脂質ナノ粒子、金属、細胞なども含めたナノ粒子、
グラフェンなどを含めたナノシート
カーボンナノチューブ、抗体などのナノキャリア、
、、、
様々な薬剤輸送媒体が考えられます。
その中で、脂質ナノ粒子は
新型コロナウィルスワクチンにおいて、
健常者にも接種できるレベルでの安全性で
かつ数億人の人の接種を可能にした量産性、価格などを
実現しています。
従って、今後、この実績を足掛かりに
急速に脂質ナノ粒子を使った核酸の輸送は発展し
様々な疾患、感染症に使われると考えられます。
その点で一歩抜きんでた選択肢と言えます。
一方、
細胞を用いた治療では主に免疫細胞を
生体外でエンジニアリングして
主に血液の癌細胞に特異性を持たせる治療があります(4)。
これはCAR免疫療法と呼ばれ、
課題はありますが、
血液性癌治療において承認されています。
免疫細胞に薬剤を封入するわけではありませんが、
細胞を静脈より導入して、輸送させるという点では
ナノ粒子を使った薬剤輸送媒体とは
一定の類似性を見出すことができます。
抗体は抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate)として
抗体に薬物を結合させることで
抗体の特異性を生かしながら薬剤を輸送するシステムです。
癌治療に利用されますが、
これに関しては臨床結果において
抗体レベルとその特異性に
免疫チェックポイント抑制剤を使った免疫治療のような
強い相関は見られず(3)、
本当に狙いの機序を生み出しているかどうかの
検証の余地は残されていると考えられます。
いずれにしても広範な意味でのナノ材料を使った
治療、薬剤輸送では、
目的の病変部位まで効率的に輸送させる
という需要は普遍的に存在します。
「One-size-fits-all」と表現される
医療研究グループもいます(2)。
薬剤を載せた、あるいは薬剤機能のある
ナノ材料を目的の標的細胞種に効果的に輸送するためには
そこまでの「走化性、向性を得ること」が一つ重要になります。
もう一つは、標的細胞種でナノ材料が固定されることです。
あるいは優先的に取り込まれることです。
従って、ナノ材料を使った薬剤輸送システムでは
広い範囲、マクロでの輸送特異性と
狭い範囲、ミクロでのそれが同時に必要となります。
広い範囲での輸送特異性で技術的障壁となるものが
主に循環器での相互作用です。
多種多様な免疫細胞によって改変が加えられることは
多くの場合考えられます。
あるいは脾臓や肝臓で代謝されることもあります。
そういった要因をさけながら、
かつ病変部位で効率的に取り込まれる必要があります。
上述した脂質ナノ粒子を使った
mRNAの輸送の場合は、静脈注射を行って
血液にある樹状細胞や単球などによって
抗原が作られる機序を利用しているので、
血中に普遍的に存在する細胞への輸送です。
従って、脳神経系、臓器、骨、筋肉、その他組織など
固定的に存在する組織に特異的に輸送する場合と
難易度が大きく異なります。
血液にある標的の方が難易度は低くなります。
別の例でもCAR免疫療法でも
一般的に血液性の癌に利用され、
それが先に承認される形となっています。
真の意味での「One-size-fits-all」となるためには
大きなスケールでの免疫系や代謝性臓器の理解と
小さなスケールでのナノ材料の取り込みなどの理解が
必要になります。
そうしたことを考慮すると
脂質ナノ粒子だけでは解決できない技術的障壁がある
と言えるのではないかと考えられます。
例えば、
大きなスケールで免疫、肝臓、脾臓などの除去、代謝から
逃れるナノ材料を考える必要性も出てきます。
そうした場合、もともと身体の中の「連絡役」として知られる
細胞外小胞は選択肢の一つになると考えられ、
次世代の薬剤輸送媒体として少なくとも一部で
注目されています(1,5)。
細胞外小胞の一つであるエクソソームは
エンドソームの中に形成されるとされています(Ref.(1) Figure.1)。
このエンドソームはどのように形成されるかは
いくつかのパターンがあり、精査していく必要がありますが、
1つは、細胞膜が
「内側(細胞質側)にシャボン玉を作るように」
変形してふくらみ、エンドソームを作ると考えられています。
例えば、新型コロナウィルスが細胞内に侵入するときには
そのように膜融合してエンドソームが形成され、
細胞内感染します。
そうした場合、エンドソームの内側には
「その細胞の表面にあるリガンド、タンパク質が受け継がれる。」
ことが自然です。なぜなら内側から凹んで形成された
シャボン玉(エンドソーム)は内側に細胞膜表面が来るからです。
従って、エンドソームは通常は
内側にToll様受容体などが形成されます。
その理由は上述したように元々細胞表面に存在していた
Toll様受容体をそのまま内側の膜に引き継いでいると
考える事ができます。
これがどういう意味を持つか?
