いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
血液は、生命活動に必要な栄養素(酸素、鉄など)や
身体の機能恒常性に必要な免疫機能(白血球など)などを
毛細血管を含めて全身にくまなく流れることによって
供給、維持しています。
身体の一つの大きなネットワークとも言えると思います。
実際に血液を通して小胞、たんぱく質、DNAなどの
様々な物質が一定の走化性を持って
運搬されていると考えています。
その血液の元となる造血系幹細胞、前駆細胞は
一生のうち一兆個の血液系細胞を生み出すとされています(1)。
仮に一定で100年だとすると
1年で100億個の血液系細胞が生み出され、
既に存在する一部が入れ替わっているということになります。
そのような造血系の幹細胞、分化細胞の系統は
生命活動において動的で活発ですが、
その個体発生の機序についてはよくわかっていない
と考えられています(2)。
Sophia G. Espanola氏ら研究グループは
ゼブラフィッシュにおいて
造血系幹細胞の発展、再生の機序を考える上で
大切となる物質を特定して
その物質を欠損させたときに
どのような下位プロセスが生じるか調べました(1)。
それによると
supt16hという物質が
造血系幹細胞、前駆細胞の形成に関わっている
ことを確かめました。
このsupt16hは
Facilitates chromatin transcription (FACT) complex
と呼ばれクロマチン転写に関わる複合体です。
具体的な機能としては
・RNAプロメラーゼ2をクロマチンに接続させること(3)
・RNAポリメラーゼ2に転写活性を与えること(4,5)
これらがあります。
これを欠損させると上述した転写機能が損なわれ
造血系幹細胞、前駆細胞の発展に必要な
Notch信号のレベルが下がります。
この時、クロマチン自身の構造可変性が高まる
のではなく、p53という遺伝子が
特異的な構造可変性、構造変化が現れました(1)。
このp53とNotch遺伝子の関連性が示唆されています。
phc1というNotch信号を弱める機能を抑制すると
supt16hが欠損した状態でも
Notch信号と造血系幹細胞、前駆細胞の表現型の欠損が
回復しました(1)。
これらのことから
supt16h, p53, phc1
これらがNotch信号の変化を通して
造血系幹細胞、前駆細胞の活動性を制御していると
考えられています(1)。
p53が過剰に発現されるとphc1発現クロマチンと結合して
phc1の発現量を増加させます。
それによってNotch信号が弱められるので
その上流過程にあるsupt16hがp53の適正制御を乱す
一つの因子になっています。
p53というのは変異があると
高い割合での癌の罹患と関係があるとされています。
従って、非常に重要な遺伝子で
遺伝子の安定性、転写の制御
エピジェネティックな改変に置ける関与が認められています(6-8)。
Notchシグナルは造血のための重要な信号である
という事は知られています。
このNotch受容体は細胞膜貫通タンパク質から成り、
信号の発生源となるリガンドタンパク質が
この受容体に結合すると
受容体の細胞内の一部の部位が切断されて
細胞内の核に移動します。
そうした流れで細胞の機能に関わりますが
機能としては細胞分化のための遺伝子制御を行います。
従って、
造血幹細胞、前駆細胞が適切に分化するためには
このNotchシグナルは欠かせないということです(9-11)。
受容体への結合は
他の細胞に発現したリガンドが結合する様子が
描かれているので細胞同士のシグナル伝達
という形式も考えられるということです。
Notchシグナルの受容体、リガンドは
造血系幹細胞、前駆細胞においても複数あります
(受容体)
notch1a、notch1b、notch2、notch3
(リガンド)
deltaA、deltaB、deltaC、deltaD、dll4、
jag1a、jag1b、jag2
/考察/
参考文献(1)の研究結果における
ゼブラフィッシュの実験では、
Notchシグナル、p53、supt16h、phc1の
どれが乱れても他の要因に影響があり
p53、Notch信号などは
幅広い範囲で極めて重要な役割を担っていますが、
生体内のそれらの関連系統が
それほど脆弱なものではないと推測する部分があります。
仮に外的な刺激によって
どれか一つの要因が擾乱を受けたとしても
それを補うような生態機序もあるのではないか
と考えます。
もしそうであれば、
その様な相互補完的な要素を含めて考えると
最終的には人の健全な細胞形成を強く維持するために
どうすればいいか?という事に貢献すると考えます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Sophia G. Espanola, Hyemin Song, Eunjin Ryu, Aditya Saxena, Eun-Sun Kim, Jennifer E. Manegold, Chanond A. Nasamran, Debashis Sahoo, Chang-Kyu Oh, Cara Bickers, Unbeom Shin, Stephanie Grainger, Yong Hwan Park, Lauren Pandolfo, Mi-Sun Kang, Sukhyun Kang, Kyungjae Myung, Kimberly L. Cooper, Deborah Yelon, David Traver & Yoonsung Lee
Haematopoietic stem cell-dependent Notch transcription is mediated by p53 through the Histone chaperone Supt16h
Nature Cell Biology (2020)
(2)
Bertrand, J. Y. et al.
Haematopoietic stem cells derive directly from aortic endothelium during development.
Nature 464, 108–111 (2010).
(3)
Hondele, M. et al.
Structural basis of histone H2A–H2B recognition by the essential chaperone FACT.
Nature 499, 111–114 (2013).
(4)
Saunders, A. et al.
Tracking FACT and the RNA polymerase II elongation complex through chromatin in vivo.
Science 301, 1094–1096 (2003).
(5)
Hsieh, F.-K. et al.
Histone chaperone FACT action during transcription through chromatin by RNA polymerase II.
Proc. Natl Acad. Sci. USA 110, 7654–7659 (2013).
(6)
Vousden, K. H. & Lane, D. P.
p53 in health and disease.
Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 8, 275–283 (2007).
(7)
Levine, A. J. & Berger, S. L.
The interplay between epigenetic changes and the p53 protein in stem cells.
Genes Dev. 31, 1195–1201 (2017).
(8)
Beckerman, R. & Prives, C.
Transcriptional regulation by p53.
Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 2, a000935 (2010).
(9)
Kumano, K. et al. Notch1 but not Notch2 is essential for generating
hematopoietic stem cells from endothelial cells.
Immunity 18, 699–711 (2003).
(10)
Kim, A. D. et al.
Discrete Notch signaling requirements in the specification of hematopoietic stem cells.
EMBO J. 33, 2363–2373 (2014).
(11)
Clements, W. K. et al.
A somitic Wnt16/Notch pathway specifies haematopoietic stem cells.
Nature 474, 220–224 (2011).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスで重症になったときに現れる
深刻な症状として肺炎があります。
そうではなく軽症でも咳の症状が現れます。
咳には喉当たりの不快感によって出るものもあれば、
肺からこみ上げてくるような深い咳があるといわれています。
ただ、咳込むということにおいては
肺に対して一定の何らかの症状が出ている可能性もあります。
従って、
重症ではなくても肺に対する影響は無視できない
と考えられます。
肺に対して新型コロナウィルスが
どのような影響を与えているのか?というのを調べるときには
一つの方法としては、
人の肺から細胞を取り出して、
気管、気管支を含め肺胞などの細胞種を特定して
新型コロナウィルス感染時に影響の受けやすい細胞を
そこからさらに特定して、
その細胞に焦点を当てて、
新型コロナウィルスに感染した時の
細胞の機能の変化を分析することです。
しかしながら
そういった肺の各組織にある細胞が
どのような異種性を持っているのか?
というのはまだわかっていないとされています(1)。
そこでAmeen A. Salahudeen氏らは
人の肺胞、気管支などの細胞に対して
オルガノイドを形成することで細胞種を特定し、
その中で新型コロナウィルス感染において
影響の大きな細胞種を特定しました(1)。
読者の方が最も気になると考えられる
新型コロナウィルス感染性が強い細胞は
「SCGB1A1+ club cell」です。
気管支にあります。
/細胞種の特定/
-----
気管支(Club cell)
発現遺伝子:SCGB1A1+ SFTPC+(強め)
-----
上皮基底部(Basal cell)内腔、気道全体に分布
発現遺伝子:KRT5+、SCGB1A1+、SFTPC+
-----
肺胞(AT2 cell)
発現遺伝子:SCGB1A1+(強め)、SFTPC+
-----
(参考文献(1) Fig.1より)
新型コロナウィルスの細胞内感染に関わる
ACE2、TMPRSS2の発現は
気管支(Club cell)、
上皮基底部(Basal cell)、
肺胞(AT2 cell)
全てで見られますが、
気管支、肺胞の細胞が多くなっています。
(参考文献(1) Extended Data Fig.10aより),
上皮基底部のKRT5+ Basal cell
あるいは繊毛のあるAcTUB+ ciliated cell
これらでは新型コロナウィルスの感染が見られない
しかし、
2次元のALI培養では上気道部の繊毛細胞で
新型コロナウィルスの感染が見られたという
報告もあります(2,3)。
新型コロナウィルス感染性が強い細胞は
気管支の「SCGB1A1+ club cell」です。
この細胞は肺の多糖構造を保護する働きがある
と考えられているので
それを阻害する可能性があります(1)。
肺胞のSFTPC+ AT2細胞でも
新型コロナウィルスの感染が見られました。
/考察、追記/
肺の炎症には
結果的には免疫の乱れによって起こっていると
考えられていますが、
ウィルスを大気中から吸い込んだときに
肺胞、気管支は暴露される部位なので
大気中からの一次的、直接的なウィルス感染によって
それらの細胞が影響を受け、
それに対して肺炎などを引き起こしている可能性も
考えられます。
従って、
ワクチンを接種した時に
抗体が体のどこに分布するのか?
といった観点も重要になると考えられます。
例えば、気管、気管支、肺胞の
内腔、粘膜にも分布するのでしょうか?
以上です。
(参考文献)
(1)
Ameen A. Salahudeen, Shannon S. Choi, Arjun Rustagi, Junjie Zhu, Vincent van Unen, Sean M. de la O, Ryan A. Flynn, Mar Margalef-Català, António J. M. Santos, Jihang Ju, Arpit Batish, Tatsuya Usui, Grace X. Y. Zheng, Caitlin E. Edwards, Lisa E. Wagar, Vincent Luca, Benedict Anchang, Monica Nagendran, Khanh Nguyen, Daniel J. Hart, Jessica M. Terry, Phillip Belgrader, Solongo B. Ziraldo, Tarjei S. Mikkelsen, Pehr B. Harbury, Jeffrey S. Glenn, K. Christopher Garcia, Mark M. Davis, Ralph S. Baric, Chiara Sabatti, Manuel R. Amieva, Catherine A. Blish, Tushar J. Desai & Calvin J. Kuo
Progenitor identification and SARS-CoV-2 infection in human distal lung organoids
Nature (2020)
(2)
Rawlins, E.L., et al.
The role of Scgb1a1+ Clara cells in the long-term maintenance and repair of lung airway, but not alveolar, epithelium.
Cell Stem Cell 4, 525-534 (2009).
(3)
Kathiriya, J.J., Brumwell, A.N., Jackson, J.R., Tang, X. & Chapman, H.A.
Distinct Airway Epithelial Stem Cells Hide among Club Cells but Mobilize to Promote Alveolar Regeneration.
Cell Stem Cell 26, 346-358.e344 (2020).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
考えると少し気持ち悪さがある方もいるかもしれないですが、
人の細胞の中にはミトコンドリアという生物もいますし
腸内には多くの細菌、古細菌、真菌などがいます。
それらが人の体の恒常性に貢献していると考えられます。
一方、
生物とはいえないですがウィルスも
身体の中に多く生息していると推測されています。
すでに知られているものもありますが、
まだ見つかっていない、認知されていない
人の体の常在するウィルスもいるかもしれないと
考えられています。
また、
インフルエンザや風邪ウィルスのように
空気感染を経て、度々人の体に侵入してくるウィルスもいます。
ウィルスは潜伏性が強く比較的静かなものもいると思うので
一般化は難しいかもしれないですが、
細胞内に侵入することで
細胞の機能や、体中をめぐる免疫機能に影響を与える
と考えられています。
例えば、
サイトメガロウイルス(CMV)というウィルスは
慢性的なヘルペスウィルスの一種で
人体に終生寄生するといわれています(2)。
日本では成人期での抗体保有率は
60~90%と高いといわれています(3)。
健常人では脅威とはならないと考えられていますが、
一方で
ナイーブT細胞の種類が歪められたり(4)、
T細胞、B細胞の機能が落ちたり(5)、
炎症性の仲介物質が増えたり(6)、
高齢者における健康状態に影響を与えたり(7)
している可能性が示唆されています。
他にも
どこにでもいるウィルスとして
ライノウィルス、エンテロウィルス、インフルエンザ
などが挙げられています(1)。
これらに常時さらされることで
身体の免疫機能に一定の偏りが生じている
という事は考えられると思います。
それが上述したような悪い方向にいっているかどうかは
わからない部分があります。
例えば、
インフルエンザに今まで何度も罹患したことで
逆に免疫機能が刺激されて機能が高まる
ということも一方では考えられます。
こういったウィルスに対する既往歴は
今、問題になっている新型コロナウィルスに対して
罹患した時の症状の度合いに影響を与えると考えられます。
一般的に他のウィルスが
特定のウィルスに対して免疫に影響を与えることを
「交差性」と呼ぶと理解しています。
Ellen Shrock氏らは
190人の血液によるDNAによる抗体タンパク質の分析することで
以前から存在する他のコロナウィルスと
新型コロナウィルスの抗体における交差性を評価しています(1)。
/参考文献(1)内容、結果/
新型コロナウィルスに罹患する前から
ある程度、新型コロナウィルス特異的な免疫は存在していますが、
当然、罹患後は抗体の特異性のレベルは一気に上がります。
アメリカの調査では、
一般に風邪ウィルスと言われる
コモンコールドなウィルス
HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1に対する
抗体における免疫の程度は個人差がありますが、
その抗体保持が必ずしも新型コロナウィルスに対する
抗体における事前免疫とは連動していません。
一方、
新型コロナウィルスによる罹患で
コモンコールドなウィルスに特異的な抗体のレベルも
向上しており、一定の交差性が認められます。
(参考文献(1) Fig.1(D)より)
このことは、PCR検査で偽陽性が出る事と関係している
という指摘もあります(1)。
つまり、
新型コロナウィルスには罹患していないけど
類似する風邪ウィルスに罹ったためにできた抗体が
新型コロナウィルスのエピトープに反応し
それで陽性という診断になるということです。
コモンコールドなコロナウィルスはすでに
社会に存在していて、一定の類似性があるので
診断の中での難しさはあると考えます。
どこに閾値があるのか?ということです。
/考察/
実際には新型コロナウィルスに罹患した時の
他のコロナウィルスの交差性の評価では、
罹患して抗体が強く出ているときに評価しているので
構造に一定の類似性が見られる
他のコロナウィルスに対して交差性が認められる
という事だ考えます。
しかし、
新型コロナウィルスに罹患していない人が
事前免疫を持っているかどうか?を
「抗体に対して」評価するときには、
実際にコモンコールドの風邪ウィルスに罹患して
抗体がB細胞から強く放出されている段階で
新型コロナウィルスに対する交差性を評価しないと
---
新型コロナウィルス⇒コモンコールドコロナウィルス
コモンコールドコロナウィルス⇒新型コロナウィルス
---
という交差性の双方向性を平等には評価できない
と考えています。
その原因の一つとしては
抗体の放出は少なくとも3か月間くらいは保持される(7)
という評価もありますが、
その量の一定の低減がある程度短期間で認められます。
そうした場合に
より交差性の評価として重要になるのが
リンパ節の胚中心で主に形成される
コモンコールドな風邪ウィルスも含めた
コロナ系ウィルスに特異的なメモリT細胞とメモリB細胞、
あるいはNK細胞などリンパ球の機能において
類似性の高い新型コロナウィルスで交差性が認められるか
ということだと考えています。
「抗体の」交差性ではなく「免疫細胞の」交差性です。
これらの細胞の記憶は一般的に
抗体の体内の保持時間よりも長いと考えられるからです。
長く保持していると考えられる
新型コロナウィルス罹患前の免疫細胞の特徴と
新型コロナウィルス罹患後の免疫細胞の機動性と
症状の重さにおける関連性はどうか?
