いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
例えば、
新型コロナウィルスに対する治療においては
理想的にはウィルスが侵入してきたら、
・ウィルス株を自然免疫系が攻撃
・ウィルス株に抗体が結合
・ウィルス感染細胞を自然免疫系が攻撃
・ウィルス感染細胞を獲得免疫系が攻撃
・ウィルスで損傷した組織を修復
・ウィルスで損傷した遺伝子、細胞内器官を修復
・ウィルスで乱された代謝機能の修復
、、、、、
こういったことが考えられます。
それに対していろんなアプローチがあるのですが、
基本的にはウィルスが存在しているところや
それによって悪影響を受けた組織「だけ」に
作用してほしいというのがあります。
何にも問題のないところに
過剰に免疫機能が働いて
自己免疫疾患が患部局所に起きるように
通常細胞まで攻撃して炎症を起こしてしまう
という事は避けたいわけです。
ウィルスは体外から入るもので
良いものも、悪いものもありますが、
体外から入るという意味では薬も同じです。
もちろん薬はウィルスのように増殖はしませんが、
体外から入れて体内の機能に変化を与えるもの
という意味では同じです。;
それは食べ物でも同じです。
腸で消化されて血液に乗って全身に栄養素が運ばれ
代謝され組織の恒常性に貢献します。
例えば、
この時期、日本では鍋の季節ですが、
量が多くて「残してはいけない」と思って食べ過ぎたとします。
そうしたら体の調子はどうなるでしょうか?
食べた後は気持ち悪いし、
翌日も胃腸の調子がよくないことがあります。
これは、余分なものが体内に入って
身体の機能を良くない方向に改変しているともいえます。
ウィルスでも同じです。
新型コロナウィルスが100個くらいなら
全然問題ないですが、
それが1桁、2桁、数桁大きくなると
増殖の事を考えると問題になります。
数が多くなると体の異変が色んな所で起きます。
それは良いと考えられる薬でも同じです。
その量が増えれば副作用の懸念も高まります。
でもそうはいっても少ないと
効果が期待できないので
承認された薬には用量というのが定められています。
しかし、薬というのは
経口投与であれば、口から入って
食道を通って、胃腸などで消化されて
食べ物と同じように血液を通って、
例えば、肝臓や脾臓で代謝されることがあります。
でも、もしその薬が心臓に対するものであれば、
口、食道、胃腸、血液、肝臓、脾臓などを
通ることは必ずしも必要でしょうか?
もし、心臓に直接送ることができれば、
その用量は顕著に下げられるかもしれません。
つまり、「輸送ロス」が必ず存在します。
そういった薬というのは
試験管や動物実験で効果が確認されたものですから
人でも効果があるはずです。
でも、しっかり輸送されないことで
副作用が出たり、そもそもあまり届いていなかったり
という事も考えられます。
従って、薬の開発をより有効にして
さらに人に対する薬効、安全性を高めるためには
「効率的な輸送」というのは欠かすことができない
と考えています。
そのためには
投与した場所からできるだけ分解せずに
患部に効率よく近づいて、患部内で放出される
といったことが一つの理想としてあります。
しかし、
そういったことを実現するには
考えないといけないことが多くあります。
例えば、
消化器、循環器の流れであったり
臓器などによる薬の代謝、
患部近くの走化性、正の向性、Recuruitment
患部組織細胞への特異的結合、
細胞内外の透過性、Trafficking
、、、、
巨視的なことから微視的な事まで
細かく考えていく必要があります。
また、
薬が本当に運ばれているか確認するために
プロキシ、目印となる小さな物質を封入することも考えられます。
そういったことが可能になると考えられている事は
ナノ粒子による薬の輸送です。
Michael J. Mitchell氏らは、
「Engineering precision nanoparticles」についての
薬の輸送について総括しています(1)。
今日からいくつかのシリーズにわけて
その内容を詳しく読者の方と共有したいと思います。
その中には私の考察をもちろん加えながら記述していきます。
今述べた様にナノ粒子は精密医療において
一つの中核をなすことです。
精密医療とは「一人一人に合った診療を目指す」
ということです。
そこにはコスト、労力など
いろんな課題はありますが、
例えば、
「乳がんだからこの薬を処方します。」
といったことにはなりません。
その乳がんのタイプ、進行度を調べて、
患者さんの遺伝子、既往歴、年齢、体力など
様々な因子を考慮しながら
最適と考えられる薬を処方します。
今後は細胞性の薬も出るかもしれないですが、
それぞれの患者さんにあった細胞やナノ粒子を選んで
その中で薬剤師の方が専用の装置で調合して
そのようなものすごく小さな溶けるカプセルに入れて
薬ができるようになるかもしれません。
そういったイメージも精密医療にあると思っています。
従って、薬学だけではなく、
医学でも診断、処方における複雑性は上がる
と考えられます。
今述べた様なナノ粒子は
いろんな物質、薬を詰められる輸送体となり
その安定性、可溶性、輸送時間、膜貫通性などが
考慮されています。
そのような複数の基準を満たせば、
より安全で効率的な輸送、薬効が期待できます(2,3)。
FDAに承認されたナノ粒子の薬は古いものでは
骨髄腫、卵巣がんなどに処方できる「Doxil」が
Janssen社(さん)から
それは1995年に承認されています。
日本企業では血友病の治療薬「ADYNOVATE」が
武田薬品工業社(さん)により2015年に承認されています。
(参考文献(1) Table 1より)
しかし、
ナノ粒子をベースとした薬剤開発は
期待されているほどの成果を上げてきたわけではありません(1)。
なぜなら動物実験から人に応用する際に
結果の乖離、差異があるからです(4,5)。
その理由は色々調査は必要ですが、
一つとしては「体の大きさの違い」があると思っています。
マウスの体長は7cmです。
人の身長は海外の人ならば180cm
日本人男性ならば170cmくらいあるわけですから
25倍くらい違います。
ナノ粒子薬剤というのは輸送について考える部分が大きいので
マウスで効率的に輸送出来て
少ない量で高い薬効が得られたとしても、
人で同じように得られるとは
