2020年12月22日火曜日

抗体B細胞除去による自己免疫疾患の治療

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

自己免疫疾患とは
本来なら病原体、異常細胞など異物を認識して
それを排除して体の恒常性を保つための免疫機能が
正常な細胞や組織まで「過剰に」反応して攻撃してしまう疾患である
と考えられています。
この自己免疫疾患はほぼ全身で起こります。
・神経・筋肉・消化器・循環器・肺
・腎臓・血液・内分泌・代謝・皮膚
・眼・耳・男性生殖器
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全身性のものでは
・関節リウマチ・全身性エリテマトーデス
・抗リン脂質抗体症候群
・多発性筋炎・皮膚筋炎
・強皮症・シェーグレン症候群
・IgG4関連疾患・血管炎症候群
・混合性結合組織病
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それに対して今までは免疫細胞であるB細胞は
他の細胞に影響を与えるような「Bystander効果」はない
とされていましたが
むしろ自己免疫疾患の病因となる主要な関与細胞である
ということがここ15年での常識となっているようです(1)。
従って、自己免疫疾患で特徴的に出ている
B細胞の表面受容体(CD20、CD19、BAFF)を抗体で
抑え込むような治療
B cell depletion therapies (BCDTs)
これが提案されています。

Dennis S. W. Lee氏、Olga L. Rojas氏、Jennifer L. Gommerman氏
研究グループは、
このB cell depletion therapies (BCDTs)について
近年の発展や科学的な機序について
詳しく包括しています(1)ので
読者の方とその内容の一部について情報共有したいと思います。

//B細胞depletion治療(以下BCDT)の想定される機序//------------
(抗体の設計)
B細胞のCD20という受容体を標的した
anti-CD20モノクローナル抗体を使った
自己免疫疾患の治療において
そのようなモノクロールなる抗体が上手く作用する場合には
2次的に生成される(second-generation)
anti-CD20モノクローナル抗体も存在するといわれています。
それら複数の抗体は
自己免疫疾患の原因となる異常なB細胞に対して
・Complement-dependent cellular cytotoxicity (CDC)
・FcγR-mediated depletion 
 Antibody-dependent cellular cytotoxicity(ADCC)
  Antibody-dependent cellular phagocytosis
・Directly inducing cell death 
これらの機序を通して細胞死させるとされています(2)。
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抗体はY字型になっていて
上の枝分かれしている部分がFabドメイン、
下の根の部分がFcドメインと呼ばれます。
anti-CD20のモノクローナル抗体は2種類あって
Type1
Fab:murine model / Fc:human model
Type2
Fab:human model / Fc:human model
これらとなっています。
しかしながら、Type1のモデルは
異常のあるB細胞のFcγRIIb受容体を通した
anti-CD20モノクローナル抗体の細胞内の取り込み
(Antibody-internalization)
これが生じ、治療に対して抵抗性を持つようになる
と言われています(3)。
一方、Type2は
複数の受容体が束になって結合する(Clustering)
抗体がB細胞内に取り込まれる(Internalization)
これらが防がれるため治療抵抗性が小さいと言われています(4)。
従って、潜在的にBCDTが効果を持つ
自己免疫疾患において一定の奏功が期待できるとされています(1)。
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(治療の上での課題)
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自己免疫疾患の原因としてはT細胞、B細胞の中の
様々な免疫細胞がある中で
(主体となるとは考えられていますが)特定のB細胞が
どれくらいの割合の病因となっているかわかりません。
従って、仮に過敏で異常な特定のB細胞を除去できたとしても
それで症状がなくなるかどうかはわからない部分がある
と考えています。
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関節リウマチにおいて
関節軟骨部分にある滑膜(synovium)のB細胞を除去しても
完全に治癒することはできなかったとされています(5)。
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後は上皮細胞よりも内側の膜内のB細胞は
抗体や抗体に結合したB細胞をそこまで輸送する
必要があるためその点で抵抗性を示すこともある
とされています(7)。
そういった輸送の影響は脳でも関係します。
血液中や脳脊髄液など液体による流れのルートの
途中にあるような部位に存在するB細胞を死滅させることは
このような抗CD20モノクローナル抗体の投与は
有効性を示します(8,9)が、
中枢神経系においては奏功に偏差があるとされています(10,11)。
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CD11cを発現するT-bet+記憶型B細胞は
主に脾臓に分布して全身に循環されていないとされています。
しかし、全身性エリテマトーデス様症候群の原因となる
前駆細胞はこのT-bet+記憶型B細胞の異常であります(12)。
しかし、この細胞を消去することが
全身性エリテマトーデス様症候群を改善することに
つながるかどうかはわからないといわれています(1)。
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//追記、考察//------------
免疫細胞が多くある中で
問題のある細胞を分類できれば、
その細胞の異常を示す特異的な働きを抑制すれば
症状が改善することは期待されますが、
それが複数の細胞種に至る場合には
その前駆細胞にさかのぼり
そのような異常はなぜ起こっているのか?
どこの分化、発展段階で問題が生じているのか?
というのを掴む必要があるかもしれません。
基本的には自己免疫疾患は
獲得免疫系のT細胞、B細胞の異常によって起きる(6)
とされています。
つまり病原体をパターン認識して攻撃する
自然免疫系のパターン認識受容体の異常によって
起きる事はない(?)とされています。
免疫細胞の発展の段階でウィルス感染によって起こる
という学説もあることから
細胞のウィルス感染で結果的に生じるのは
遺伝子の改変であると考えられるので
それによって生じた受容体などの機能によって
通常細胞まで攻撃するようになったと考えることもできます。
そうするとその遺伝子の異常が分かれば、
T細胞やB細胞を患者さんから取り出して調べて
対応する遺伝子異常を各細胞で特定することで
実際に問題が生じている獲得免疫系の細胞を特定し
治療戦略を考えるという道筋も得られます。
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B細胞の異常が体全身に及んでいるのか
また全てがそうなのか?
という分布と割合の観点から
モノクローナル抗体のオフターゲット効果についても
考える必要があるのではないかと考えます。
例えば、関節のB細胞だけ取り除きたい場合には
ここで提案する細胞特異的輸送系統によって
関節の患部だけにモノクローナル抗体を輸送するような
薬剤輸送系統を考える必要があります。

