2020年12月22日火曜日

免疫細胞の代謝について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

人、動物、あるいは植物の細胞には
「酸化還元バランス(Redox balance)」というのがあります。
基本的には酸化することによって
陽イオンと陰イオンに物質を分解するので
そのためのイオン化エネルギーが必要になります。
そのイオン化エネルギーは酸化物質によって得ると考えられますが、
反応を推し進める酵素など触媒作用もあると思っています。
つまり、酸化することによって
細胞内の物質をイオン化して
単体の分子としてエネルギーの高い状態にする
ということです。
それが陰イオンでは電子、活性酸素の場合もあるし
陽イオンではNADイオン、水素イオンの場合もあると思っています。
例えば、酸素ではイオン価数があがっていくと
イオン化エネルギーはあがります。
1価:1313.9 / 2価:3388.3 / 3価:5300.5、、、、
そのイオン化するためのエネルギーが高いほうが
反応後のポテンシャルが高いとすると
おそらく「強い細胞傷害性」を持つ
活性酸素、もしくは一酸化窒素は
他のNAD+、電子そのものなどに比べてエネルギーが高い
と考えることができます。
基本的に「嫌気性の」の代謝経路は
代謝効率がよくないといわれますが、
酸化還元バランスを保つために大きなエネルギーを必要とする
というのがあると思っています。
それはいうなれば反応するためのエネルギーが高く
酸化によって生み出されるイオンもエネルギーが高い
と言えると考えます。
そうすると少ないエネルギーで
酸化還元バランスを保てる方がエネルギー差が小さく
「代謝効率がよく、身体に優しい」と言えると思います。
従って、
参考文献(1) Box 2(a)にあるように
酸化還元バランスを保つ反応経路は多く存在し
細胞がその中で何を選択するかというのは非常に重要です。
しかし、
免疫細胞のように時には
新型コロナウィルスのような病原体を撃退する必要があり
その場合にはエネルギーの高い物質が必要です。
故にエネルギー差が低い反応だけで
身体の恒常性を維持できるわけではないと考えられます。

スイス連邦工科大学チューリッヒ校の
Jonathan Muri氏、Manfred Kopf氏の研究グループは
免疫細胞の代謝について
詳しく総括している(1)ので、
その内容の一部について考察、追記を加えながら
読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は考察、追記部分です

//T細胞の代謝//-----------
(T細胞の代謝スイッチ)
安定な状態ではナイーブなT細胞は休止状態にはいっており
代謝需要は制限されています。
つまり「省エネモード」といえるかもしれません。
しかしながら、
新型コロナウィルスのように体外から病原体が入ったり、
あるいは癌細胞などができると
T細胞は抗原認識して、活発化されます。
その時にはT細胞の活動を支える代謝機能が
休止モードから活性モードに変わります。
その時には分化モードから同化モードに変わり
多くのエネルギーを必要とします(2,3)。
とりわけ
活性化されたCD4+、CD8+T細胞は
嫌気性の糖化プロセスを選択し、
グルコースを乳酸塩に変換します。
この時には酸素の供給があったとしても
嫌気性の糖化プロセスが選択されます(4-8)。
-----

おそらくその理由の一つは
CD8+T細胞は感染細胞を細胞死に導く必要があるため
活性酸素など高いエネルギーを必要とするからだと思います。
そのため化学反応エネルギーの高い
嫌気性の糖化プロセスを選んでいると考えます。
-----
その糖化の代謝経路で
細胞の成長、増殖などの維持に必要な
ヌクレオチド(DNAなど)、アミノ酸(タンパク質)
脂肪酸などが中間生成物として生まれます(9,10)。
これらは体の組織を支える上で基本となる物質であり
それは免疫細胞内でも同様です。
そのような糖化プロセスの中で
酸化還元、イオン化、脱イオン化の均衡状態
レドックスバランスが保たれます。
---
T細胞を含め、免疫細胞の代謝経路は
参考文献(1) Box.2(a) Table.1に示されるように
TRX系統、GSH系統、NRF系統など
様々なプロセスがあります。
実際にナイーブなT細胞から
活性化されると
・TXNIP抑制⇒TRX1活性
・GSH、GPX1、GPX3活性
・NRF2活性
これらの酸化還元プロセスが活性化され
その過程で多くの活性酸素が生み出されます。
また同時に制御されています。
それによってフェロプトーシスなど
細胞死に至らせる信号を放出します。
(参考文献(1) Fig.1より)
-----------

//B細胞の代謝//-----------
-----

B細胞は骨髄の造血系幹細胞から分化して
それが活性化される時には
リンパ節の胚中心の中で
ヘルパーT細胞などを通して
新型コロナウィルスなどの抗原を認識します。
その時には細胞膜を貫通する受容体を形成します。
-----
ミトコンドリアの代謝サイクルによって生じた脂肪酸が
小胞体に行き、糖たんぱく質からなる受容体が形成されます。
この受容体が細胞膜を貫通して
ある程度固定されると、そこから
いくつかの酸化還元代謝経路が活性化されます。
それが
・TXNIP、TRX1
・GSH、GPX1、GPX
です。通常はTRX1、GPX4などの酸化還元反応があり
それよりも多くの経路が選択され
それに応じて活性酸素も形成されます。
また栄養源としては
活性化されたときにグルタミンの取り込みを
グルコースなどに加えて取り込むようになります。
それに応じて
ミトコンドリアの代謝サイクルも変わり
その中で活性酸素が形成されます
(参考文献(1) Fig.2より)