ということです。
つまり
以前にコモンコールドなコロナウィルスに
罹患したことがある人は
それに特異的な免疫細胞を保持していて
その細胞の記憶が新型コロナウィルスに罹患した時に
免疫機能の強化、迅速性に貢献するか?
ということです。
以上です。
(参考文献)
(1)
Ellen Shrock et al.
Viral epitope profiling of COVID-19 patients reveals cross-reactivity and correlates of severity
Science 27 Nov 2020: Vol. 370, Issue 6520, eabd4250
(2)
小杉伊三夫 (2010).
「[特集 ヘルペスウイルス(HHV1-8)のウイルス学] 3. サイトメガロウイルス(CMV)」.
ウイルス. 60 (2): 209-220.,
(3)
サイトメガロウイルス感染症 メルクマニュアル
(4)
P. Klenerman, P. R. Dunbar,
CMV and the art of memory maintenance.
Immunity 29, 520 – 522 (2008).
(5)
G. Pawelec et al.,
Immunosenescence, suppression and tumour progression.
Cancer Immunol. Immunother. 55, 981 – 986 (2006).
(6)
J. L. Craigen et al.,
Human cytomegalovirus infection upregulates interleukin-8 gene expression and stimulates neutrophil transendothelial migration.
Immunology 92,138 – 145 (1997).
(7)
Kening Li, Bin Huang, Min Wu, Aifang Zhong, Lu Li, Yun Cai, Zhihua Wang, Lingxiang Wu, Mengyan Zhu, Jie Li, Ziyu Wang, Wei Wu, Wanlin Li, Bakwatanisa Bosco, Zhenhua Gan, Qinghua Qiao, Jian Wu, Qianghu Wang, Shukui Wang & Xinyi Xia
Dynamic changes in anti-SARS-CoV-2 antibodies during SARS-CoV-2 infection and recovery from COVID-19
Nature Communications volume 11, Article number: 6044 (2020)
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
細胞分裂、増殖に関わる細胞内の染色体を保護することは
生命活動における恒常性を得るために必要だ
と考えられています(1)。
染色体の端にはテロメアと呼ばれる繰り返し構造を持つ
部位が存在し、そのテロメアが細胞の分化回数の
制限に関わっているといわれますが、
この繰り返し構造に
shelterinと呼ばれる
TRF1, TRF2, POT1, TPP1, TIN2, Rap1
の6つのサブユニットタンパク質混合物によって
上述した染色体の保護の少なくとも一部を実現している
と考えられています(2)。
その保護の具体的な機能としては
染色体の端の部分が融合することを防ぎます(1)。
これは細胞の生存能力を妨げたり
遺伝子の不安定性を誘発する事に繋がります(3)。
その中でTRF2という遺伝子でコード化されたタンパク質があります。
それが欠落すると
テロメアの保護の機能が著しく低下するという事は
以前から知られています(2)。
それは多能性幹細胞から分化した細胞では見られますが、
Marta Markiewicz-Potoczny氏らグループの調査では
TRF2タンパク質が欠損しても
すぐにテロメアの機能に関わる細胞の成長、分化能は
失われないことがわかっています(1)。
ただ、一定の低下はあります。
(参考文献(1) Fig.1(a)より)
それは多能性幹細胞であるES細胞には
TRF2が失われたときにはZscan4という遺伝子が働き
それによってコード化されたタンパク質が
冒頭で述べたテロメアの保護機能に貢献するからである
とされています(1)。
しかしながら、
この機能は少なくとも内的には
分化した後の多能性を失った細胞では確認されていません(1)。
基本的には
テロメアの伸張に関わるテロメラーゼ活性は
生殖細胞、幹細胞、癌細胞などでは保持されている
とされています。
通常の細胞ではテロメラーゼ活性が抑えられていますが、
このように正常性を保ちながらも
テロメラーゼ活性を幹細胞が維持するために
通常の細胞よりも
染色体やその一部であるテロメアを守る機序が
多層にわたり備えられているということかもしれない
と考えました。
以上です。
(参考文献)
(1)
Marta Markiewicz-Potoczny, Anastasia Lobanova, Anisha M. Loeb, Oktay Kirak, Teresa Olbrich, Sergio Ruiz & Eros Lazzerini Denchi
TRF2-mediated telomere protection is dispensable in pluripotent stem cells
Nature (2020)
(2)
de Lange, T.
Shelterin: the protein complex that shapes and safeguards human telomeres.
Genes Dev. 19, 2100–2110 (2005).
(3)
Artandi, S. E. et al.
Telomere dysfunction promotes non-reciprocal translocations and epithelial cancers in mice.
Nature 406, 641–645 (2000).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスに対して免疫ができる
というのは色んな意味合いがありますが、
大きな一つは新型コロナウィルスに
特異性を持つ抗体が体内にできることです。
罹患すれば自然に抗体ができますが、
ワクチンによってそれを作り出すこともできます。
そうした場合、次に気になるのが
その抗体の持続期間です。
1度、新型コロナウィルスに罹ったら
あるいはワクチンを接種したら
その効力はいつまで続くのか?
というのが気になります。
しかし、そのように罹患する、しないの
2分思考で考えることは実際に難しくて
罹ったとしてもその症状の程度はどうか?
という間の概念も存在します。
つまりワクチンを接種したら
罹患しても軽く済むのか、あるいは無症状で済むのか?
ということです
Kening Li氏らは
新型コロナウィルスに罹患した1850名の血液を
分析することで、抗体の量が発症から
どのように変わっているかというのを
詳細に評価しています(1)。
それによっていくつかの事が顕わになりました
/結果(1)と考察/
-----
少なくともIgG抗体については
一部の患者さんでは3か月程度の持続性が確認できます。
(参考文献(1) Fig.1(a)より)
-----
症状が現れて3週間程度は
中等症以下の症状の患者さんのIgM/IgG抗体の量が
重症の患者さんの量よりも多いが
その関係性はその後、逆転します。
これは65歳以上の高齢の方でも当てはまります
⇒
このことから重症の方、高齢の方の
免疫応答が遅いと考えられます。
-----
ウィルス量に敏感に免疫原性を示す
核タンパク質に特異的な抗体(2)の量が
65歳以上の高齢の方が若い人よりも多いです。
(参考文献(1) Table 2より)
⇒
このことから高齢の方は
体内のウィルス量が多いことが推測されます。
-----
またリンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞など)が
少ない人は好中球が多い傾向にある事が確認されました。
これは重症になる患者さんの傾向です(3)。
⇒
好中球は(相対的に?)多くなると
炎症性を示すと考えられています。
-----
最終的にPCRで陰性になった人は
陽性のまま人よりも抗体の量が2倍多いです。
⇒
抗体がウィルス量減少に貢献していると
考えられます。
/追記/
新型コロナウィルスにおいて
高齢のリスクの高い方など
あるいは結果的に重症になった方は
以前の報告からも示唆されますが、
免疫応答が遅いという事が挙げられます。
この結果では症状が出て三週間程度は
中等症以下の人は抗体量が高く
重症になった方は
1週間程度の遅れが出ると言われています。
新型コロナウィルスのワクチンを接種することで
罹患した時の抗体の生成が早くなるかどうか
というエビデンスは未知ですが、
リンパ球などの記憶性を考えると
あるいは同じ呼吸器系疾患を伴う
インフルエンザに対するワクチンの効果が
重症化を抑える効果があるといわれることから
その視点に立った分析が待たれます。
また、
治療においても重い症状が現れていない初期の段階において
特にリスクが高いと考えられる
65歳以上の高齢の方においては
しっかりしたモニタリングが必要になる
と考えられます。
さらには、
症状が比較的軽い段階で高い薬効を示す
治療薬の開発が待たれます。
(参考文献)
(1)
Kening Li, Bin Huang, Min Wu, Aifang Zhong, Lu Li, Yun Cai, Zhihua Wang, Lingxiang Wu, Mengyan Zhu, Jie Li, Ziyu Wang, Wei Wu, Wanlin Li, Bakwatanisa Bosco, Zhenhua Gan, Qinghua Qiao, Jian Wu, Qianghu Wang, Shukui Wang & Xinyi Xia
Dynamic changes in anti-SARS-CoV-2 antibodies during SARS-CoV-2 infection and recovery from COVID-19
Nature Communications volume 11, Article number: 6044 (2020)
(2)
Sun, B. et al.
Kinetics of SARS-CoV-2 specific IgM and IgG responses in COVID-19 patients.
Emerg. Microbes Infect. 9, 940–948 (2020).
(3)
Zhou, F. et al.
Clinical course and risk factors for mortality of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China: a retrospective cohort study.
Lancet 395,1054–1062 (2020).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
造血性前駆細胞が骨髄から分化することによって
赤血球や白血球などの血液細胞が作られますが、
白血球のうちリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)は
胸腺やリンパ節を通って発展し、
好中球に関しては脾臓、肝臓、肺などを介するとされています(1)。
リンパ系に関しては解剖図を見る限り
腸の周りの精緻に形成されていることから
特に胚中心で細胞の特徴が決まるものに関しては
距離的な関係から腸との関わりは大きいかもしれない
と考えている部分があります。
その腸の状態を決める重要な因子である
腸内細菌は発育や健康状態によって変わり、
その変化は免疫機能に影響を及ぼすとされています(2-4)。
従って、
腸内細菌と免疫機能の相関関係は
以前から指摘されていますが、
Jonas Schluter氏らは
造血幹細胞移植を受けた癌に罹患された方において
移植を受けた時に大きく変わると考えられる
白血球変化による免疫機能に対して
同じタイミングで腸内細菌がどう変わるか調べました(1)。
以前から、造血幹細胞移植は
腸内細菌にダメージを与えるかもしれない
という事は指摘されていましたが(5)、
今回、改めて移植のタイミングでの
免疫機能の変化と腸内細菌の変化の連動性が確認されました(1)。
それによると
移植により腸内細菌の多様性が大きく失われた
事が確認されました。
(参考文献(1) Fig.1(d)より)
しかしながら、
どの程度免疫機能や腸内細菌が乱されるかというのは
個人差があるとされています。
免疫機能と関連性が以前からしてされている(6)、
Faecalibacterium,
Ruminococcus 2
Akkermansia
これらの細菌の数の変化が確認されています。
これらは糞便による介入で
腸内細菌の多様性を上げるような介入をしたところ
好中球、リンパ球、単球の上昇が見られました。
(参考文献(1) Fig.2(b))
従って、
免疫機能と腸内細菌の
因果関係は一律に決めることはできず、
双方向性を持つと考えられています(1)。
従って、
ウィルスの感染、造血系の異常など
免疫系が乱れているときに
適切な腸内細菌のバランスを整える介入を
上述したことに限らず
飲食物などによるプロバイオティクスによって
行う事の効果も期待されます。
その場合は、介入を行った前後で
腸内細菌が本当に変化したかどうか?
の分析は欠かせないと考えられます。
(参考文献)
(1)
Jonas Schluter, Jonathan U. Peled, Bradford P. Taylor, Kate A. Markey, Melody Smith, Ying Taur, Rene Niehus, Anna Staffas, Anqi Dai, Emily Fontana, Luigi A. Amoretti, Roberta J. Wright, Sejal Morjaria, Maly Fenelus, Melissa S. Pessin, Nelson J. Chao, Meagan Lew, Lauren Bohannon, Amy Bush, Anthony D. Sung, Tobias M. Hohl, Miguel-Angel Perales, Marcel R. M. van den Brink & Joao B. Xavier
The gut microbiota is associated with immune cell dynamics in humans
Nature (2020)
(2)
Olin, A. et al.
Stereotypic immune system development in newborn children.
Cell 174, 1277–1292 (2018).
(3)
Lloyd-Price, J. et al.
Multi-omics of the gut microbial ecosystem in inflammatory bowel diseases.
Nature 569, 655–662 (2019).
(4)
Markey, K. A. et al.
The microbe-derived short-chain fatty acids butyrate and propionate are associated with protection from chronic GVHD.
Blood 136, 130–136 (2020).
(5)
Morjaria, S. et al.
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Infect. Immun. 87, e00206-19 (2019).
(6)
The Integrative HMP (iHMP) Research Network Consortium.
The integrative human microbiome project.
Nature 569, 641–648 (2019).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスの細胞感染に関わる
受容体で最も初期のころから発表されていたのが
ACE2という受容体です。
メディアでも「エース2」という呼び名で
紹介されることがあります。
しかし、
新型コロナウィルスのワクチン開発の中で
様々な抗体の評価を行っているところ、
このACE2受容体と結合する
新型コロナウィルスのSタンパク質の場所は
S1の「Cドメイン」という面と言われています(1,2)。
しかし、
モノクローナル抗体がこの「Cドメイン」と異なる
「Nターミナルドメイン」に結合しても
高い中和能を示すことからACE2との結合以外の
何らかのリガンド(物質)、受容体が関わっている
と想定されていました(3)。
最近の報告ではNRP1という受容体が
ACE2受容体とともに細胞表面で
新型コロナウィルスのSタンパク質と結合すると
細胞の感染力が高まると確認されています(4,5)。
このように複数の受容体が
細胞感染に関わっている事が考えられます。
Congwen Wei氏らは
「試験管による結果」で
HDLコレステロールと
その受容体「HDL-scavenger receptor B type 1 」
これが新型コロナウィルスの感染を増強させる可能性を
示唆しています(1)。
HDLコレステロールは健康診断による血液検査でも
評価項目となっているので、
身近に感じられる栄養素です。
実際に体の細胞においても生存のためには
コレステロールは必須であると言われています。
従って、
コレステロールを細胞内に取り込み
細胞内で栄養素として分解する仕組みが
備わっていると考えられています。
新型コロナウィルスはこのHDLコレステロール代謝の経路を
自身の細胞感染のために利用している可能性が示唆されています(1)。
具体的には
新型コロナウィルスのSタンパク質にコレステロールが結合して、
コレステロールがコレステロール受容体に結合して、
かつ新型コロナウィルスがACE2受容体に結合することで
感染増強が起きるということです。
これが試験管の結果で確認されています。
(参考文献(1) Fig.3(f)(g))
新型コロナウィルスはコレステロール受容体に
直接結合することができないので、
コレステロールがそれらを架橋するような構造になる
と考えられています(1)。
先ほど、コレステロールは体の細胞にとって
必要な栄養素であると述べました。
実際に上述した感染増強が確認された
「HDL-scavenger receptor B type 1 」
というコレステロール受容体とACE2受容体は
肺、腸、網膜、小腸、睾丸で少なくとも確認されています(1)。
実際にはリスク因子の一つである可能性がある
肥満や脂質代謝異常が起きると
通常はLDLコレステロールレベルが上がり
HDLコレステロールレベルは下がる
といわれています(6-9)。
従って、
LDLコレステロールも
新型コロナウィルスの細胞感染ルートに影響を与えるか?
