2022年4月25日月曜日

エクソソームに封入された薬剤の効果

エクソソームは離れた細胞間のコミュニケーションの
伝達役として、身体のあらゆる(?)細胞に備わった
内胞システムです。
従って、同じように胞を持つナノ粒子を使って
輸送する場合に、エクソソームを含む細胞外輸送媒体を
使う事は極めて合理的であると言えます。
エクソソームの内外にはドナー細胞の情報が
多く詰まっています。
中にタンパク質や核酸、脂質などが含まれています。
これを狙いの薬理を生むようにエンジニアリングする事で
身体の自然な機序を使って、治療することが
可能になるかもしれません。
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Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun
(敬称略)からなる医療研究グループは
エクソソームに様々な薬理を持つ物質を輸送する事を
想定して、それに関する情報を総括されています。
その内容の一部と追記を読者の方と情報共有したいと思います。

//低分子量分子の輸送//ーー
受動的、能動的な方法でエクソソームの中に
様々な低分子量の薬剤を封入する事ができます。
その分子は親水性、疎水性、両方の場合は想定されます。
ほとんどのケースで
エクソソームによる輸送は
〇標的細胞での高い薬剤蓄積(標的性向上)
〇薬剤分子の安定性向上
〇血液循環時間の向上
〇低いIC-50(輸送、取り込み効率向上)
これらが挙げられています。
<研究①>
牛乳由来のエクソソームの中に抗がん剤を
受動的方法によって封入。
封入された抗がん剤。
〇Paclitaxel
〇Doxorubicin
〇Withaferin
これらです(2)。
これらの抗がん剤はエクソソームからゆっくりと
放出されています。
Paclitaxel、Withaferin封入エクソソームでは
A549肺癌細胞に対する抗増殖活性において
露出されたそのままの状態よりも
低いIC-50値でありました。
これは異種移植マウスのモデル、生体内で確認されています。
特にWithaferin封入エクソソームが効果がありました(2)。
<研究②>
EL-4マウスリンパ腫細胞から取り出したエクソソームに
クルクミンを封入しました。
それによると試験管内で高いクルクミン安定性。
生体内で高い血中濃度がありました(3)。
クルクミンレベルはCD11b+Gr-1+標的細胞で増えました。
また、IL-6やTNF-αなど炎症性サイトカインも
免疫応答性マウスで顕著に低減しています(3)。
つまり、拒絶反応が起こりにくい薬剤輸送システムである
という事も考えられます。
--
<考察>
研究②から血液性のエクソソームは
血中での寿命が長く、とどまりやすい事を示しています。
こういった一致性は他の臓器や組織でも同様かもしれません。
例えば、心筋細胞からのエクソソームは
心筋近くに蓄積しやすいという事がある可能性があります。
iPS細胞で脳神経など取得が難しい細胞も含めて
様々な細胞に分化させることができたら
任意の細胞からエクソソームを生み出すことができます。
そうすれば、
エクソソームを使った細胞種特異的輸送系統(*)の
可能性が広がります。
(*)Cell-type-specific delivery system。
--
<研究③>
マクロファージ由来のエクソソームにPaclitaxel封入しました。
3LL-M227ネズミ科のLewis肺癌細胞において
脂質ナノ粒子に同じPaclitaxelを封入した場合に比べて
顕著に細胞内への取り込みが増えた事が示されています(4)。
Paclitaxel封入エクソソームは
MDCK MDR1細胞で薬剤抵抗性の問題を克服したことが
確認されています。
エクソソームはP糖たんぱく質薬物流出システムを
逃れる事ができるとされていますが、
エクソソームそのものがP糖たんぱく質を
阻害するわけではなく、
薬剤抵抗性をなぜ防いだのかはわかっていません(1)。
またマクロファージ由来のエクソソームに封入する事で
そのままのPaclitaxelよりも
顕著なIC-50値の減少が確認されています(4)。

//治癒性RNAの輸送//ーー
RNAは大きな分子なので生体内で輸送するのは難しい
とされています
そのため
〇陽イオン性リポソーム(5,6)
〇デンドリマー(7)
〇陽イオン性ポリマー(8)
これらのナノ粒子使用の検討がされてきました。
しかしながら、これらの輸送媒体は
臨床で使用するには
〇安定性
〇安全性
〇オフターゲット問題
これらなどいくつか超えないといけない壁があります(9)。
一方、
siRNAやmiRNAをエクソソームの中に封入する
最も共通的な方法は電子穿孔法です。
この方法はエクソソーム膜に穴をあける
能動的封入法であり、大きな分子を封入するのに
適しているからです。
しかしながら、電気穿孔法の電流印加の間
エクソソームやRNAが凝集してしまう問題があります。
<研究①>
マウス樹状細胞由来のエクソソームによって
Lamp2bタンパク質(リソソーム関連タンパク質)を標的にし
GADPH siRNAとBACE1 siRNAを
血液脳関門を超えて輸送しました。
それにより静脈注射の後、ワイルドタイプのマウスの脳において
mRNA発現とβアミロイドタンパク質が強く減少しました。
Lipofectamine(遺伝子導入試薬)
siRNA-RVG-9R(siRNA神経細胞伝達)
これらよりも減少しています(10)。
<研究②>
人の血漿から取り出したエクソソーム内にsiRNAを導入。
単球とリンパ球を標的にすることが可能になりました。
それによりMAPK1遺伝子の働きを抑制することに成功しています。
siRNA積載エクソソームは受け細胞の細胞質に蓄積しています。
生体内での環境では試験管よりもエクソソームの取り込みが
難しくなります(11)。
<研究③>
GE-11標的エクソソームにlet-7a miRNAを封入し
EGFRが過剰発現した乳癌細胞に輸送しました。
マウスの異種移植モデルです。
それによりコントロール条件よりも
エクソソームの高い腫瘍蓄積が見られました。
以前にlet-7a miRNAを遺伝子導入された
ドナー細胞から取り出したエクソソームは
マウスのモデルで腫瘍の成長を抑制しました(12)。
エクソソームは遺伝子輸送をより安全に行うことができます。
ウィルス、陽イオン脂質、ポリマーから成る
ナノ粒子よりも安全である可能性があります。

