2022年4月26日火曜日

エクソソームの機能化と実用化に向けて

エクソソームを使った治療の報告は数多くありますが、
エクソソームに特定の機能化をしたうえで
かつ薬剤輸送媒体として使う研究に関しては
現在においてもまだ黎明期であると認識しています。
そのステージを押し上げていくためには
産官学のあらゆるステークホルダーの方と
エクソソームを使ったナノ医療の可能性と課題について
情報共有する必要があります。
需要が高く、効果があれば利益の見込める
肌の美容、化粧品などとも関連がある可能性があるので
そのような点も魅力の一つとして訴求する必要があります。
エクソソームの量産、精製など製造面で
医療と技術共有できる可能性があるからです。
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Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun 
(敬称略)からなる医療研究グループは
細胞種特異的輸送系統とも関わる
エクソソームの機能化について概説されています(1)。
その内容の一部と追記を読者の方と情報共有したいと思います。

//エクソソームの機能化//ーー
エクソソームは細胞から分泌された細胞外小胞なので、
信号を受け取る細胞の特定の型のリガンドを
自発的に標的とした脂質、細胞吸着分子、リガンドを
内的に発現しています。
従って、最適なエクソソームを選べば、
外的に細胞種特異的なリガンドを形成しなくても
細胞種特異的輸送系統(*)を実現できる可能性があります。
(*)Cell-type-specific delivery system
例えば、神経芽細胞腫から取り出したエクソソームは
スフィンゴ糖脂質グリカン基を発現し、
これが脳のアミロイドβと結合して
アルツハイマー病の効果的な治療に貢献する
という報告もあります(2)。
標的リガンドはエクソソームの表面に発現させる事ができます。
特定のタンパク質をエンコードをした遺伝子を
ドナー細胞の中に入れる事によって
エクソソームはそのたんぱく質を含むことができます。
遺伝子導入されたドナー細胞由来のエクソソームは
エクソソーム膜のLamp2b表面タンパク質を通じて
神経細胞特異的なRabiesウィルス糖たんぱく質を
強く融合させていました。
これはウェスタンブロット法によって確認されました。
この標的化されたエクソソームは
マウスモデルで脳へsiRNAを効率的に輸送しました(3)。
もう一つの研究では
EGFR-過剰発現の乳癌細胞を持つマウスにおいて
let-7a miRNAを標的化された状態で輸送する事が試されています。
GE11とEGFが遺伝子導入されました。
静脈注射でlet-7a miRNAを封入したエクソソームが
GE11を標的として乳癌細胞まで輸送されました。
マウスの異種移植モデルで確認されています(4)。
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クリックケミストリーは生物マクロ分子の修正の為の
1つの有望な選択肢です。
生体内でエクソソームの分布をみるために
小分子量の分子、大きな生物マクロ分子、ポリマーを持つ
エクソソーム表面を機能化しました(5)。
クリックケミストリーは
標的模倣物(RGD派生物)の複合体化を通して
エクソソームの生体内分布に影響を与えるかもしれません。
エクソソームに非共有結合性の結合によって
表面を安定的に機能化する事もできます。
例えば、エクソソーム表面に陽イオン性の脂質を
静電気力を使って結合させました。
それによってエクソソームの細胞内への取り込み効率が
向上しています(6,7)。
血液由来のエクソソームの表面に
エクソソーム表面に存在する自然のトランスフェリン受容体を
ターゲットとしたトランスフェリン複合体超常磁性ナノ粒子を
結合させています(8)。
しかしながら、表面機能化によるエクソソームの
効率的輸送の効果は自明ではありません。
特に作成過程でエクソソームの破壊や凝集を
避ける必要があります。
温度、圧力、浸透圧など最適化する必要があります(6)。

//まとめ//ーー
ナノ粒子による薬剤の輸送は
薬物療法の相転換をもたらします。
新型コロナウィルスワクチンのおける脂質ナノ粒子による
mRNAの輸送は今後の医療において重要な
マイルストーンになると考えられます。
そのナノ粒子のうち
エクソソームも臨床応用するためのナノ粒子の
重要な選択肢のうちの一つです。
なぜなら、細胞間のコミュニケーションの為に
生体内で自然に備わってる機能であり、
生体互換性が非常に高いことが考えられるからです。
しかしながら、
エクソソームの選択、機能化が不適切であると
免疫機能に悪影響を与えたり、
腫瘍形成を促したりする可能性もあります(9-11)。
エクソソームは人工的に作り出す脂質ナノ粒子、ポリマー
金属ナノ粒子に比べて、内容物、膜、表面リガンド
などが複雑なので、エクソソームの生理について
より詳細な理解が必要になります。
そのうえで、安全かつ効率的なエクソソーム薬剤輸送の
システムを構築する必要があります。
エクソソームは臨床応用の為に
大規模生産、量産の確立において難しさがあるとされています(12)。
以前の研究では、これらの実現と迅速な精製が
可能になったと報告されています(13)。
これは血液の樹状細胞由来のエクソソームなので
他の組織常在型の細胞由来のエクソソームも含めて
同様に量産性と精製の効率化が実現できるか?
について追究していく必要があります。

