エクソソームに薬剤を効率的に注入する。
そのうえで表面リガンドやナノ粒子の構造を守る。
このような事は
ナノ粒子製剤において必須のことです。
効率的に注入できないと大量生産に耐える工程として
採用することができません。
従って、「Method」を確認し、シェアする事は重要です。
Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun
(敬称略)からなる医療研究グループは
エクソソームに対する受動的、能動的な
薬剤封入方法、結合方法について総括されています。
その内容の一部と追記を読者の方と情報共有したいと思います。
<<受動的な薬剤封入方法>>
受動的な方法は比較的シンプルで
系の中に活性な物質を加える必要はありません。
//エクソソームと共に培養//ーー
エクソソームがシンプルに薬剤と共に培養されます。
薬剤は培養液中で濃度勾配に従って
エクソソームの中に封入されていきます。
封入効率は薬剤分子の疎水性の度合いによって決まります。
疎水性の薬剤はエクソソームの膜の脂質層と相互作用します(2)。
1つの研究。
マウスリンパ腫由来のエクソソームは
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の中のクルクミンと共に
培養されました。22℃5分の条件です。
その後、遠心分離機で精製されます(2)。
もう1つの研究。
酵素カタラーゼと4量体タンパク質(250kDa)。
これらをエクソソームに封入する事に成功しました。
エクソソームはRAW264.7細胞由来。
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、室温、18時間。
これらの条件でした(3)。
この方法の欠点は時間の長さから示されるように
積載効率の低さです。
//ドナー細胞と共に培養//ーー
エクソソームを放出するドナー細胞を
薬剤と共に処理します。
1つの研究。
SR4987間葉細胞と共に低用量のパクリタキセルを
処理しました。細胞を洗浄し、
新鮮培地の新しいフラスコで再び、再培養しました(4)。
48時間後、その細胞の馴化培地を集めて
エクソソームを隔離しました。
それによりパクリタキセルが封入された
エクソソームを得る事ができます。
その抗がん剤であるパクリタキセルが封入された
エクソソームは、そうではないエクソソームに比べて
試験管におけるCFPAC-1:ヒト膵臓腺がん細胞。
これにおいて増殖効果を抑制する働きがありました。
しかし、興味深いことに
SR4987間葉細胞から取り出したエクソソームも
ヒト膵臓腺がん細胞に対して一定の
抗増殖効果がありました。
それは癌微小環境を変えるタンパク質や核酸が
エクソソームの中にもともと含まれていたからである
と考えられています(4)。
//考察//ーー
薬剤を細胞内にエンドサイトーシスさせる事によって
自己組織様に薬剤が封入されたエクソソームが放出された
ことが確認されています。
従って、遺伝子などの作用によって
細胞表面に特異的に発現させたタンパク質を含む
改変されたドナー細胞由来のエクソソームを
得るためには、封入させたい薬剤と共に培養することで
狙いの表面タンパク質を含むエクソソームが
得られる可能性があると考えられます。
<<能動的な薬剤封入方法>>
//超音波処理//ーー
ドナー細胞からのエクソソームは
薬剤やタンパク質と共に混合されます。
その後、
ホモジナイザーを使って超音波処理されます。
超音波破砕機からの機械的なせん断応力は
エクソソームの膜の完全性を揺るがせ、
その膜の変形の間にエクソソームの中に
薬剤が封入されます。
実際にエクソソームの微小粘度は
超音波処理の後、顕著に減少していたことが
実験で示されています(5)。
一方で、そのような力は
エクソソームの膜のリガンドや膜の脂質に
大きな影響を与えないことが示されています。
また、
エクソソームの膜の完全性は
エクソソームを37℃で培養した時
1時間以内で元に回復したことが示されています(5)。
しかしながら、いくつかのケースでは
封入したい薬剤はエクソソームの中に入るだけではなく
外側のリガンドや膜と結合して、
