2020年12月12日土曜日

レムデシビル+バリシチニブ併用療法の奏功

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

日本でのワクチンの接種は
おそらく早くても4月末くらいになるのではないか?
と推測しています。
もう少し前倒ししてほしいというのはあります。
ただ安全性の確認や手続きの問題はあると思います。
早くても春ですから
この冬はどうしても乗り越えないといけません。
まだ12月中旬ですから数か月あります。
その後の事もありますし、長期戦になりますから
医師、看護師、その他医療関係の方の中で
新型コロナウィルスの治療に当たられている方は
「休む」という事は大切になると思います。
そうはいっても、今の状況ですから医師の方の中には特に
休日返上で診察、治療されている方はいると思います。
私も休日返上でするという事になります。

情報として収集も漏れがありましたが、
2020年9月17日の日本イーライリリー社(さん)より
プレスリリースがあり、
バリシチニブとレムデシビルの併用療法によって
入院患者さんの回復までの期間を短縮したというのがあります。
すでに日本の医療機関では
採用されている病院もあると思いますが、
本日、The New England Journal of Medicine誌により
その報告について確認しましたので、
医療機関の方を含め、読者の方と情報共有したいと思います(1)。

レムデシビルは
細胞内のRNAの増殖を防ぐものなので
新型コロナウィルスの数にインパクトがあるのである
と認識しています。
しかし、その薬効については
ほとんどないか、確認されないとなっています(2)。

基本的な治療の方針としては
①ウィルス数を減らす事
②サイトカイン、ケモカインを含む免疫機能を調整する事
③炎症組織を回復させる事
この3つが満たされることだと思っています。
レムデシビルは①に関与しますが、
すでに中等症以上の患者さんの場合は、
抗体が多く出ているので、その中で
新たな細胞内の侵入は抑えられている部分もあるので
数としては落ち着いてきていて、
細胞内でそれを抑えても、
身体の状態に影響を与えるようなインパクトはないかもしれない
と考えることもできます。
一方で、症状としてはそうであって
ウィルスを減らすという事に関しては効果があるかもしれません。

それに対してバリシチニブは
Janus kinase (JAK) 1 and 2に作用して
interleukin-2, interleukin-6,  interleukin-10,  interferon-γ, 
granulocyte–macrophage colony-stimulating factor
に作用すると言われています(3-8)。
新型コロナウィルスでは
TNF,  IL-6,  IL-7,  IL-8,  IL-10,  IFN-γ,  CCL3 
IL-1β, IL-12, IL-23, CCL4 
これらの炎症性サイトカイン、ケモカインの減少がみられますから(9)
IL-6、IL-10、IFN-γに関しては
少なくとも作用が期待されますから
複数の炎症性サイトカインとの整合性が見られ
それら抑制に働いている可能性があります。
また、マクロファージは組織の修復(repair)に貢献する可能性もあり、
②の免疫機能調整だけではなく
③の組織の修復にも積極的に貢献する可能性もあります。
そのような作用機序を考え
①に期待できる病気の進行による抗体の産生や
細胞内で増殖を抑えるレムデシビルと併用することで
一定の奏功が期待できる部分があります。

以下、Adaptive Covid-19 Treatment Trial
ACTT-2 protocolによる参考文献(1)に示された
条件、結果を整理します(1)。

/条件/ 
----
(場所)
アメリカ55か所、シンガポール4か所
韓国2か所、メキシコ2か所、日本1か所
スペイン1か所、イギリス1か所
デンマーク1か所
従って、日本も参加しています。
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(用量)
レムデシビル
1日あたり100mg
初日だけ200mg
10日間で投与終了
--
バリシチニブ
1日あたり4mg
14日間で投与終了
----
(比較)
レムデシビル+バリシチニブ
レムデシビルのみ
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(人数)
レムデシビル+バリシチニブ併用
515人
レムデシビルのみ
518人
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(対象者)
中等症以上
4:酸素必要なし
5:酸素必要
6:高濃度酸素必要、もしくは人工呼吸器必要
7:人工呼吸器必要、もしくはECMO必要
(併用で最も効果があったのは程度6の患者さん)
従って
中等症以上の症状が確認されてからの調査になります。
-----
(実施期間)
2020年5月8日~7月1日
-----
(比較評価期間)
投与から29日間まで

/結果/
症状が5,6
つまり酸素が必要な中等症~重症の人において
併用療法が一番効果があります。
薬を処方してから
4日までは効果がでませんが
6日目くらいから差が出始めます。
(参考文献(1) Figure.2(C,D)より)
症状がそれより軽い4の人は
6日目くらいに多くの人が
どちらの治療でも退院するために
両者の差が現れない状態です。
(参考文献(1) Figure.2(B)より)
------
年齢別では
高齢の方、男性で効果が出やすくなっていますが、
これは症状と連動しているかもしれません。

