エクソソームによる治療対象は
癌治療に限らず、様々な疾患に対して応用が可能です。
エクソソーム自体が各細胞種から選ぶことができる
という選択任意性、自由度があるので
身体全体に存在しうる疾患に対して、
それぞれ適したエクソソームを選択する事ができます。
それをナノ粒子ベクトルとして使うことができます。
例えば、筋委縮性側索硬化症では
運動神経に障害が起きます。
この運動神経から放出されるエクソソームを
薬剤輸送媒体として使い、
血管や脳脊髄液から注入すれば、
運動神経に到達しやすい可能性があります。
但し、循環器での分解、消滅、拒絶される可能性あるので
それを回避しつつ輸送するということになります。
エクソソームそのものが効果がある可能性もありますが、
筋委縮性側索硬化症はボスチニブが効果がある
とされており、フェーズⅠの治験が行われています(14)。
このボスチニブをエクソソームによって
運動神経まで輸送すれば、
さらに少量の薬剤で効果が出る可能性がある事と
複数の機序で運動神経の改善が図れる可能性もあります。
細胞種特異的輸送系統において
エクソソームは追究する価値のある
輸送媒体の選択の一つとなると考えています。
また、一方でワクチンの輸送媒体としての可能性もあります。
コロナウィルス、インフルエンザなどの感染症に対して
初めに樹状細胞、マクロファージまで輸送するという
目的がありますが、樹状細胞由来のエクソソームによって
mRNAを輸送すれば、今までアレルギーで接種できなかった
人に対して接種可能になる可能性もあります。
またエクソソームの場合は、
その胞そのものが免疫的な効果があると期待されるため
それがどのように作用するか?といった評価軸もあります。
ーー
Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun
(敬称略)からなる医療研究グループは
植物、食物由来、免疫由来のエクソソームの
主に癌治療に対する治療効果、安全性についての
過去の成果について総括されています(1)。
本日はその内容と独自の調査、追記を加え
読者の方と情報共有したいと思います。
癌細胞由来のエクソソームは転移や免疫的なリスクが
あるとされています。
一方、
果物や植物由来のエクソソームは代わりの選択肢として
挙げられています。その理由は安全性が高い
ということです(2)。
特に果物など食べ物由来のエクソソームは
食事の際に常に身体の中に取り込まれているので
安全性が高いと考えられています(3)。
しかし、
消化器系ではなく血中に直接入れた場合はどうか?
といった疑問はあります。
上述した食物由来のエクソソームのうち
果物や牛乳などの農業製品は
経済的であり、量産性があるため
実用化させるうえで好ましいと考えられます。
--
食物由来のエクソソームなので、
消化器系の大腸癌の治療が検討されています。
そのフェーズⅠの治験が現在行われています(4)。
加えて、
ブドウ由来のエクソソームを経口投与した結果
腸の幹細胞の成長と分化を促進し、
デキストラン硫酸ナトリウムから生じる
腸のダメージから防御されたことが
マウスのケースで明らかになっています(2)。
しかし、このケースではエクソソーム内に
薬剤を積載したという情報はありません。
一方、
グレープフルーツ由来のエクソソームに
抗がん剤である
〇ドキソルビシン
とクルクミンを積載したものがマウスのケースで
大腸がんの治療として使用されました。
また活性化された白血球の表面タンパク質として
多く発現している受容体でコートされています。
それによれば、
大腸がんの成長と
デキストラン硫酸ナトリウムから生じる
腸のダメージを防ぐことができています(5)。
この研究による表面コートによる
機能性の追加は言い換えれば、
免疫細胞が本来持つがん細胞への走化性機能を
表面タンパク質を通してエクソソームに持たせた
ということです。
これは細胞種特異的輸送系統(*)のコンセプトに
ほぼ類似する考え方です。
(*)Cell-type-specific delivery system
これらは経口投与による消化器系の癌に対する治療です。
一方、
牛乳由来のエクソソームからなるナノ粒子に
異なる治療効果のある薬剤を積載し、
肺がん細胞に対する効果を試験管、異種移植のモデルで
調べた研究があります(3)。
その研究では特に葉酸のリガンドを付けたエクソソームでは
癌標的の輸送効率が高まっている可能性がある
とされています。
この葉酸は特異的輸送を実現する表面装飾因子として
すでに実績がある事を示しました。
またエクソソームによる輸送においても
薬剤単体で投与する場合に比べて、
輸送効率が高まったことが示されています。
さらに異種移植モデルでの研究では
免疫機能による副作用や炎症反応は見られなかった
とされています。
また牛乳由来のエクソソームは
精製させるうえで生体互換性(安全性)が高いだけではなく
経済性においても優れている(Cost-effective)
とされています(3)。
しかしながら、食物由来のエクソソームは
免疫的に治療効果のある媒体としての能力は
基本的には有していないとされています(1)。
ーー
免疫細胞由来のエクソソームは薬剤輸送システムと
ワクチンへの応用において注目されています(6-8)。
単球、マクロファージ由来のエクソソームは
特に免疫的な治療の為のエクソソームとして
調べられています(9)。
これらのエクソソームは免疫細胞による食作用による
除去から逃れることができます。
従って、長い時間循環する事が出来、
その効率も延長されます(10)。
一方
樹状細胞由来のエクソソームがワクチン輸送としては
最も有望であるとされています。
新型コロナウィルスのワクチンにおいても
樹状細胞での脂質ナノ粒子の取り込みが想定されています。
それを樹状細胞のエクソソームとすることで
今までアレルギーなどによってワクチン接種が受けられなかった
人に対して、接種対象にできる可能性があります。
エクソソームベースの
新型コロナウィルスワクチンについては
すでに検討されています(11)。
すでに癌治療においては
フェーズⅠの治験が行われています(6)。
同様に非小細胞性肺癌に対して
エクソソームベースのワクチンによって
フェーズⅡの治験が行われています。
積荷として癌抗原が選択され、
シクロフォスファミド(抗がん剤)と併用で検討されています(12)。
樹状細胞由来のエクソソームは
樹状細胞から放出されたペプチド-MHC複合体の伝達によって
生体内で癌の除去が促進されました。
その樹状細胞は今まで同じ癌抗原と接触してこなかった
他の樹状細胞に抗原接触させました(7-9,13)。
樹状細胞への抗原の暴露の拡大と
T細胞の活性に関わるペプチド-MHCの拡散を促しています。
//考察//ーー
身体全体を回っている血液の成分の細胞由来のエクソソーム
を選択することで、対象とする疾患を拡大できる可能性があります。
例えば、食物由来で有れば、まずは経口投与が試されました。
肺などの呼吸器系であれば、
呼吸器系のウィルスを無害化させたベクトルが
吸入による投与で適しているかもしれません。
このような理屈から考えると
全身を流れる血液成分となる細胞からのエクソソームを
輸送媒体とすることは有望である可能性があります。
特により原始的な細胞である
単球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞などは
「在庫できる(off-the-shelf)」エクソソームとして
適している可能性があります。
特異性のあるT細胞やB細胞よりも