以上です。

(参考文献)
(1)
Dennis S. W. Lee, Olga L. Rojas & Jennifer L. Gommerman 
B cell depletion therapies in autoimmune disease: advances and mechanistic insights
Nature Reviews Drug Discovery (2020)
https://doi.org/10.1038/s41573-020-00092-2
(2)
Reddy, V. et al. 
Obinutuzumab induces superior B-cell cytotoxicity to rituximab in rheumatoid arthritis and systemic lupus erythematosus patient samples. 
Rheumatology 56, 1227–1237 (2017)
(3)
Lim, S. H. et al. 
Fc gamma receptor IIb on target B cells promotes rituximab internalization and reduces clinical efficacy. 
Blood 118, 2530–2540 (2011)
(4)
Teeling, J. L. et al. 
The biological activity of human CD20 monoclonal antibodies is linked to unique epitopes on CD20. 
J. Immunol. 177, 362–371 (2006).
(5)
Kavanaugh, A. et al. 
Assessment of rituximab’s immunomodulatory synovial effects (ARISE trial). 1: clinical and synovial biomarker results. 
Ann. Rheum. Dis. 67, 402–408 (2008).
(6)
Hanspeter Waldner
The role of innate immune responses in autoimmune disease development
Autoimmun Rev. 2009 Mar;8(5):400-4. 
(7)
Gong, Q. et al. 
Importance of cellular microenvironment and circulatory dynamics in B cell immunotherapy.  
J. Immunol. 174, 817–826 (2005).
(8)
Bar-Or, A. et al.]
Rituximab in relapsing-remitting multiple sclerosis: a 72-week, open-label, phase I trial. 
Ann. Neurol. 63, 395–400 (2008).
(9)
Cross, A. H., Stark, J. L., Lauber, J., Ramsbottom, M. J. & Lyons, J.-A. 
Rituximab reduces B cells and T cells incerebrospinal fluid of multiple sclerosis patients.  
J. Neuroimmunol. 180, 63–70 (2006). 
(10)
Martin Mdel, P. et al. 
Depletion of B lymphocytes  from cerebral perivascular spaces by rituximab.  
Arch. Neurol. 66, 1016–1020 (2009).
(11)
Esfandi, S., Salimian, S., Corboy, J. & Alvarez, E. 
Persistent B lymphocytes in multiple sclerosis plaques after rituximab treatment (P5.341). 
Neurology 88 (Suppl. 16), P5.341 (2017).
(12)
Johnson, J. L. et al. 
The transcription factor T-bet resolves memory B cell subsets with distinct tissue distributions and antibody specificities in mice and humans. 
Immunity 52, 742–855.e6 (2020).

 

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