2020年12月15日火曜日

ワクチンに対するアドジュバントの役割(1)

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

ワクチンには免疫補強剤(アドジュバント)が含まれています。
ワクチンの研究については鋭意行わてきましたが、
それを補助する役割があるアドジュバントの研究に関しては
光が当たらず、いろんなミスインフォメーションがある中で
活発に進んでこなかった経緯があるとされています(1)。
しかしながら、
新型コロナウィルスのワクチンの臨床試験において
アドジュバントの重要性を裏付ける結果があります(2)。
ワクチンで特殊に設計された不活化ウィルスなどをいれると
身体が反応してくれて抗体を生み出してくれると思います。
B細胞が抗原認識して、抗体を生み出してくれると考えます。
しかし、モノクローナルな「精製された」タンパク質における
免疫反応においては抗体反応があまりよくない
と考えられています(1)。
また免疫細胞の一つであるT細胞の反応はほとんどでない
と考えられています(1)。
実際にリンパ節の胚中心でB細胞が特異的に発展すると考えられます。
もちろん脾臓、胸腺などもないとはいえませんが、
仮に胚中心として、その胚中心の中では
ヘルパーT細胞が抗原認識してB細胞に信号を伝える経路もあります。
ひょっとするともっと起こっている事は複雑かもしれません。
そうした時に
ワクチンのように「意図的に設計した純度の高い抗原」においては
広範に体の免疫機能が反応しないために
抗体の産生効率がよくない可能性があります。
1885年に狂犬病のワクチンの補助剤として
ssRNAが発明されて以来、
多くのワクチンにおいてセットで接種されてきました。
(参考文献(1) Figure,1より)
例えば、身近なインフルエンザでは
glucopyranosyl lipid adjuvant–stable emulsion (GLA-SE) 
というアドジュバントが使われ
それがない時に比べて抗体の産生量は
「30倍」以上になったといわれています(3)。
B型肝炎のワクチンでは
AS04 アドジュバントにより
3回接種を2回に減らすことができました(4,5)。

アドジュバントの期待される効果としては
・病原体に対する迅速な反応
・用量寛容性(少なくてもいい)
・接種回数を減らせる
・新たなT細胞ワクチンの可能性
・臨床応用できるワクチン(HPV、癌など)
・高齢の方への効果(免疫細胞老化を克服)
・ワクチンの交差性(インフルエンザ、HIV、マラリア)
これらが挙げられています。
(参考文献(1) Figure 2より)
例えば、
インフルエンザは今、西日本を中心に鳥型のものが増えていますが、
それが豚に感染すると一気に緊張感は高まります。
また新型インフルエンザがいつ流行するかわかりません。
インフルエンザはHemagglutininの頭の部分が
構造変化しやすいため(6)にワクチンの設計を度々変更する必要があります。
その中で交差性の高い、ユニバーサルなワクチンが必要ですが、
こうした場合においてもワクチンだけではなく
適切なアドジュバントの開発も非常に重要です。
アドジュバントは抗原提示細胞に入って
様々な免疫細胞に抗原認識に寄与するために
B細胞を始め、他の免疫細胞の抗原特異性に関連します。
またB細胞においては多様な発展を遂げるため
インフルエンザやHPVで
アドジュバントによる抗体の高い交差性が確認されています(7-9)。
しかし、これだけ影響力の大きな物質を
体外で任意に設計するわけですから
健康に対するリスクも指摘されてきた部分があります(1)。

前述したようにアドジュバントは
様々な免疫細胞に働きかけますが、
T細胞に関してはヘルパーCD4T細胞や
細胞傷害性を示すエフェクター細胞CD8、CD4についても
誘発性を持つとされています(1)。
予防したい病原体と類似性の高いの抗原とともに
アドジュバントが
抗原提示細胞にうまく働きかけることができれば
それぞれの免疫細胞の特定の病原体に対する特異性があがりますから
T細胞、B細胞に限らずNK細胞、
マクロファージ、樹状細胞など
様々な免疫細胞に特異性を持たせられる可能性があり
集中的に攻撃することが可能になるかもしれません。

