新型コロナウィルスだけではなく
将来の感染症に備え、mRNAワクチンのリスクの理解
そこから安全性を高める事は広く求められることです。
イスラエルの2021年3月の調査では
新型コロナウィルスのmRNAワクチンにおいて
重篤な副作用の一つであるアナフィラキシー反応は
〇1回目接種: 4755585人中4人
〇2回目接種: 3408825人中3人
で確認されたと言われています(2)。
従って、おおよそ100万人に1人の割合です。
このアナフィラキシー反応を含めた
ワクチンに対する過感受性反応の全発生率は
従来のワクチンよりも高いとされています(3,4)。
このような免疫系の副反応が
どのような生理で起こったのか?
この事はまだ明らかにはなっていませんが、
mRNAワクチンは脂質ナノ粒子を使った輸送方式なので
従来のナノ医療と類似する部分があるとされています(1)。
ナノ製剤(抗悪性腫瘍剤)ドキシルよりも
新型コロナウィルスmRNAワクチンの方が
参考文献(1) Fig.1で示されているように
顔面紅潮、呼吸困難、悪寒、胸痛、頻脈、低血圧
高血圧、アナフィラキシーなどの副反応の割合は
低くなっています。
このような副反応は投与のルート、用量、
身体の中の分布などによって変わるとされています。
ーー
Janos Szebeni, Gert Storm(敬称略)ら医療研究グループは
過去の事例も含めて脂質ナノ粒子-mRNAワクチンに対する
免疫的な過感受性反応のメカニズムについて
包括的に説明されています(1)。
本日はその内容の一部について読者の方と情報共有したい
と思います。
アナフィラキシーは免疫的な副反応で
適切な処置がなされなければ、命に係わる重篤なものです。
これはⅠ型の過感受性反応とされています。
アナフィラキシーはきっかけとなるアレルゲンなどの物質に
暴露した後、数分で起こるとされています。
このような過感受性はすでに感作を起こしている人の
肥満細胞にアレルゲン特異的なIgE抗体が作用する事によって
起こると従来考えられています。
このようなアナフィラキシーは全身性の反応で
皮膚、呼吸器、消化器、心臓血管システムなどに
影響を与えます。
治療としては一般的に症状が現れたら
速やかにエピネルフィンが使われます。
このような免疫的な反応はアレルギーに準ずるものである
補体活性の準アレルギー(CARPA)と呼ばれます。
補体とは抗原を排除するために生まれたタンパク質の事です。
新型コロナウィルスのmRNAワクチンの場合には
脂質ナノ粒子、mRNA、PEG、
それらから生み出されたスパイクタンパク質などが
補体を生み出す原因物質となると理解しています。
IgE同様にアレルゲン特異的なIgM、IgG抗体も
上述した補体システムを活性化して
CARPAの原因になることがあります。
これらはそれぞれタイプⅡ、タイプⅢと呼ばれます。
獲得免疫系であるT細胞を介して過感受性反応がみられる場合には
48-72時間以内と少し遅れて症状が現れ、
これはタイプⅣと呼ばれます。
ーー
アナフィラキシーを含む免疫的過感受性反応は
①全身性補体活性
②細胞内補体
③肥満細胞活性
④サイトカイン依存性反応
⑤血小板システム
⑥酸化ストレス
⑦免疫不全
⑧白血球血液型(HLA)
これらが関わるとされています(1)。
以下、それぞれ少し掘り下げて説明いたします。
//①全身性補体活性//ーー
3つの補体活性ルートがあるとされています。
〇抗体
〇レクチン
〇C3b結合トリガー
これらです(5)。
新型コロナウィルスのワクチンで使われている
PEGに反応するIgM, IgG抗体の形成があります(6,7)。
新型コロナウィルスワクチンで生み出される
スパイクタンパク質は直接的に
上述したレクチンと結合すると言われています(8)。
このような全身性補体活性は
脂質ナノ粒子装飾PEG、
ナノ粒子、
mRNA、
スパイクタンパク質
これらをきっかけに起こり得るとされています。
//②細胞内補体//ーー
身体の中に異物(抗原)を入れる事ことによって
生じた抗炎症性サイトカインは
自然免疫系、獲得免疫系両方に影響を与えます。
その免疫細胞の表面にある
アナフィラトキシン受容体を
活性化させます。
これらの反応は、自己分泌、傍分泌様に
免疫細胞でループするとされています(9)。
このような反応は陽イオン性を持たせた
ナノ粒子によって惹起されるとされています。
しかしながら、
新型コロナウィルスワクチンの接種において
これらの反応を確認したエビデンスはありません。
しかし、可能性として考えられるので
追加的な研究が必要であるとされています(1)。
//③肥満細胞活性//ーー
前述したようにIgE抗体はアレルギー反応に関わる抗体です。
そのIgE抗体が連結組織に主に存在する
肥満細胞を脱顆粒化することによって
肥満細胞依存的に免疫的な過感受性反応が生じます。
新型コロナウィルスのワクチンで使われている
PEGに反応した抗PEG-IgE抗体は
他の例でアナフィラキシーを起こした患者さんで
確認されています(10)。
従って、
新型コロナウィルスワクチンで
アナフィラキシーを起こした患者さんの一部の人には
抗PEG IgE抗体が検出される可能性があるとされています(1)。
この肥満細胞の活性は
肥満細胞症、ぜんそく、骨髄異形成症候群
急性骨髄性白血病を持つ人で生じるとされているため
新型コロナウィルスワクチンにおいて
アナフィラキシーに注意する必要があるとされていますが、
それを裏付けるデータは今のところありません(11,12)。
