2022年4月18日月曜日

ナノ粒子による核酸の輸送(3)-輸送媒体-

例えば、細胞核内の特定の遺伝子を改変し、
遺伝子治療を行うためには
オフターゲットが無いように
特定の細胞に輸送し、細胞質を通って
核内の特定の遺伝子に作用させる必要があります。
標的となる重要な遺伝子が明らかになり、
その遺伝子を編集したり、
活性を変える事ができれば、
1つ、根本的な治療になりますが、
それを阻んでいるのが細胞特異的な標的性が
困難であるからであると理解しています。

例えば、癌など様々な疾患で
全ゲノム関連遺伝子評価が行われています。
それによって、場合によれば、数百個以上の
遺伝子異常が確認されることがありますが、
病気において重要な遺伝子を見つける事も出来ます。
このような解析を有効にするためには
1つの大きな柱となるのが遺伝子治療です。
重要な遺伝子異常を標的として、
その遺伝子を改変する事ができれば、
病状が改善する可能性があります。
しかし、上述したように
その組織に有効に、特異的に核酸を輸送し、
さらには無数の膜を超えて細胞核まで届けるには
いくつかの大きなハードルがあります。

そのような標的性以外にも
導入するナノ粒子が
例えば免疫的な拒絶反応が起こらないような
生体内で安全なものが強く求められています。
上述した免疫系は異物に対する高い除去能力を持っています。
通常、静脈注射などによる循環器を通した輸送では
血中に多種多様な免疫細胞が存在しているので
その複雑な監視を逃れる必要があります。

RNAやDNAなどの核酸の輸送における
ナノ材料、ナノ粒子は上述した課題がありますが、
それらを満たす潜在性を有しています。
また、ナノ粒子を使う事によって
特定の遺伝子をオフ/オンにする遺伝子治療だけではなく
〇生物的な分析
〇タンパク質の補充、生成
〇ワクチン
これらにも応用することができます。
例えば、生物学的分析では
マーカー遺伝子、遺伝子のバーコード化によって、
ナノ粒子が標的細胞に届いたかどうか?
といった検査にも使うことができます。
また、遺伝子はタンパク質を生み出す元となる物質なので
タンパク質の分析、補充、生成を
人為的に行うことができます。
ワクチンにおいて
実際に新型コロナウィルスで使われた
mRNAワクチンは上述したナノ粒子によって
自然免疫系細胞まで輸送されていると考えられています。
このワクチンは樹状細胞などで
大量の新型コロナウィルスのSタンパク質を生み出し、そ
れを抗原とした免疫反応を
利用していると考えられています。
従って、ナノ粒子、mRNA(核酸)の技術は
現在ワクチンでは広く普及しています。
ーー
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir. 
(敬称略)ら医療研究グループは
効果的な核酸の輸送デザインの方法と
それによる診断や治療の効果について総括されています(1)。
その内容の序章の一部について
読者の方と情報共有したいと思います。

ポリマーから構成される核酸の輸送媒体である
ナノ粒子、ナノキャリアは
通常イオン化されたアミン基によって
正電荷を帯びたPolycationsから構成されます(2)。
この正電荷を帯びたポリマーナノ粒子媒体は
負に帯電した核酸と相互作用することによって
核酸がナノ粒子媒体に組み込まれます。
それが自己組織化で起こるため、
ナノ粒子製造プロトコルおいて好ましいと考えられます。
核酸の輸送のために好ましいと考えられている
ポリマーは
〇Polyethyleneimine (PEI)
〇Poly-L-lysine (PLL)
これらが挙げられています(3)。
PEIは多くのアミン基を含んでいるため
高い緩衝効果が得られます。
その緩衝効果により
細胞内に取り込まれたときの胞である
エンドソームから細胞質への放出が促進されます(4)。
しかしながら、
生体内、試験管でいくつかの毒性が確認されています(5)。

ペプチドベースの輸送媒体は
近年、選択肢の一つとなっています。
5-30個のアミノ酸からなり
それが細胞内に浸透します。
このナノ粒子は輸送荷物である核酸と
共有結合様、非共有結合様に相互作用します。

無機の混合物ベースのナノベクトルは
特徴的かつ複数の目的を同時に満たす
輸送プラットホームです。
貴金属である金、銀がそれです。
他には
〇カーボンナノチューブ
〇コレステロール複合体
〇酸化鉄
〇シリカ
〇ランタノイド
これらが核酸のキャリアとして挙げられています(6)。
上述した無機ベースのナノベクトルのうち
メソ細孔シリカは骨粗しょう症の治療において
siRNAによって関連遺伝子を抑制する事に
成功しています(8)。
この時、メソ細孔のシリカはポリマーコートされています。
このように複合体とすることで
上述したような特徴的かつ複数の目的を同時に満たす
輸送プラットフォームとなります。
このように標的遺伝子に対する効率的な
効果が得られるように仕立てることができます(7)。

(参考文献)
(1)
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir, Haojun Liang, Jinjun Shi, Avi Schroeder & João Conde 
Nanodelivery of nucleic acids
Nature Reviews Methods Primers volume 2, Article number: 24 (2022) 
(2)
Piotrowski-Daspit, A. S., Kauffman, A. C., Bracaglia, L. G. 
& Saltzman, W. M. Polymeric vehicles for nucleic acid 
delivery. Adv. Drug Deliv. Rev. 156, 119–132 (2020).
(3)
Rai, R., Alwani, S. & Badea, I. Polymeric nanoparticles 
in gene therapy: new avenues of design and 
optimization for delivery applications. Polymers  
11, 745 (2019).
(4)
Bertschinger, M. et al. Disassembly of 
polyethylenimine-DNA particles in vitro: implications 
for polyethylenimine-mediated DNA delivery.  
J. Control. Rel. 116, 96–104 (2006).
(5)
Wightman, L. et al. Different behavior of branched  
and linear polyethylenimine for gene delivery  
in vitro and in vivo. J. Gene Med. 3, 362–372 (2001).
(6)
Luther, D. C. et al. Delivery of drugs, proteins,  
and nucleic acids using inorganic nanoparticles.  
Adv. Drug Deliv. Rev. 156, 188–213 (2020).
(7)
Pranatharthiharan, S., Patel, M. D., D’Souza, A. A. & 
Devarajan, P. V. Inorganic nanovectors for nucleic acid 
delivery. Drug Deliv. Transl. Res. 3, 446–470 (2013).
(8)
Mora-Raimundo, P., Lozano, D., Manzano, M.  
& Vallet-Regí, M. Nanoparticles to knockdown 
osteoporosis-related gene and promote osteogenic 
marker expression for osteoporosis treatment.  
ACS Nano 13, 5451–5464 (2019).

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