2020年12月19日土曜日

感染初期の抗体投薬によるウィルス量、症状への影響

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

厚生労働省の発表では
新型コロナウィルスを伝染させやすい期間としては
発症2日前から発症後10日後までの間といわれています。
これがもし正しいとするならば
多くの人は発症から10日後には
呼吸器系の中に存在するウィルスの量は
免疫機能によって減っているということが想定されます。
あるいは、
中等症、重症の方を含め
病状が悪化する人は感染が制御された医療機関に入院する
ことになるから、その方たちが除外される
というのもあるかもしれません。
新型コロナウィルスの量が
体内でどのように変化しているのか?
その点については
基本的には発症から7日までの間の
重症化していない患者さんに対しては、
ウィルスの量は2桁から3桁減っています(1)。
従って、
細胞内でRNAが増殖し指数関数でウィルスが増えることが考えられますが、
それよりも抗体なども含め免疫機能の抗ウィルス性が勝っている
ということになります。
ただ、
結果的に重症化した人と軽症、無症状で済んだ人と
ウィルスの量、その推移を見た時に
どのような違いがあるかという点は気になります。
実際に症状が出てから20日程度までの
新型コロナウィルスのRNAウィルス量を
散布図として示したデータがあります。
(参考文献(2) Fig.1(b)より)
そのデータを見ると発症から時間が経つと
少なくとも増加傾向はなく、減少傾向にありますが、
減少においてその相関係数はそれほど高いものではありません。
従って、バラつきが大きいです。
発症2~6日目くらいの時期では
ウィルス量が10^3~10^9(RNA copies/.a.u)と約6桁も個人差があります。
また上述した人から人への感染のリスクが下がるとされる
発症から10日前後でも10^2~10^8(RNA copies/.a.u)
こちらも6桁くらいのウィルス量のばらつきがあります(2)。
従って、初期のウィルスの量と
発症してからのウィルス量の推移が
その後の新型コロナウィルスの症状
(無症状、軽症、中等症、重症、あるいは後遺症の度合い)
これらに影響を与えるか?
この点については詳しい疫学調査の余地があると思われます。

自然な考察の中では、
体内のウィルス量が数桁多くなると
それに対する体の反応はそれに応じて高くなると考えられ
免疫の調整も難しくなると考えられます。
そういった視点から
初期の段階でウィルスを「迅速に」減らすことは
新型コロナウィルスに対するリスクを下げる可能性がある
という考えにつながります。

D.M. Weinreich氏ら医療、研究グループは
入院の必要のない軽症の患者ではありますが、
感染初期(陽性確認から72時間以内)に
新型コロナウィルスの2種類の抗体を投与することで
それをしなかったグループに対して
ウィルス量がどのように変化するか比較しています(1)。

//条件//-----
-----
(抗体)
REGN-COV2 
casirivimab (REGN10933) imdevimab (REGN10987) 
これら2種類混合
開始時に投薬
-----
(年齢)
18歳以上
-----
(場所)
アメリカ
-----
(期間)
2020年6月16日~8月13日
-----
(人数)
275人
-----
(比較条件(1))
REGN-COV2 low dose 92人(以下 low)
REGN-COV2 high dose 90人(以下 high)
placebo 偽薬 93人 (以下 none)
--
(比較条件(2))
①開始時抗体反応なし(Sero-negative)
②開始時抗体反応あり(Sero-positive)
それぞれに対してlow、high、noneで比較

①の条件は液性免疫が十分に働いていない状態なので
初期症状であることの裏付けであり、
初期での介入の評価について見識を与えるものである
と考えられます。
従って、Sero-negativeで比較することがより重要です。
--
(比較条件(3))
開始時ウィルス量依存(一桁ごと評価)
>10^4、>10^5、>10^6、>10^7
それぞれに対してlow、high、noneで比較

ウィルス量が高いほうが基本的にはリスクが高いと考えるならば、
>10^7以上において外部の抗体投入の有無について
その推移を評価することに意味があります。
--
比較条件(1)-(3)に対して
3日後、5日後、7日後に評価
(参考文献(1) Figure 2より)

