いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
今、北海道の旭川市が重症患者用のベッドがほぼ満床で
医療崩壊がすでに進んでいるという見方があります。
先日、出産を控えた周産期の女性が
新型コロナウィルスに感染していて、
感染のリスク、通常診療が影響を受けていることから
十分な診察が受けられないという報道がありました。
特に新生児においては
新型コロナウィルスに対する脅威については
まだ明確なことはわかっていない段階なので
感染された出産を控えた方においては
自分の子供に感染させないという事は
一番注意が及ぶところだと推察します。
Alejandra Barrero-Castillero氏ら研究グループは
妊娠されている女性、新生児に対しての
新型コロナウィルスに対する管理について
2020年7月31日時点までの報告を参考に総括しています(1)ので
読者の方と情報共有したいと思います。
/妊娠の新型コロナウィルスに対するリスク/
一般的に妊娠期間では感染症に対するリスクは上がると言われており、
特に呼吸器系疾患に関連する感染症に関しては
その傾向があると考えられています(2,3)。
新型コロナウィルスに対する疫学的な調査では
the Centers for Disease Control (CDC)によると
妊娠女性の入院や集中治療のリスクは
通常の女性よりも高いことが示されています(4)。
新型コロナウィルスは炎症により血栓などのリスクもあり
胎盤の血管を通して母親と胎児の血液の循環がありますから
そうした灌流を妨げるリスクは排除できるものではありません(5,6)。
/出産前の管理/
妊娠初期3か月以内に感染が確認されたときには
中期3か月においても超音波によって
胎児の体の状態を定期的にモニターすることが
The American College of Obstetricians and Gynecologists (以下ACOG)
によって求められています(6)。
また中期、後期3か月で感染が生じている場合には
そのような成長の継続的なモニターが求められています(6)。
/感染時の妊娠女性への治療について/
ACOGによれば、
デキサメタゾンなどコルチコステロイドの投薬は
妊娠期間においてもその投薬の決定が変更されるべきではない
と推奨されています(7,8)。
/出産に関して/
出産のタイミングに関しては
・病気の症状の程度
・母体、胎児の状態
・妊娠女性の併存疾患
・妊娠期間
これらのような要因が検討項目として挙げられ
通常と変わらない部分もあると認識します(7)。
新型コロナウィルスの症状が中程度以上で
入院が必要な妊娠女性に関しては、
出産のタイミングに関しては
・子宮や胎盤など(maternal vitals)の監視
・胎児の心拍数
これらが決定要因の一部となるとされています(9)。
妊娠女性の新型コロナウィルス感染の51例の報告では
早産や帝王切開のケースは多いとされています。
平均妊娠期間は36.5週とされています。
通常が39~40週なので3週間程度早産の傾向がある
と考えられます。
理由としては
・肺炎
・早期の破水
・胎児ジストレス
などが挙げられていますが、
妊娠された女性の方の不安など心理的な要因が
関わっていることも否定できないとされています(10)。
/胎児の感染について/
妊娠女性が新型コロナウィルスに感染した場合に
胎児がどれだけの割合で感染しているか?