//考察//ーー
エクソソームをより安全に、効率的に薬剤輸送媒体として
活かすためには
〇エクソソーム内に含まれる内容物
〇膜の構成
〇表面リガンド
これらの情報をできるだけ正確に得る必要があります。
例えば、癌細胞由来のエクソソームでは
これらの構成要素において
発がん作用のある物質が多く含まれています。
従って、癌の治療の為に癌由来のエクソソームを
そのまま使うことは、避ける必要性があるかもしれません。
上述した要素を遺伝子導入なども含めて
うまく制御して狙いの薬理を効率的に得る必要があります。
例えば、
転移癌におけるインテグリンなど
関わりの深いと考えられる表面受容体が発現するように
遺伝子導入し、機能化させることで
癌由来のエクソソームではなく
免疫細胞由来、腫瘍形成している通常組織由来のエクソソームでも
効率的な輸送ができる可能性があります。
そのうえで内容物を抗がん剤に入れ替えます。
こうした治療戦略は他の疾患にも生かすことができます。
--
このような条件をクリアしたうえで
系統的な安全性、効果の確認と
量産性の確保、精製方法の確立をしていく必要があります。

(参考文献)
(1)
Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun 
Engineering exosomes as refined biological nanoplatforms for drug delivery
Acta Pharmacologica Sinica volume 38, pages754–763 (2017)
(2)
Hood JL.  Post isolation modification of exosomes for nanomedicine 
applications.  Nanomedicine (Lond) 2016; 11: 1745–56.
(3)
Alvarez-Erviti L, Seow Y, Yin H, Betts C, Lakhal S, Wood MJ.  Delivery of 
siRNA to the mouse brain by systemic injection of targeted exosomes.  
Nat Biotechnol 2011; 29: 341–5.
(4)
Ohno S, Takanashi M, Sudo K, Ueda S, Ishikawa A, Matsuyama N, et 
al.  Systemically injected exosomes targeted to EGFR deliver antitumor 
microRNA to breast cancer cells.  Mol Ther 2013; 21: 185–91.
(5)
Smyth T, Petrova K, Payton NM, Persaud I, Redzic JS, Gruner MW, 
et al.  Surface functionalization of exosomes using click chemistry.  
Bioconjugate Chem 2014; 25: 1777–84.
(6)
Amstrong JP, Holme MN, Stevens MM.  Re-engineering extracellular 
vesicles as smart nanoscale therapeutics.  ACS Nano 2017; doi: 
10.1021/acsnano.6b07607.
(7)
Nakase I, Futaki S.  Combined treatment with a pH-sensitive fusogenic 
peptide and cationic lipids achieves enhanced cytosolic delivery of 
exosomes.  Sci Rep 2015; 5: 10112.
(8)
Qi H, Liu C, Long L, Ren Y, Zhang S, Chang X, et al.  Blood exosomes 
endowed with magnetic and targeting properties for cancer therapy.  
ACS Nano 2016; 10: 3323–33. 
(9)
Shao Y, Shen Y, Chen T, Xu F, Chen X, Zheng S.  The functions and 
clinical application of tumor-derived exosomes.  Oncotarget 2016; 7: 
60736–51.
(10)
Whiteside TL.  Tumor-derived exosomes and their role in cancer 
progression.  Adv Clin Chem 2016; 74: 103–41.  
(11)
Whiteside TL.  Exosomes and tumor-mediated immune suppression.  J 
Clin Invest 2016; 126: 1216–23.
(12)
van der Meel R, Fens MH, Vader P, van Solinge WW, Eniola-Adefeso 
O, Schiffelers RM.  Extracellular vesicles as drug delivery systems: 
lessons from the liposome field.  J Control Release 2014; 195: 72–
85.
(13)
Lamparski HG, Metha-Damani A, Yao JY, Patel S, Hsu DH, Ruegg C, 
et al.  Production and characterization of clinical grade exosomes 
derived from dendritic cells.  J Immunol Methods 2002; 270: 211–26.

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