2020年12月7日月曜日

インフルエンザと比較における特徴的な病理

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

今、医療従事者の方、特に看護師の方は
大変な状況が続いています。
最後の砦として社会を支えて下さりありがとうございます。
私は医師免許や看護師免許を持っていないので
現場で治療の貢献をすることはできませんが、
こうやって毎日新型コロナウィルスの世界の情報を集めて
1日でも早い収束を目指して
自分の知的資源も加えながら情報共有する事が
一つとして私のできることだと思っています。
こうやって毎日情報を届けていることが
今一番大変な方たちの毎日の途切れることのない仕事に
何らかの貢献ができれば嬉しく思います。
新型コロナウィルスに関しては
科学論文だけを見ても相当な数の報告が連日報告されており、
産業界の動きも含めて考えると
世界がこれだけ社会問題を共有し、
その解決に向けて動き出したことはないと思っています。
私はその中で必ず収束できると確信しています。
そうなると問題は「それを1日でも早く」
という事だと思っています。
「時間は必要」という見方も一方ではありますが、
私は1日でも早く状況を良くして、
医療従事者の方だけに限らず、
多くの社会の方たちの不安や閉塞感を解消できるように動きます。
もちろん自分自身も不安を感じている一人です。
「ワクチン」の事ばかり言っていますが、
私はいろんな可能性を探っています。
治療薬の開発もそうですし、
今日話するインフルエンザワクチンもそうです。
あるいは治療の仕方もそうです。
また、今の新型コロナウィルスに対する医療によって
穴が開いた他の医療分野への応用もそうです。
私ができることを最大限するということです。
私は医療の現場で今一番大変な
看護師として働くことはできませんから。

新型コロナウィルスでは軽症、中等症から
一気に命を落とされる方がいると伺っていますが
重症になることを如何に避けるかが重要だと思っています。
それは患者さん目線だけではなく
今の述べた様に医療従事者の方に対してもそうです。
それを調整する政府、自治体の方に対してもそうです。
重症の患者さん1人に対して
多くの人的な資源を必要としますから、
それを避けるにはどうしたらいいか?
考えることが状況を良くする一つの道だと思っています。
新型コロナウィルスでは不思議な事があります。
重症化する人の特徴をみると
「良い、必要な免疫応答の遅れがある」
ということです。
例えば、免疫細胞で必要な
リンパ球であるT細胞、B細胞、NK細胞などの減少が
感染初期に見られる傾向にある事です。
あるいは、本日の記事で問題とする
インターフェロンの応答の遅れもあります。
それは
新型コロナウィルスの増殖速度についていけないのか?
新型コロナウィルスでは
それらの信号を特異的に抑制する何らかの機序が
細胞感染時の細胞の中であるのか?
少なくとも現時点では私自身未知ですが、
ここを考えることが
上述した新型コロナウィルスの重症化を防ぐうえで
一つの肝要な事であると認識しています。
一方、
同じ呼吸器系疾患、RNAウィルスであるインフルエンザウィルスでは
こういったインターフェロンの減少は見られない(1)
といわれています。
リンパ球に関してはさらに調査が必要ですが、
インターフェロンと重症化の関連性は
新型コロナウィルスよりも低いと言われています。
ここからは実際の複数の科学的な統計データが必要ですが、
インフルエンザワクチンの接種で
新型コロナウィルスに罹患した時の
インターフェロンの応答性について変化がないか?
という点が気になります。
オランダの報告なので日本のばあいとは違いますし
摂取するワクチンの種類も異なる可能性がありますが、
不活性化インフルエンザワクチンの摂取により
病院内での感染のリスクが下がったり、
サイトカインの反応が良くなったというのがあります(2)。
インフルエンザワクチンによって
逆効果というのは完全には否定できませんが、
一方で、インフルエンザに罹患する事の
医療機関への負担、罹患による体力の消耗などを考えると
その点だけでも接種は推奨されるものです。
しかし、
免疫学を専門とされる大阪大学の宮坂先生は、
インフルエンザワクチンの新型コロナウィルスに対する
一定の効果はある可能性があるという見解を示されています。
インターフェロンの応答の状況、
オランダからの報告などを考慮に入れ
また安全なインフルエンザワクチンが流布していることを考えると
リスクが高い方で未接種の方は特に
今からでも接種の検討をしてみていただきたいです。
一つの見方をすると
ワクチンの接種をして一定期間は必要ですが、
今の時期に接種すれば高い抗体量を流行期に維持できるので
インフルエンザに関しては少なくとも有効だといえます。

