2022年4月27日水曜日

エクソソーム研究の背景と課題

エクソソームを使った薬剤輸送を実現するためには
今までの輸送媒体としてのエクソソームを調べるだけではなく、
その起源も含めた基礎的な知識を得る必要があります。
それによってより精密にエクソソームを使った
薬剤輸送システムを実現できると考えられます。
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu(敬称略)からなる
医療研究グループは、エクソソームの生物学、機能など
基礎的な事から、生物医療への応用まで総括されています(1)。
その要約と背景の内容を精査し、追記したうえで
読者の方とそれに関する情報共有をしたいと思います。

//要約//ーー
エクソソーム、エクトサムに代表される細胞外小胞の研究は
臓器の恒常性、疾患、細胞間のコミュニケーションにおける
細胞、分子の機序を明らかにする潜在性を有しています。
細胞外小胞のエクソソームの大きさは平均で100nmです。
エクソソームの発生はエンドソームの中にその起源があります。
また他の細胞内輸送媒体と相互作用します。
細胞内小器官はエクソソームの内腔の内容部を生成します。
その内容物は、核酸(遺伝子)、タンパク質、脂質、
アミノ酸、代謝生成物など多岐にたわります。
それはエクソソームが生み出された細胞に依存します。
従って、様々な疾患では細胞が特異的な状態になりますが、
その改変された状態はエクソソームにも反映されます。
従って、細胞外に放出され、血液や尿などの
液体生検の中に含まれたエクソソームを分析する事で
病気の診断にも利用する事ができます。
エクソソームはドナー細胞からエクソサイトーシスし
受け細胞でエンドサイトーシスし、
プラズマ膜が開放することで、
上述した細胞内の内容物を伝達する事ができます。
その内容物や伝達手段を制御する事によって
エクソソームベースの治療を任意に設計することができます。

//背景//ーー
多細胞生物の細胞外小胞の生成、機能を支配する機序は
生理学的な組織の制御から病原性の創傷、
臓器の再形成までの幅広い機序に関係します。
細胞外小胞の研究は様々な病気の診断や治療に使える
可能性があるため推し進められてきました。
例えば、対象となる病気は
〇神経変性疾患
〇心臓血管不全
〇癌
これらなどです。
これらの研究は
〇細胞外小胞の分類
〇単離法、精製
〇病気に対する機能
これらを狙いとして増えています(2-6)。
細胞外小胞の生物学的な特性調査は
〇組織培養
〇非生理的な読み出し
〇多様な細胞外小胞の単離法
これらに依存します。
さらに精製する必要があります(7,8)。
検査をうける生物が健康か病気の状態にあるか?
それを細胞外小胞の情報から読み解くには
まだいくつかの課題があります。
細胞による細胞外小胞の生成は
単純なたんぱく質循環機能を超えて拡大します。
例えば、網状赤血球のトランスフェリン受容体で
それが報告されています(9,10)。
またそれは、細胞の起源、代謝状態
細胞の環境によっても変わります。
細胞外小胞の研究は以下、難しさがあります。
〇単一粒子検出
〇単一粒子隔離
〇イメージの解像度不足(生体内)
〇軌跡を追えない。高解像度の動画撮影難(生体内)
しかし、いくつかの発見があります。
液体生検によって取り出した細胞外小胞を
多様に分析する事です(3)。
--
細胞外小胞は
〇エクソソーム
〇エクトサーム
大きくは2つに分類することができます(11)。
エクトサムはエクソソームと形成方法が異なります。
細胞膜(plasma membrane)から直接発芽して
細胞外に放出されます。
サイズはエクソソームよりもバラつき、平均値が大きく、
50nm~1μmの径を有します。
一方、エクソソームはエンドソームの後期課程における
発芽によって生じ、その大きさは
40~160nm(平均100nm)と報告されています。
--
本記事では細胞外小胞のうちエクソソームに焦点を当てます。
エクソソーム研究の為の精製、分析は
その異種性から難しいとされています。
例えば、エクトサムも含めて
大きさで選別した場合、重複する領域もある事から
エクソソームだけを精製することが難しく
他の細胞外小胞も交じってしまうことがあります。
しかし、
エクソソームはドナー細胞内の制御プロセスを含み
それらが材料構成比や機能を決定すると考えられます。
それが細胞外に放出されます(3,7,12)。
従って、研究対象としては魅力があります。
エクソソームの隔離方法はまだ十分ではなく
現在の生物学的バイオマーカーによる単離法では
特定の内容物を持つ一部のエクソソームしか
認識する事ができないかもしれません(2,8,13,14)。
従って、単離するためのより有効な方法の開発が必要です。

