそらく遺伝子の状態が変わることによって
細胞の分化、分裂、生死のサイクルが変わったり
表面に出現する受容体が変わることで
抗原認識性を上げる可能性があると考えました。
/ワクチンとアドジュバントの組み合わせ:例/
--
Cervarix HPV vaccine from GSK社(さん)
アドジュバント:TLR4 ligand MPL
--
Hepislav vaccine candidate for hepatitis B from Dynavax社(さん)
アドジュバント:TLR9 ligand CpG oligodeoxynucleotide (ODN)
--
/アドジュバントの役割/
アドジュバントは自然免役系を誘発するだけではなく
ワクチンの輸送にも貢献しています。
100nm以下のナノ粒子であるLiposomesによって
ワクチン(抗原)と免疫誘発分子の輸送を兼ねています。
抗原がウィルス性であればvirosomesと呼ばれます(1)。
-
(これを使ったワクチン)
The Inflexal V vaccine for influenza
The Epaxal vaccine for hepatitis A
(by Crucell社(さん))
/アドジュバントAlum(アルミニウム塩)の生理機序、反応/
アドジュバントとして1920年代から広く使われており、
それに対する警鐘も鳴らされてきました。
日本のワクチンもインフルエンザを始め、広く
水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムが
使われています(10)。
アルミニウム塩の効果を始めにまとめると
良い効果と悪い効果が混在しています。
・抗原の取り込みを上げる
・危険な信号を誘発する(具体的にはinflammsome, Necrosis)
・様々な免疫細胞を引き付ける
・Th2反応を誘発する
これらが挙げられています。
-
(個別の報告)
樹状細胞による抗原の取り込みを上げる
--
注射部位に免疫細胞を引き付ける
⇒注射時に患部に痛みを伴うのに関連している?
--
炎症反応活性化(inflammasome)を介して
免疫細胞を誘発する
-
(以上、参考文献(2,13-15))
--
組織の死亡を誘発する(Necrosis)
DNAを放出
--
尿酸の産生を促す
--
Nlrp3 inflammasomeを活性化
病原体を自然免役系が検知する信号
ある種、アドジュバントの機能と言えます。
-
(以上、参考文献(11,12,16))
--
樹状細胞と相互作用するが、
細胞内には取り込まれない
--
免疫細胞表面の脂質の構造が変化する
それによって抗原認識性が変わる
CD4+T細胞吸着分子が亢進される
-
(以上、参考文献(4))
--
Ⅱ型NK細胞がCD1dに依存した形で
アドジュバントの活性に関与する
その際、Th2サイトカインが介入する(17)
--
好酸球がIL-4を通じて
アドジュバントに反応するB細胞を生み出す(18).
--
Alumはストレス誘発仲介物質として機能する
inflammasomeの反応は
この熱的なストレスによって
生み出されるたんぱく質の分泌とも言える(19)。
以上です。
(参考文献)
(1)
Steven G Reed, Mark T Orr & Christopher B Fox
Key roles of adjuvants in modern vaccines
Nature Medicine volume 19, pages1597–1608(2013)
(2)
De Gregorio, E., Tritto, E. & Rappuoli, R.
Alum adjuvanticity: unraveling a century old mystery.
Eur. J. Immunol. 38, 2068–2071 (2008).
(3)
Mbow, M.L., De Gregorio, E. & Ulmer, J.B.
Alum′s adjuvant action: grease is the word.
Nat. Med. 17, 415–416 (2011).
(4)
Flach, T.L. et al.
Alum interaction with dendritic cell membrane lipids is essential for its adjuvanticity.
Nat. Med. 17, 479–487 (2011).
(5)
Martinon F
Detection of immune danger signals by NALP3". review.
Journal of Leukocyte Biology. 83 (3): 507–11. (Mar 2008).
(6)
Moody, DB; Matsunaga, I
Mincle is a long sought receptor for mycobacterial cord factor.
Journal of Experimental Medicine. 206 (13): 2879–88(2009).
(7)
Abbas AK, Lichtman AH (2009),
Basic Immunology: Functions and Disorders of the Immune System (3 ed.), Philadelphia, PA: Saunders
(8)
Dushek O, Goyette J, van der Merwe PA
Non-catalytic tyrosine-phosphorylated receptors.
Immunological Reviews. 250 (1): 258–76(November 2012).
(9)
Ogata H, Su I, Miyake K, Nagai Y, Akashi S, Mecklenbrauker I et al.
The toll‐like receptor protein RP105 regulates lipopolysaccharide signaling in B cells.
J Exp Med 2000; 192: 23–29.
(10)
Djurisic, Snezana; Jakobsen, Janus C; Petersen, Sesilje B; Kenfelt, Mette; Gluud, Christian (2017).
Aluminium adjuvants used in vaccines versus placebo or no intervention.
Cochrane Database of Systematic Reviews.
doi:10.1002/14651858.CD012805.
(11)
Kool, M. et al.
Alum adjuvant boosts adaptive immunity by inducing uric acid and activating inflammatory dendritic cells.
J. Exp. Med. 205, 869–882 (2008).
(12)
Martinon, F., Petrilli, V., Mayor, A., Tardivel, A. & Tschopp, J.
Gout-associated uric acid crystals activate the NALP3 inflammasome.
Nature 440, 237–241 (2006).
(13)
Calabro, S. et al.
Vaccine adjuvants alum and MF59 induce rapid recruitment of neutrophils and monocytes that participate in antigen transport to draining lymph nodes.
Vaccine 29, 1812–1823 (2011).
(14)
Ghimire, T.R., Benson, R.A., Garside, P. & Brewer, J.M.
Alum increases antigen uptake, reduces antigen degradation and sustains antigen presentation by DCs in vitro.
Immunol. Lett. 147, 55–62 (2012).
(15)
McKee, A.S. et al.
Alum induces innate immune responses through macrophage and mast cell sensors, but these sensors are not required for alum to act as an adjuvant for specific immunity.
J. Immunol. 183, 4403–4414 (2009).
(16)
Marichal, T. et al.
DNA released from dying host cells mediates aluminum adjuvant activity.
Nat. Med. 17, 996–1002 (2011).
(17)
Shah, H.B., Devera, T.S., Rampuria, P., Lang, G.A. & Lang, M.L.
Type II NKT cells facilitate alum-sensing and humoral immunity.
J. Leukoc. Biol. 92, 883–893 (2012).
(18)
Wang, H.B. & Weller, P.F.
Pivotal advance: eosinophils mediate early alum adjuvant-elicited B cell priming and IgM production.
J. Leukoc. Biol. 83, 817–821 (2008).
(19)
Wang, Y., Rahman, D. & Lehner, T.
A comparative study of stress-mediated immunological functions with the adjuvanticity of alum.
J. Biol. Chem. 287, 17152–17160 (2012).
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