ということも議論の余地があると思われます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Congwen Wei, Luming Wan, Qiulin Yan, Xiaolin Wang, Jun Zhang, Xiaopan Yang, Yanhong Zhang, Chen Fan, Dongyu Li, Yongqiang Deng, Jin Sun, Jing Gong, Xiaoli Yang, Yufei Wang, Xuejun Wang, Jianmin Li, Huan Yang, Huilong Li, Zhe Zhang, Rong Wang, Peng Du, Yulong Zong, Feng Yin, Wanchuan Zhang, Nan Wang, Yumeng Peng, Haotian Lin, Jiangyue Feng, Chengfeng Qin, Wei Chen, Qi Gao, Rui Zhang, Yuan Cao & Hui Zhong
HDL-scavenger receptor B type 1 facilitates SARS-CoV-2 entry
Nature Metabolism (2020)
(2)
Hoffmann, M. et al.
SARS-CoV-2 cell entry depends on ACE2 and TMPRSS2 and is blocked by a clinically proven protease inhibitor.
Cell 181, 271–280.e8 (2020).
(3)
Chi, X. et al.
A neutralizing human antibody binds to the N-terminal domain of the Spike protein of SARS-CoV-2.
Science 369, 650–655 (2020).
(4)
James L. Daly et al.
Neuropilin-1 is a host factor for SARS-CoV-2 infection
Science 13 Nov 2020: Vol. 370, Issue 6518, pp. 861-865
(5)
Ludovico Cantuti-Castelvetri et al.
Neuropilin-1 facilitates SARS-CoV-2 cell entry and infectivity
Science 13 Nov 2020: Vol. 370, Issue 6518, pp. 856-860
(6)
H Wei, M M Averill, T S McMillen, F Dastvan, P Mitra, S Subramanian, C Tang, A Chait & R C LeBoeuf
Modulation of adipose tissue lipolysis and body weight by high-density lipoproteins in mice
Nutrition & Diabetes volume 4, pagee108(2014)
(7)
Isomaa B, Almgren P, Tuomi T, Forsen B, Lahti K, Nissen M et al.
Cardiovascular morbidity and mortality associated with the metabolic syndrome.
Diabetes Care 2001; 24: 683–689.
(8)
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A prospective study of obesity and risk of coronary heart disease in women.
N Engl J Med 1990; 322: 882–889.
(9)
Mooradian AD, Haas MJ, Wehmeier KR, Wong NC .
Obesity-related changes in high-density lipoprotein metabolism.
Obesity 2008; 16: 1152–1160.
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
アメリカのファイザー社(さん)、モデルナ社(さん)に続き
イギリスのアストラゼネカ社(さん)も
第3相の中間報告でワクチン接種時の予防効果は
統計的にみて有意な差があったとされています。
これらのワクチンは、開発が成功すれば、
いずれも日本に供給予定で、
日本での治験を終了し次第、
日本でも接種を実施すると考えられます。
昨日の日本政府の発表では、
ここ2週間での感染状況を見て拡大が進むようであれば、
年末年始の事も考慮入れると、
緊急事態宣言を実施することも辞さない構えである
という声明を発表しています。
昨日、大阪のある看護師さんで
新型コロナウィルスの治療の当たられている方の
コメントをメディアでの取材を通じて伺いました。
その中で
「この状態がいつまで続くのか?」
ということを言われていました。
自然な収まりを見せる気配のない世界的な感染状況において
ある程度、制御できる程度の状況にするためには
ワクチンによる集団免疫の獲得は
必要不可欠であると私は考えます。
ワクチンによって病気を予防するだけではなく
「重症化」も防ぐことが期待されます。
感染しても「免疫の初動」がよければ、
症状が重くなることを防ぐことができると考えるからです。
重症化する前段階のプロセスで
免疫細胞であるリンパ球の減少が見らえれる
ケースが報告されているからです。
第3波に入って
東京医科歯科大学や聖マリアンナ医科大学など
関東の病院を始め、
新型コロナ病棟の様子が報道されますが、
重症化している患者さんには多くの機械を装着して、
多くの医療スタッフの方を要します。
従って、
もちろん感染対策は必要ですが、
仮に感染しても重症化しないことが大事です。
重症化を防ぐうえで、もう一つ大事なのは
罹患した後に投与する特効薬の開発です。
今のところ新型コロナウィルスに対して
特別な薬効を示す薬は存在しません(1)。
リパーポスによっていくつかの薬は存在しますが、
インフルエンザの治療薬のような薬効には
まだ届いていないと認識しています。
今、世界の大学や企業などにおいて
ワクチンと並行して薬の開発も進められています。
その薬の開発において
ある程度、人工的に化学物質を構成するのではなく
自然にあるものを利用するという方略もあります。
その中で植物を利用するというプロセスがあります。
植物は自ら移動できないため
昆虫、草食動物、病原体から身を守るため
多くの2次代謝産物を合成します。
それらの物質の一部は、植物の細胞に蓄積され
外敵が摂食した際に特定の作用を引き起こすことで
外敵から身を守ります(2,4)。
結果的にそのような防御機能を備えた植物が
進化、生き残ってきたと考えることもできます。
Kotaro Yamamoto氏ら研究グループは
ニチニチソウと呼ばれる熱帯に生息する植物が
合成するテルペノイドインドールアルカロイド
という物質が抗癌作用を持つことに着目しています(3)。
このように従来から
植物が生成する天然物の薬理効果が利用されてきました。
Hariprasad Puttaswamy氏ら研究グループは
多様な植物の2次代謝生成物の構造から
新型コロナウィルスの様々な病理プロセスのにおいて
薬理効果を示すかどうかを
コンピューターを使って検証しています(1)。
/計算条件/
4704種類の分子(代謝生成物)
植物203種類
/結果/
新型コロナウィルスの生体内の増殖に関わる各プロセスにおいて
それぞれそれに関わる物質の働くを抑制するための
結合に対する強さ(結合エネルギー)を評価しています。
(参考文献 Table 1より 下記第3位まで)
負の結合エネルギーが強いという事は
結合しやすく、離れにくいということです。
従って、より強い薬理作用が期待できるということだと
考えています。
-----
Spike protein
①Bismahanine ②Coagulin N ③Arecatannin A3
-----
RNA-dependent RNA polymerase (RdRp)
①Eriodictyol-7-O-rutinoside ②Narirutin ③Hippomannin A
-----
Human transmembrane serine protease (TMPRSS2)
①Glycyrrhizic acid ②cis-Miyabenol C ③Proanthocyanidin A2
-----
Main protease (Mpro)
①Hypericin ②Amentoflavone ③Terflavin B
-----
以上です。
(参考文献)
(1)
Hariprasad Puttaswamy, Hittanahallikoppal Gajendramurthy Gowtham, Monu Dinesh Ojha, Ajay Yadav, Gourav Choudhir, Vasantharaja Raguraman, Bhani Kongkham, Koushalya Selvaraju, Shazia Shareef, Priyanka Gehlot, Faiz Ahamed & Leena Chauhan
In silico studies evidenced the role of structurally diverse plant secondary metabolites in reducing SARS-CoV-2 pathogenesis
Scientific Reports volume 10, Article number: 20584 (2020)
(2)
神戸大学 研究ニュース 2016/3/22
植物が薬理作用をもつ天然物を合成する過程を解明
(3)
Kotaro Yamamoto, Katsutoshi Takahashi, Hajime Mizuno, Aya Anegawa, Kimitsune Ishizaki, Hidehiro Fukaki, Miwa Ohnishi, Mami Yamazaki, Tsutomu Masujima, Tetsuro Mimura
Cell-specific localization of alkaloids in Catharanthus roseus stem tissue measured with Imaging MS and Single-cell MS
PNAS first published March 21, 2016; https://doi.org/10.1073/pnas.1521959113
(4)
Pichersky, E. & Gang, D. R. Genetics and biochemistry of secondary metabolites in plants: An evolutionary perspective.
Trends Plant Sci. 5, 439–445.(2000)
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
組織が損傷を受けた時にそれを治癒、回復するためには
幹細胞が一つとして必要であると考えています。
肝臓のように損傷を受けた時に大きく回復する臓器もあれば
そうではない臓器もあります。
あるいは
皮膚や筋肉など度々損傷を繰り返す部位もあります。
通常は細胞の分化回数に制限をかけるために
テロメアを短くし、それを伸張させるテロメアーゼという
酵素の活性を抑えた状態になっていますが、
幹細胞に関してはテロメアーゼ活性がある状態になっています。
従って、
幹細胞が多くあれば、組織の老化は
抑えられると考えることもできますが、
通常、幹細胞の体の中にある数はかなり少ない
といわれています。
おそらく回復の必要性によって臓器別、部位別で
細胞数に対する幹細胞の割合は異なると推測します。
このような事を考えると一つとして
歳を重ねた時に幹細胞の働きがどう変わるか?
というのを知ることは重要になります。
Laura García-Prat氏ら研究グループは筋肉の幹細胞が
幹細胞の正常な機能と不全がどのような因子によるか
ということと、
それに対する年齢の影響について調べています(1)。
身体の中にある幹細胞は通常は細胞としての機能は
休止しているといわれています(1)。
組織に損傷が生じるとそれを修復しようと
休止していた幹細胞の活動が活発化して
上述した筋組織であれば、
新しい筋組織を分化することによって形成して
また幹細胞自身の数を保つように自己更新して
組織としての修復を含めた恒常性を保ちます(2,3)。
しかしながら
幹細胞にも年齢があって老化が確認されています。
その中で組織の再生機能が弱体化し、
とりわけ度々再生を繰り返す筋組織においては
顕著な例として挙げられています(4,5)。
そのように幹細胞の再生の機能の程度は
様々な因子が関わっていますが、
筋組織の幹細胞の表面に現れている受容体としては
CD34が強い関連性を持っています(1,6-10)。
CD34が多い時には幹細胞として
通常の状態(genuine state)
それが少ない時には
不全の状態(primed state)となっています(1)。
CD34が多く、正常な時には
Dcn, Igfbp6, Notch3, Ryr3, Cd34
CD34が少なく、不全の時には
Myog (Myogenin), Tmem8c(Mymk;Myomaker), Actc1
これらの遺伝子が代表的に
それぞれ亢進していることがわかっています(1)。
また、
FOXタンパク質が老化と関わっている事は
以前から知られていますが(11-13)、
筋組織の幹細胞の機能に関わるFOXO1,3,4は
クロマチンのCD34を強めることがわかっています。
またこれらのタンパク質を欠落させると
Myogの遺伝子を亢進させることがわかっています(1)。
従って、
FOXタンパク質は少なくとも筋組織の
幹細胞の機能に関わっていて、
それが欠損すると幹細胞は機能不全になるということです。
また、幹細胞に関しては
細胞の成長や生死のサイクルに関わるAkt信号は
筋組織の幹細胞の機能を弱める可能性が示唆されています。
また
この信号はFOXOタンパク質と関係があります(1)。
従って、
幹細胞のAkt信号を抑える事と
FOXOタンパク質の機能を維持することは
幹細胞の機能を保ち、筋組織の再生能力を保持する上での
一つの治療戦略となります(1)。
マウスの実験において
年齢別に筋組織の幹細胞から発現する遺伝子の特徴を
分析して、その類似性を評価したところ、
高齢になっても一定の年齢までは
若い頃と類似性の高い遺伝子の発現が見られましたが、
後期高齢、老年になると
一気にその遺伝子の特徴が変わることがわかりました。
(参考文献(1) Fig.3(c)(d)より)
このことから
老年になると一気に幹細胞の機能低下が起こる事が
マウスの筋組織のケースで示唆されています(1)。
(追記)
人の寿命は今のところ最高で120歳くらいです。
100歳を超える人が多くなりましたが、
ある人が特異的に150歳や200歳まで生きることがないのは
ひょっとすると
超高齢になると上述したように
「一つとして」幹細胞の機能が
一気に変わるからかもしれません。
例えば、
皮膚の組織、細胞の状態の変化も
超高齢の方の外見から推測することもできます。
従って、
今回のマウスの筋細胞の結果が
他の臓器、組織の細胞
あるいは人でも同じように当てはまるか?
という研究は意味を持つと考えます。
(参考文献)
(1)
Laura García-Prat, Eusebio Perdiguero, Sonia Alonso-Martín, Stefania Dell’Orso, Srikanth Ravichandran, Stephen R. Brooks, Aster H. Juan, Silvia Campanario, Kan Jiang, Xiaotong Hong, Laura Ortet, Vanessa Ruiz-Bonilla, Marta Flández, Victoria Moiseeva, Elena Rebollo, Mercè Jardí, Hong-Wei Sun, Antonio Musarò, Marco Sandri, Antonio del Sol, Vittorio Sartorelli & Pura Muñoz-Cánoves
FoxO maintains a genuine muscle stem-cell quiescent state until geriatric age
Nature Cell Biology volume 22, pages1307–1318(2020)
(2)
Brack, A. S. & Rando, T. A.
Tissue-specific stem cells: lessons from the skeletal muscle satellite cell.
Cell Stem Cell 10, 504–514 (2012).
(3)
Feige, P., Brun, C. E., Ritso, M. & Rudnicki, M. A.
Orienting muscle stem cells for regeneration in homeostasis, aging, and disease.
Cell Stem Cell 23, 653–664 (2018).
(4)
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(5)
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Muscle stem cell aging: regulation and rejuvenation.
Trends Endocrinol. Metab. 26, 287–296 (2015).
(6)
Sidney, L. E., Branch, M. J., Dunphy, S. E., Dua, H. S. & Hopkinson, A.
Concise review: evidence for CD34 as a common marker for diverse progenitors.
Stem Cells 32, 1380–1389 (2014).
(7)
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Expression of CD34 and Myf5 defines the majority of quiescent adult skeletal muscle satellite cells.
J. Cell Biol. 151, 1221–1234 (2000).
(8)
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Cell Rep. 21, 1994–2004 (2017).
(9)
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CD34 promotes satellite cell motility and entry into proliferation to facilitate efficient skeletal muscle regeneration.
Stem Cells 29, 2030–2041 (2011).
(10)
Lee, J. Y. et al.
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J. Cell Biol. 150, 1085–1100 (2000).
(11)
Giampaolo Calissi, Eric W.-F. Lam & Wolfgang Link
Therapeutic strategies targeting FOXO transcription factors
Nature Reviews Drug Discovery (2020)
(12)
Morris, B. J., Willcox, D. C., Donlon, T. A. & Willcox, B. J.
FOXO3: a major gene for human longevity - a mini-review.
Gerontology 61, 515–525 (2015).
(13)
Singh, P. P., Demmitt, B. A., Nath, R. D. & Brunet, A.
The genetics of aging: a vertebrate perspective.