Ioanna-Evdokia Galani氏ら研究グループは
新型コロナウィルスに対してインフルエンザの状況と
比較しながら上述したインターフェンの応答も含めて
報告しています(1)。

新型コロナウィルスがインフルエンザや季節性コロナウィルス(風邪)
に診られない特徴として、発症までに長い時間を要する傾向にある
ということです。長い人で14日程度です(1)。
今述べたインフルエンザでは長い人でも4日程度、
重症になり肺炎になる場合でも3日以内である
とされています(1,3,4)。

病理的な特徴としては冒頭で述べた様に
インターフェロン(Ⅰ型、Ⅲ型)の分泌が発症初期で少ない
という事が挙げられています。
Ioanna-Evdokia Galani氏らの32人の患者さんのデータ
を症状が同程度であるインフルエンザ患者(さん)16人の
これらインターフェロンの分泌を比較すると
新型コロナウィルスでは
初期に関わらず発症1~25日に至るまで
ほとんど分泌が見られませんが、
インフルエンザでは3日以内に迅速な応答が見られます。
(参考文献(1) Fig.1(b)より)
このⅠ型、Ⅲ型インターフェロンは
ウィルスから体を守るうえで非常に大切な生理物質です。
・抗ウィルス性
・防御免疫応答のバランスを整える
・組織のダメージを最小化させる
これらが挙げられています(5-7)。

そういったインターフェロンの不足に関わらず
TNF,  IL-6,  IL-7,  IL-8,  IL-10,  IFN-γ,  CCL3 
IL-1β, IL-12, IL-23, CCL4 
これらのサイトカイン、ケモカインの上昇が見られ
炎症性の関与が考えられています(1)。
この中で
TNF、IL-6、IL-8は
過剰になれば炎症の原因となる好中球の増加や
リンパ球減少、系統的な炎症などとの
関連が指摘されています(8,9)。
IL-6、IL-10は
新型コロナウィルスの症状の程度と相関関係が高く
それを測るバイオマーカーとなっています(10,11)。

さらに動物のモデルは
Ⅰ型、Ⅲ型インターフェロンの応答が遅れると
免疫的な疾患、上皮組織修復の機能を阻害する
ことが知られています(12-14)。

また症状が軽い患者さんは
このようなインターフェロンの分泌不全、遅延は見られない
とされています(1)。

従って、インターフェロンⅠ型、Ⅲ型が
なぜ新型コロナウィルス特異的に、特定の患者さんで
分泌されない、あるいは遅れるのかを考えることが重要です。
一つは
高齢になるとNK細胞の数が減ります。
NK細胞は抗原認識をしないウィルスに共通に働く
自然免疫系で「免疫の初動」を担うといわれています。
これがインターフェロンの分泌と関りがあり
それが減るとインターフェロンの反応が悪くなることが
示唆されています(15)。
またIL-6はNK細胞の働きを阻害すると言われています(16)。
つまり、高齢でNK細胞の数が減っているにもかかわらず
IL-6でNK細胞の働きを阻害されると
ウィルスが侵入してもうまく応答しないということになります。
しかし、
なぜ新型コロナウィルスでそうであって
インフルエンザでは起きないのか?
その問いに対して解答を与えるものではありません。
従ってまだ未知の要因があります。

またそれはすでに分かっているので
インターフェロンに作用すると考えられる
Interferon beta-1aという薬が検討されていますが、
大規模な調査において薬効は発揮されていません(17)。

さらに特徴的なのは
インフルエンザでは病状が改善して
退院できるタイミングが比較的揃い、早期に実現されますが、
新型コロナウィルスの場合には患者さんによってばらつきがあり、
入院の期間が延びる人もいます。
1か月以上入院する人もいます。
(参考文献(1) Fig.5(a-c)より)
それも医療機関を逼迫させ、
医療従事者の方の負担につながる原因の一つです。

