いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
先日、大阪で初めて既往歴のある子供で
新型コロナウィルス感染で大阪の基準で
重度にあたる症状が所見されたというニュースがありました。
しかしながら、
日本においては少なくとも
10代以下の感染は確認されているものの
罹患して命を落とした人はいないと認識しています。
10代後半の大学生で後遺症がある人はいると伺っていますが、
全般的には症状は軽くすんでいます。
それは日本以外の世界でも言われている事です。
その理由はいくつか指摘されていますが、
(集団予防接種、独自の生理機序など)
私の知る限りにおいては
まだはっきりとしたことはわかっていないと認識しています。
しかしながら、疫学的には10代以下の人は
新型コロナウィルスのリスクが小さいことはわかっていますから
その理由を追究することは、
今後、新型コロナウィルスを収束させるにあたり
予期せぬ重要な発見につながることも否定はできません。
他方で、
今後ワクチンの接種が進められていきますが、
10代以下の人に対する(特に中学生以下に対する)
接種方法、時期、用量、種類などは
その世代特異的に考える必要があると思います。
ワクチン接種による副作用と副反応のリスク、
未接種で罹患した時のリスク、
社会的拡散のリスク、
そういった事を天秤にかける必要があると考えます。
Kevin W. Ng氏ら研究チームは
従来のコモンコールドなコロナウィルス(風邪ウィルス)
と新型コロナウィルスの液性免疫における交差性を評価する中で、
上述した「(中学生以下の)子供がなぜ軽症で済むのか?」
という問いに対して一定の見識を与えています(1)。
また、さらにそこから
「統一的な(ユニバーサルな)ワクチン開発」につながる
可能性がある事に対する示唆も与えています(1)。
本日は、それらについて
考察、追記しながら読者の方と情報共有したいと思います。
/(中学生以下の)子供が重症化しない理由について/
イギリスの数十人規模の調査によると
子どもは新型コロナウィルスのSタンパク質(S2ユニット)
に反応するIgG抗体を事前免疫として有している
割合が(若い)大人に比べて顕著に大きいことがわかりました。
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子供(1~16歳)48人
平均年齢14歳
血液採取:2011年/4月~2018年/12月
新型コロナウィルス感染なし(PCR)
そのうち
新型コロナウィルスIgG抗体と反応 21人/48人(43.8%)
--
大人(17~25歳)43人
平均年齢21歳
血液採取:2013年/2月~2020年/2月
新型コロナウィルス感染なし(PCR)
そのうち
新型コロナウィルスIgG抗体と反応 1人/43人(2.3%)
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その理由としては、
コモンコールドなコロナウィルスに
「繰り返し」罹患している事であると考えられています(2-7)。
年齢的にはやや「ズレ」がありますが、
イスラエルの調査では
0~10歳までのコモンコールドコロナウィルス(HCoVs)の
罹患率が50%程度で他の年齢の10%に比べてかなり高くなっています(5)。
(これはある任意の時期のウィルス保有率)
このような「液性免疫(抗体)の交差性」がなぜ認められるか?
というのは、
新型コロナウィルスのS2ユニットと呼ばれるタンパク質の部位の
コロナ系ウィルスにおける共通性が高いからである
とされています(1)。
つまり、他の部位であるS1ユニットは変わるけど、
S2ユニットはコロナウィルスの種類によって
構造があまり変わらないということです。
従って、
中学生以下の子どもは「常に」コモンコールドな風邪ウィルスの
共通性の高いS2ユニット抗体を持っているから
新型コロナウィルスにもそれが働き
それにより重症化しにくいことに繋がっているかもしれない
ということです。
では、なぜ子供は風邪ウィルスに罹りやすいのか?
