2022年4月26日火曜日

癌転移の臓器向性に一致したエクソソーム向性

癌は全身の様々な組織にできる事が知られています。
しかし、原発腫瘍がどの組織、臓器に転移するかは
全くランダムではなく、一定の傾向があるとされています。
例えば、乳癌では骨、肺、肝臓、脳に転移しやすい
ことが知られています。
このような転移の臓器特異性については
今まで多くの研究がされてきました(1-6)。
その距離を繋ぐ何らかの信号伝達があると考えられる中で
吸着や腫瘍組織近くで亢進する細胞外マトリックス。
これらに関わる
〇インテグリン
〇テネイシン
〇ペリオスチン
これらは癌細胞の転移に関わる表面タンパク質である
ということが知られています(7-10)。
--
その中でインテグリンは転移のおける臓器向性を決める上で
重要な役割をはたしている事が報告されています(1)。
例えば、原発腫瘍が乳癌や膵臓癌であり
転移先が肺、肝臓であるそれぞれの細胞から
分泌されるエクソソームを調べると
そのエクソソームは転移先である肺、肝臓に
取り込まれる効率がそれぞれ数倍高いことが示されています(1)
その臓器向性に影響を与えている要因は
エクソソームによって
細胞のマイグレーションや炎症を高める
S100遺伝子が亢進され、
それによって癌が転移しやすい環境が整えられる
ということです(1)。
そして、エクソソームの臓器向性に大きく影響を与えているのは
表面に高い確率で発現されているインテグリンです。
インテグリンはα鎖とβ鎖があり
それぞれ18種類、8種類が報告されています。
そのインテグリンの型が向性を示す臓器ごと
異なることが示されています(1)。
肺:α6, β4, β1
肝臓:αv, β5
脳:β3
これらです。
また、エクソソームがインテグリンを通じて
転移サイトのどの細胞に取り込まれるかは関心の高い結果を
示しています(1)。
例えば、肺では
線維芽細胞と上皮細胞に取り込まれます。
一方、脳では
内皮細胞に取り込まれます。
これは、臓器特異的な微小環境、転移ニッチの形成過程に
影響を与える可能性があります。
一方で、
肺における転移では
血管内の内皮細胞の転移ニッチは
内皮細胞とマクロファージの活性を経て
上述したテイネシン依存的に生じる事が示されています(11)。
線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞
それぞれに癌転移ニッチができる可能性があります。
肺では線維芽細胞、上皮細胞由来の転移ニッチは
エクソソーム依存的に生じやすくて
脳ではそれが内皮細胞である
ということを示している可能性を考えます(1)。
また
骨、肺、肝臓、脳などに関わらず転移全体で亢進されていた
インテグリンの型はα2、β1であることが示されています。
従って、統一的な転移リスクのバイオマーカーとして
使える可能性があります。
また、それぞれの臓器特異的な感度の高いインテグリンに関しては
すでに患者さんの血液分析で
転移サイト特異的に型が一致するインテグリン分泌量が
有意に向上していることが確認されています(1)。
この事は、将来的な転移リスクとその場所の特定ができる
可能性を示します。

//考察//ーー
外科手術で癌組織を取り除くとき
組織への癒着性の強さが切除範囲の判断の一つになると
認識しています。
その組織への癒着性は
1つは細胞接着に関わる
〇インテグリン
〇テネイシン
〇ペリオスチン
これらの発現量に関わっているかもしれません。
エクソソームに発現されているということは
同様に癌細胞にも発現されている可能性が高いので
その接着因子の発現量が転移の可能性や
組織に対する癒着性を決める要因かもしれません。

//疑問//ーー
エクソソームはプレ転移ニッチの環境を
癌が成長しやすいように整えるという認識でいます。
つまり、原発腫瘍から上皮間葉転換を経て
転移サイトにたどり着くことを前提としています。
一方で、
エクソソームの内容物が細胞内に取り込まれることによって
そのニッチに存在する細胞が癌化する事はないでしょうか?
癌細胞由来のエクソソームの内容物は
癌細胞の中の核酸(遺伝子)、タンパク質、脂質が含まれます。
それによって受け細胞が癌化する可能性です。