スケールの問題だけでも考えにくいです。
従って、アカゲザルやチンパンジーなど、
比較的人に体の大きさが近い動物で調べない事には
そういう点において条件は近づかないと思います。
あるいは、その大きさの違いを踏まえたうえでの
トランスレーショナル医療が必要だと思われます。
実際には、
病理、生理の違いがわかっていない事
またそれがどのようにナノ医療の影響するか
未知である事が挙げられています(6)。
身体の大きさなど空間的な事に加えて
身体の中のいろんな生理反応の違いが
ナノ粒子の分布、作用などに影響を与えると考えられます。
従って、前述したように
安定性、可溶性、輸送時間、膜貫通性などの要件に加え
細胞内外の任意の場所で反応性が高い、
また複雑な設計が必要になります(7-11)。
複雑な設計とは例えば、
--
患部に特異的に結合するようにナノ粒子の表面に
特異性、親和性の強い受容体を作製、
--
患部の周りに多く分泌されるケモカインに対して
引力、特異的結合性を持つ受容体の作製
--
そこに到達するまでに代謝されないような
ナノ粒子の材料選択、形状設計
--
注入位置の最適化による輸送距離の最小化
--
ナノ粒子にマーカー物質をつける
--
これらの事が考えられます。
精密医療に関しては
Precision Medicine Initiative (PMI)
というのが2015年に開始されました。
そういった中で
一人一人に合った治療という事ですが、
最終的にはそれが目標としてありますが、
まずは、患者さんの正確な層化、分類です(1)。
その中で適切な治療を目指しています。
そうした場合、ある程度の普遍性、不変性が求められます。
つまりある程度、治療としてガイドラインを決められ
薬もピンポイントではなく幅を持って投入できる
ということです。
そのためには複数のルート、薬効を示す
ナノ粒子薬剤を開発する必要があります。
ナノ粒子の薬剤、ナノ医療に期待されるところは
癌に対する治療、免疫療法、
あるいは生体内遺伝子治療です(1)。
例えば、生体内遺伝子治療では
病因となるは基本的には遺伝子異常であることが多いですし
特に幼少期に罹る病については
単一的遺伝子異常の傾向が強いと認識しているので、
そういった子供さんも含めた難病を抱えている人に
患部特異的に細胞内の遺伝子に働きかけて
遺伝子を正常の戻すような治療も考えられます。
その際には
ナノ粒子の中にCas9/gRNAを入れて
細胞内に特異的に輸送し
それらを放出して遺伝子編集を行うことも考えられます。
ここからどのようなナノ粒子があるか
その特徴、特性について情報共有したいと思います。
/脂質ベースナノ粒子(Lipid-based NPs)/
基本的に人の細胞膜は脂質で出来ているので
脂質ベースのナノ粒子というのは
元々体内に豊富にある細胞と同じ材質のものを
ナノ粒子、胞として使うという事です。
私は、
iPS細胞などの幹細胞などの応用も考えられると
想定しているので、
脂質ベースのナノ粒子の特徴というのは
細胞性薬剤の特徴と類似する部分があり、
その適用を考えるならば参考となるデータが多いです。
基本的な利点は
・易形成性
・自己形成性
・生体との高い互換性
・高い生体利用性
・最大荷重の高さ(詰め込める物質の選択性)
・物理化学特性を制御できる
これらが挙げられています(12,13)。
従って、
今FDAで承認されているナノ粒子薬剤の中で
この脂質ベースのものが一番多くなっています(14)。
その中で
リポソームというリン脂質を使うナノ粒子があります。
これは単層、多層のものがあります。
これらは
・親水性、疎水性などの水との親和性の制御
・親油性など脂との親和性の制御
これらが設計の上で可能になっています(15)。
従って、任意にゼータ電位を変えられるので、
輸送時に他の物質の付着を防ぐという目的も
特定の物質を積極的に着けるということも
果たせる可能性があります。
薬剤というのは
「外で調合して患部で働かせるもの」
というのがあるかもしれないですが、
「体内から必要なものを拾って届ける」
という事も考えられます。
少し大きいですが特定の免疫細胞を拾って
患部に届けて免疫療法するということも考えられます。
外で設計する場合に比べて任意性は落ちますが、
元々体内にあるものなので
自分の体との互換性が高く副作用が出にくい
という事も考えられます。
上の表面物理化学の任意性、制御性は
そういった可能性も示してくれます。
また
・サイズ、径・表面電荷・脂質の組成
・層の数・表面装飾(リガンド、ポリマー)
これらは安定性に影響を与えますが、
外で合成する際に調整できる要因です(16)。
リン酸を含まない脂質ベースのナノ粒子は
膠質で接着性が強いと言われています。
4つの種類があるといわれています
・イオン化脂質
エンドソーム放出を助ける
・リン脂質
ナノ粒子形状のため
・コレステロール
安定性と膜融合のため
・PEGylated脂質
安定性と易循環性のため
これらがあります(17,18)。
これは主に小さな粒子を想定しているので
遺伝子の元となる核酸などを運び、
個別的な遺伝子治療の応用が考えられています(19)。
しかしながら
脂質ナノ粒子は積載量が制限されることと
高い肝臓、脾臓での代謝、分解があります(14)。
以上です。
(参考文献)
(1)
Michael J. Mitchell, Margaret M. Billingsley, Rebecca M. Haley, Marissa E. Wechsler, Nicholas A. Peppas & Robert Langer
Engineering precision nanoparticles for drug delivery
Nature Reviews Drug Discovery (2020)
(2)
Kou, L. et al.
Transporter-guided delivery of nanoparticles to improve drug permeation across cellular barriers and drug exposure to selective cell types.
Front. Pharmacol. 9, 1–16 (2018).
(3)
Blanco, E., Shen, H. & Ferrari, M.