//考察//ーー
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu(敬称略)からなる
エクソソームの研究者の方は
少なくとも2020年2月に報告された時点では
エクソソーム研究を推し進めるために
エクソソームをどうやって仕分け、単離するか?
ということが背景で多く触れられています。
細胞外小胞はエクトサムも含めて
様々な種類があり、大きさ、内容物、表面リガンドなども
おそらく異なります。
その中で、どういう基準で、どうやって
特定のエクソソームを単離するか?
それは、特性評価などの基礎的な研究だけではなく
治療の為の応用の際にも必要になる事です。
エクソソームは輸送媒体としては
生体互換性が高く有望である可能性がありますが、
その異種性、複雑性が他のナノ粒子に比べて
実現可能性を制限している可能性があります。
従って、単胞レベルでの効果的な選別法について
継続的な調査、開発が必要になります。

(参考文献)
(1)
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu
The biology, function, and biomedical applications of exosomes
Science 367 , eaau6977 (2020)
(2)
C. Théry et al., Minimal information for studies of
extracellular vesicles 2018 (MISEV2018): A position
statement of the International Society for Extracellular
Vesicles and update of the MISEV2014 guidelines.
J. Extracell. Vesicles 7, 1535750 (2018). doi: 10.1080/
20013078.2018.1535750; pmid: 30637094
(3)
R. Kalluri, The biology and function of exosomes in cancer.
J. Clin. Invest. 126, 1208 – 1215 (2016). doi: 10.1172/JCI81135;
pmid: 27035812
(4)
C. Kahlert, R. Kalluri, Exosomes in tumor microenvironment
influence cancer progression and metastasis. J. Mol. Med. 91,
431 – 437 (2013). doi: 10.1007/s00109-013-1020-6;
pmid: 23519402
(5)
G. van Niel, G. D ’ Angelo, G. Raposo, Shedding light on the cell
biology of extracellular vesicles. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 19,
213 – 228 (2018). doi: 10.1038/nrm.2017.125; pmid: 29339798
(6)
K. M. McAndrews, R. Kalluri, Mechanisms associated with
biogenesis of exosomes in cancer. Mol. Cancer 18, 52 (2019).
doi: 10.1186/s12943-019-0963-9; pmid: 30925917
(7)
M. Mathieu, L. Martin-Jaular, G. Lavieu, C. Théry, Specificities
of secretion and uptake of exosomes and other extracellular
vesicles for cell-to-cell communication. Nat. Cell Biol. 21,
9 – 17 (2019). doi: 10.1038/s41556-018-0250-9;
pmid: 30602770
(8)
M. J. Shurtleff, M. M. Temoche-Diaz, R. Schekman,
Extracellular vesicles and cancer: Caveat lector. Annu. Rev.
Cancer Biol. 2, 395 – 411 (2018). doi: 10.1146/annurev-
cancerbio-030617-050519
(9)
C. Harding, J. Heuser, P. Stahl, Receptor-mediated
endocytosis of transferrin and recycling of the transferrin
receptor in rat reticulocytes. J. Cell Biol. 97, 329 – 339 (1983).
doi: 10.1083/jcb.97.2.329; pmid: 6309857
(10)
B. T. Pan, K. Teng, C. Wu, M. Adam, R. M. Johnstone,
Electron microscopic evidence for externalization of the
transferrin receptor in vesicular form in sheep reticulocytes.
J. Cell Biol. 101, 942 – 948 (1985). doi: 10.1083/jcb.101.3.942;
pmid: 2993317
(11)
E. Cocucci, J. Meldolesi, Ectosomes and exosomes: Shedding
the confusion between extracellular vesicles. Trends Cell Biol.
25, 364 – 372 (2015). doi: 10.1016/j.tcb.2015.01.004;
pmid: 25683921
(12)
M. P. Bebelman, M. J. Smit, D. M. Pegtel, S. R. Baglio,
Biogenesis and function of extracellular vesicles in cancer.
Pharmacol. Ther. 188, 1 – 11 (2018). doi: 10.1016/
j.pharmthera.2018.02.013; pmid: 29476772
(13)
D. K. Jeppesen et al., Reassessment of exosome composition.
Cell 177, 428 – 445.e18 (2019). doi: 10.1016/
j.cell.2019.02.029; pmid: 30951670
(14)
E. Willms, C. Cabañas, I. Mäger, M. J. A. Wood, P. Vader,
Extracellular vesicle heterogeneity: subpopulations, isolation
techniques, and diverse functions in cancer progression.
Front. Immunol. 9, 738 (2018). doi: 10.3389/
fimmu.2018.00738; pmid: 29760691

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