Cell 177, 200–220 (2019).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
日本の治療に当たられている医師の方の話によれば、
新型コロナウィルスの治療では
レムデシビルやデキサメタゾンの
「投薬のタイミング」が重要だ
と言われます。
レムデシビルでは重症化する前の段階で
投与する場合があるとされています。
その背景にあるのは
新型コロナウィルスが罹患した初期の段階と
重症化した後の症状が十分に出ている段階では
身体の応答が異なり、治療方針も同様に異なるから
だと考えられます。
後述するように感染初期では免疫機能が抑えられ
ウィルスが増殖して、肺などに炎症が生じ
症状が強く出る段階では免疫応答が強く出ると
考えられます。
免疫抑制剤であるデキサメタゾンは
免疫が抑えられている時に仮に投与されると
逆効果という事も考えられるので
その投薬のタイミングが重要だということです。
Wenmin Tian氏らは
新型コロナウィルスに罹患された方は
2つ段階があると考えており、
初めに免疫抑制の作用を受けて、
その後、臓器がダメージを受けて
サイトカインストームが生じることを
尿による詳細なたんぱく質の分析により明らかにしました(1)。
比較条件
①14人のPCR陽性:新型コロナウィルスに罹患
(9人が軽症、5人が重症)
②13人:新型コロナウィルス罹患ではない肺炎
③10人:健康状態
全体的な結果
1986種類のタンパク質のレベルが
①新型コロナウィルス罹患で②、③に比べて変化
/結果/
※初期の段階
リンパ球、血小板の減少を示すタンパク質
・tyrosine phosphatase receptor type C
・leptin
・tartrate-resistant acid phosphatase type 5
これらの減少
リンパ球、血小板の減少は新型コロナウィルス
罹患で確認されています(2)。
その他、それを補助するシステムである
・complement C3
・complement C1q
・subcomponent subunit C
・complement C1r subcomponent
・PZP-like alpha-2-macroglobulin domain-containing protein 8
これらが減少。
小食細胞、好中球、NK細胞、単球の減少
・ spleen tyrosine-protein kinase
これの減少。
これは免疫細胞が持つFcγR受容体を介した細胞の食作用
に関わる。
マクロファージ(単球)に機能に関わる
・apolipoprotein A-IV(APOA4)
・apolipoprotein E
これらの減少。
免疫細胞を引き付けるケモカイン
・C-C motif chemokine 14
・C-C motif chemokine 18
・C-X-C motif chemokine ligand 12
これらの減少。
単球、B細胞、T細胞に関するケモカインで
減少することでこれらの分布に影響を与えます。
・C-X-C chemokine receptor type 2
・signal transducer
・activator of transcription 3, 5B, and 6
これらの減少。
好中球、単球、T細胞の機能を抑制。
新型コロナウィルスで急性呼吸窮迫症候群が問題になります。
これは肺炎や敗血症などがきっかけとなって
重症の呼吸不全をきたす病気です。
これは肺胞のバリア機能が失われて、
浸透率が高まることが一つの大きなリスク要因である
と考えられています(3)。
このバリア機能は上皮細胞の表面近くに帯状に存在する
密着接合(Tight junction)に依存しています。
この密着接合性が悪くとなると
上皮組織のバリア機能が悪くなると言われています(4)。
この密着結合は他の臓器、
腸、腎臓、脳にもあると言われています(5,6)。
従って、これらの臓器不全とも関係すると考えられます。
このTight junctionの健全性を示すタンパク質
・TJ protein ZO-1, TJ protein ZO-2,
・claudin-2, claudin-3, claudin-11, claudin-19,
・Afadin, cingulin,
・protein crumbs homolog 3,
・cAMP-dependent protein kinase
・catalytic subunit alpha (PRKACA)
・Rho GTPase-activating protein 17
これらの減少が認められました。
(参考文献(1) Fig2(b)参照)
--------
新型コロナウィルスに罹患して、末期症状になると
サイトカインストームが生じると言われています(7-9)。
Wenmin Tian氏らによる調査でも
初期症状では免疫抑制が見られ
(参考文献(1) Fig.3(b))
末期では免疫活性が見られています。
(参考文献(1) Fig.3(c))
/考察/
考えられる治療方針としては重い症状が出る前の段階で
如何に免疫機能を引き出してあげるか?
ということになります。
肺炎などが生じ、重い症状が出た後は
単球、好塩基球、好中球、好酸球、リンパ球など
白血球が上昇して免疫機能が活性化していて、
それがTight junctionなど
組織の破壊につながっている可能性もあるので
基本的には免疫機能を制御しながら
回復を促すという事になるのではないかと思います。
重い症状が出ている場合には
ウィルス量の増加、
免疫機能が大きく乱れた状態
臓器の一部が不全になっている状態なので
基本的には薬剤によっても治療は難しくなる
と思います。
重い症状が出る前の段階で
如何に適切な処置ができるか?
ということが大切になると考えられます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Wenmin Tian, Nan Zhang, Ronghua Jin, Yingmei Feng, Siyuan Wang, Shuaixin Gao, Ruqin Gao, Guizhen Wu, Di Tian, Wenjie Tan, Yang Chen, George Fu Gao & Catherine C. L. Wong
Immune suppression in the early stage of COVID-19 disease
Nature Communications volume 11, Article number: 5859 (2020)
(2)
Luo, X. et al.
Prognostic value of C-reactive protein in patients with COVID-19.
Clin. Infect. Dis. https://doi.org/10.1093/cid/ciaa641 (2020).
(3)
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Pflug. Arch. Eur. J. Physiol. 469, 135–147 (2017).
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J. Clin. Invest. 30, 2620–2629 (2020).
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Immunosuppression for hyperinflammation in COVID-19: a double-edged sword?
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(9)
Mehta, P. et al.
COVID-19: consider cytokine storm syndromes and immunosuppression.
Lancet 395, 1033–1034 (2020)
いつも記事を読んでくださり、ありがとうごございます。
グルテンフリーという言葉は
おそらく世の中に広く普及していると思います。
グルテンという栄養素を含む食材を摂らない
ということです。
このグルテンに高い感受性を持って
そこから免疫機能が乱れ、腸の炎症を起こす疾患は
セリアック病といわれます。
世界では1.4%の罹患率というデータもあります(1)。
一般に欧米で多いと言われており、
日本ではそれよりも少ないですが、
食の欧米化によって今後増えるかもしれないと
危惧されています。
子どもも罹患します。
自己免疫疾患の一つで
グルテンアレルギーともいえるかもしれません。
グルテンは
小麦、ライ麦、大麦などに含まれるので
多くの食材に使われます。
従って、
それに対してアレルギーになることは
多くの食生活において制限を強いられることになり
生活の質を大きく落とすものです(1,3,4)。
また意図ししないグルテンの摂取も考えられます(5)。
グルテンを接種してしまったときの症状としては
その程度は異なるものの
・下痢・腹痛・貧血・骨粗しょう症
などが挙げられますが、
無症状の場合もあると言われています(6)。
主な対策としては
グルテンを摂らない、グルテンフリーの食生活です。
それを続けたとしても
患者さんの約30%は持続的な症状を経験し(7)、
60%はこの腸疾患が続くと言われています(8,9)。
/病理、機序/
酵素であるTG2がセリアック病の自己抗原として働き
アミド分解反応を促進させ
特異性を持つグルタミンの残基を
グルタミン酸に変換するといわれています(10)。
このような反応が腸の固有層(lamina propria)
(表層から、上皮/基質/「固有層」)でおき
上皮細胞のTight junctionが脆弱になることで
腸の上皮の浸透率が上昇すると考えられています(11)。
しかしながら、これは仮説の域を出ず
他の視点では、
このTG酵素によるアミド分解は
管の中で有る腸管腔(intestinal lumen)でも
起きているかもしれないと考えられています(12)。
いずれにしても
このようなアミド分解は
グルテンのペプチドと白血球の抗原(DQ2、DQ8)
の結合親和性を上げると言われています(13)。
従って、
DQ2、DQ8という白血球の型は
セリアック病のリスク因子と言われています(14)。
グルテンのペプチドと
免疫細胞である白血球が結合すると
そこで抗原認識し、
グルテンに特異的なCD4+T細胞を発現させ、
それがIFNγ、IL-21というサイトカインを分泌する(1)ことで
様々な炎症性免疫を誘発して、
腸の炎症を通じた様々な症状を引き起こすとされています。
このような機序は明らかになっているものの
グルテンを含む小麦に関しては
成分の中のグルテンのどの部位(エピトープ)が
白血球を抗原認識させ、
免疫機能を惹起するかというのはよくわかっていません(15)。
また、このような獲得免疫とは別に
自然免疫系統がどのように働くかわかっていません(1)。
しかし、
セリアック疾患を持つ方はIL-15が惹起されやすく
腸の粘膜のダメージの程度との相関性が見られるため(16)、
これを抑えることが一つの治療方針となっています(1)。
/治療方針/(参考文献(1) Fig.1 総観図)
------
(腸の内腔での治療)
①グルテンの隔離
グルテンが免疫的な刺激をする前に
腸内腔でグルテンを隔離する療法です。
そのためにグリアジンという
グルテンの中に含まれる水溶性の物質に抗体を付ける、
あるいは高分子接着剤を付けるというものです(1)。
薬剤:AGY、scFv、BL-7010
--
②ペプチダーゼ療法
グルテンを分解し、グルテンペプチドが小腸まで
届くのを最小化させる療法です(1,18,19)。
薬剤:AN-PEP, STAN1, ALV3
--
⑦腸内細菌による治療(プロバイトティクス)
腸内細菌のバランスを整えることで
・自然免疫(20)・免疫原性(21)
・腸の浸透率(22)
これらを改善させるように働きかけます。
例えば、
ビフィズス菌などの効果が
子どものケースで試されています(23-25)。
--
③浸透率を下げる
larazotide acetate(AT-1001 INN-202)
唯一フェーズ3まで治験が進んでおり
(NCT03569007)
細胞と細胞を繋ぐTight junctionを強化
組織の収縮に関わるアクチンを調整することによって
上皮組織の浸透率を下げ、
グルテンが組織の中にまで浸潤する事を
腸内腔、上皮細胞で防具ことが期待されています(17)。
------
(固有層での治療)
④TG2抑制
TG2は上述したようにアミド分解して
組織の脆弱化に起因するカギとなる酵素なので
この機能を抑制します。
薬剤:ZED1227
--
⑤グルテン免疫寛容化(Gluten tolerization)
自己応答的に働くT細胞
(例えば グルテン特異的CD4+T細胞)
を他の免疫機能を刺激することなく
その機能を抑制あるいは調整する療法です。
薬剤:NexVax2, TIMP-GLIA, Necator americanus, KAN-101
--
⑥IL-15抑制治療
セリアックに罹患されている方に上昇がみられる
IL-15の機能を抑えるために
IL-15の表面に現れている受容体に
モノクローナル抗体によって結合して
機能を弱める治療です。
薬剤:AMG 714, Hu-Mik-β-1,tofacitinib
各治療の薬剤による臨床段階は
参考文献(1) Table 2 Table 3に記載されています。
現状でフェーズ3が最も進んでおり
承認されている薬剤はありません。
現状ではGFD(グルテンフリー生活)による治療が
一番安全性が高いと言われています。
従って、
上述した治療はこの食事制限による効果を上回り、
かつ安全であるという事を
担保する必要があるとされています(1)。
細胞特異的薬剤輸送系統が貢献できる事としては
セリアック病に関わる物質の抗体に対して
病状が強く現れている場所特異的に
作用させるという事です。
これらの治療方針は独立で試されていますが、
それぞれが疾患の病理に関わるため
複数の経路で病気を場所特異的にコントロールする
ということが将来的には求められると考えます。
以上です。
(参考文献)
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いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスで問題となるのは
一つはウィルス感染による免疫機能の異常です。
重症の患者さんで最も頻繁に損傷として現れるのは
臓器の中では肺であると理解しています。
新型コロナウィルスは大気中から吸い込み
口腔、鼻腔、目、喉、気管、気管支、肺胞といった
呼吸器系気管の粘膜に接触して
最初に感染すると考えられます。
従って、
初期のウィルスの接触と関わる肺は
損傷を受けやすい臓器だと考えます。
ゆえに、
肺の免疫について基礎として詳しく知ることは重要になります。
Kyle J. Travaglini氏ら研究グループは
人において
解剖学的な観点も踏まえ、肺の各組織の細胞の種類
肺に働く、あるいは常在する免疫細胞の種類
免疫細胞を誘導するケモカインの種類について
詳しく調べています(1)。
その情報について整理して読者の方と共有したいと思います。
/リンパ球/
B細胞:血液90%/肺10%
血管内(intravascular) 数854(任意単位)
-
血漿細胞:血液10%/肺90%
リンパ節から分泌(Egress) 数189
-
CD8メモリ/エフェクタ細胞 血液80%/肺20%
リンパ節から分泌(Egress) 数1249
-
CD8ナイーブ細胞 血液80%/肺20%
リンパ節から分泌(Egress) 数2420
-
CD4メモリ/エフェクタ細胞 血液60%/肺40%
リンパ節から分泌(Egress) 数3139
-
CD4ナイーブ細胞 血液90%/肺10%
リンパ節から分泌(Egress) 数1063
-
NK-T細胞 肺100%
肺に誘引(Homing) 数387
-
NK細胞 血液40%/肺60%
リンパ節から分泌(Egress) 数6001
-
増殖型NK-T細胞 血液10%/肺90%
リンパ節から分泌(Egress) 数122
/顆粒/
好中球 血液40%/肺60%
骨髄から分泌(Egress) 数113
-
肥満細胞-好塩基球1 肺100%
肺に誘引(Homing) 数1396
-
肥満細胞-好塩基球2 肺100%
肺に誘引(Homing) 数552
/血小板/
巨核球 血液10%/肺90%
血管内(intravascular) 数40
/骨髄性/
マクロファージ 肺100%
肺に常在(Resident) 数14766
-
増殖性マクロファージ 肺100%
肺に常在(Resident) 数226
-
形質細胞様樹状細胞 血液50%/肺50%
骨髄から分泌(Egress) 数150
-
骨髄性樹状細胞1 肺100%
肺に誘引(Homing) 数141
-
骨髄性樹状細胞2 血液50%/肺50%
骨髄から分泌(Egress) 数273
-
IGSF21活性樹状細胞 肺100%
肺に誘引(Homing) 数288
-
EREG活性樹状細胞 肺100%
肺に誘引(Homing) 数142
-
TREM活性樹状細胞 肺100%
肺に誘引(Homing) 数159
-
CL活性単球 血液90%/肺10%
骨髄から分泌(Egress) 数2183
-
OLR1活性単球 肺100%
肺に誘引(Homing) 数207
-
NC活性単球 血液70%/肺30%
骨髄から分泌(Egress) 数831
-
Int活性単球 肺100%
肺に誘引(Homing) 数194
----------
(参考文献(1) Fig.2(a)参照)
これらを総観すると
サブタイプによって異なるものの
ある程度、バランスよく肺に免疫細胞は存在しますが、
B細胞、CD8T細胞、CD4T細胞については
血液に比率としては多く存在するので、
ウィルス感染時には、
これらの免疫機能を引き付けることが重要になる
と考えられます。
自然にそのような応答になるかもしれません。
特に、新型コロナウィルスの重症の患者さんは
感染初期のリンパ球(T細胞、B細胞を含む)が
減少している傾向がみられる(2,3)という報告もあります。
従って、
これらの細胞を抗体によってメモリ化させること
あるいは後述するように親和性、感受性の高い
ケモカインによって誘導することが考えられます。
免疫細胞表面には「Chamoattractant」である
ケモカインに対する受容体が存在します。
そしてその受容体にケモカイン(リガント)が結合します。
従って、
このケモカインが肺の組織から放出されたときに
その濃度勾配によって
免疫細胞が静電引力や特異的結合などを通して
肺に対して同様に濃度勾配ができると考えられます。
つまり、
ケモカインの密度が高い肺近くの空間では
それに親和性を示す免疫細胞が多くなるという考え方です。
前述したように
例えば、リンパ球減少が
感染初期で見られる時には注意が必要である
ということであれば、
感染初期の段階でリンパ球減少を確認して、
そのうえで有効にリンパ球を誘導するケモカインを
薬剤によって分泌を促すことが考えられます。
参考文献(1) Fig.3では
上で示した人の肺における各免疫細胞に対する
ケモカイン受容体のタイプ、結合するケモカイン(リガンド)が
示されています。
それを見ると受容体の型はほぼCXCR4ですが、
結合するケモカインは異なり、
リンパ球に対しては「CCL5」が
他の骨髄性などの免疫細胞に対して
特異的に多くなっています。
従って、
肺にリンパ球を作用させる時には
CCL5が一つ鍵となるかもしれません。
ただ、参考文献(2)によれば、
重症化した後ではリンパ球の数が軽症の方より増えています。
従って、
免疫機能を誘導するタイミングが重要になると思います。
症状が出た後で、免疫機能を誘導すると
逆効果という事も考えられます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Kyle J. Travaglini, Ahmad N. Nabhan, Lolita Penland, Rahul Sinha, Astrid Gillich, Rene V. Sit, Stephen Chang, Stephanie D. Conley, Yasuo Mori, Jun Seita, Gerald J. Berry, Joseph B. Shrager, Ross J. Metzger, Christin S. Kuo, Norma Neff, Irving L. Weissman, Stephen R. Quake & Mark A. Krasnow
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Jian Zhang, Qian Wu, Ziyan Liu, Qijie Wang, Jiajing Wu, Yabin Hu, Tingting Bai, Ting Xie, Mincheng Huang, Tiantian Wu, Danhong Peng, Weijin Huang, Kun Jin, Ling Niu, Wangyuan Guo, Dixian Luo, Dongzhu Lei, Zhijian Wu, Guicheng Li, Renbin Huang, Yingbiao Lin, Xiangping Xie, Shuangyan He, Yunfan Deng, Jianghua Liu, Weilang Li, Zhongyi Lu, Haifu Chen, Ting Zeng, Qingting Luo, Yi-Ping Li, Youchun Wang, Wenpei Liu & Xiaowang Qu
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(3)
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いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
今、医療現場の方々が問題視している一つの事は、
インフルエンザのように特効薬がないことです。
レムデシビルも世界保健機関(WHO)から薬効について
疑問視される声明が出されました。
あるいは、
欧米で流行初期に使われていた
マラリアの治療薬であるヒドロクロロキン
も思うような臨床実績が得られていません(1-6)。
しかし、
使われた背景にあるのは
試験管においては抗ウィルス効果があったからです。
一方で
ワクチンに関しては95%の予防効果があったという中間報告が
ファイザー社(さん)、モデルナ社(さん)
から出されています。
このような結果の違いは何によって生まれるのか?