例えば、
学校による集団生活だとすると
高校生、大学生でも学校に通います。
あるいは大人も会社に行きます。
従って、それで説明するのが難しいです。
そうすると考えられる他の理由は
「免疫システムの未熟さ」です。
子どもが風邪を引きやすいのは感染の経験が少ないために
記憶免疫細胞の多様性が低いからではないかと思われます。
つまり、
大人はいろんなウィルスや軽い疾患にかかっているので
抗体のように特異性はないかもしれないですが
トレーニングされた免疫によって風邪を抑え込めるということです。
従って、
子供は世の中に蔓延している
風邪ウィルスにかかりやすいわけですが、
繰り返しかかることで
そのコモンコールドなコロナウィルスに対する
「特異性」が上がっている状態である事と、
常に抗体がある事ではないかと考えます。
冒頭で述べた様に
子どもの時に受けるBCGなどの集団予防接種も挙げられていますが
新型コロナウィルスと類似性の高い
風邪ウィルスに頻繁に罹患していることが
実際にイギリスの調査で
顕著に高い割合でIgG抗体の反応性が見られたことに
関与していると推測されいます。
/統一的なワクチン開発について/
新型コロナウィルスのコロナの部分である
Sタンパク質は大きく分けて
「S1ユニット」「S2ユニット」と呼ばれる部分があります。
下側の根の部分が「S2ユニット」
上側の少し広がっている部分が「S1ユニット」です。
(参考文献(8) Fig.2(b)より)
通常、新型コロナウィルスに罹患した後、
あるいはワクチンを接種した後、
身体の免疫として出来る抗体で焦点があてられるのは
「S1ユニット」と呼ばれる部分に対する抗体です。
この部分がACE2受容体と結合して細胞内に入って感染するからです。
従って、ワクチンで任意に設計される時の標的は
このS1ユニットの受容体結合面です。
しかし、細胞内に入る機序は複雑で
「S2ユニット」も関与しています。
細胞膜と融合して、細胞膜を変形させて
細胞内に入る時に可塑的に働くとされています(8)。
実は、この機能を抑えるための抗体も産生され
獲得免疫として機能し、細胞感染を抑えるといわれてます。
従って、
新型コロナウィルスに感染した時には多くの種類の抗体が産生され
その中には「S2ユニット」に結合するものもあると考えられます。
そして、その「S2ユニット」は
上述したように根の部分であり構造的に安定なので
コロナウィルスの種類によって構造があまり変わらない、
共通性が高いと言われています。
従って、液性免疫における交差性を発揮しやすいと考えられます。
インフルエンザでも同じような例があります。
そのような「根」の部分の構造安定性を利用した
ワクチン接種の戦略が考えられています(9)。
インフルエンザは構造変化しやすく
ワクチンの効果にバラつきが生じやすいので、
ユニバーサルなワクチンが望まれています。
従って、
構造安定性の高いところに働く抗体を利用することの需要は高いです。
新型コロナウィルスでも
同様にS2ユニットのエピトープを標的としたワクチンを開発すれば、
それは風邪ウィルスにも効くし、
SARS、MARSにも効く可能性があるし、
今後、変異が起きた時のコロナウィルスにも効く可能性があります。
「交差性が高い」というのはそういうことです。
ただ、
繰り返し罹らないといけない(7)というのは
ひょっとすると抗体産生能力がS2ユニットは
インフルエンザの根の部分の抗体と同じように低いかもしれません。
従って、ワクチンでその部分を標的とする際には
いくつかの障壁がある可能性もあります。
実際に持続時間が短いかもしれないという指摘もあります(10,11)。
上述したことを踏まえると、
S2ユニットに着目したワクチン開発に対しても
これからインフルエンザのように続くとすれば
世の中としての需要はあると考えられます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Kevin W. Ng et al.
Preexisting and de novo humoral immunity to SARS-CoV-2 in humans
Science 11 Dec 2020: Vol. 370, Issue 6522, pp. 1339-1343
(2)
R. W. Aldridge et al., Wellcome Open Res. 5, 52 (2020).
(3)
R. Dijkman et al., J. Clin. Microbiol. 46, 2368 – 2373(2008).
(4)
A. T. Huang et al., Nat. Commun. 11, 4704 (2020).
(5)
Nehemya Friedman et al.,
Human Coronavirus Infections in Israel: Epidemiology, Clinical Symptoms and Summer Seasonality of HCoV-HKU1
Viruses 10, 515 (2018).
(6)
S. Nickbakhsh et al., J. Infect. Dis. (2020).
(7)
A. S. Monto et al., J. Infect. Dis. 222, 9 – 16 (2020).
(8)
Yuan Huang, Chan Yang, Xin-feng Xu, Wei Xu & Shu-wen Liu
Structural and functional properties of SARS-CoV-2 spike protein: potential antivirus drug development for COVID-19
Acta Pharmacologica Sinica volume 41, pages1141–1149(2020)
(9)
Raffael Nachbagauer, Jodi Feser, Abdollah Naficy, David I. Bernstein, Jeffrey Guptill, Emmanuel B. Walter, Franceso Berlanda-Scorza, Daniel Stadlbauer, Patrick C. Wilson, Teresa Aydillo, Mohammad Amin Behzadi, Disha Bhavsar, Carly Bliss, Christina Capuano, Juan Manuel Carreño, Veronika Chromikova, Carine Claeys, Lynda Coughlan, Alec W. Freyn, Christopher Gast, Andres Javier, Kaijun Jiang, Chiara Mariottini, Meagan McMahon, Monica McNeal, Alicia Solórzano, Shirin Strohmeier, Weina Sun, Marie Van der Wielen, Bruce L. Innis, Adolfo García-Sastre, Peter Palese & Florian Krammer
A chimeric hemagglutinin-based universal influenza virus vaccine approach induces broad and long-lasting immunity in a randomized, placebo-controlled phase I trial
Nature Medicine (2020)
(10)
K. A. Callow, H. F. Parry, M. Sergeant, D. A.
Tyrrell, Epidemiol.Infect. 105, 435 – 446 (1990).
(11)
P. K. Kiyuka et al., J. Infect. Dis. 217, 1728 – 1739 (2018).
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