//治癒性タンパク質の輸送//ーー
エクソソームはマクロ分子タンパク質を輸送する
有望な方法の一つです。
タンパク質はドナー細胞の遺伝子エンジニアリングを
通して封入することもできます。
あるいはエクソソームに直接積載することもできます。
ドナー細胞にプラスミドを持つ遺伝子が導入されます。
細胞はその遺伝子によって生み出された
タンパク質を細胞質に含み
それがエクソソームの中に取り込まれます。
その後、取り出されたエクソソームを精製します。
-
カタラーゼ、レドックス酵素を積載した
マクロファージ由来のエクソソームは
急性脳炎症を持つマウスの酸化ストレスに対する
神経保護機能がありました。
カタラーゼ積載エクソソームは
マイクログリオーシスとアストロサイトーシス
を顕著に減少させました。
これらは共に脳の病原性の作用です。
これらは経鼻投与の後確認されました(13)。

//イメージング分子の輸送//ーー
イメージングの為、エクソソームの表面構造を修正する
手法が開発されています。
<研究①>
人、胚の腎臓293Tエクソソームは
Gaussian luciferase(発光酵素)を発現しています。
それをビオチン受容体ドメインと融合させます。
これによって蛍光発光するエクソソームを
生体内で追跡することができます(14)。
<研究②>
エクソソームタンパク質CD24, AQP2に
蛍光色素分子を複合体化させた抗体を使っています。
それによってCD24, AQP2を持つエクソソームを
試験管内で追跡する事ができます(15)。
<研究③>
内皮細胞由来のエクソソームに
抗CD63抗体-マイクロビーズ複合体
Q-dots(量子ドット)-抗体複合体
これらを組み込みナノ粒子追跡分析を行っています(16)。

//まとめ//ーー
エクソソームは後期のエンドソームの発芽によって
形成され、多胞体(MVBs)となり、
その後、細胞外に放出されます。
従って、エンドソームに含まれるたんぱく質
〇Sortingタンパク質(Rab5, Rab27 and Rab35)
〇ヒートショックタンパク質
〇テトラスパニン(CD9, CD63 and CD81) 
これらをエクソソームが含むことは自然な流れです。
従って、どのエクソソームを選ぶかは
治療を行う上で重要です。
これらの情報はエクソソームの内腔だけではなく
膜や表面リガンドでも当てはまると考えられます。

(参考文献)
(1)
Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun 
Engineering exosomes as refined biological nanoplatforms for drug delivery
Acta Pharmacologica Sinica volume 38, pages754–763 (2017)
(2)
Munagala R, Aqil F, Jeyabalan J, Gupta RC.  Bovine milk-derived exo-
somes for drug delivery.  Cancer Lett 2016; 371: 48–61.
(3)
Sun D, Zhuang XY, Xiang X, Liu Y, Zhang S, Liu C, et al.  A novel 
nanoparticle drug delivery system: the anti-inflammatory activity of 
curcumin is enhanced when encapsulated in exosomes.  Mol Ther 
2010; 18: 1606–14.
(4)
Kim MS, Haney MJ, Zhao Y, Mahajan V, Deygen I, Klyachko NL, et al.  
Development of exosome-encapsulated paclitaxel to overcome mdr in 
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(5)
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lipo some complex in mouse models of cancer.  Clin Cancer Res 2004; 
10: 7721–6.
(6)
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siRNAs in adult mice.  Biochem Biophys Res Commun 2003; 312: 
1220–5.
(7)
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Internally cationic polyamidoamine PAMAM-OH dendrimers for siRNA 
delivery: effect of the degree of quaternization and cancer targeting.  
Biomacromolecules 2009; 10: 258–66.
(8)
Thomas  M,  Lu  JJ,  Ge  Q,  Zhang  C,  Chen  J,  Klibanov  AM.    Full 
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efficiency and specificity to mouse lung.  Proc Natl Acad Sci U S A 
2005; 102: 5679–84.
(9)
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delivery of small interfering RNA.  Biomaterials 2012; 33: 713–50.
(10)
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Nat Biotechnol 2011; 29: 341–5.
(11)
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et al.  Plasma exosomes can deliver exogenous short interfering RNA 
to monocytes and lymphocytes.  Nucleic Acids Res 2012; 40: e130.
(12)
Ohno S, Takanashi M, Sudo K, Ueda S, Ishikawa A, Matsuyama N, et 
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microRNA to breast cancer cells.  Mol Ther 2013; 21: 185–91.
(13)
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(14)
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novel methods for analysis of exosomes released from endothelial 
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2639728.


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