ということを考えることは、
今後、罹患後の効果的な薬を開発する上で重要になります。
一つは、
レムデシビル、ヒドロクロロキンも
新型コロナウィルスに特化して開発されたものではありません。
従来薬の使用を認めた「リパーポス」によるものです。
それが一つとしてあるのだろうと思います。
もう一つは、
ワクチンは「細胞の外」で主に作用するものです。
細胞の外に存在するウィルス株に直接働きかけるものです。
しかし、
レムデシビルもヒドロクロロキンも
細胞の中での薬効が期待されるものであります。
この薬効を示す場所、ポイントが
「細胞の外か?内か?」という境界条件は
思いのほか大きいかもしれません。
細胞には脂質2重膜があります。
外から内に入るためには、
少なくともその膜を超えないといけません。
その経路としては細胞膜貫通受容体の変形を通じて
扉のように中に入ることもありますし、
受容体に結合して、そこからいくつかの信号を経て
細胞内で狙いの薬効を目指すということもあります。
しかし、
そのような段階を経ないといけないことは
いろんな難しさがあります。
---
一つは、「アクセス性」です。
感染細胞に特異的に薬剤が働く必要があります。
言い換えれば、通常細胞では働かず、
感染細胞だけで薬効を示す必要があります。
それを持続的に、安定的にする必要があります。
本当に体の大きな人において
薬剤が血液の循環に乗り、感染細胞まで有効に届くか?
そこに難しさがあります。
一方、
ワクチンの場合は、細胞の外に多くいるウィルスに
働きかければいいので、場所特異性が
感染細胞よりも小さくなるという事が考えられます。
それでも一定の走化性は求められますが、
組織に固定的に存在する細胞よりも
アクセス性においては有利だと考えられます。
---
もう一つは「臨床結果の解析の難しさ」です。
ワクチンの場合は、新型コロナウィルスに
抗体がしっかりついているかどうか?
というのは細胞の外のウィルスを選びだして
ウィルス膜の外にあるたんぱく質を
低温電子顕微鏡でみることができるので、
感染細胞の中にある複雑な生理機序を
構造として可視化するよりも容易であると考えられます。
人の感染細胞内にある特定のRNA、DNA、たんぱく質を取り出して、
構造を分析することは極めて難しいです。
もちろん、
ウィルスの場合も生体内から生体外
あるいは解析のために冷やすことを考えると
保存性の難しさはありますが、
細胞内で作用する薬の解析は
それをはるかに超える難しさがあります。
結果としてウィルス増殖を抑えられたというのは
試験管や生体内であると思いますが、
上述したように
試験管では抗ウィルス性があったのに
臨床では結果が得られなかった理由を考えるときには
試験管で起こっていることと
臨床で人の体内で起こっていることを
「構造的に」調べる必要性があります。
あるいは、感染細胞を類別して取り出して
同じような信号を出しているか?
ということも調べる必要があります。
それはおそらくワクチンの薬効の解析よりも
難しいと考えられます。
11月18日に大阪大学の研究情報から
「京都府立医科大学循環器内科学星野温助教、
大阪大学蛋白質研究所高木淳一教授、
微生物病研究所岡本徹教授らの研究グループは
新型コロナウイルスの受容体であるACE2タンパク
のウイルス結合力を100倍以上高めることに成功しました。」
(新型コロナウィルス中和タンパク製剤の開発について/より)
とあります(7)。
これはACE2受容体を模した100倍以上の結合性を持つ
タンパク質を細胞外でウィルスに結合させて
細胞感染を細胞外で防ごうというものと理解しています。
これを薬剤として使うことが想定されています。
ワクチンの抗体に近い発想ですが、
細胞外で働く薬剤というのは
上述したアクセス性や臨床結果も含めた詳細な解析の
ことも考えると適した治療法の一つと考えられます。
同じように
回復者血漿療法や
ワクチンを治療に使うという事も考えられます。
これらも細胞外で抗体を付けて
ウィルスの細胞内感染を防いでウィルスの増殖を防ぐというものです。
これらはFc受容体を刺激して免疫細胞に働きかける可能性もあるので
そういった解析をするにあたっても
薬として使うたんぱく質や抗体
あるいは免疫細胞のFc受容体は細胞の外にあるので
細胞内にある場合に比べて
解析の難易度は下がると考えています。
以上です。
(参考文献)
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Yusuke Higuchi, Tatsuya Suzuki, Takao Arimori, Nariko Ikemura, Yuhei Kirita, Eriko Ohgitani, Osam Mazda, Daisuke Motooka, Shota Nakamura, View ORCID ProfileYoshiharu Matsuura, Satoaki Matoba, Toru Okamoto, Junichi Takagi, Atsushi Hoshino
High affinity modified ACE2 receptors prevent SARS-CoV-2 infection
bioRxiv https://doi.org/10.1101/2020.09.16.299891
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスは膜の表面に様々なたんぱく質があります。
広く知られているのはSタンパク質という突起で
これが細胞内に入る時にACE2受容体に結合して
細胞内に入って感染すると考えられています。
そのSタンパク質以外にもMembraneタンパク質や
Eタンパク質(envelope protein)があります。
(参考文献(1) Fig.1(a)参照)
このEタンパク質は
2003年に流行したSARSのケースでは
子孫のウィルスの放出(ウィルスの増殖)
あるいは宿主細胞の炎症を活性化させると言われています(2)。
炎症を活性化させるという事は
炎症性免疫機能を誘発するという事も考えられるので
ウィルスが中に入ってタンパク質、DNA、RNAに変化をもたらす
ことで細胞内の代謝や生存サイクルに影響を与えたり
あるいはケモカインなどの分泌を変えることで
通常とはことなる免疫細胞の誘引となっていることが考えられます。
このようなEタンパク質の働きを抑制すること
あるいは、このたんぱく質を変異させることは
いくつかのコロナウィルスに対して
ウィルスの病原性、増殖率を弱めることが期待されます(3-5)。
Venkata S. Mandala氏ら研究グループは
新型コロナウィルスにおいてこのEタンパク質の構造、
かつ薬剤の結合部位を詳しく解析しています(1)。
このEタンパク質はホモ5量体の構造になっており
5つのらせん構造が中心の狭い空孔を囲うような
構造となっています。
それらはいくつかの芳香族によって
つながれ固定されています。
(参考文献(1) Fig.3より)
この端であるN terminus、C terminusが
ウィルスと宿主細胞にあるたんぱく質と相互作用させる
と考えられています(1)。
つまり、このEタンパク質の活性サイトは
両端のいくつかの結合部位にあるということだと
考えました。
またこのEタンパク質はインフルエンザと比べると
2倍近く水に対するアクセス性が低いと言われています(1,6)。
これが非共有結合的な疎水性相互作用、水素結合による
ウィルスとタンパク質との反応に影響を与えている
可能性を考えました。
また、ホモ5量体であるらせん構造がタイトに
つまり両者の距離が近く形成されている事が
広範な疎水性相互作用、水素結合を生じさせている
と考えられています(1)。
これはインフルエンザやHIVよりも強いとされています(1)。
/新型コロナウィルスのEタンパク質の特徴/
長さが4nm程度あり、
HIVのそれの2倍程度の長さとなっています(1,7,8)。
また
HIVはらせん構造が20°程度傾斜していますが(7,8)、
その傾斜度は新型コロナウィルスの場合低く
比較的直立性が高いと考えられます.
高い確率で極性を持っており、
中心の空孔部分の水和性が高いと言われています(1,6,9)。
らせん構造の構造的なダイナミクス性は高く
構造が比較的柔軟に変わるために
脂質との広範な相互作用を生んでいるかもしれない
と考えられています(1,10)。
Sタンパク質と同様に
クローズ状態とオープン状態があり、
それによって水和性の変化があり(1)、
pH、電荷、被膜組成、ウィルス、宿主タンパク質などとの
相互作用の強さが変わるかもしれません。
薬の標的としては陽イオン選択的イオンチャンネル
の活性を抑えることが挙げられています(11)。
このチャンネルは中央の空孔の部分にあるとされています(10,11)。
従って、
薬としては小さな分子が好ましいと考えられています(1)。
なぜなら空孔のくぼみの中に入る必要があるからです(?)。
薬を運ぶ場所としては、細胞内の小胞体、ゴルジ体などが
挙げられています。
そこにEタンパク質が運ばれるからです。
(参考文献(1) Fig.1(a)参照)
以上です。
(参考文献)
(1)
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(7)
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Oligomerization state and supramolecular structure of the HIV-1 Vpu protein transmembrane segment in phospholipid bilayers.
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(9)
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(10)
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(11)
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Conductance and amantadine binding of a pore formed by a lysine-flanked transmembrane domain of SARS coronavirus envelope protein.
Protein Sci. 16, 2065–2071 (2007)
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
免疫細胞の表面受容体を疾患治癒に特異性を持たせるように
特異的受容体を生体外でウィルスなどの導入によって
任意に設計するのを
CAR(キメラ抗原受容体)免疫治療
といいます。
これは生体内で出来る可能性があります。
免疫細胞にはFc受容体というのがあります。
単球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球など
様々な免疫細胞が特異的に持つFc受容体があります。
このFc受容体はB細胞が発現する抗体の
Fcドメインと親和性を持つので、
抗体のFabドメインはウィルスなどに結合しますが、
Y字型の底面の部分のFcドメインは
免疫細胞のFc受容体に結合します。
例えば、
マクロファージにウィルスの抗体がつくと
マクロファージの表面に現れる受容体に変化が現れます。
例えば、
CD40、CD80、CD60という型の
受容体が多く現れる場合があります。
(参考文献(1) Figure 1より)
実際にCAR-T細胞での白血病の治療では
CD19という受容体を特異的に発現するように体外で設計して
生体内にいれます。
もし、
抗体の設計によって
免疫細胞に結合した後の発現受容体の制御ができるならば、
生体内で任意の受容体を発現するような
免疫細胞を生み出せる系統を築ける可能性があります。
従って、
ワクチンのように抗体を設計して
それを体内に入れることで
生体内でCAR-免疫細胞を作るという事です。
もちろんiPS細胞で可能なように体外で純度を上げて
特定の受容体だけを発現するようにすることの効果の
ほうが高い場合もありますが、
体内で自然に形成するほうが良い場合もあるかもしれません。
抗体であれば、
必ずしも活性化したウィルスは必要ではありません。
参考文献(2)Fig.1には
各Fc受容体がどの免疫細胞に発現しているか
一覧できるようになっています。
例えば、
免疫機能で重要なT細胞は
Fc受容体の活性が低い状態なので、
樹状細胞などを介してT細胞の活性が高められる事はありますが(1)、
直接働きかける事は難しいかもしれません。
そうすると
CAR-T細胞には向かない可能性があります。
しかし、
NK細胞の場合はFcγⅢa細胞の発現が示されているので
抗体のFcドメインをこの受容体と整合させ
結合した後にNK細胞の表面に任意の受容体が
発現するように抗体を設計できるか?です。
従って、これを実現するためにはFc受容体を介した
免疫細胞の表面受容体のダイナミクスの機序を
正確に把握する必要があります。
以上です。
(参考文献)
(1)
Xiaojie Yu & Mark S. Cragg
Engineered antibodies to combat viral threats
Nature (2020)
(2)
Stylianos Bournazos, Aaron Gupta & Jeffrey V. Ravetch
The role of IgG Fc receptors in antibody-dependent enhancement
Nature Reviews Immunology volume 20, pages633–643(2020)
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスに罹患した際には、
ウィルス抗原をB細胞が認識して抗体が発現されますが、
その抗体は一種類ではありません。
質の良いものからそうでないものまで
多くの種類の抗体が放出されます。
その質を示す一つの指標は中和能と呼ばれる
新型コロナウィルスのSタンパク質が
細胞感染のための受容体と結合する面を
如何に効率よく蓋することができるか?