//マクロファージの代謝//-----------
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マクロファージには極性を持っていて
身体の組織、細胞からの信号に反応して
大きく分けて2種類の異なる機能プログラムを持つ
とされています。
それはそれぞれM1、M2と呼ばれます。
M1はclassically activated macrophages
M2はalternatively activated macrophages
といわれます。
マウロファージは新型コロナウィルスなど
感染症において、病原体を攻撃する初動を担う
「自然免疫系」と考えられます。
上述したT細胞、B細胞は主に
「獲得免疫系」であると考えられます。
-
M1は炎症性サイトカインを多く発現して
積極的に病原体のなどを撃退するときに発現されます。
しかし、過剰になると
組織の炎症など悪影響も考えられます。
-
M2は組織の回復、自己抗体、新抗原に対する寛容性など
主に炎症した組織の回復に当たる細胞で、
例えば、新型コロナウィルスで炎症下
血管、組織、臓器などを回復させるときに働く細胞である
と考えられます。
従って、疾患が治癒していく段階で
重要な細胞であると考えられます。
-----
このうち炎症性を示すM1マクロファージは
「嫌気性」の糖化プロセスを代謝で多く採用する
といわれています。
一方、M2マクロファージは
脂肪酸の酸化の代謝プロセスがメインです。
-
炎症性M1マクロファージにおける代謝の特徴は
・TXNIP、TRX1
・GPX
などT細胞やB細胞が活性化した時と同じ
代謝プロセスを採用します。
その他
・NRF2
・GPX4
これらが採用され
その他の特徴として
・低酸素誘導因子(HIF-1α)
・一酸化窒素(NO)
これらが産生されることです。
同様に活性酸素も放出されます。
この一酸化窒素はエネルギーが高く
病原体を攻撃するための分子です。
-----

代謝経路の中に低酸素誘導因子の安定化が関わっていて
それらが活性化するときの酸化還元反応
あるいは活性酸素、一酸化窒素の産生に関わっているので
新型コロナウィルスによる肺炎などで
低酸素状態になると
ミトコンドリア以外の代謝経路の中で
酸素利用が減ることでこれらの系統が活性化、
バランスとして過剰になることが考えられます。
これが低酸素になったときに
自然免疫系>獲得免疫系
というバランスになる原因の一つではないかと考えました。
-----

//治療の選択肢//-----------
新型コロナウィルスにおいて、
免疫機能のバランスが崩れることで
身体の多くの部分に影響を与え、炎症を起こしている
と考えられます。
通常は
・ウィルスを減らすこと
・免疫機能を調整すること
これらが挙げらています。
免疫機能の調整では例えば、
アクテムラではIL-6という炎症性のサイトカインを
抗体で抑えるようなプロセスが踏まれます。
ここでは
代謝のプロセスや代謝生成物に対して
どのような治療の選択肢があるか列挙します。
-
①活性免疫細胞に対してTRX、GSH代謝経路を調整
②活性酸素を改変(CAR-T細胞、抗酸化物質など)
③マクロファージに対してNRF代謝経路を調整
(参考文献(1) Box.3より)
-
-----------

//追記//
活性酸素というのは必ずしも体に毒ではなく
病原体や余分な物質を分解する(?)上では
重要になると思われます。
従って、適正な量、対象物に働くように
制御される必要があります。
それが細胞内の酸化還元反応のバランス
レドックスバランスによって調整されていると思います。
人は常に外界と接していますから
環境は常に変わっています。
今のように未知の新型コロナウィルスに
暴露されることもあります。
そうした時には身体の反応として
それを撃退するために免疫機能が働きますが、
その一部として代謝機能の改変があると考えられます。
その時には
基本的にはウィルスを攻撃する必要がありますから
エネルギーとしては高い代謝経路が選択され
多くの栄養を必要とすると考えられます。
しかし、一気に体の中が乱されると
その制御が上手くいかなくなり、恒常性が乱れ
身体の色んな部分に炎症や不具合が生じると考えられます。
従って、
外側から身体が制御しやすいようにするために
薬剤投与や患者の管理などを通して医療が介入する必要がある
と考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Jonathan Muri & Manfred Kopf 
Redox regulation of immunometabolism
Nature Reviews Immunology (2020)
(2)
Fox, C. J., Hammerman, P. S. & Thompson, C. B.  
Fuel feeds function: energy metabolism and the T- cell response. 
Nat. Rev. Immunol. 5, 844–852 (2005).
(3)
van der Windt, G. J. & Pearce, E. L. 
Metabolic switching and fuel choice during T- cell differentiation and memory development. 
Immunol. Rev. 249, 27–42 (2012).
(4)
Chang, C. H. et al. 
Metabolic competition in the tumor microenvironment is a driver of cancer progression. 
Cell 162, 1229–1241 (2015).
(5)
Gubser, P. M. et al. 
Rapid effector function of memory CD8 +  T cells requires an immediate- early glycolytic switch. 
Nat. Immunol. 14, 1064–1072 (2013).
(6)
Finlay, D. K. et al. 
PDK1 regulation of mTOR and hypoxia- inducible factor 1 integrate metabolism  and migration of CD8 +  T cells. 
J. Exp. Med. 209, 2441–2453 (2012).
(7)
Shi, L. Z. et al. 
HIF1α- dependent glycolytic pathway orchestrates a metabolic checkpoint for the differentiation of T H 17 and T reg  cells. 
J. Exp. Med.  208, 1367–1376 (2011).
(8)
Macintyre, A. N. et al. 
The glucose transporter Glut1 is selectively essential for CD4 T cell activation and effector function. 
Cell Metab. 20, 61–72 (2014).
(9)
Macintyre, A. N. & Rathmell, J. C. 
Activated lymphocytes as a metabolic model for carcinogenesis. 
Cancer Metab. 1, 5 (2013).
(10)
Vander Heiden, M. G., Cantley, L. C. & Thompson, C. B. 
Understanding the Warburg effect: the metabolic requirements of cell proliferation. 
Science 324,  1029–1033 (2009).

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