//結果、考察(追記)//-----
Sero-positiveではREGN-COV2(混合抗体)投入有無の比較において
開始3日までは抗体を入れることで
ウィルス量の低下が見られますが、
5日後、7日後では抗体の投入有無による差はなくなります。
-----
Sero-negativeではREGN-COV2(混合抗体)投入有無で
7日後まで差が現れます。
high doseの方が差が大きいですが、
low doseでも効果があります。
7日後のウィルス量の比較では
有無の差においては(10^-0.59~10^-0.71)程度差があります。
最抗体をいれないで内的な免疫だけに委ねた群に対して
High doseで外部の抗体の力を借りた群では
「19.5%(約5分の1)」程度のウィルス量になっています。
--
⇒抗体がまだ形成される初期の段階で
外部から抗体による医療介入を行った場合には
7日間のウィルス量の推移において
優位にウィルス量を減らすことができる可能性が高いということです。
-----
ウィルス量が多いほうが
外部から抗体を入れることの相対的な効果が大きくなっています。
初期に>10^7以上のウィルス量があった群では
10^-1.75~10^-1.84の差があります。
この場合、dose量に応じた効果は見られません。
少ない量でも効果があるということです。
上述した差は
「1.4%」つまりおおよそ1/100程度に減少します(2桁落ち)。
--
⇒感染してから一気にウィルス量が増えたり
感染時に多くのウィルスに晒されてウィルス量が多い状態の人は
おそらくその後の疾患に対するリスクは高いと思われますが、
そういう方に対して、抗体が十分に出る前の初期の段階で
外部から効果的な抗体を入れた場合には
感染確認から7日間の間で
ウィルスの量を顕著に減らせる可能性が高いということです。
-----
(ウィルスの量の推移)
抗体を入れない場合も
感染確認から7日間の間でウィルス量は2桁程度減っています。
ウィルスは指数関数的に増えると考えられますが、
それよりも自然免疫系の抗ウィルス性や
獲得免疫系の抗ウィルス性、あるいは抗体によって
自然な身体の応答して
「結果的に入院を必要としなかった軽症の患者さんに対しては」
ウィルスの減少が初期の段階で見られます。
しかし、
抗体の反応、自然、獲得免疫系の反応が遅く
重症化しやすい条件においては
「おそらく」発症初期にうまく層化、分類できれば
外部抗体であるcasirivimab、imdevimabの
「発症初期での」投薬は一定の奏功を示す可能性があります。
-----
(副作用)
偽薬と比べて目立った副作用はありません。
また関連性に関わらず確認された割合も各グループで2人以下と
3%を下回る水準なのでリスクは小さいと考えられます。
-----
(一回以上、調子が悪く通院した人の割合)
Sero-negative:5%(low)、3%(high)、15%(none)
Sero-positve:3%(low)、0%(high)、2%(none)
--
⇒Sero-negative、抗体反応が感染確認時になかった人は
抗体を入れることによってウィルス量の相対的な現象が
みられましたが、
それが症状に対してある程度関連性を持っている可能性がある
というデータとなっています。
数が少ないので比較が難しい状況ですが、
割合としては1/5程度となっており、
ある程度の症状としての治療優位性も示されていると考えます。

//追記//-----
発症初期のウィルス量をどうやって定量化するか?
それが重要になります。
RT-PCR検査でも陽性、陰性の有無だけではなくて
ウィルスRNAコピー量の絶対値が出てくると理解しているので
その値が大きく、かつ
高齢、あるいは基礎疾患があり
リスクが高い方においては
感染初期の極めて早い段階で迅速に
抗体の投入を検討することが治療の中で
重症化を防ぐために今後重要になるのではないかと思います。
中等症、重症病床は限られており
非常に多くの医療スタッフが1人当たり必要である事
感染防止のために隔離や精神的な負担がある事
他の手術や診療に影響がある事
また、今実際に日本で1億2千万人いるなかで
600人程度の重症患者で
医療の状況が逼迫状況、崩壊の危険性を招いていることから
酸素補充が少なくとも必要な
中等症、重症化をどう防ぐかが喫緊の課題です。
現場の医療の方は
結果的に中等症、重症になった人を集中的に治療することになります。
医療資源を考えても、
全ての感染者に細かく治療していくのが難しい状況です。
中等症、重症になってからは
酸素、栄養状態、水分量などの維持
薬による免疫の調整などを通じて
今は患者さんの回復を待つしかない状況なので
非常に治療が長期間に及び、難しい状況です。
従って、理想的には
「感染時に重症化しやすいデータを抽出して
その患者だけに対して早期に適切な治療を行う事」です。
その一助となると考えられるのが
「RT-PCRによるウィルス量の定量化」と
「年齢、基礎疾患」などの個別データです。
しかし、今のところそれが必ずしも重症化と関連性があるか
強い相関があるかというのは疫学的にわからない状態なので
比較的大きなスケールでの疫学データがほしいところです。
ただ、科学論文の報告は
早期の査読、審査過程を経たとしても半年くらいは遅れるので
見切り発車として
いくつかの項目でガイドラインを定めて
感染初期に積極的な治療を行う群を抽出することです。
前述したように抗体による治療は
副作用が比較的小さいですし
ワクチンのように健康な方に接種するのではなく
ある程度リスクがある人への治療なので
その天秤を考えると検討される必要がある事です。
ただし、注意が必要なのは
身体の液性免疫の機序を使って抗体を生み出す
ワクチンの場合は接種してから抗体が出るまでに
時間がかかるのであまり意味がないと考えられます。
この報告のように
直接的に抗体そのものを入れることが
「迅速性」という必要不可欠な観点で好ましいと考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
D.M. Weinreich, S. Sivapalasingam, T. Norton, S. Ali, H. Gao, R. Bhore, B.J. Musser, Y. Soo, D. Rofail, J. Im, C. Perry, C. Pan, R. Hosain, A. Mahmood, J.D. Davis, K.C. Turner, A.T. Hooper, J.D. Hamilton, A. Baum, C.A. Kyratsous, Y. Kim, A. Cook, W. Kampman, A. Kohli, Y. Sachdeva, X. Graber, B. Kowal, T. DiCioccio, N. Stahl, L. Lipsich, N. Braunstein, G. Herman, and G.D. Yancopoulos, for the Trial Investigators*  
REGN-COV2, a Neutralizing Antibody Cocktail, in Outpatients with Covid-19
The New Englnad Journal of Medicine December 17, 2020
DOI: 10.1056/NEJMoa2035002 
(2)
Roman Wölfel, Victor M. Corman, Wolfgang Guggemos, Michael Seilmaier, Sabine Zange, Marcel A. Müller, Daniela Niemeyer, Terry C. Jones, Patrick Vollmar, Camilla Rothe, Michael Hoelscher, Tobias Bleicker, Sebastian Brünink, Julia Schneider, Rosina Ehmann, Katrin Zwirglmaier, Christian Drosten & Clemens Wendtner 
Virological assessment of hospitalized patients with COVID-2019
Nature volume 581, pages465–469(2020)


0 コメント:

コメントを投稿

 
;