というものです。
その抗体は前述したようにB細胞から放出されますが、
そのB細胞は抗原認識によってメモリ化(記憶化)されます。
そこで
M. Alejandra Tortorici氏ら研究グループは
新型コロナウィルスに罹患した重症の患者さんが
回復した時にそのメモリB細胞を取り出し、
そこから特に質のよい抗体を選び出して、
その抗体の機能を詳しく調べました(1)。
抗体名:S2E12とS2M11
このうちS2M11はph5.4と酸性の状態で多く結合し
その酸性状態ではSタンパク質は結合活性が低い
「クローズな」配座(close conformation)であり(2)、
そのクローズは構造のまま結合して
構造を安定化させることがわかっています。
その時には抗体S2M11とSタンパク質の
エピトープ、結合部位が1か所ではなく
周りの部位とも静電引力で結合しているこおとがわかっています。
(参考文献(1) fig.3より)
一方、
S2E12は結合活性が高い
「オープンな」配座(open conformation)で
新型コロナウィルスのSタンパク質と結合することがわかっています。
その際、Sタンパク質が結合活性が高い状態で
構造変異があったと考えられます。
その時に生じたエピトープはよくわかっておらず
その部位に結合しているのではないか?
と考えられています(1)。
これらの質の良い抗体S2E12とS2M11は
新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に特異性が高く
2003年に流行したSARS-CoVには
Sタンパク質に対して結合性を示さない
ことがわかっています。
(参考文献(1) Fig.1(c-f)より)
また、
抗体がNK細胞を通して細胞傷害性を示す
(Ab-dependent cell cytotoxicity ACDD)
ことと
マクロファージを通して細胞食作用を示す
(Ab-dependentcell phagocytosis (ADCP)
ことが知られています。
この際、免疫細胞である
NK細胞、マクロファージの表面には
Fc受容体というのがあります。
この受容体に抗体が親和性を示して結合する
と考えられています(3)。
また、同様に
樹状細胞にも結合して、
その後、樹状細胞が細胞傷害性を示すCD8+T細胞を認識して
感染細胞に傷害性を示すことも考えられています。
この場合もFc受容体が関与します。
いずれの場合も
抗体のY字型の底面であるFc domainが結合に関与します。
(参考文献(4) Figure 1参照)
従って、
抗体は細胞性免疫の役目も誘発することが考えられ、
液性免疫と細胞性免疫の交差性があります。
ゆえに免疫機構は複雑です。
M. Alejandra Tortorici氏らは
NK細胞とマクロファージについて調べています。
NK細胞を介したACDDについては
既にワクチンとして治験が始められている
最適化された抗体S309と混合させたときに
強く出ることがわかっています。
この時に関わるFc受容体はFcγRⅢaと言われています。
(参考文献(1) Fig.4(H)より)
マクロファージを介したADCPに関しては
S2M11の抗体に対して用量依存的な効果が見らえています。
この時に関わるFc受容体はFcγRⅢaと言われています。
(参考文献(1) Fig.4(I)より)
また
新型コロナウィルスは広く伝搬しているので
Sタンパク質を含めて変異しますが、
その変異に対する適応性は
上述した抗体が混ざった時、
あるいはワクチンの抗体S309と混合させたときに
高くなることが考えられます(1)。
従って、
ワクチンを接種した時には狙いの抗体がありますが、
身体の反応として本当に一種類の抗体しか
メインに発現、分泌されないか?
という評価は変異に関する適応性を考慮すると大切になります。
また、
実際に罹患した人の血清を使う場合には
ワクチンとの違いはより多くの抗体を含んでいる事
というのがあるかもしれません。
例えば、
上の2種類の抗体だけでも
クローズとオープンの配座でそれぞれ結合し
どちらの構造においても適応できるようになっています。
こうした違いを認識することが
ワクチンの接種の効果を評価していくうえで
大切になると考えられます。
上述したのは生体外での実験ですが
生体内の効果を確かめるためにハムスターで確かめています。
その結果では
RNAの数の減少率に関しては
それぞれの抗体が単独で働いた場合と
ミックスした場合では大きな変化はなく、
どの状態においても大きな減少率(4ケタ減少)を実現しています。
(参考文献(1) Fig.5(A)より)
以上です。
(参考文献)
(1)
M. Alejandra Tortorici et al.
Ultrapotent human antibodies protect against SARS-CoV-2 challenge via multiple mechanisms
Science 20 Nov 2020: Vol. 370, Issue 6519, pp. 950-957
(2)
T. Zhou et al.,
bioRxiv 2020.07.04.187989 (2020).
(3)
S. Bournazos, T. T. Wang, J. V. Ravetch,
Microbiol. Spectr. 4,
10.1128/microbiolspec.MCHD-0045-2016 (2016).
(4)
Xiaojie Yu & Mark S. Cragg
Engineered antibodies to combat viral threats
Nature (2020)
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
組織が炎症、線維化、硬化、癌化した時に
その患部に対しては免疫機能が働きますが、
患部が治癒するようにバランスの取れた免疫機能が
強く、持続的に働く保証はなく、
時には患部の病状を悪化させてしまうような
副作用を示す免疫のバランスになることもあります。
そうしたこともあって
狙った細胞治癒能力のある免疫細胞を
患部に浸潤させて免疫が持続的に働くような
システムを意図的に構築したいという需要があります。
そのためには
例えば、細胞傷害性を示すT細胞やNK細胞を
患部に安定的に浸潤させるために
その患部が特異的に持っている受容体を検出して
その受容体に結合性を示すように
体外でT細胞やNK細胞をエンジニアリングします。
具体的にはレトロウィルスなどを細胞内に入れて
目的とする受容体を発現させます。
その時にB細胞のリンパ芽球性白血病であれば
CD19という比較的強い受容体があるため
このCD19に結合性を示す受容体を発現させます(1)。
その場合、いくつかの臨床実績もあります(2,3)。
このCAR免疫細胞技術は多能性幹細胞でも研究されています。
その多能性幹細胞の一つである
誘発性多能性幹細胞であるiPS細胞による
CAR-T細胞の臨床研究が
京都大学と武田薬品工業株式会社で
2021年から世界で初めて人での臨床試験を開始する
と発表されています(1,4)。
武田薬品工業株式会社(さん)は
現在、12のCAR-Tプログラムを開発中であるとされており
2021年の5件の臨床試験のうち1つであるとされています(4)。
Atsutaka Minagawa氏研究グループによれば
iPS細胞技術をCAR-T細胞に使う一つの利点としては、
余計な受容体の再構築をしないことが挙げられています(5)。
純度の高い受容体設計ができるということです。
従って、
制御性が高く、副作用の回避も期待できるとされています(5)。
iPS細胞を使ったCAR技術については
NK細胞(6)や単球(マクロファージ)(7)についても行われています。
しかしながら、
NK細胞に関しては卵巣がんが適用範囲となっていますが(6)、
上述したように基本的には白血病など
血液性の癌に対する適用が多くなっています。
その理由としては
CD19のように強い受容体がまだ未確認な事と
肺、肝臓、腎臓、腸、膵臓、皮膚などにできる固形癌に対しては
安定的なアクセスが難しいことが挙げられています。
従って、
現状では適用範囲が限られていると認識しています。
そういった固形癌に対してのアクセス性を高めるためには
固形癌が特異的に発現する受容体の認識だけではなく
それらの組織が特異的に発現する分泌物質を認識する
受容体を追加で作製することです。
Keishi Adachi氏ら研究グループは
IL-7、CCL19というインターロイキン、ケモカインを
CAR-T細胞の受容体として設計して
固形癌に対するアクセス性を高めています(8)。
また
Lynsey M. Whildingら研究グループによって
同様に固形癌に対するアプローチとして
癌組織が発現、分泌するするIL-8に結合性を示す受容体CXCR1と
癌組織が表面に発現しているインテグリンαvβ6を
CARとして装飾した設計が考えられています(9)。
このような癌組織が発現する「Chemoattractant」に対する
親和性を示す受容体を追加で装飾することで
癌組織へのCAR免疫細胞の向性、屈性を高め、
より効果的な免疫細胞の浸潤を促すことができる
と考えられます。
また細胞特異的輸送系統で
上述したインテグリンなどを標的として
狙った「Chemoattractant」を患部まで運ぶこともできます。
例えば、
Zongmin Zhao氏らの研究によれば
赤血球は肺の転移性癌組織に高い局在性を示すことが
わかっているので
その赤血球を輸送体として「Chemoattractant」である
ケモカインを腫瘍組織近くまで運ぶことを実現しています(10)。
そこでより
CAR-T細胞、NK細胞、マクロファージなどに対して
元々親和性の高い「Chemoattractant」を選択して
癌組織近くの分泌環境を改変することもできます。
以上です。
(参考文献)
(1)
Erin A. Kimbrel & Robert Lanza
Next-generation stem cells — ushering in a new era of cell-based therapies
Nature Reviews Drug Discovery volume 19, pages463–479(2020)
(2)
Enli Liu, M.D., David Marin, M.D., Pinaki Banerjee, Ph.D., Homer A. Macapinlac, M.D., Philip Thompson, M.B., B.S., Rafet Basar, M.D., Lucila Nassif Kerbauy, M.D., Bethany Overman, B.S.N., Peter Thall, Ph.D., Mecit Kaplan, M.S., Vandana Nandivada, M.S., Indresh Kaur, Ph.D., et al.
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(3)
Michael Wang, M.D., Javier Munoz, M.D., Andre Goy, M.D., Frederick L. Locke, M.D., Caron A. Jacobson, M.D., Brian T. Hill, M.D., Ph.D., John M. Timmerman, M.D., Houston Holmes, M.D., Samantha Jaglowski, M.D., Ian W. Flinn, M.D., Ph.D., Peter A. McSweeney, M.D., David B. Miklos, M.D., et al.
KTE-X19 CAR T-Cell Therapy in Relapsed or Refractory Mantle-Cell Lymphoma
The New England Journal of Medicine 2020; 382:1331-1342
(4)
Takeda/What we do/T-cira/ニュースルーム
京都大学iPS細胞研究所と武田薬品が創製した初のiPS細胞由来CAR-T細胞療法臨床試験に向けた新たなプログラムを開始
(5)
Atsutaka Minagawa, Toshiaki Yoshikawa, Masaki Yasukawa, Akitsu Hotta1, Mihoko Kunitomo, Shoichi Iriguchi, Maiko Takiguchi, Yoshiaki Kassai, Eri Imai, Yutaka Yasui, Yohei Kawai, Rong Zhang, Yasushi Uemura, Hiroyuki Miyoshi, Mahito Nakanishi, Akira Watanabe, Akira Hayashi, Kei Kawana, Tomoyuki Fujii, Tetsuya Nakatsura, and Shin Kaneko
Enhancing T cell Receptor Stability in Rejuvenated iPSC-derived T cells improves their use in cancer immunotherapy
Cell Stem Cell. 2018 Dec 6;23(6):850-858.e4.
(6)
Li, Y., Hermanson, D. L., Moriarity, B. S. & Kaufman, D. S.
Human iPSC-derived natural killer cells engineered with chimeric antigen receptors enhance anti-tumor activity.
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(7)
Senju, S. et al.
Generation of dendritic cells and macrophages from human induced pluripotent stem cells aiming at cell therapy.
Gene Ther. 18, 874–883 (2011).
(8)
Keishi Adachi, Yosuke Kano, Tomohiko Nagai, Namiko Okuyama, Yukimi Sakoda & Koji Tamada
IL-7 and CCL19 expression in CAR-T cells improves immune cell infiltration and CAR-T cell survival in the tumor
Nature Biotechnology volume 36, pages346–351(2018)
(9)
Lynsey M. Whilding et al.
CAR T-Cells Targeting the Integrin αvβ6 and Co-Expressing the Chemokine Receptor CXCR2 Demonstrate Enhanced Homing and Efficacy against Several Solid Malignancies
Cancers 2019, 11, 674;
(10)
Zongmin Zhao, Anvay Ukidve, Vinu Krishnan, Alexandra Fehnel, Daniel C. Pan, Yongsheng Gao, Jayoung Kim, Michael A. Evans, Abhirup Mandal, Junling Guo, Vladimir R. Muzykantov & Samir Mitragotri
Systemic tumour suppression via the preferential accumulation of erythrocyte-anchored chemokine-encapsulating nanoparticles in lung metastases
Nature Biomedical Engineering (2020)
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
日本で標準的に使われている治療薬の一部は
デキサメタゾンとレムデシビルであると
認識しています。
しかし、昨日のニュースでWHO(世界保健機関)によれば
症状の軽重に関わらず使用しないように勧告されています。
国際的な治験では、
入院した患者さんへの効果が
「ほとんどないか、全くなかった」とされているからです。
現在、日本の医療現場で
このニュースに関してどのような扱いになっているか?
というのはわかりませんが、
少なくとも薬効を示すかどうか?
というのは疑いの目を持って治療を進める必要性がある
と考えられているのではないかと推察します。
同じようにニューヨークで3月~4月に
患者さんの59%という高い割合で使われていた(1,2)
ヒドロクロロキンという薬剤も
6月初旬に薬効の信憑性について議論されていました。
The RECOVERY Collaborative Group
の大規模な調査によって
少なくとも投薬28日後までの
亡くなられた患者さんの割合のデータにおいて
薬効は認められないとされています(3)。
条件
-
ランダムに選出
-
ヒドロクロロキン処方:1561人
通常の治療:3155人
-
期間 2020/3/25~2020/6/5
-
ヒドロクロロキン用量
初回:800mg
その後400mg 12時間置き
-
処方期間
9日後か退院まで
-
亡くなられた割合
28日後:27%(ヒドロクロロキン処方)
28日後:25%(通常の治療)
-
となっています。
このヒドロクロロキンは
マラリアとリウマチの治療薬として使われていました。
70年前に開発された薬で
安価で、副作用のリスクも少なく
広く使われている薬です。
しかし、副作用として心臓血管にリスクがあり
アジスロマイシンと併用された場合には
特に注意が必要だといわれています(4-6)。
「試験管」の結果においては
新型コロナウィルスを含むSARS系のウィルスに対して
抗ウィルス性を示すとされていました(7-12)。
しかし、
臨床によるその薬効については
冒頭で述べたように臨床状態に改善が見られない
という報告が複数ありました(13-17)。
以上です。
(参考文献)
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いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
細胞特異的輸送系統で重要になるのは
人の体は、実験で使われるマウスよりも
はるかに大きいですから、
輸送体を保護しながら、患部「だけ」に有効に運ぶことです。
それを実現するためには、
身体のどこから注入するかというのは重要ですが、
その自由度を与えるためには、
極めて高い正の走化性を実現する必要があります。
そのためには血液、リンパ液、間質液の循環を考えたり
その液体中にどのような物質があって、
その物質の勾配があって、
目標とする患部までどのように有効に誘導されるか
解剖学的な視点も踏まえて
様々なスケールで考えていく必要があります。
最も大きなスケールという点に関しては特に
まだ不可視な部分が多く残っていますが、
病因となっている組織から出ている受容体だけではなく
DNA、たんぱく質単体なども含めて
どのような物質が分泌されているか?