Principles of nanoparticle design for overcoming biological barriers to drug delivery.
Nat. Biotechnol. 33, 941–951 (2015).
(4)
Mitragotri, S. et al.
Drug delivery research for the future: expanding the nano horizons and beyond.
J. Control. Release 246, 183–184 (2017).
(5)
Wechsler, M. E., Vela Ramirez, J. E. & Peppas, N. A.
110th anniversary: nanoparticle mediated drug delivery for the treatment of Alzheimer’s disease: crossing the blood–brain barrier.
Ind. Eng. Chem. Res. 58, 15079–15087 (2019).
(6)
Hua, S., de Matos, M. B. C., Metselaar, J. M. & Storm, G.
Current trends and challenges in the clinical translation of nanoparticulate nanomedicines: pathways for translational development and commercialization.
Front. Pharmacol. 9, 790 (2018).
(7)
Anselmo, A. C. & Mitragotri, S.
Nanoparticles in the clinic: an update.
Bioeng. Transl. Med. 4, 1–16 (2019).
(8)
Wagner, A. M., Gran, M. P. & Peppas, N. A.
Designing the new generation of intelligent biocompatible carriers for protein and peptide delivery.
Acta Pharm. Sin. B 8, 147–164 (2018).
(9)
Culver, H. R., Clegg, J. R. & Peppas, N. A.
Analyte- responsive hydrogels: intelligent materials for biosensing and drug delivery.
Acc. Chem. Res. 50, 170–178 (2017).
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Matrix metalloproteinase-sensitive size-shrinkable nanoparticles for deep tumor penetration and pH triggered doxorubicin release.
Biomaterials 60, 100–110 (2015).
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(12)
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Nanotechnology-based drug delivery systems for the treatment of Alzheimer’s disease.
Int. J. Nanomed. 10, 4981–5003 (2015).
(13)
Sercombe, L. et al.
Advances and challenges of liposome assisted drug delivery.
Front. Pharmacol. 6, 286 (2015).
(14)
Fenton, O. S., Olafson, K. N., Pillai, P. S., Mitchell, M. J. & Langer, R.
Advances in biomaterials for drug delivery.
Adv. Mater. 30, 1705328 (2018).
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Sarfraz, M. et al.
Development of dual drug loaded nanosized liposomal formulation by a reengineered ethanolic injection method and its pre- clinical pharmacokinetic studies.
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The role of helper lipids in lipid nanoparticles (LNPs) designed for oligonucleotide delivery.
Adv. Drug Deliv. Rev. 99, 129–137 (2016).
(18)
Kulkarni, J. A., Witzigmann, D., Leung, J., Tam, Y. Y. C. & Cullis, P. R.
On the role of helper lipids in lipid nanoparticle formulations of siRNA.
Nanoscale 11, 21733–21739 (2019).
(19)
Berraondo, P., Martini, P. G. V., Avila, M. A. & Fontanellas, A.
Messenger RNA therapy for rare genetic metabolic diseases.
Gut 68, 1323–1330 (2019).
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