エクソソームによる治療を考えていくときには
いくつかのアプローチがあると思っています。
1つはエクソソームの生成や伝搬など
その基礎的生理について詳しく調べ、明らかにしていくことです。
もう1つは、すでに明らかにされている
エクソソーム治療の報告例を調べていく事です。
それに加えて、より多次元的なアプローチで
治療可能性を探っていくためには
エクソソームがそれぞれの疾患で
どのような機能を担っているかを個別に調べていく事です。
それによってより具体的にエクソソーム治療の
方法を考える事ができるからです。
Naoomi Tominaga, Nobuyoshi Kosaka(敬称略)ら
医療研究グループは脳に転移した乳癌のケースについて
細胞内小胞の寄与、機能について報告されています(1)。
本日は、その要約部分を少し詳しく掘り下げ、
細胞種特異的輸送系統による治療について考察いたします。
乳癌の患者さんにおいて脳への転移が治療を難しくします。
命を落とされる主要な原因の一つです。
脳への転移過程では乳房で生じた原発腫瘍から
上皮間葉転換を経て循環器に滲出し、
何らかの走化性を持ち、脳血管に循環し、
血液脳関門を超えて癌細胞が頭蓋内脳組織に滲出する
と考えられます。
その中で特に血液脳関門を超える分子的な機序については
よくわかっていませんでした。
Naoomi Tominaga(敬称略)ら医療研究グループは
癌細胞由来の細胞外小胞が輸送するタンパク質、
microRNAsが血液脳関門の組織を破壊し
バリア機能を低下させることを示しました(1)。
特にmiR-181cが遺伝子PDPK1の抑制を通して
アクチンを異常な局在性を通して
血液脳関門の組織を破壊することが示されています(1)。
アクチンは血管の筋細胞の収縮や
細胞質流動など運動性に関わるフィラメントタンパク質です。
これが局在化する事によって
血管の収縮、拡張の連動性が局所的に失われ
それによって破壊、あるいはリーキーになった
と考える事も出来ます。
miR-181cによるPDPK1抑制はリン酸化コフィリンを抑制します。
このコフィリンはアクチン結合タンパク質であり
運動性に関わっています。これが活性化して
アクチンの異常な運動を引き起こしたとされています。
細胞外小胞は生体内で脳に効率的に取り込まれる事が示されました。
つまり、一定の脳向性が示されました。
これらの結果は、乳癌から脳へ転移する際に新しくわかった
機序であります。その一つの大きな原因は
脳へ走化性を持ったエクソソームを含む
細胞内小胞の内容物miR-181cが
アクチン異常運動性依存的に血液脳関門組織を破壊することである
と考えられています。
//細胞種特異的輸送系統(*)の観点//ーー
(*)Cell-type-specific delivery system
今回はすでに転移が生じてしまっている
難治性のケースについて考えます。
エクソソームなど細胞内小胞は乳癌のケースでは
内皮細胞に取り込まれるとあります(2)。
従って、脳腫瘍組織の土壌は脳内の血管から生じている
ケースが多いかもしれないと考える事も出来ます。
従って、他の組織にできる癌組織に比べて
血液からアクセスした治療が有効である可能性があります。
例えば、脳に向性を持つインテグリンのβ鎖はβ3
であるといわれています(2)。
従って、このβ3インテグリンを持つエクソソームなど
ナノ粒子を循環器から注入します。
その時にナノ粒子内(エクソソームなど)に
脳腫瘍に効果を発揮する抗がん剤を封入します。
乳癌細胞由来のエクソソームを輸送媒体として使う場合は
内容物や表面リガンドが発がん性を持つ可能性があるので
注意が必要です。
マクロファージや樹状細胞など
血液性由来のエクソソームの方が
高い奏功が得られるかもしれません。
アクセスルートが血液中だからです。
(参考文献)
(1)
Naoomi Tominaga, Nobuyoshi Kosaka, Makiko Ono, Takeshi Katsuda, Yusuke Yoshioka, Kenji Tamura, Jan Lötvall, Hitoshi Nakagama & Takahiro Ochiya
Brain metastatic cancer cells release microRNA-181c-containing extracellular vesicles capable of destructing blood–brain barrier
Nature Communications volume 6, Article number: 6716 (2015)
(2)
Ayuko Hoshino, Bruno Costa-Silva, Tang-Long Shen, Goncalo Rodrigues, Ayako Hashimoto, Milica Tesic Mark, Henrik Molina, Shinji Kohsaka, Angela Di Giannatale, Sophia Ceder, Swarnima Singh, Caitlin Williams, Nadine Soplop, Kunihiro Uryu, Lindsay Pharmer, Tari King, Linda Bojmar, Alexander E. Davies, Yonathan Ararso, Tuo Zhang, Haiying Zhang, Jonathan Hernandez, Joshua M. Weiss, Vanessa D. Dumont-Cole, Kimberly Kramer, Leonard H. Wexler, Aru Narendran, Gary K. Schwartz, John H. Healey, Per Sandstrom, Knut Jørgen Labori, Elin H. Kure, Paul M. Grandgenett, Michael A. Hollingsworth, Maria de Sousa, Sukhwinder Kaur, Maneesh Jain, Kavita Mallya, Surinder K. Batra, William R. Jarnagin, Mary S. Brady, Oystein Fodstad, Volkmar Muller, Klaus Pantel, Andy J. Minn, Mina J. Bissell, Benjamin A. Garcia, Yibin Kang, Vinagolu K. Rajasekhar, Cyrus M. Ghajar, Irina Matei, Hector Peinado, Jacqueline Bromberg & David Lyden
Tumour exosome integrins determine organotropic metastasis
Nature volume 527, pages329–335 (2015)
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