//④サイトカイン依存性反応//ーー
サイトカインは免疫惹起が起こっている事を示す
バイオマーカーとなります。
サイトカインストームや
サイトカインを通じて宿主組織のダメージを与える
可能性があります。
ワクチンなどに使われる反応性を上げるための
アドジュバント(免疫補強剤)の適量は個人差があり
ある人は多すぎて、他の人は少なすぎる
といったことが起きうるとされています(1)。
これらの反応性はサイトカインの分泌に関わります。
脂質や脂質ナノ粒子は走化性を示す
ケモカイン分泌を促し、
mRNAはインターフェロン反応を促進させます(13)。
生み出された新型コロナウィルスのスパイクタンパク質は
スーパー抗原的な機能を果たし、
直接的なT細胞の活性化、サイトカインの過分泌を含む
超炎症性症候群を引き起こすことが
一部の人で示されています(14)。
//⑤血小板システム//ーー
血小板活性化因子(PAF)はアナフィラキシーの
バイオマーカーとなります(15)。
この血小板は脂質ナノ粒子-mRNAによって
活性化されることが知られています(16,17)。
また血小板が活性化される事によって
アレルギー反応の原因の一つである
肥満細胞の脱顆粒化を促すとされています。
//⑥酸化ストレス//ーー
酸化ストレスはナノ粒子に関連する毒性の
共通な原因となるとされています(18)。
酸化ストレスは補体を健全に制御するシステムを
乱す原因となり、補体依存的な毒性を促す
要因となります(19)。
//⑦免疫不全//ーー
免疫不全にある人は
新型コロナウィルスワクチンを含めて
脂質ナノ粒子-mRNAワクチンによって
引き起こされる補体依存的な毒性の
影響を受けやすいかもしれないとされています(1)。
//⑧白血球血液型(HLA)//ーー
白血球の型によってアナフィラキシーが生じやすい
ことがあります。
例えば、ナノ粒子を装飾するPEGに対して
HLA-DRB1*07:01型の白血球の場合
アナフィラキシーが生じやすいと言われています(20)。
//細胞種特異的輸送系統の観点//ーー
Cell-type-specific delivery system
(細胞種特異的輸送系統)では
ナノ粒子を使って薬剤を輸送する事を想定しているため
新型コロナウィルスワクチンやナノ製剤で
直面している副反応、副作用の懸念、問題が
同様に当てはまります。
基本的には免疫的な過反応、アナフィラキシー反応が生じた時に
迅速なエピネルフィンの投与など予防線を張ることで
どうしても生じてしまうリスクを減らすことが挙げられます。
また、Janos Szebeni, Gert Storm(敬称略)らが
一つ一つ整理して明らかにしている
ナノ医療に対する免疫的なリスクの生理を明かにしていく事によって
より副作用、副反応が生じにくいナノ粒子製剤の開発や
あるいは事前の患者さんの層化などに貢献すると考えられます。
(参考文献)
(1)
Janos Szebeni, Gert Storm, Julia Y. Ljubimova, Mariana Castells, Elizabeth J. Phillips, Keren Turjeman, Yechezkel Barenholz, Daan J. A. Crommelin & Marina A. Dobrovolskaia
Applying lessons learned from nanomedicines to understand rare hypersensitivity reactions to mRNA-based SARS-CoV-2 vaccines
Nature Nanotechnology (2022)
(2)
Summary of the Meetings of the Monitoring Committee on the Vaccination
Campaign (Israel Ministry of Health, accessed 8 August 2021); https://
govextra.gov.il/ministry-of-health/covid19-vaccine/covid-19-vaccine-effi
cacy-safety-follow-up-committee/
(3)
Liotti, L. et al. COVID-19 vaccines in children with cow’s milk and food
allergies. Nutrients 13, 2637 (2021).
(4)
Seneff, S. & Nigh, G. Worse than the disease? Reviewing some possible
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(5)
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(6)
Kozma, G. T., Shimizu, T., Ishida, T. & Szebeni, J. Anti-PEG antibodies:
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(7)
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(8)
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