いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスの世界的流行で
私も含め多くの方が知るようになった免疫。
免疫細胞は体中を巡っていると言われています。
それは血液、リンパ液、間質液など
様々な流れに乗って全身を流動しているということであり、
常に体を「監視している」ともいえます。
監視しているので何か身体に異常があるとそれを感知して
様々な種類の免疫細胞が正常に戻すように活性化されます。
その時に免疫細胞は人で言う「目」を持っていませんから
異常があることを光の信号だけで理解することは
多分難しいのではないかと思います。
身体の中は光は多くはありません。
その時に「何か異常を示す物質」を認識して
それで免疫機能が活性化されると考えられます。
例えば、免疫細胞の一つであるマクロファージは
M2型に関して細胞の修復機能があると言われています。
例えば、新型コロナウィルスに感染して
肺炎などの症状が落ち着いた後には
損傷を受けた肺胞の組織を修復するような働きがあります。
その時にDamage-associated molecular patterns
という損傷を受けた部位の分子パターン
あるいはそこから放出される物質を
マクロファージなどの自然免疫系が
パターン認識受容体(PRR)で認識して
活動が活性化され組織の修復を実現します(2)。
健康で問題のない人でも極めて少ない量ですが、
身体には癌細胞があるといわれています
しかし、非常に少ないので消えたり生まれたりの
繰り返しの中でほとんど問題がない可能性があります。
その時には上述した体を監視する
免疫細胞が働いていると考えられます。
その場合においても癌細胞は
「何らかの信号を出して」
それを免疫細胞が検知していると考えられます。
その信号の一つは
「Tomor associated angtigen (TAA)」と呼ばれます。
この癌が出す抗原を認識して
免疫細胞はその癌細胞を特異的に攻撃するような
細胞の発展が生まれます。
このような癌細胞が特有に出す抗原(TAA)は
細胞の中で癌化した時に起きる遺伝子異常に
端を欲すると考えられますが、
このような癌に関連する遺伝子異常のトリガーは
「ウィルスによって」起こることもあります。
例えば、
私たち日本人になじみのある「ヘルペスウィルス」
正式名称は「エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)」
と呼ばれ、日本では成人までにほぼ100%の人が
感染しているといわれており、
ウィルスは終生にわたって持続感染しているといわれています。
このEBVウィルスはB細胞などの免疫細胞に感染するのですが
「体の中の制御が崩れた場合には」
いくつかの癌と関連があることが知られています(3)。
またB細胞に感染しますから
自己免疫疾患の原因になることもあります(4)。
しかし、ほとんどの人がそうならない理由の一つは
T細胞が活性化して(5)、
ウィルス感染したB細胞の量を調整しているからである(1)
と考えられます。
おそらくこのような事は免疫系でもっと一般化できて
EBVに感染している免疫細胞とそうではない細胞細胞
あるいはそれを自己調整できる免疫細胞があって
生成と消滅のバランスが問題にならないように
均衡状態が保たれていると考えられます。
実際に子供や若い人の例では
EBVに感染している免疫細胞の割合は小さいと言われています。
そこでIl-Kyu Choi氏ら研究グループは
上述したEBVウィルスが
B細胞とT細胞の間でどのような相互作用を生み出しているか
その機序について実験を通じて確認しています。
さらにその機序から
B細胞に関連する癌に対する治療について提案し
それについての効果を検証しています(1)。
本日は、その内容の概略について
読者の方と情報共有したいと思います。
EBVウィルスに感染すると
LMP1が発現されてそれがT細胞の反応を促して
LMP1を発言しているウィルス感染B細胞を
反応して活性化したT細胞が細胞死させます。
従って、このLMP1を欠乏させると
感染B細胞が増殖し、リンパ腫を引き起こすことは
知られていました(6,7)。
その時に、
参考文献(1) Extended Date fig.6に示すように
LMP1はがん関連遺伝子で有り
それによって生まれた
上述した癌関連抗原(TAA)を細胞内外に放出し
それがMHC2,MHC1と結合することによって
CD4+、CD8+T細胞が特異的に認識するようになります。
それによって生まれた
CD4+T細胞:OX40, CD27, LFA-1, CD28
CD8+T細胞:OX40, CD27, LFA-1, CD28, 41BB
これらのT細胞の表面にある受容体が
ウィルス感染B細胞:OX40, CD70, ICAM-1, B7, 4-1BBL
とそれぞれ結合することで
CD4+、CD8+T細胞がウィルス感染B細胞を死滅させます。
従って、B細胞に関連する血液性の癌治療において
LMP1癌遺伝子を発現している患者さんにおいては
このようなT細胞を使った治療が有効である可能性があります。
しかしがなら、
・Diffuse large b-cell lymphoma
・ホジキンリンパ腫
これらにおいてはMHC-IがB癌細胞表面に欠如している(8,9)ことから
MHC-Ⅰを活性化のために必要とするCD8+T細胞は
使えないという事になります。
そこでCD4+T細胞を「マウスに」細胞移植させて
より患部でCD4+T細胞がLMP1によって生じた
癌関連抗原(TAA)の反応を多く検知するようにしたところ
B細胞に関連する腫瘍組織の進行を抑えることができました(1)。
(参考文献(1) Fig.3 (h))
しかしながら
このCD4+T細胞はPD-1という癌に対する
免疫機能を阻害する受容体が多く発現しています。
その阻害を弱めるために
PD-1の機能を弱めるような物質を付けて効果を確認したところ