外側に複合体を形成することがありました。
故に、製造の上で条件を細かく検討して
外側に形成される薬剤をなくす必要があります。
その様な形成過程は2層構造となっており、
初めは外側に急速に結合し、
その後、内側に取り込まれるとされています(5)。
従って、内側に取り込まれた後、
外側の薬剤を取り除くための何らかの処理が
必要かもしれません。
しかし、その場合、
膜表面のリガンドを残した状態にする必要があります。
//押し出し(Extrusion)//ーー
ドナー細胞からのエクソソームを薬剤と混合し、
その混合材料を注射器ベースの脂質押し出し機に
積載します。その押し出し機は
温度制御下で100nm~400nmの細孔膜を持っています。
押し出しの間、エクソソーム膜は壊れ
活発に薬剤と混合されます。
このようにエクソソームの構造維持において
厳しい環境下、大きな力のもと処理されると
ゼータ電位や膜のリガンドなどが
維持されるかどうかは不明です。
1つの研究。
MDA-MB231:乳癌細胞由来のエクソソームに
ポルフィリンをこの方法で搭載した場合、
ゼータ電位は変わり、細胞傷害性を示しました。
一方で、他の方法でポルフィリンを同様に
搭載したところ細胞傷害性は見せませんでした(6)。
しかし、この報告では31回の押出を集中的に
行ったため、そのような結果になったかもしれません(6)。
もう1つの研究。
RAW264.7マクロファージ由来のエクソソームに
10回の押出によってカタラーゼを積載した場合
細胞傷害性はなく、神経保護的な効果もありました。
この方法では凍結/融解、もしくはシンプルな培養法方法よりも
これらの安全性の効果は高かったとされています(3)。
それゆえに、より詳しい調査が必要であると考えられます。
//電気穿孔法//ーー
電気穿孔法(でんきせんこうほう)とは
電気伝導性のある溶液中で電気パルスをかけ
細胞膜に孔をあけ物質を導入する手法です。
エクソソームに適用された場合
エクソソームのリン脂質2重層で電流が乱されます。
それによって一時的に変形し、穴が形成します。
薬剤もしくは核酸はこの一時的に形成された穴を通過して
エクソソーム内腔に輸送されます。
エクソソームの膜の特性完全性は薬剤が封入された後に回復します。
この方法は、エクソソーム内にsiRNA, miRNAを積載する場合に
広く使われています。
なぜならこれらの拡散は比較的大きく、
自発的にエクソソーム内に拡散する事ができないからです。
一方、小さくて疎水性の分子の場合は
自発的な拡散能力に優れています。
電気穿孔法は化学トランスフェクションを通じて
siRNAの積載に優れています。
しかしながら、
電気穿孔法はRNA凝集やエクソソーム不安定性の原因となり
結果として低い積載容量となってしまいます(7)。
1つの研究。
トレハロース2糖のような最適化された緩衝液中での
電気穿孔法ではエクソソームの構造上の完全性を維持する
ことを助けます。
さらに、脂肪肝細胞から取り出したエクソソームでは
懸念される凝集を防ぐことができました(8)。
--
電気穿孔法はエクソソームのRNA積載を促進するだけではなく
拡散しにくい親水性の小さな分子の積載も促進します。
例えば、
〇5,10,15,20-tetra-kis (1-methyl-4-pyridinio) porphyrin tetra (p-toluenesulfonate)
〇TMP
これらは親水性の小さな分子で光力学作用のため使われます(6)。
光線力学的療法などにも利用できると理解しています。
//被膜浸透促進による培養//ーー
サポニンはサーファクタント(界面活性)分子で
細胞膜表面でコレステロールと複合体を作り、
穴を形成します。それによって被膜浸透を促します(9)。
サポニンはエクソソーム内へのカタラーゼ封入容量を
向上させます。その封入能力は
単純な培養方法よりも優れています。
サポニンは表面活性媒体ですが、
カタラーゼを分解させず、その活性は保持されます(3)。
サポニンは拡散しにくい親水性分子をエクソソーム内へ
輸送させる事を助けます。
実際の研究では11倍の封入効率向上が確認された
という報告もあります(6).