アメリカ、中国、イタリア、
スウェーデン、韓国、ホンジュラスの調査
・3%(11)
イギリスの調査
・5%(12)
スペインの調査
・6.9%(13)
The National Registry for Surveillance and Epidemiology
of Perinatal COVID-19 Infection (NPC-19)の調査
・1.9%(14)
従って、1割にも満たないとなっています。
感染のルートとしては
経胎盤か、出産後の感染が挙げられています(1)。
経胎盤に関しては
実際には母体が感染してしている場合に
新生児にIgG,IgM抗体が見られましたが、
それがウィルス感染によって胎児内で形成されたものか
あるいは抗体が血管を通って生じたのか
という切り分けが(おそらく)できないために
経胎盤ルートでのウィルス感染に関しては
現在調べられているところです。
ただ、IgM抗体は大きいために(?)胎盤を通過することはできず
子宮内の感染を裏付けるものであるという見方があります(15,16)。
/授乳に関して/
母親が感染している場合に授乳を通して
新生児に感染が生じるかどうかというのは
母乳のウィルスの検出が確認されない場合(17-19)と
確認される場合(20,21)があり
今、詳細に調べられているところです。
しかしながら
母乳にウィルスがあっても
それが必ずしも実際の感染につながるかどうかは
確認が必要だと考えられます。
/新生児の感染のリスク/
重症化するケースは生後1か月以上よりも
それ以下の新生児の方が高い可能性があります(1)。
(一つの海外の調査:12% vs 2%)
但し、この数字が日本の場合に当てはまるかどうかはわかりません。
/検査/
PCR検査の精度は、
新生児や幼児で下がる可能性があります。
偽陰性が出る可能性も指摘されています(22)。
検査として提案されているのは
IgG抗体の上昇を掴むことです(23)。
IgG抗体が上昇するということは
身体が新型コロナウィルス感染に反応しているということを示します。
/投薬/
レムデシビルはエボラ出血熱の治療のケースでは
出産5日後の新生児に対して
安全性と薬効が確認されています(24)。
/母親と新生児の環境整備について/
母親が新型コロナウィルス陽性の場合に
出産後、新生児と隔離するかどうかが議論されています。
(参考文献(1) Fig.2より)
WHO(世界保健機関)は
出産直後の母親と新生児は
母親が感染していても隔離することは現在では
推奨しないと表明しています。
その理由は
・授乳の新生児の生育の利点
・肌と肌が触れ合う事の利点
これらの利点は感染のリスクを上回るとされています(25)。
また、出産直後
母親のホルモンバランスなどの問題も恐らくあって
心の状態というのはそれほど安定したものではない
と考えられる部分もあります。
その中で感染している事によって
お子さんと隔離されることは心理的なストレスは
相当大きなものになると考えられます。
そういったことは
長期的な良くない結果をもたらす可能性も指摘されています(26)。
/追記、考察/
今後、妊娠期間の免疫機能の変化やワクチン接種のリスクの評価
あるいは新型コロナウィルスに対するリスクなど
データを蓄積していく必要がありますが、
基本的には通常の状態よりもリスクは高いかもしれない
という認識は必要です。
従って、
身近な家族の人は、妊娠されている女性に対しては
家の中であっても換気、マスクをするなど
感染させないような特別な配慮が必要であるとともに
地域、社会的にも配慮や支援などが必要だと考えられます。
また、感染したとしても
孤立してしまうことは早産などのリスクにもつながりますので
医療機関としてどのような対応をとるのか?
ある程度のガイドラインを定める必要があると考えます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Alejandra Barrero-Castillero, Kristyn S. Beam, Laura B. Bernardini, Erika G. Cordova Ramos, Patricia E. Davenport, Anna R. Duncan, Yarden S. Fraiman, Lauren C. Frazer, Helen Healy, Emily M. Herzberg, Madeline L. Keyes, Kristen T. Leeman, Kristin Leone, Jonathan C. Levin, Matthew Lin, Ravikiran M. Raju, Anne Sullivan & On behalf of the Harvard Neonatal-Perinatal Fellowship COVID-19 Working Group
COVID-19: neonatal–perinatal perspectives
Journal of Perinatology (2020)
(2)
Mor G, Cardenas I. The immune system in pregnancy: a unique complexity.
Am J Reprod Immunol. 2010;63:425 – 33.
(3)
Dashraath P, Wong JLJ, Lim MXK, Lim LM, Li S, Biswas A,et al.
Coronavirus disease 2019 (COVID-19) pandemic and pregnancy.
Am J Obstet Gynecol. 2020;222:521 – 31.
(4)
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Characteristics of women of reproductive age with laboratory-con fi rmed SARS-CoV-2 infection by pregnancy status — United States, January 22-June 7, 2020.
MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69:769 – 75.
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