B細胞に癌が生じているマウスの延命が可能になりました(1)。
(参考文献(1) Fig.3 (i,m))
これを人に適用する場合には
癌関連抗原(TAA)に対する免疫細胞の結合面が多くあるため
それをCD4+T細胞が認識するためには
その結合面の情報を体内に入れる前に
憶えさせておく必要があるということです(1)。
//追記、考察//
この結果でもあったように
人の場合、Tomor associated antigen(癌関連抗原)の
結合面が多様であるとありました。
B細胞の癌に限らず、他の癌でもTAAの放出はありますが、
実際には免疫細胞がそれを認識して
癌細胞に対して細胞傷害性を示すには十分ではない場合もあるようです。
従って、癌細胞に対して
その増加を抑え、退行に向かわせるような免疫系統を築くためには
化学療法、放射線治療、外科的な切除も当然ありますが、
免疫だけでみれば、
自然免疫系統、獲得免疫系統から
幅広く特異的な癌傷害性を示すような環境を作ることが
大事だと考えられます。
例えば、冒頭で述べた様に
自然免疫系は特異的なパターン認識によって
機能が高められるケースがありますが、
その機序を詳しく把握することによって
今述べたT細胞などの獲得免疫機能だけではなく
NK細胞、マクロファージ、樹状細胞などの自然免疫による
免疫療法の展望も広がると考えられます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Il-Kyu Choi, Zhe Wang, Qiang Ke, Min Hong, Dereck W. Paul Jr, Stacey M. Fernandes, Zhuting Hu, Jonathan Stevens, Indira Guleria, Hye-Jung Kim, Harvey Cantor, Kai W. Wucherpfennig, Jennifer R. Brown, Jerome Ritz & Baochun Zhang
Mechanism of EBV inducing anti-tumour immunity and its therapeutic use
Nature (2020)
(2)
Tao Gong, Lei Liu, Wei Jiang & Rongbin Zhou
DAMP-sensing receptors in sterile inflammation and inflammatory diseases
Nature Reviews Immunology volume 20, pages95–112(2020)
(3)
Maeda E, Akahane M, Kiryu S, Kato N, Yoshikawa T, Hayashi N, Aoki S, Minami M, Uozaki H, Fukayama M, Ohtomo K
Spectrum of Epstein–Barr virus-related diseases: a pictorial review.
Japanese Journal of Radiology. 27 (1): 4–19., (2009).
(4)
Toussirot E, Roudier J
Epstein–Barr virus in autoimmune diseases.
Best Practice & Research. Clinical Rheumatology. 22 (5): 883–96 (2008).
(5)
Long, H. M. et al.
CD4 + T-cell clones recognizing human lymphoma-associated antigens: generation by in vitro stimulation with autologous Epstein–Barr virus-transformed B cells.
Blood 114, 807–815 (2009).
(6)
Zhang, B. et al.
Immune surveillance and therapy of lymphomas driven by Epstein–Barr virus protein LMP1 in a mouse model.
Cell 148, 739–751 (2012).
(7)
Yasuda, T. et al.
Studying Epstein–Barr virus pathologies and immune surveillance by reconstructing EBV infection in mice.
Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol. 78, 259–263 (2013).
(8)
Challa-Malladi, M. et al.
Combined genetic inactivation of β2-microglobulin and CD58 reveals frequent escape from immune recognition in diffuse large B cell lymphoma.
Cancer Cell 20, 728–740 (2011).
(9)
Roemer, M. G. M. et al.
Major histocompatibility complex class II and programmed death ligand 1 expression predict outcome after programmed death 1 blockade in classic Hodgkin lymphoma.
J. Clin. Oncol. 36, 942–950 (2018).

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