その特異性を評価することも少し大きなスケールでの
走化性、向性を考える上で重要になります。
Zongmin Zhao氏らは、
赤血球が肺の中の転移性癌細胞に局在化することに着目して、
赤血球を「輸送体」として使うことを提案しています(1)。
赤血球の表面に非共有結合的に
・静電気力・疎水性相互作用・水素結合で
ケモカインが封入されたナノ粒子が付着しています。
(参考文献(1) Fig.2(g)SEMイメージ参考)
ナノ粒子の材料は
poly(lactic-co-glycolic acid) (PLGA)です。
その他仕様は、
ナノ粒子径:192.3nm ゼータ電位:-27.5mVです。
このナノ粒子は
臓器を標的とする上で適してると考えられています(1)。
ナノ粒子は、疎水性を高め結合力を得るために
高いL:G比で作製されたとされています(1)。
このL/G比、保護、離着性のため
PLGA-dタイプが使われたとされています(1)。
シェアストレスによって離着率が変わる(1)ので
肺(臓器)の患部近くで
シェアストレスが強くなることで
ナノ粒子の放出割合の選択性を与えることができます。
お血管を通して肺に到達して
血管の内皮、周皮、間質、肺の内皮?、上皮という層構造において
癌組織がどこにあるかによりますが、
間質には細胞外マトリックスがあり、
そこにはコラーゲンなどたんぱく質が
蜘蛛の巣のように張り巡らされていると考えられます。
あるいは細胞などの組織が密にあります。
そうした物質との衝突確率が増えることで
機械的なストレスを受けるということを
一つとして考えました。
赤血球が血管の外に患部近くで選択性を持って浸潤するか?
どこで放出されるかは考慮の余地があります。
実際には冒頭で述べた
赤血球は癌組織に局在化する性質があるという事、
シャアストレスが具体的に何を起因にして変わるかという事、
これらをもう少しミクロ解剖的視点で考えるということになります。
一方、
Zongmin Zhao氏らは、
肺の内皮からICAM-1という受容体が多く発現されており
その受容体に結合する(Anti-ICAM-1抗体)を
装飾することで肺の内皮細胞と相互作用を強める
(つまり引き付けられて結合する)ことを示しました(1)。
実際にこの装飾によりマウスの肺の組織で
それがない時よりも27倍高い蓄積量を示しました(1)。
従って、
癌組織に選択性を持って
最終的にケモカインを放出するためには
・輸送体(この場合赤血球)の正の走化性
・輸送体からナノ粒子の患部近くでの離着選択性
・ナノ粒子の患部への正の走化性
・ナノ粒子から患部近くでのケモカインの放出効率
・ケモカインの患部への正の走化性
これらのことをスケールを変えて
一つ一つ階層的に考えることが大切になります。
肝臓、肺、脾臓、腎臓、脳、心臓の臓器別で
この輸送系統の特異性の評価では、
赤血球、ICAM抗体装飾により
他の臓器と比べて高い輸送特異性を示しています。
(参考文献(1) fig.3より)
またケモカインの血中、肺での持続性、肺/血中の比率
注入から72時間の範囲でいずれも高くなっています。
(参考文献(1) fig.4(d)-(f)より)
最終的に輸送する物質にケモカインは
免疫細胞に対して「Chemoattractant」であると考えられ(2)
免疫細胞に正の走化性、それを引き付けるものです。
従って、
抗原認識することなく後述する免疫機能を発揮したのは
免疫細胞とケモカインの親和性が高いことに
一つは起因していると考えられます。
参考文献(2)Table 2によれば、
様々な種類の免疫細胞が認識する特異的なケモカインが
明らかにされています。
従って、
赤血球を輸送体として、ナノ粒子の中に封入する
ケモカインの種類を検討することによって
作用させる免疫細胞をある程度選択できます。
これは癌の免疫療法において
大きな可能性を生むと考えられます。
実際には、
免疫反応に対して抵抗性を持った癌組織は
存在するケモカインの種類において内因的に変化が起こる
とされています(6-8)。
それは、ケモカインによって引き付けられた免疫細胞が
癌組織の退行を阻害するような種類になっている
ということを同時に意味する事が示唆されます。
Zongmin Zhao氏らによって選択されたCXCL10は
一つはNK細胞、インターフェロンに反応性を与える
とされています(2)。
NK細胞は抗原認識の必要がないので
参考文献(1)で述べられているように
外因性の抗原認識なしでの免疫機能発揮の一部には
NK細胞が働き、マウスでの転移性肺癌細胞の退行に
貢献した可能性を考えました。
Zongmin Zhao氏らの調査によれば
CXCL10は
・T helper type 1(Th1)CD4 T細胞
・Effector CD8 T細胞
・NK細胞
これらの「chemoattractant」として働き
癌の退行に貢献するとされています(1,9-12)。
Zongmin Zhao氏らの実験によれば
・IFNγ+TH1 CD4 T細胞が2.2倍
・IFNγ+TH1 CD8 T細胞が1.8-2.0倍
・granzyme B+ CD8 T細胞 1.6-2.2倍
・NK細胞 1.4-1.8倍
・CD45+CD11c+CD86+樹状細胞 2.6倍
増えているとあります(1)。
従って、
上述したインターフェロンにも作用していると考えられます。
そこに整合性が見られます。
マウスによる転移性肺腫瘍の退行も
最大で6倍程度高まったとされています(1)。
また、肺から横腹と
距離を持たせた腫瘍組織においても
系統的な免疫の作用によって退行が見られたと
考えられています(1)。
免疫療法の一つの利点は、
免疫機能の記憶化(メモリ)によります(4,5)。
通常、その記憶化は抗原認識を経て
リンパ節の胚中心で行われるものであると認識しています。
しかし、
resident memory免疫細胞のように
現場、患部でより強固な記憶化が行われるケースもあります(3)。
従って、
ケモカインを患部に直接運んだ時の免疫細胞が
その後、どのような発展を遂げるのか?
というのは研究の余地があると考えられます。
また、
この免疫療法はケモカインで
免疫細胞を引き寄せるものなので、
同時に免疫細胞の最適化を両立させることが可能になります。
例えば、
CAR-T細胞、CAR-NK細胞
あるいは他の種類の免疫細胞に
特定の癌種類に効果を発揮するキメラ抗原受容体を付けて
このケモカインの技術と合わせて、
より階層的に免疫療法を強化する事も考えられます。
以上です。
(参考文献)
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いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスの侵入経路は
主に口、鼻
それ以外では目も考えられますが、
皮膚からの浸潤はないと考えられています。
口、喉、鼻腔、気管、気管支、肺(肺胞)などの
呼吸器系器官の表面積は大きく、
呼吸を通して、
外界の伝染性のウィルスと直接的に接触します(1)。
従って
感染経路の入り口、初期は
この口や鼻からウィルスを吸い込んで
これらの呼吸器系器官の表面で作用する事にあります。
新型コロナウィルスは
・急性成人呼吸促迫症候群(ARDS)(2)
・心臓の外傷(2)
・腎臓の外傷(2)
・血栓症(3)
・脳神経症(4)
など多岐に症状が及びます。
しかし、それを引き起こす初めのきっかけは
おそらく口や鼻、
そして上述した口、喉、鼻腔、気管、気管支、肺(肺胞)
などの呼吸器系器官の表層での接触に依ります。
そこにはACE2受容体などの細胞に感染するための
エントリー受容体があり、
細胞感染、あるいは組織の間質を通して
そこで免疫機能を誘発します。
あるいは組織内へ侵入して、
より多層に渡り感染が起こり免疫機能を誘発します。
そこでその免疫にかかわる白血球が
主に血管などから誘発され、組織に運ばれて
「トラフィッキング」されます(1)。
つまり
単球、リンパ球、好酸球、好中球、好塩基球など
白血球がウィルスやウィルス感染細胞に対して
走化性、向性を示して誘導されて、機能を発揮しします。
しかし、
ウィルスの数が増えてくると
それら白血球の制御が難しくなり、
単球、好酸球、好中球などが異常分泌してしまいます。
それによって炎症が起こります。
おそらく、
身体の呼吸器系器官での感染に端を発して
そこで白血球などの免疫機能が制御不能になることで
感染組織で炎症が起こり、
その組織に隣接する血管から乱された白血球が
体中をめぐり、そこから雪崩のように
血液の成分、組織、臓器に不全を生じさせる
と考えています。
例えば、
肺には気管支を通じた肺胞が無数にありますが、
その肺胞の周りには毛細血管が張り巡らされています。
動脈に酸素を送り込み、静脈から二酸化炭素を取り込む
という呼吸のプロセスがあるので当然です。
大気から口、鼻を通じた空気が肺胞まで届きますから
大気中に存在している新型コロナウィルスの一部も
ここまで届きます。
そこには血管から上皮細胞までの組織があり
(血管、血管内皮、周皮、間質、上皮)
それらの層構造の中でウィルスによって感染があると
サイトカイン、ケモカインなどの信号によって
免疫機能が誘発され、すぐ近くの毛細血管内に
存在する白血球のバランスに影響を与えます。
そういったことが呼吸器器官の表面を通じて
色んな所で起きると
身体の様々な箇所に影響を与えるほどの
白血球のバランス不全につながると考えられます。
そのように考えると
呼吸器系器官で新型コロナウィルスの感染が起こった時に
どのような免疫機構が生じるか?
それを包括的に考えることが重要になってきます。
Ronen Alon氏らは、
感染が起こった時に白血球が肺でどのように働くか?
インフルエンザの例を踏まえながら総括しています(1)。
白血球が血管中の血液から感染した呼吸器系組織に
どのような経路で浸潤するか?
その出口となる血管には3種類あります(1)。
---
①小静脈(postcapillary venules)
気管、気管支の中に存在
動脈⇒小動脈⇒毛細血管⇒「小静脈」⇒静脈
---
②肺胞の毛細血管
肺の柔組織に存在
---
③小静脈(high endothelial venules(HEVs))
リンパ節内に存在
リンパ節内にある胚中心でT,B細胞(など)がメモリ化
するための未発達なT,B細胞の入り口にあたります。
----
これらの血管は内皮細胞に並行して形成されています。
これらにより免疫機能の恒常性、バランスが保たれている
と考えられています(13,14)。
これらの血管では内皮細胞から発現されている
ICAM1という受容体に白血球(の一部)が固定されているため
この受容体によっても組織への分泌量が制御されています。
しかし、
組織の感染によって
細胞内の信号に変化が表れ、ケモカインが放出されると
この受容体の結合は解かれ、
固定されていた白血球の一部が
組織内に浸潤することが考えられます(15)。
(参考文献(1) Fig.2より)
血管の内皮細胞の表面にはICAM1、
下述するPセクレチンという血栓の原因となる
血液凝固因子に関わる受容体だけではなく
様々な受容体があります。
(参考文献(1) Fig.3より)
これらの結合活性は免疫機能の恒常性維持のために
制御されていると考えられますが、
上述したように
その結合活性はケモカインの分泌によって
上流側で制御されていると考えられます。
おそらく特定のケモカインとその受容体の結合によって
細胞内で何らかの信号の変化があり、
それによって内皮細胞との結合状態が変わると推測しています。
新型コロナウィルスで血管、血液の事を
考える重要性は高いと思っています。
例えば、
後遺症とも関連があると考えられる脳への影響に関しては
血栓などとも関係がある脳の低酸素状態が考えられます。
その他の臓器、腎臓、心臓においても
直接的にも、間接的にも関わっていると考えられます。
上述した血栓症は
白血球の異常やサイトカインストームによって
起こっている可能性が示唆されています。
そのような想定される経路の中で
血栓に関わる因子として
バイベル・パラーデ小体(Weibel–Palade bodies)
があります。
血管、心臓を裏打ちする血管内皮細胞に存在する貯蔵顆粒です(6)。
また、
Pセクレチン(P-selectin)はもう一つの血液凝固因子で
炎症が起こっている組織まで血管外も含めて白血球の遊走を
支援する物質です(7,8)。
バイベル・パラーデ小体、Pセクレチンは
外傷の信号に反応するものです(9,10)。
細胞内にウィルスが感染した時に
おそらく起こるであろうことは
感染細胞内からサイトカインやケモカインが放出されることです。
ケモカインは免疫細胞に対して
「chemoattractant」として働き
数多くの免疫細胞を含む白血球の患部に対する
正の走化性、向性に影響を与えると考えられます。
平たく言えば、
ウィルス感染でダメージを受けた組織が
ケモカインを放出して、
そのケモカインの濃度分布を白血球(免疫細胞など)が認識して、
それに引き付けられるように
免疫細胞が患部に移動するということです。
実際には受容体の静電気的な引き付け、
親和性による結合頻度によって
細胞の数の分布の勾配が生じると考えています。
この考えに従うと
ウィルスが非常に多くなって
組織の炎症の度合いなどが大きくなり
ケモカインの放出量が多くなると
異常な量の白血球が引き付けられることによって
制御性を失い炎症を悪化させる
負の連鎖に陥ることが考えられます。
実際に各免疫細胞には
このケモカインを認識する受容体があります。
従って、放出されるケモカインの種類によって
正の走化性、向性を示す免疫細胞が異なるということです。
(参考文献(1) Table 2より)
これによれば、
白血球の各細胞がそれぞれ持つケモカイン受容体があり
毛細血管の場所や高内皮細静脈によって変わる
ということです(1)。
例えば、
新型コロナウィルスでは重症の患者さんで
好中球/リンパ球(B,T細胞など)の比率が高くなり
好中球が相対的に多くなると言われています(5)。
従って、
免疫のバランスを整えるために
好中球、リンパ球に関わるケモカインを分類して
その比率を調整するような薬の投与が有効になる可能性があります。
参考文献(1) Table 2をみれば
好中球:CXCR1, CXCR2, CXCR4, PAFR, BLT1
T、B細胞:CCR7
※場所は異なる、メモリ細胞の場合は異なるか?
メモリーCD8+T細胞はCCR5という報告もあります(23)。
とありますので、
好中球のケモカインの受容体を蓋するような
抗体を持つ薬剤を入れる事や
CCR7受容体を亢進させるアゴニスト性を持つ
薬剤を入れる事などが考えられます。
好中球、単球(マクロファージ)、NK細胞は
(少なくともNK細胞は抗原認識を行わないため)
免疫機能の「初動」を担うとされています(1)。
つまり、
新型コロナウィルスが侵入してきた時には
いくつかの段階を経ないといけない
B細胞やT細胞などよりも先に
好中球、単球(マクロファージ)、NK細胞が
走化性、向性を持って働くということです。
このうち
好中球に関してはウィルスの除去の働きもありますが
その量が多くなると炎症を導くとされています(16,17)。
この好中球は炎症が起こっている血管などの組織に
高い親和性を示し、テザリング、結合されます(18)。
この好中球は
「Matrix metallopeptidasesとelastase」を放出し
タイプ4のコラーゲンの結合を切るといわれています。
このコラーゲンは内皮の土台となる被膜の構成物質で
血管との結合部位に層として形成されている(19)ので
その結合を切ることは
内皮と血管の結合性を切ることなので
局所的な血管の剥がれなどが生じ(?)
