2022年4月29日金曜日

エクソソームの生物学的生成機序

エクソソームがどのように生物学的に生成されるのか?
これにおける基礎的な事も含む、より詳しい調査は
エクソソームの構成要素である
〇内容物
〇プラズマ膜
〇表面リガンド
これらの材料を推定し、あるいは特定する上で非常に重要です。
例えば、表面リガンドがどのようであるかは
陥入プロセスを追うことで推定することができます。
また、内容物に関しては
細胞内のどの器官(トランスゴルジ網)から
物質が運ばれて、生成したのか?
ということを調べる事によって一部明らかになります。
例えば、
自己免疫疾患を持つ患者さんの免疫細胞から
分泌されるエクソソームによる物質輸送は
病態において重要な可能性があります。
そうした場合、
エクソソームの内容物を調べる事は1つ重要になります。
その内容物がトランスゴルジ網から輸送されるのであれば、
異常のある免疫細胞のトランスゴルジ網を調べる事に寄って
何か重要な発見がある可能性もあります。
エクソソームを薬剤のナノキャリアとして使う場合には
生成、精製したエクソソームに元々含まれている
内容物や表面リガンドに注意する必要があります。
従って、内容物がどのように生じているかを
エクソソームの生成過程を詳しく調べることで
推定することは、
少なくとも一定の意義があります。
また、プラズマ膜がより複雑な事もわかります。
これらの事を総合的に把握するためには
エクソソームの生物学的な生成過程の基礎を学ぶ必要があります。
--
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu(敬称略)からなる
医療研究グループはエクソソームの生成過程の基礎について
総括されています(1)。
その内容について独自の説明、考察を加えながら、
読者の方と情報共有したいと思います。

エクソソームはプラズマ膜の2度の陥入によって生じます。
この「2度の陥入(double invagination)」とは
エンドサイトーシスするときに
細胞膜に陥入するプロセスと
それによってできたエンドソームに
陥入するプロセスを指します。
エンドソーム内に複数の腔内膜小胞ができている状態では、
多胞体(multivesicular bodies(MVBs))。
このように呼ばれます。
エンドソーム内にある状態では
腔内膜小胞(intraluminal vesicles (ILVs)。
このように呼ばれ、エキソサイトーシスにより
細胞外に放出されるとエクソソームと呼ばれます。
そのサイズは40~160nmの大きさです。
従って、肝臓にも消化されにくく、
かつ、単球などによる除去も起こりにくい大きさである
と認識しています。
--
前述したように1度目の陥入はエンドソームの形成に関わります。
その初期のエンドソームの形成、量は
小胞体のトランスゴルジ網が関係しています(2-7)。
エンドソームは細胞質内で成熟し、
後期のエンドソームでは後にエクソソームとなる
腔内膜小胞を多く含んだ多胞体となります。
2度目の陥入はトランスゴルジ網から供給される
タンパク質を含む物質の機械的な圧力によって(??)
エンドソームが陥入されることです。
それによって腔内膜小胞が複数、エンドソーム内腔に生じます。
--
この多胞体は全て細胞外に放出されるわけではありません。
一部はリソソーム、オートファゴソームと融合し、
それによって分解されます。
残りを含む一部は細胞膜であるプラズマ膜と融合して
空内膜小胞がエクソソームとして細胞外に放出されます(3,8)。
--
エクソソーム生成の起源(材料)は
〇The Ras-related protein GTPase Rab
〇Sytenin-1
〇TSG101(tumor susceptibility gene 101)
〇ALIX(apoptosis-linked gene 2-interacting protein X)
〇syndecan-1
〇ESCRT (endosomalsorting complexes required for transport) proteins
〇phospholipids
〇tetraspanins
〇ceramides
〇sphingomyelinases,
〇SNARE [soluble N-ethylmaleimide-sensitive factor (NSF) attachment protein receptor] complex proteins
これらです。
しかし、さらなる深堀が生体内の正確な律速機序を
把握するため必要となります(5,9,10)。
〇エクソソームの生物生成の経路と
〇細胞内小胞内外を行き来する(trafficking)事に関連した
 細胞内の他の分子経路
これらの交絡はエクソソームの機能的な研究の解釈を
より複雑にしてきました。
例えば、上述したタンパク質RabやESCRTなどの
タンパク質のloss- or gain-of-function実験で
物質、機能の有無がどのような影響を与えるか調べられました。
しかし、オートファジー、リソソーム経路、
ゴルジ体由来の小胞交換など
多くの機能に影響を与えてしまいました。
従って、エクソソームにだけ影響を与える要因を
調べる事は容易ではありませんでした。
一方で、
特定の細胞種では培養条件や細胞の遺伝子状態は
生体内でエクソソームの生物生成の制御において
想定上の鍵の要因となっているかもしれないとされています(5)。
従って、エクソソームに関連する制御因子が
それぞれで異なる事は、
その調査が異なる方法によって行われたからである
と考える事ができます(6)。
--
エクソソーム生成がどれくらいの速さ、率で起こるか
という計算は難しいとされています。
なぜならその動的機序は新たな生成だけではなく、
周りの細胞、あるいは自分の細胞(?)への
取り込み、再取り込み(?)も関わるからです。
そういった中で、
単一細胞レベルで低速度撮影で
エクソソームに含まれるテトラスパニン抗体の
信号を検知して、その正味の生成量を
癌化していない乳房上皮細胞と
癌化したそれとを比較しています。
その比較によれば、
癌細胞のほうが一時間、一細胞あたり
60~65個のエクソソーム生成が
通常細胞よりも少なかったことが示されました(11)。
しかし、この結果は報告によって異なります(2,9)。
異なる単離方法である、
もしくは、
エクソソームと大きさが一部重複する
エクトサムを同時にカウントしていた可能性もあります。