しかし、サポニンは溶血性活性がある事が懸念されます(9)。
従って、サポニンの使用量は制限されます。
またサポニンを使って培養した場合は
生体内に入れるまでにサポニンを抜くために
エクソソームを精製する必要があります。
//直接的複合体形成のためのクリックケミストリー//ーー
化学的方法は共有結合を通して
エクソソームの表面に分子を直接結合させるために用いられます。
胴触媒を用いたアジド-アルキリン付加環化。
これはクリックケミストリーとして知られています。
この結合促進手法は
小さな分子とエクソソーム表面のマクロ分子を
選択的に結合させ、複合体を形成させるのに適しています(10)。
アルキリン化学グループ
アジド化学グループ
これらはトリアゾール結合を形成するために反応します。
この反応は急速で効率的であり、
伝統的なクロス結合反応に比べて優れています。
(マレイミド-チオールカップリング)。
ゆえに複合体結合部位の制御性に優れています。
これは、マクロ分子の生物学的特性の修正に優れています。
なぜなら、水性の媒体中で起こるからです(11)。
実際にカルボジイミドケミストリーを使った
アルキン基にクロスリンクしたエクソソームは
アジド、アジド-フロライト545と複合体を形成しました(12)。
この複合体はエクソソーム内に取り込まれません。
従って、反応は緩やかで
エクソソームの構造や機能に影響を与えるものではありません。
//エクソソームタンパク質に対する抗体//ーー
近年の研究ではエクソソームはドナー細胞の
遺伝子、タンパク質内容物を運ぶことがわかっています。
高い特異性を持った抗体に複合体化された
フルオロフォア、マイクロビーズは
細胞表面の特定の抗原に結合します。
1つの研究。
DiFi細胞からのエクソソームを分析、仕分けするために
この蛍光発光分子を利用した報告があります(13)。
EGFRとエクソソームマーカーCD9。
これらがエクソソーム表面-Alexa-647複合体によって
検出されました。
エクソソームはドナー細胞の抗原を輸送するので、
特異的抗原と複合体化したマイクロビーズが
エクソソーム隔離、生体内追跡のために利用できる
可能性があります。
//まとめ//ーー
エクソソームに薬剤を積載するために様々な方法があり
それぞれ利点と課題があります。
また積荷の親水性、疎水性などの特性によっても
適した方法が異なります。
実際に超音波や押し出しによって積載する方法は
エクソソームに対するカタラーゼの積載において
最も高い封入効率を示したとされています(3)。
それらは受動的な培養や凍結/解凍のプロセスと比べても
優れています。
しかしながら、積載効率は評価項目の一つです。
エクソソーム膜の保護、エクソソームの安定性も
同時に考慮される必要があります。
実際に超音波や押し出しによる能動的な封入方法は
エクソソームの膜特性を変えたり、
表面リガンドの構造を変える事なども懸念されています。
これらはナノ粒子薬剤の特性に大きく影響を与える項目です。
従って、
全体として最適化するためには
封入方法の更なる調査、開発が必要になります。
(参考文献)
(1)
Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun
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(2)
Sun D, Zhuang XY, Xiang X, Liu Y, Zhang S, Liu C, et al. A novel
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(3)
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drug delivery. J Control Release 2014; 192: 262–70.
(5)
Kim MS, Haney MJ, Zhao Y, Mahajan V, Deygen I, Klyachko NL, et al.
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(7)
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(8)
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Wang M, Altinoglu S, Takeda YS, Xu QB. Integrating protein engineer-
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Ochieng J, et al. Identification and characterization of EGF receptor
in individual exosomes by fluorescence-activated vesicle sorting. J
Extracell Vesicles 2016; 5: 29254.
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