従って、IL-6というキーとなるサイトカインや
NK細胞など自然免疫系の初動を担う免疫細胞など
これらの元々の働きであったり、
新型コロナウィルスが示す特定の影響などを調べて
それに作用する薬剤を開発し、
「適切な時期に」治療することが求められると思います。
ただ、最も必要とされるのは
入院された後、早期に良い状態に回復する事であります。
おそらく相当な免疫系の乱れ、組織のダメージがあるので、
それに対する治療というのは
非常に困難であるという見解を今は持っています。

以上です。

(参考文献)
(1)
Ioanna-Evdokia Galani, Nikoletta Rovina, Vicky Lampropoulou, Vasiliki Triantafyllia, Maria Manioudaki, Eleftherios Pavlos, Evangelia Koukaki, Paraskevi C. Fragkou, Vasiliki Panou, Vasiliki Rapti, Ourania Koltsida, Andreas Mentis, Nikolaos Koulouris, Sotirios Tsiodras, Antonia Koutsoukou & Evangelos Andreakos 
Untuned antiviral immunity in COVID-19 revealed by temporal type I/III interferon patterns and flu comparison
Nature Immunology (2020)
(2)
Priya A. Debisarun, Patrick Struycken, Jorge Domínguez-Andrés, Simone J.C.F.M. Moorlag, Esther Taks, Katharina L. Gössling, Philipp N. Ostermann, Lisa Müller, Heiner Schaal, Jaap ten Oever, Reinout van Crevel,  View ORCID ProfileMihai G. Netea
The effect of influenza vaccination on trained immunity: impact on COVID-19
medRχiv doi.org/10.1101/2020.10.14.20212498
(3)
Taubenberger, J. K. & Morens, D. M. 
The pathology of influenza virus infections. 
Annu. Rev. Pathol. 3, 499–522 (2008).
(4)
Paules, C. & Subbarao, K. 
Influenza. 
Lancet 390, 697–708 (2017).
(5)
Galani, I. E. et al. 
Interferon-λ mediates non-redundant front-line antiviral protection against influenza virus infection without compromising host fitness. 
Immunity 46, 875–890.e6 (2017).
(6)
Davidson, S., Crotta, S., McCabe, T. M. & Wack, A. 
Pathogenic potential of interferon αβ in acute influenza infection. 
Nat. Commun. 5, 3864 (2014).
(7)
Andreakos, E., Zanoni, I. & Galani, I. E. 
λ interferons come to light: dual function cytokines mediating antiviral immunity and damage control.  
Curr. Opin. Immunol. 56, 67–75 (2019).
(8)
Galani, I. E. & Andreakos, E. 
Neutrophils in viral infections: current concepts and caveats. 
J. Leukoc. Biol. 98, 557–564 (2015).
(9)
Mangalmurti, N. & Hunter, C. A. 
Cytokine storms: understanding COVID-19. 
Immunity 53, 19–25 (2020).
(10)
Chen, G. et al. 
Clinical and immunological features of severe and moderate coronavirus disease 2019. 
J. Clin. Invest. 130, 2620–2629 (2020).
(11)
Liu, T. et al. 
The role of interleukin-6 in monitoring severe case of coronavirus disease 2019. 
EMBO Mol. Med. 12, e12421 (2020).
(12)
Channappanavar, R. et al. 
Dysregulated type I interferon and inflammatory monocyte-macrophage responses cause lethal pneumonia in SARS-CoV-infected mice. 
Cell Host Microbe 19, 181–193 (2016).
(13)
Broggi, A. et al. 
Type III interferons disrupt the lung epithelial barrier upon viral recognition. 
Science 369, 706–712 (2020).
(14)
Major, J. et al. 
Type I and III interferons disrupt lung epithelial repair during recovery from viral infection. 
Science 369, 712–717 (2020).
(15)
Agrawal A.
Mechanisms and Implications of Age-Associated Impaired Innate Interferon Secretion by Dendritic Cells: A Mini-Review
Gerontology 2013;59:421-426
(16)
David C. Fajgenbaum, M.D., and Carl H. June, M.D.  
Cytokine Storm
The New England Journal of Medicine 2020;383:2255-73.
(17)
WHO Solidarity Trial Consortium
Repurposed Antiviral Drugs for Covid-19 — Interim WHO Solidarity Trial Results
The New England Journal of Medicine  December 2, 2020,
DOI: 10.1056/NEJMoa2023184


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