//考察//ーー
エクソソームの生成が培養条件や遺伝子の状態によって
変わるという事は、エクソソームを薬剤封入のための
ナノキャリアとして使う際の特性異種性と関わると考えられます。
ナノ粒子を利用した薬剤輸送システムでは
このような特性バラつきが度々問題視されています。
エクソソームの生成に関わる物質は多岐にわたり、
その条件によっても変わるとなると
よりこの異種性、ばらつきの問題が複雑となります。
少なくとも現時点で言えることは
エクソソームのもととなる細胞や
エクソソームを取り出した時の細胞の培養条件などの
より詳しい情報を掲載する必要があると考えられます。

(参考文献)
(1)
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu
The biology, function, and biomedical applications of exosomes
Science 367 , eaau6977 (2020)
(2)
R. Kalluri, The biology and function of exosomes in cancer.
J. Clin. Invest. 126, 1208 – 1215 (2016). doi: 10.1172/JCI81135;
pmid: 27035812
(3)
G. van Niel, G. D ’ Angelo, G. Raposo, Shedding light on the cell
biology of extracellular vesicles. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 19,
213 – 228 (2018). doi: 10.1038/nrm.2017.125; pmid: 29339798
(4)
K. M. McAndrews, R. Kalluri, Mechanisms associated with
biogenesis of exosomes in cancer. Mol. Cancer 18, 52 (2019).
doi: 10.1186/s12943-019-0963-9; pmid: 30925917
(5)
M. Mathieu, L. Martin-Jaular, G. Lavieu, C. Théry, Specificities
of secretion and uptake of exosomes and other extracellular
vesicles for cell-to-cell communication. Nat. Cell Biol. 21,
9 – 17 (2019). doi: 10.1038/s41556-018-0250-9;
pmid: 30602770
(6)
E. Willms, C. Cabañas, I. Mäger, M. J. A. Wood, P. Vader,
Extracellular vesicle heterogeneity: subpopulations, isolation
techniques, and diverse functions in cancer progression.
Front. Immunol. 9, 738 (2018). doi: 10.3389/
fimmu.2018.00738; pmid: 29760691
(7)
N. P. Hessvik, A. Llorente, Current knowledge on exosome
biogenesis and release. Cell. Mol. Life Sci. 75, 193 – 208
(2018). doi: 10.1007/s00018-017-2595-9; pmid: 28733901
(8)
G. van Niel, G. D ’ Angelo, G. Raposo, Shedding light on the cell
biology of extracellular vesicles. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 19,
213 – 228 (2018). doi: 10.1038/nrm.2017.125; pmid: 29339798
(9)
M. P. Bebelman, M. J. Smit, D. M. Pegtel, S. R. Baglio,
Biogenesis and function of extracellular vesicles in cancer.
Pharmacol. Ther. 188, 1 – 11 (2018). doi: 10.1016/
j.pharmthera.2018.02.013; pmid: 29476772
(10)
C. Ciardiello et al., Focus on extracellular vesicles: New
frontiers of cell-to-cell communication in cancer. Int. J. Mol.
Sci. 17, 175 (2016). doi: 10.3390/ijms17020175;
pmid: 26861306
(11)
Y. J. Chiu, W. Cai, Y. R. Shih, I. Lian, Y. H. Lo, A single-cell
assay for time lapse studies of exosome secretion and cell
behaviors. Small 12, 3658 – 3666 (2016). doi: 10.1002/
smll.201600725; pmid: 27254278

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