/副作用/
併用の方が全体的な副作用は下がっています。
併用で比較の中で高いものは
Pulmonary embolism(肺塞栓)がありますが
0.8%なので薬の影響かどうかはわかりません。
例えば、
頻度が比較的高い
貧血、リンパ球減少、高血糖は
併用によって下がっています。
従って血液関連の副作用が減っています。
特にリンパ球減少は
免疫機能を大きく下げることになるので
その頻度が24人に対して11人に下がっている事は
顕著なメリットであると考えられます。
臓器疾患として懸念される
急性腎傷害も36人に対して20人と下がっています。
(参考文献(1) Supplementary material Table S11)

/追記/
レムデシビルが悪化させていないか?
という検証に関しては
参考文献(2)Figure2(A)からはない可能性が高いですが、
バリシチニブ単独でもよいのではないか?
という可能性は排除できるものではないと考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
A.C. Kalil, T.F. Patterson, A.K. Mehta, K.M. Tomashek, C.R. Wolfe, V. Ghazaryan, V.C. Marconi, G.M. Ruiz-Palacios, L. Hsieh, S. Kline, V. Tapson, N.M. Iovine, M.K. Jain, D.A. Sweeney, H.M. El Sahly, A.R. Branche, J. Regalado Pineda, D.C. Lye, U. Sandkovsky, A.F. Luetkemeyer, S.H. Cohen, R.W. Finberg, P.E.H. Jackson, B. Taiwo, C.I. Paules, H. Arguinchona, P. Goepfert, N. Ahuja, M. Frank, M. Oh, E.S. Kim, S.Y. Tan, R.A. Mularski, H. Nielsen, P.O. Ponce, B.S. Taylor, L.A. Larson, N.G. Rouphael, Y. Saklawi, V.D. Cantos, E.R. Ko, J.J. Engemann, A.N. Amin, M. Watanabe, J. Billings, M.-C. Elie, R.T. Davey, T.H. Burgess, J. Ferreira, M. Green, M. Makowski, A. Cardoso, S. de Bono, T. Bonnett, M. Proschan, G.A. Deye, W. Dempsey, S.U. Nayak, L.E. Dodd, and J.H. Beigel 
Baricitinib plus Remdesivir for Hospitalized Adults with Covid-19
The New England Journal of Medicine  December 11, 2020,
(2)
WHO Solidarity Trial Consortium
Repurposed Antiviral Drugs for Covid-19 — Interim WHO Solidarity Trial Results
The New England Journal of Medicine  December 2, 2020,
(3)
Stebbing J, Phelan A, Griffin I, et al. 
COVID-19: combining antiviral and anti-inflammatory  treatments.  
Lancet  Infect Dis 2020; 20: 400-2.
(4)
Richardson P, Griffin I, Tucker C, et al. 
Baricitinib as potential treatment for 2019-nCoV acute respiratory disease. 
Lancet 2020; 395(10223): e30-e31.
(5)
Stebbing J, Krishnan V, de Bono S, et al. 
Mechanism of baricitinib supports artificial  intelligence-predicted  testing  in COVID-19 patients. 
EMBO Mol Med 2020; 12(8): e12697.
(6)
Sims JT, Krishnan V, Chang C-Y, et al. 
Characterization  of  the  cytokine  storm reflects  hyperinflammatory  endothelial dysfunction in COVID-19. 
J Allergy Clin Immunol 2020 September 10 (Epub ahead of print).
(7)
Cantini F, Niccoli L, Matarrese D, Nicastri  E,  Stobbione  P,  Goletti  D.  
Baricitinib therapy in COVID-19: a pilot study on safety and clinical impact. 
J Infect 2020; 81: 318-56.
(8)
Hoang TN, Pino M, Boddapati AK, et al.  
Baricitinib  treatment  resolves  lower airway inflammation and neutrophil re-cruitment in SARS-CoV-2-infected rhesus macaques.  
September  16,  2020  (https://www . biorxiv . org/  content/  10 . 1101/  2020 . 09 . 16 . 300277v1). preprint. 
(9)
Ioanna-Evdokia Galani, Nikoletta Rovina, Vicky Lampropoulou, Vasiliki Triantafyllia, Maria Manioudaki, Eleftherios Pavlos, Evangelia Koukaki, Paraskevi C. Fragkou, Vasiliki Panou, Vasiliki Rapti, Ourania Koltsida, Andreas Mentis, Nikolaos Koulouris, Sotirios Tsiodras, Antonia Koutsoukou & Evangelos Andreakos 
Untuned antiviral immunity in COVID-19 revealed by temporal type I/III interferon patterns and flu comparison
Nature Immunology (2020)


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