それを決める一つの要因は
抗原提示細胞にどう働きかけるか?
(参考文献(1) Figure 4より)
これが重要なので
表面受容体との結合、エンドサイトーシス
細胞内でのタンパク質や核酸との反応など
細胞レベルで詳しく調べていく事で
次世代のより有効なアドジュバント開発に貢献する可能性が考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Steven G Reed, Mark T Orr & Christopher B Fox 
Key roles of adjuvants in modern vaccines
Nature Medicine volume 19, pages1597–1608(2013)
(2)
C. Keech, G. Albert, I. Cho, A. Robertson, P. Reed, S. Neal, J.S. Plested, M. Zhu, S. Cloney‑Clark, H. Zhou, G. Smith, N. Patel, M.B. Frieman, R.E. Haupt, J. Logue, M. McGrath, S. Weston, P.A. Piedra, C. Desai, K. Callahan, M. Lewis, P. Price‑Abbott, N. Formica, V. Shinde, L. Fries, J.D. Lickliter, P. Griffin, B. Wilkinson, and G.M. Glenn 
Phase 1–2 Trial of a SARS-CoV-2 Recombinant Spike Protein Nanoparticle Vaccine 
The New England Journal of Medicine 2020;383:2320-32.
(3)
Cox, M. 
Update on clinical trials evaluation of adjuvanted rHA(H5) vaccines. in 7th WHO Meeting on Evaluation of Pandemic Influenza Vaccines in Clinical Trials 
(Geneva, Switzerland, 2011).
(4)
Tong, N.K. et al. 
Immunogenicity and safety of an adjuvanted hepatitis B vaccine in pre-hemodialysis and hemodialysis patients. 
Kidney Int. 68, 2298–2303 (2005).
(5)
Levie, K., Gjorup, I., Skinhoj, P. & Stoffel, M. 
A 2-dose regimen of a recombinant hepatitis B vaccine with the immune stimulant AS04 compared with the standard 3-dose regimen of Engerix-B in healthy young adults. 
Scand. J. Infect. Dis. 34, 610–614 (2002).
(6)
Raffael Nachbagauer, Jodi Feser, Abdollah Naficy, David I. Bernstein, Jeffrey Guptill, Emmanuel B. Walter, Franceso Berlanda-Scorza, Daniel Stadlbauer, Patrick C. Wilson, Teresa Aydillo, Mohammad Amin Behzadi, Disha Bhavsar, Carly Bliss, Christina Capuano, Juan Manuel Carreño, Veronika Chromikova, Carine Claeys, Lynda Coughlan, Alec W. Freyn, Christopher Gast, Andres Javier, Kaijun Jiang, Chiara Mariottini, Meagan McMahon, Monica McNeal, Alicia Solórzano, Shirin Strohmeier, Weina Sun, Marie Van der Wielen, Bruce L. Innis, Adolfo García-Sastre, Peter Palese & Florian Krammer
A chimeric hemagglutinin-based universal influenza virus vaccine approach induces broad and long-lasting immunity in a randomized, placebo-controlled phase I trial
Nature Medicine (2020)
(7)
Draper, E. et al. 
A randomized, observer-blinded immunogenicity trial of Cervarix and Gardasil human papillomavirus vaccines in 12–15 year old girls. 
PLoS ONE 8, e61825 (2013).
(8)
Galli, G. et al. 
Fast rise of broadly cross-reactive antibodies after boosting long-lived human memory B cells primed by an MF59 adjuvanted prepandemic vaccine. 
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106, 7962–7967 (2009).
(9)
Khurana,  S.  et  al.  
MF59  adjuvant  enhances  diversity  and  affinity   of  antibody-mediated immune response to pandemic influenza  vaccines. 
Sci. Transl. Med. 3, 85ra48 (2011)


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