いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
今回、ファイザー社(さん)とビオンテック社(さん)から
供給される予定の新型コロナウィルスのワクチンは
mRNAを脂質ナノ粒子に組み込んだものです。
従って、治験最終段階を迎えているワクチンは
専用にエンジニアリングされている
と考えることもできます。
今後、このようなナノ粒子に包む方式においては
患部により効率的に輸送されるように
さらに高度にエンジニアリングされていくことになると想定しています。
この細胞特異的輸送系統の骨子の一つはそれです。
日本語で表現すると生体工学ということになります。
従って、医療・医学・薬学の分野ではありますが、
工学部や理学部の方の知識をお借りして
進めていかないといけない部分があります。
ゆえに主に薬に関わる薬学であっても
理工学部から重大な発見が生まれることもあると思っています。
このようナノ粒子はナノテクノロジーなので
理工学的な要素は強いと思っています。
昨日、そのナノ粒子の種類について
脂質ベースの情報を読者の方と共有しました(1)が
他にも違うタイプのナノ粒子があります。
/ポリマーナノ粒子(Polymeric NPs)/
ポリマーの一つの特徴は、
構造の自由度、制御性が非常に高いということです。
参考文献(1) Fig.2 polymericの欄をみれば
明解ですが、ナノ粒子というと
円形のボールを連想すると思いますが、
ポリマーにおけるナノ粒子は
それとは異質のものもあります。
例えば、上皮の上に存在する鞭毛のように
核の周りに糸状の線維が伸びているような構造
あるいはバネのような構造が周囲を覆っている構造
所々ひび割れしているような構造があります。
このように
周辺構造が連続的でないことによって
いくつかの特徴を生み出すできると考えられます。
例えば、血管中を流れる中で
周辺物質を「ほうきで掃くように」付着を阻害したり
することもできるかもしれないです。
実際に鞭毛がそういう役割があります。
あるいは、
その糸の目を粗くすることで
特定の大きさの物質を取り入れて運ぶことが
できるかもしれません。
実際に外で設計する際に
意図的に核の中にいれるのではなく
周りの糸に付着するように特定の物質を配置させて
輸送する形式の報告もあります。
基本的に平坦な形状のナノ粒子よりもポリマーの場合は
外に何らかの機能を持たせやすい構造が作れます。
ただ、一方で、
細胞特異的輸送系統のように
核、胞の周りに特定の受容体を形成したい場合においては
外の毛、糸が結合の上で邪魔になるので
それを入れる場合には
患部に近づいたときに何らかの特定の環境因子を
利用して周りの糸を離脱させるような
方式を組み込む必要があるかもしれません。
また、記述によると(1)、
ポリマーは親水、疎水コーティングができるので
それによって保護したり、循環時間を長くしたり
することが可能であるとされています(1)。
例えば、
癌の治療の臨床試験に進んでいるものもあります(2)。
上述した構造の中に
デンドリマーと呼ばれる高分子を使ったナノ粒子があります。
この構造は精緻に枝分かれするような構造で
複雑な3次元構造を構築することができるようです。
重さ、大きさ、形、表面化学特性など
高いレベルで制御できる(1)ために
事前にコンピューターで計算、設計して
よりカスタマイズされたナノ粒子を作ることができる
と考えます。
このデンドリマータイプのナノ粒子は
主に核酸や小さい分子などの輸送で応用されています(3,4)。
また、
・核酸の増殖・個別医療・局所ジェル・造影剤
これらにも応用されています(4-6)。
また
生体利用効率や粘膜での輸送性を高めるために
高分子電解質がナノ粒子の材料として使われることもあります(7,8)。
また
ポリマーナノ粒子の一般的な特徴として
・生体内で分解できる
・可溶性
・生体互換性が高い
・生体模倣性がある
・保存における安定性が高い
これらが挙げられています。
しかしながら、
一方で、生体内で凝集したり、毒性を示す可能性も
一方でデメリットしてあげられています(1)。
従って、こういったことも踏まえたうえで
今、多くの臨床試験が行われている最中です(9)。
/無機ナノ粒子(Polymeric NPs)/
無機の材料としては金、鉄、シリカなどをベースした
ものが種類として挙げられています(1)。
ナノ粒子の特性をいろいろカスタマイズできますが、
特徴的な事の一つとしては形です。
球状、ロッド状、星状、貝殻形状、籠形状
などが挙げられています(10)。
無機は特徴的な電磁気、光学特性を持っています。
例えば、金のナノ粒子では
表面にある自由電子の影響で
大きさや形によって自由電子の振動数が変わるために
光熱的な特異特性を与えると言われています(11)。
従って、光による生体内解析や熱による解析、
あるいはナノ粒子の周辺の温度などもわかる可能性があります。
例えば、
線維化している組織は周りよりも低温である
ということがわかれば、
「それは問題だよね。」ということになります。
これは同様に無機ナノ粒子の量子ドットでも同じです。
シリコンなどの半導体において量子ドットを形成し
そのドットの材料、大きさなどによって光学特性を
自在に変えることができます。
もちろん正確な大きさ、形、密度などの制御は必要ですが
潜在的には特定の光に対して反応を示すように
設計することができるため、
光透過性の高い特定の波長の遠赤外線に反応するようにつくれば
生体内にその特定の波長の遠赤外線を入れて
ナノ粒子が今どこにあるのか?ということを
非侵襲で比較的場所寛容的に見ることができるかもしれません。
一方、
酸化鉄を使ったナノ粒子は
無機材料によるナノ粒子ではFDAにより
承認されている薬の数が多いと言われています(12)。
あとは
磁気、放射線、表面プラズモンなどの
無機材料特異的な物理特性があるため
薬を運ぶという目的よりも
どちらかというと診断のための画像解析や
生体内の分析、光熱療法などに応用されることが
目的として多いと考えられています(1)。
従って、
脂質やポリマーなどの有機材料で薬を運ぶときに
このようなナノ粒子を同時に封入することで
その薬を積載したナノ粒子が
本当に患部まで運ばれているか?