予め深く調査しない状況で仮説を立ててみます。
(調査はこれからです。)
先ほど、エンドソームの内側にエクソソームが
存在すると言いました。
もし、そのエクソソームの膜が
エンドソームの膜によって形成されれば、
エクソソームの外側に同じようなリガンド、表面タンパク質が
引き継いで形成されることになります。
そうすると
元々の細胞と同じ表面タンパク質、リガンドを持った
エクソソームが形成される可能性があるか?
という視点が生まれます。
しかし、この場合、
鍵穴と鍵の関係でいうと「凸と凸」になります。
これからエクソソームの細胞内生合成の機序について
詳しく調べていく必要がありますが、
もしRef.(1) Figure.1に示されているように
エンドソームの内側に形成される
エクソソームの表面タンパク質やリガンドが
鍵と鍵穴の関係で「凸凹(でこぼこ)」となれば、
これは細胞種特異的輸送系統(*1)において大きな意味を持ちます。
(*1)Cell-type-specfic delivery system
つまり、その細胞種から生まれたエクソソームは
その細胞種に取り込まれやすいかもしれない
という仮説が生まれます。
なぜなら、その細胞の表面タンパク質によく結合する
リガンドを表面に含んだナノ粒子がエクソソームだからです。
小児脳腫瘍のお子さんを例に挙げてみます。
そのグリア細胞から放出されたエクソソームは
そのグリア細胞に結合しやすいかもしれないということです。
つまり、細胞種特異的なナノ粒子が
体内で自然な形で存在するかもしれないということです。
現在の幹細胞技術で
お子さんの細胞からiPS細胞技術を使って
グリア細胞に分化させて、
そこで「なんらかの方法(?)」で
エクソソームを大量に分泌させ、
そこに脳腫瘍に効く薬剤を封入して輸送すれば、
薬剤輸送効率が高まるかもしれません。
しかし、これは仮説でしかありません。
それぞれの細胞種から生まれるエクソソームの胞としての
構造はどうか?
というのを詳しく調べる必要があります。
エクソソームは構成分子が他のナノ粒子に比べて
複雑であるといわれています(5)。
また、癌細胞から生まれたエクソソームを
改めて体内に注入することでの副作用は大きいのではないか?
例えば、それをきっかけに転移しないか?
こういった負の側面も頭に浮かびます。
いずれにしてもエクソソームが
細胞内でどのような生理機序で生まれるのか?
エクソソームを薬剤輸送媒体として使い
かつ細胞種特異的輸送系統として利用するには
そこの詳しい調査、研究が必要です。
しかし、
人工的に生み出された他の材料とは異なり、
細胞内の機序を自然な形で利用できる可能性があるため
表面タンパク質の任意性、精度が上がる可能性があります。
Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun
(敬称略)ら医療研究グループは
薬剤の輸送としてエクソソームをエンジニアリングする
ことについて総括されています(1)。
本日は、そのアブストラクトに示されている内容について
自身の知識を動員して詳しく考えたいと思います。
//要約、追記//ーー
エクソソームは細胞外小胞の一つです。
他の細胞外小胞としてはリポソームなどもあります。
大きさがことなるエクトサムもあります。
このエクソソームは離れた細胞間の信号伝達において
重要な輸送媒体として機能しています。
また、その経路は長距離に及びます。
例えば、運動して筋肉を動かせば、
脳を含め、様々な臓器と相互作用します。
その時にはエクソソームがマイヨカインなどと共に
放出されます(6)。それが一つの仲介物質となっています。
このように長距離の輸送に適した生体内物質ですから
同様に注入位置から長距離の輸送が必要な
ナノ材料製剤としての輸送キャリアとしては
適している可能性があります。
また、身体が身体全体のネットワーク構築として
必要な物質として進化の過程で得た物質を
利用する事は一定の合理性を見出すことができます。
例えば、免疫系などの監視を逃れて
拒絶反応が起きにくいかもしれません。
細胞と同様であっても、
同系同種の注入で細胞と同じように
拒絶反応を防ぐことができる可能性があります。
また、どの細胞から放出されたエクソソームかという
異種性が存在する可能性もあります。
エクソソームは自然の条件、環境で
細胞レベルでエンジニアリング、機能を任意に
つけることができます。
しかしながら、狙いの機能、構造を加えるためには
さらに突っ込んだ研究開発が必要です。
Xin Luan氏らはエクソソームに薬剤を詰め込む際
受動的、能動的な方法、両方について総括しています。
またエクソソームをより薬剤有効性を高めるために
機能、構造を修正する技術についても紹介されています。
エクソソームがどのように生合成されるか?