//細胞種特異的輸送系統(*)の観点//ーー
(*)Cell-type-specific delivery system
細胞種特異的輸送系統では
目的とする細胞種にアンカーさせて
その局所で薬剤を放出させる
あるいは、細胞内に取り込ませて薬剤を放出する
ということを想定しています。
一方で、転移性の癌については
デコイ機能を持たせて、転移を防ぐという考え方もあります。
実際にAyuko Hoshino氏ら参考文献(1)でも提案されています。
特にまだ転移先で癌細胞が大きくない段階で
転移のリスクがある場合には
デコイ機能によって事前に転移を防ぐという
治療戦略が好ましい可能性があります。
原発腫瘍や血中で癌細胞やエクソソームに
影響を与える場合、実際に転移先に局所的に薬剤を作用させる
場合と比べてターゲットとなる表面タンパク質の
設計やナノ粒子の種類なども異なる可能性があります。
また、一般的にナノ粒子を使った薬剤輸送は
血液性の治療において実績があるので
特に転移がまだ可視できない段階で
転移のリスクがある場合において適している可能性もあります。
1つのメインとなる薬理作用部位が循環器になるからです。

(参考文献)
(1)
Ayuko Hoshino, Bruno Costa-Silva, Tang-Long Shen, Goncalo Rodrigues, Ayako Hashimoto, Milica Tesic Mark, Henrik Molina, Shinji Kohsaka, Angela Di Giannatale, Sophia Ceder, Swarnima Singh, Caitlin Williams, Nadine Soplop, Kunihiro Uryu, Lindsay Pharmer, Tari King, Linda Bojmar, Alexander E. Davies, Yonathan Ararso, Tuo Zhang, Haiying Zhang, Jonathan Hernandez, Joshua M. Weiss, Vanessa D. Dumont-Cole, Kimberly Kramer, Leonard H. Wexler, Aru Narendran, Gary K. Schwartz, John H. Healey, Per Sandstrom, Knut Jørgen Labori, Elin H. Kure, Paul M. Grandgenett, Michael A. Hollingsworth, Maria de Sousa, Sukhwinder Kaur, Maneesh Jain, Kavita Mallya, Surinder K. Batra, William R. Jarnagin, Mary S. Brady, Oystein Fodstad, Volkmar Muller, Klaus Pantel, Andy J. Minn, Mina J. Bissell, Benjamin A. Garcia, Yibin Kang, Vinagolu K. Rajasekhar, Cyrus M. Ghajar, Irina Matei, Hector Peinado, Jacqueline Bromberg & David Lyden
Tumour exosome integrins determine organotropic metastasis
Nature volume 527, pages329–335 (2015)
(2)
Müller, A. et al. Involvement of chemokine receptors in breast cancer 
metastasis. Nature 410, 50–56 (2001).
(3)
Lu, X. & Kang, Y. Organotropism of breast cancer metastasis. J. Mammary Gland 
Biol. Neoplasia 12, 153–162 (2007).
(4)
Minn, A. J. et al. Genes that mediate breast cancer metastasis to lung. Nature 
436, 518–524 (2005).
(5)
Bos, P. D. et al. Genes that mediate breast cancer metastasis to the brain. 
Nature 459, 1005–1009 (2009).
(6)
Desgrosellier, J. S. & Cheresh, D. A. Integrins in cancer: biological implications 
and therapeutic opportunities. Nature Rev. Cancer 10, 9–22 (2010).
(7)
Oskarsson, T. et al. Breast cancer cells produce tenascin C as a metastatic 
niche component to colonize the lungs. Nature Med. 17, 867–874 (2011).
(8)
Fukuda, K. et al. Periostin is a key niche component for wound metastasis of 
melanoma. PLoS ONE 10, e0129704 (2015).
(9)
Radisky, D., Muschler, J. & Bissell, M. J. Order and disorder: the role of 
extracellular matrix in epithelial cancer. Cancer Invest. 20, 139–153 (2002).
(10)
Weaver, V. M. et al. Reversion of the malignant phenotype of human breast 
cells in three-dimensional culture and in vivo by integrin blocking antibodies.  
J. Cell Biol. 137, 231–245 (1997).
(11)
Tsunaki Hongu, Maren Pein, Jacob Insua-Rodríguez, Ewgenija Gutjahr, Greta Mattavelli, Jasmin Meier, Kristin Decker, Arnaud Descot, Matthias Bozza, Richard Harbottle, Andreas Trumpp, Hans-Peter Sinn, Angela Riedel & Thordur Oskarsson 
Perivascular tenascin C triggers sequential activation of macrophages and endothelial cells to generate a pro-metastatic vascular niche in the lungs
Nature Cancer (2022)


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