またそのナノ粒子が到達したところの
患部の熱特性などの特徴の分析に使える可能性があります。
しかしながら、
無機のナノ粒子は不溶性であり、生体毒性の懸念があります。
特に重金属を使う場合は注意が必要です(13,14)。
(以上ナノ粒子の種類)---
ナノ粒子の輸送は単に薬剤を輸送して
そこで積極的に治療するという役目だけではありません。
例えば、癌治療のケースで
癌の微小環境、土壌、土台、基台として機能する
と考えられる血管の内皮構造において
ナノ粒子において特定のmicroRNAを輸送することで
癌組織の周りの血管形成状態を改変して
従来の癌治療の感受性、奏功を上げたという報告があります(15)。
従って、アドジュバント(補助治療)として
ナノ粒子を使うことも想定されています。
以上です。
(参考文献)
(1)
Michael J. Mitchell, Margaret M. Billingsley, Rebecca M. Haley, Marissa E. Wechsler, Nicholas A. Peppas & Robert Langer
Engineering precision nanoparticles for drug delivery
Nature Reviews Drug Discovery (2020)
(2)
Lee, S.-W. et al.
An open-label, randomized, parallel, phase II trial to evaluate the efficacy and safety of a cremophor-free polymeric micelle formulation of paclitaxel as first-line treatment for ovarian cancer:a Korean Gynecologic Oncology Group Study (KGOG-3021).
Cancer Res. Treat. 50, 195–203 (2018).
(3)
Xu, L., Zhang, H. & Wu, Y.
Dendrimer advances for the central nervous system delivery of therapeutics.
ACS Chem. Neurosci. 5, 2–13 (2014).
(4)
Mendes, L. P., Pan, J. & Torchilin, V. P.
Dendrimers as nanocarriers for nucleic acid and drug delivery in cancer therapy.
Molecules 22, 1401 (2017).
(5)
Kannan, R. M., Nance, E., Kannan, S. & Tomalia, D. A.
Emerging concepts in dendrimer-based nanomedicine: from design principles to clinical applications.
J. Intern. Med. 276, 579–617 (2014).
(6)
Menjoge, A. R., Kannan, R. M. & Tomalia, D. A.
Dendrimer- based drug and imaging conjugates:design considerations for nanomedical applications.
Drug Discov. Today 15, 171–185 (2010).
(7)
Cao, S.-J. et al.
Nanoparticles: oral delivery for protein and peptide drugs.
AAPS PharmSciTech 20, 190 (2019).
(8)
Tian, H. et al.
Uniform core- shell nanoparticles with thiolated hyaluronic acid coating to enhance oral delivery of insulin.
Adv. Healthc. Mater. 7, 1–12 (2018).
(9)
Anselmo, A. C. & Mitragotri, S.
Nanoparticles in the clinic: an update.
Bioeng. Transl. Med. 4, 1–16 (2019).
(10)
Yang, W., Liang, H., Ma, S., Wang, D. & Huang, J.
Gold nanoparticle based photothermal therapy: development and application for effective cancer treatment.
Sustain. Mater. Technol. 22, e00109 (2019).
(11)
Wang, J., Potocny, A. M., Rosenthal, J. & Day, E. S.
Gold nanoshell-linear tetrapyrrole conjugates for near infrared- activated dual photodynamic and photothermal therapies.
ACS Omega 5, 926–940 (2020).
(12)
Bobo, D., Robinson, K. J., Islam, J., Thurecht, K. J. & Corrie, S. R.
Nanoparticle- based medicines: a review of FDA-approved materials and clinical trials to date.
Pharm. Res. 33, 2373–2387 (2016).
(13)
Arias, L. S. et al.
Iron oxide nanoparticles for biomedical applications: a perspective on synthesis, drugs, antimicrobial activity, and toxicity.
Antibiotics 7, 46 (2018).
(14)
Manshian, B. B., Jiménez, J., Himmelreich, U. & Soenen, S. J.
Personalized medicine and follow- up of therapeutic delivery through exploitation of quantum dot toxicity.
Biomaterials 127, 1–12 (2017).
(15)
Wilson, R. A. et al.
MicroRNA regulation of endothelial TREX1 reprograms the tumour microenvironment.
Nat. Commun. 7, 13597 (2016).
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