これらの自然免疫系のほうが
ドナーとなる人が異なった時でも
拒絶反応が小さくなる可能性があるからです。
(参考文献)
(1)
Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun
Engineering exosomes as refined biological nanoplatforms for drug delivery
Acta Pharmacologica Sinica volume 38, pages754–763 (2017)
(2)
Ju SW, Mu JY, Dokland T, Zhuang XY, Wang QL, Jiang H, et al. Grape
Exosome-like nanoparticles induce intestinal stem cells and protect
mice from dss-induced colitis. Mol Ther 2013; 21: 1345–57.
(3)
Munagala R, Aqil F, Jeyabalan J, Gupta RC. Bovine milk-derived
exosomes for drug delivery. Cancer Lett 2016; 371: 48–61.
(4)
James Graham Brown Cancer Center; University of Louisville. Study
Investigating the Ability of Plant Exosomes to Deliver Curcumin to
Normal and Colon Cancer Tissue. In: ClinicalTrials.gov [Internet].
Bethesda (MD): National Library of Medicine (US). 2000- [cited 2016
Oct 20]. Available from: http://clinicaltrials.gov/show/NCT01294072
NLM Identifier: NCT01294072.
(5)
Wang QL, Ren Y, Mu JY, Egilmez NK, Zhuang XY, Deng ZB, et al.
Grapefruit-derived nanovectors use an activated leukocyte trafficking
pathway to deliver therapeutic agents to inflammatory tumor sites.
Cancer Res 2015; 75: 2520–9.
(6)
Escudier B, Dorval T, Chaput N, Andre F, Caby MP, Novault S, et
al. Vaccination of metastatic melanoma patients with autologous
dendritic cell (DC) derived-exosomes: results of thefirst phase I clinical
trial. J Transl Med 2005; 3: 10.
(7)
Viaud S, Terme M, Flament C, Taieb J, Andre F, Novault S, et al.
Dendritic cell-derived exosomes promote natural killer cell activation
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One 2009; 4: e4942.
(8)
Simhadri VR, Reiners KS, Hansen HP, Topolar D, Simhadri VL,
Nohroudi K, et al. Dendritic cells release hla-b-associated transcript-3
positive exosomes to regulate natural killer function. PLoS One 2008;
3: e3377.
(9)
Shenoda BB, Ajit SK. Modulation of immune responses by exosomes
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Haney MJ, Klyachko NL, Zhaoa YL, Gupta R, Plotnikova EG, He ZJ,
et al. Exosomes as drug delivery vehicles for Parkinson’s disease
therapy. J Control Release 2015; 207: 18–30.
(11)
Kwang Ho Yoo Nikita Thapa Beom Joon Kim Jung Ok Lee You Na Jang Yong Joon Chwae Jaeyoung Kim
Possibility of exosome‑based coronavirus disease 2019 vaccine (Review)
Molecular medicine report January-2022 Volume 25 Issue 1 Print ISSN: 1791-2997
(12)
Gustave Roussy, Cancer Campus, Grand Paris. Trial of a Vaccination
With Tumor Antigen-loaded Dendritic Cell-derived Exosomes (CSET
1437). In: ClinicalTrials.gov [Internet]. Bethesda (MD): National
Library of Medicine (US). 2000- [cited 2016 Oct 20]. Available
from: http://clinicaltrials.gov/show/ NCT01159288 NLM Identifier:
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(13)
Thery C, Duban L, Segura E, Veron P, Lantz O, Amigorena S. Indirect
activation of naive CD4(+) T cells by dendritic cell-derived exosomes.
Nat Immunol 2002; 3: 1156–62.
(14)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんを対象とした ボスチニブ第1相試験のご報告 ~ALS進行停止を目指すiDReAM Study~
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/211001-000000.html
2022年4月22日金曜日
Cell-type-specific delivery system,
iPS細胞,
医療工学,
癌・腫瘍学,
薬学
癌治療に対する食物由来、免疫細胞由来エクソソームの効果
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