組織として脆弱になることが考えられます。
このような好中球の異常活性は
インフルエンザや新型コロナウィルスで
急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群のリスクを上げる
ことが示唆されています(20,21)。
免疫細胞は元は骨髄内にある幹細胞であり、
B細胞腸関連リンパ組織(11)
T細胞は胸腺で成熟します。
その後、リンパ系器官である脾臓やリンパ節に入り、
リンパ節にある胚中心で
新型コロナウィルスや
それを模したワクチンなどの抗原を認識して
新型コロナウィルスに対して中和活性を持つ
抗体がメモリーB細胞から放出されます。
その時には前段階としてヘルパーT細胞が働くとされています。
また、
おそらく細胞傷害性を持つCD8+T細胞においても
新型コロナウィルスに対する特異性を
このリンパ節の胚中心で獲得すると理解しています(12)。
B細胞やT細胞の成熟、
新型コロナウィルス特異性を持つメモリ化の
生成及び作用過程においては
骨髄⇒血管系⇒リンパ系⇒血管系⇔組織
このような経路が想定されます。
そうした場合、それぞれが体のどの部位にあって
どのようにネットワークを築いているかが大事になります。
血管は毛細血管を含めると体全体にくまなく分布していますが、
リンパ系はその分布に偏りがあります。
「頭部中心、後頭部」「頸部(首)」「両脇、肩」
「胴体中心」「腸」「股関節」という風になります。
少なくとも腸付近には精緻、密な
リンパ系のネットワークがありますから
腸における獲得免疫の効果は大きいと推測されます。
例えば、
インフルエンザウィルスは肺⇒脾臓⇒骨髄など
リンパ節が存在する体の部位に侵入し
そのリンパ節の胚中心で
CD4+、CD8+のメモリーT細胞を始め
様々な抗原提示細胞が発現、分化されると言われています(22)。
新型コロナウィルスでも脾臓、骨髄中の抗原が
確認されていますが、
インフルエンザのケースと同じように
様々な抗原提示細胞が発現、分化されているか
というのはまだはっきりしたことはわかっていません(22)。
胚中心で抗原認識してメモリT細胞が発現、分化された時
少なくともその一部は感染組織近くでの滞在時間、
あるいは寿命が短いといわれていますが、
前駆細胞を介して滞在時間、寿命が長い
「CD8+ resident memory T細胞」
が生じると言われています(24)。
これらがインテグリンなど結合受容体を介して
獲得免疫の一部として存在すると言われています(1)。
従って、
メモリT細胞において
コロナ系ウィルスで交差性が認められる
という報告もあります(25-27)。
過去、東アジアで分布されている
コモンコールドなコロナウィルス(風邪ウィルスの一種)
に罹患している場合には、肺胞などの表面に
今述べたような段階を経たメモリ免疫細胞が
インテグリンなどの受容体との結合を介して
常在している可能性があります。
リンパ系である
リンパ節は豆のような形をしており
大きさは0.2-3cmで一つの場所に2~10数個集まっています。
全身で600個程度あるといわれています。
新型コロナウィルスを始め、
ウィルス感染、ワクチン接種において重要なのは
リンパ節の「draining」という概念です。
drainingとは獲得免疫反応が起きているということなので
その前提として隣接するリンパ管から
ウィルスやワクチン接種で生じた抗原が
リンパ節に入ることです。
そこにある胚中心の中の
follicularヘルパーT細胞、follicularB細胞が抗原認識しますが
身体に600個あるということなので
そのうち何%のリンパ節が
ウィルス抗原と接触があり、
免疫の獲得性を有する、メモリ化しているか?
ということが
免疫の応答性の高さ、速さに関係する可能性を考えました。
また炎症組織とリンパ節の距離の関係もありますから
どの場所のリンパ節がdrainingしているか?
というのも重要だと思います。
以上です。
(参考文献)
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いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
昨日は全国で2201人の新型コロナウィルス感染者数で
東京都では493人となっています。
高齢の方の割合も高まっていることから、
医療のひっ迫が懸念されます。
新型コロナウィルスは感染時にすぐに症状が出るわけではなく
症状が出る少なくとも数日前には感染が疑われる
というデータもあります。
しかし、ウィルスの人から人への伝染は
症状が出たから起こるのではなく
身体にウィルスが入ったときから起こり得るので
その点が非常に感染を制御する難しさです。
従って、
熱、せき、嗅覚障害など
明確な症状が出る前の極めて初期の段階で
どのような変化があるか?
それを知ることがとても大事になります。
もし仮にその様な症状が疑われる場合には
事前に外出を控えたり、気を付けることができます。
また、自身がPCR検査を受けに行くタイミングも
いろんな指標での症状のデータがあれば、
新型コロナウィルスの疑いがあるかどうかわかるので
早くなることが期待されます。
また、無症状の人も、
自分の行動履歴なども踏まえて
自分の体のデータを組み合わせることで
罹患している可能性を推測することができます。
アメリカのスタンフォード大学による
Tejaswini Mishra氏ら研究グループは
スマートウォッチを使って、
症状が出る前にどんな兆候が見られたか?
分析しています(1)。
参加者:5300人
新型コロナウィルス罹患者:32人
今回の調査で明確な症状が出て
感染が確認される(Day 0)前に
症状として現れていたのが
「心拍数」です。
それが通常の心拍数に比べて早くなっていました。
22人の人は症状が出る前に検出されており、
そのうち4人は少なくとも9日前には
心拍数の変化がありました(1)。
(参考文献(1) Fig.1より)
これはまだFDAに承認された方法ではないので
試験的に行われている段階ですが、
スマートウォッチでは
その他に
・呼吸数・皮膚の温度・血液酸素飽和度
・心電図などを図ることができます。
これらのデータをとることの有益性も
指摘されています(1)。
以上です。
(参考文献)
(1)
Tejaswini Mishra, Meng Wang, Ahmed A. Metwally, Gireesh K. Bogu, Andrew W. Brooks, Amir Bahmani, Arash Alavi, Alessandra Celli, Emily Higgs, Orit Dagan-Rosenfeld, Bethany Fay, Susan Kirkpatrick, Ryan Kellogg, Michelle Gibson, Tao Wang, Erika M. Hunting, Petra Mamic, Ariel B. Ganz, Benjamin Rolnik, Xiao Li & Michael P. Snyder
Pre-symptomatic detection of COVID-19 from smartwatch data
Nature Biomedical Engineering (2020)
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
細胞特異的輸送系統で頭の中に継続的にある課題は
薬剤をどこから注入して、
どうやって患部に有効に運ぶか?ということです。
その時に血液、リンパ管、臓器、間質などの輸送経路に対して、
どうやって患部に「誘導されるように」運ぶことができるか?
その可能性をずっと探っていました。
もちろん、
輸送キャリアには患部に特異的に発現されている
表面受容体に親和性を持つような装飾因子を
表面に遺伝子などによって作製することを
想定しています。
その中で「患部の近くにいけば」
特異性を持って働くことができますが、
人の体は大きいですから患部から比較的距離がある時に
そこに選択的に誘導されるように運ばれるためには
どうしたらいいか?
そのことについて考えていました。
生物には「走化性(chemotaxis)」と呼ばれる現象があります。
特定の化学物質の濃度勾配に対して方向性を持った行動を
起こす現象であります。
例えば、
細菌はブドウ糖のような栄養分子の濃度勾配の
もっとも大きな方向に向かって移動します。
(正の走行性)
あるいは毒性物質の場合はその逆に濃度勾配によって
逃げるような動きをします。
(負の走行性)
つまり、
「ランダムに動くのではなく」
自分にとって機会、脅威となるような信号の
勾配を検知して、正しく成長できるように
その方向にある程度の規則性を持って動くということです。
これは、細胞でもそうです。
例えば、
受精の際の精子の運動や
神経細胞やリンパ球の遊走などでもあります。
つまり、
新型コロナウィルスのような脅威となるウィルスを
免疫細胞が信号の勾配によって検知して
そこにリンパ節、脾臓、胸腺、腸などから
患部に近づいて攻撃するような働きを持ちます。
ひょっとするともっと小さな胞である
サイトカイン、ケモカインでも走行性を持つかもしれません。
このような細菌や細胞などを引き寄せる
信号のことを「Chemoattractant」と呼びます。
このような「走化性」「向性(tropism)」を
発揮する輸送媒体、キャリアを選択して
患部まである程度の距離があっても
引き寄せられるようにすれば
その輸送媒体に積載された薬剤や機能性物質は
患部まで有効に運ぶことができます。
人の体細胞、造血系細胞、間葉系細胞などから
作られる幹細胞(iPS細胞も含む)は
癌細胞に対して「正の走化性」「向性(tropism)」
を持つことが知られています(1)。
従って、
他の細胞をできるだけ傷つけずに
癌細胞だけ特異的に治療し、
薬効を上げ、副作用をできるだけ抑える治療を目指す
この薬剤特異的輸送系統において
その輸送媒体として幹細胞を選択することは
非常に有効かもしれないということです。
実際に幹細胞は有効に輸送できるので
癌細胞に対して薬効を持たせて治療する
研究は過去から鋭意行われてきました。
本日はその一部を読者の方と共有したいと思います。
今述べた様に幹細胞は癌に対して正の走化性、向性を
持つので転移したがん細胞も含めて
その輸送効率は高く、系統的な毒性も抑えられている
といわれています(2,3)。
特に神経幹細胞(NSCs)、間葉系幹細胞(MSCs)は
癌治療のキャリアとして共通的に使われます(1)。
理由としては、
・向性が高いことと
・免疫的な刺激、誘発が比較的少ないこと
が挙げられます。
癌組織に引き付けられる、正の走化性を持つ理由は
・化学物質(4)・血管生成因子・炎症信号(5)
これらによるとされています。
従って、
炎症信号を含むということは癌だけではなく、
組織の線維化、炎症、硬化
これらの場合においても向性を示す可能性があります。
今までに幹細胞を薬剤の輸送キャリアとして
使った癌治療については少なくとも4種類あります。
(参考文献(1) Table 1参照)
---------
①抗がん剤など化学療法のキャリア
Enhanced delivery of chemotherapy
---
搭載した機能①
Cytosine deaminase enzyme to convert 5-FC to 5-FU
癌サイトで抗がん性を持つ5-FUに変わる
-
幹細胞種類:神経幹細胞(HB1,F3-CD)
対象の癌:高悪性度の神経膠腫
治験ナンバー:NCT01172964
参考文献:(6)(7)
---
搭載した機能②
Carboxylesterase to convert irinotecan to potent SN-38
癌サイトで抗がん性を持つSN-38に変わる
-
幹細胞種類:神経幹細胞(HB1,F3-CD)
対象の癌:高悪性度の神経膠腫
治験ナンバー:NCT02192359
参考文献:(8)(9)
---
/追記/
多形性神経膠腫は浸潤性が高い脳腫瘍で
極めて高い予後不良の癌種で治療の選択も
限られているという問題があります(10)。
治療効率が上がらない一つの理由としては
脳血管関門があるためです(1)。
従って、
薬剤の輸送効率に問題がありました。
---------
②癌細胞死の誘発剤のキャリア
Targeted induction of apoptosis
---
搭載した機能①
HSV-tk suicide gene
HSV-tk:アポトーシス遺伝子を癌細胞に入れる
-
幹細胞種類:骨髄間葉系幹細胞
対象の癌:進行性の胃腸腺腫瘍
治験ナンバー:NCT02008539
参考文献:(11)
---
搭載した機能②
Expression of TRAIL
RAIL:ネクローシス(細胞死)遺伝子を癌細胞に入れる
-
幹細胞種類:臍帯間葉系幹細胞
対象の癌:転移性の肺腺腫瘍
治験ナンバー:NCT03298763
参考文献:(12)
---------
③癌細胞に浸潤、攻撃するウィルスのキャリア
Delivery of oncolytic virus
---
搭載した機能①
CRAd-Survivin-pk7 oncolytic adenovirus
-
幹細胞種類:神経幹細胞(HB1,F3-CD)
対象の癌:高悪性度の神経膠腫
治験ナンバー:NCT03072134
参考文献:(13)
---
搭載した機能②
Thyroidal sodium iodide symporter-expressing
oncolytic measles virus
-
幹細胞種類:脂肪組織の間葉系幹細胞
対象の癌:再発卵巣がん
治験ナンバー:NCT02068794
参考文献:(14)
-
/追記/
これら癌組織浸潤ウィルスは
NK細胞、樹状細胞、細胞傷害性T細胞を活性化させます(15)。
従って、
免疫機能を誘発しますが、
ウィルスに対するB細胞による獲得免疫によって
中和抗体が発現され、それによって
繰り返し処方された場合には薬効が減少していく
可能性も示唆されています(15)。
ゆえに、
幹細胞で組織近くまで
ウィルスを保護して近接した位置で
ウィルスを放出できるような輸送形態にすることが肝要(15)。
(参考文献(1) Fig.2 イメージ図)
------
④免疫チェックポイント阻害のキャリア
Delivery of checkpoint inhibitor
---
搭載した機能
Conjugated platelets with attached PD-1 antibodies
-
幹細胞種類:造血系幹細胞
対象の癌:白血病
治験ナンバー:preclinical stage
参考文献:(16)
-
/追記/
免疫チェックポイント阻害薬を使った治療は
鋭意行われてきましたが、
骨髄腫、リンパ腫、胃、腎臓、腸の癌において
は課題が残っています
それは鍵となる免疫細胞であるT細胞が
癌組織、土台にうまく浸潤しないために
有効に癌組織を退行させることができませんでした(1)。
そこで造血系幹細胞の表面に
Azide, DBCOの複合体を結合させて
その表面に免疫チェックポイント阻害である
Anti-PD-L1抗体を結合させています(16)。
(参考文献(1) Fig.1(f)より)
これによってインターフェロンやT細胞を刺激し
癌細胞への浸潤性を高めようと試みられています。
ーーーーー
幹細胞を使った薬剤の輸送についても
その選択性を上げるために
標的とする細胞、組織の表面に発現している
受容体を複合体(タンパク質など装飾、複数の受容体)
の要因も考慮に入れながら、
詳しく調べる余地があります。
またその受容体に結合させたときの
生理機序がどうであるか?
過去の膨大な報告を参照しながら、
結合することによる薬効、副作用を評価する事が大事になります。
また、幹細胞そのものである輸送側も
表面に装飾できる糖たんぱく質などの
結合部位を含む突起を遺伝子などの導入によって
精度よく作製できる技術が発展すると
このコンセプトも含めた
細胞特異的輸送系統の適用範囲は広がるものと
考えています。
自分の体細胞を使った幹細胞を薬剤のキャリアにできると、
採取する組織によっては
免疫機能を大きく刺激することなく(1)運ぶことができ
元々体にあるものなので、
生体内での適応度(fitness)も高く
他の人工的に作られた脂質膜、ナノ金属、
あるいはウィスル膜などと比べて
良い結果をもたらす可能性も考えられます。
以上です。
(参考文献)
(1)
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Next-generation stem cells — ushering in a new era of cell-based therapies
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(2)
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Gene Ther. 15, 739–752 (2008).
(3)
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Inflammation and tumor microenvironments: defining the migratory itinerary of mesenchymal stem cells.
Gene Ther. 15, 730–738 (2008)
(4)
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The migration ability of stem cells can explain the existence of cancer of unknown primary site. Rethinking metastasis.
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(5)
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(6)
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The timing of neural stem cell-based virotherapy is critical for optimal therapeutic efficacy when applied with radiation and chemotherapy for the treatment of glioblastoma.
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SnapShot: cancer immunotherapy with oncolytic viruses.
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Conjugation of haematopoietic stem cells and platelets decorated with anti- PD-1 antibodies augments anti- leukaemia efficacy.
Nat. Biomed. Eng. 2, 831–840 (2018).

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