その起源についての例も紹介されます。
このような手法、理解を洗練させる事によって
安定性を高めながら、標的細胞での取り込み効率を
上げることができる可能性があります。
エクソソームは異なる細胞から生じるため
臨床応用が難しいとされています。
これは、異なる細胞から生まれるエクソソームの
大きさ、構成材料(比率)、形、リガンド、内容物
などにおいて異種性がある事を暗示、明示しています。
従って、
iPS細胞技術のように細胞種を絞れる手法において
エクソソームを精製できれば、
こういった壁の少なくとも一部を乗り越えられる
可能性があります。
(参考文献)
(1)
Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun
Engineering exosomes as refined biological nanoplatforms for drug delivery
Acta Pharmacologica Sinica volume 38, pages754–763 (2017)
(2)
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir, Haojun Liang, Jinjun Shi, Avi Schroeder & João Conde
Nanodelivery of nucleic acids
Nature Reviews Methods Primers volume 2, Article number: 24 (2022)
(3)
Bob T. Li, M.D., Ph.D., M.P.H., Egbert F. Smit, M.D., Ph.D., Yasushi Goto, M.D., Ph.D., Kazuhiko Nakagawa, M.D., Hibiki Udagawa, M.D., Julien Mazières, M.D., Misako Nagasaka, M.D., Ph.D., Lyudmila Bazhenova, M.D., Andreas N. Saltos, M.D., Enriqueta Felip, M.D., Ph.D., Jose M. Pacheco, M.D., Maurice Pérol, M.D., Luis Paz-Ares, M.D., Kapil Saxena, M.D., Ryota Shiga, B.Sc., Yingkai Cheng, M.D., Ph.D., Suddhasatta Acharyya, Ph.D., Patrik Vitazka, M.D., Ph.D., Javad Shahidi, M.D., David Planchard, M.D., Ph.D., and Pasi A. Jänne, M.D., Ph.D. for the DESTINY-Lung01 Trial Investigators*
Trastuzumab Deruxtecan in HER2-Mutant Non–Small-Cell Lung Cancer
The New England Journal of Medicine September 18, 2021
(4)
J. Joseph Melenhorst, Gregory M. Chen, Meng Wang, David L. Porter, Changya Chen, McKensie A. Collins, Peng Gao, Shovik Bandyopadhyay, Hongxing Sun, Ziran Zhao, Stefan Lundh, Iulian Pruteanu-Malinici, Christopher L. Nobles, Sayantan Maji, Noelle V. Frey, Saar I. Gill, Lifeng Tian, Irina Kulikovskaya, Minnal Gupta, David E. Ambrose, Megan M. Davis, Joseph A. Fraietta, Jennifer L. Brogdon, Regina M. Young, Anne Chew, Bruce L. Levine, Donald L. Siegel, Cécile Alanio, E. John Wherry, Frederic D. Bushman, Simon F. Lacey, Kai Tan & Carl H. June
Decade-long leukaemia remissions with persistence of CD4+ CAR T cells
Nature volume 602, pages503–509 (2022)
(5)
Inge Katrin Herrmann, Matthew John Andrew Wood & Gregor Fuhrmann
Extracellular vesicles as a next-generation drug delivery platform
Nature Nanotechnology volume 16, pages748–759 (2021)
(6)
Joshua P. Nederveen et al.
Extracellular Vesicles and Exosomes: Insights From Exercise Science
Front. Physiol., 01 February 2021
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