2022年4月17日日曜日

ナノ粒子による核酸の輸送(2)-脂質ナノ粒子-

例えば、細胞核内の特定の遺伝子を改変し、
遺伝子治療を行うためには
オフターゲットが無いように
特定の細胞に輸送し、細胞質を通って
核内の特定の遺伝子に作用させる必要があります。
標的となる重要な遺伝子が明らかになり、
その遺伝子を編集したり、
活性を変える事ができれば、
1つ、根本的な治療になりますが、
それを阻んでいるのが細胞特異的な標的性が
困難であるからであると理解しています。
さらには細胞核内への輸送です。
そのような標的性以外にも
導入するナノ粒子が
例えば免疫的な拒絶反応が起こらないような
生体内で安全なものが強く求められています。
また、病変部位までの輸送効率も求められます。
上述した免疫系は異物に対する高い除去能力を持っています。
通常、静脈注射などによる循環器を通した輸送では
血中に多種多様な免疫細胞が存在しているので
その複雑な監視を逃れる必要があります。

RNAやDNAなどの核酸の輸送における
ナノ材料、ナノ粒子は上述した課題がありますが、
それらを満たす潜在性を有しています。
また、ナノ粒子を使う事によって
特定の遺伝子をオフ/オンにする遺伝子治療だけではなく
〇生物的な分析
〇タンパク質の補充、生成
〇ワクチン
これらにも応用することができます。
例えば、生物学的分析では
マーカー遺伝子、遺伝子のバーコード化によって、
ナノ粒子が標的細胞に届いたかどうか?
といった検査にも使うことができます(9)。
また、遺伝子はタンパク質を生み出す元となる物質なので
タンパク質の分析、補充、生成を
人為的に行うことができます。
ワクチンにおいて
実際に新型コロナウィルスで使われた
mRNAワクチンは上述したナノ粒子によって
自然免疫系細胞まで輸送されていると考えられています。
このワクチンは樹状細胞などで
大量の新型コロナウィルスのSタンパク質を生み出し、そ
れを抗原とした免疫反応を
利用していると考えられています。
従って、ナノ粒子、mRNA(核酸)の技術は
現在ワクチンでは広く普及しています。
ーー
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir. 
(敬称略)ら医療研究グループは
効果的な核酸の輸送デザインの方法と
それによる診断や治療の効果について総括されています(1)。
その内容の序章の一部について
読者の方と情報共有したいと思います。

脂質ベースのナノ粒子の構造は
コア、シェルの2層構造となっており
その表面にリガンドが形成されます。
このような複合体構造となっています。
その構造によって標的性を上げます(2,3)。
具体的な例として
リガンドにはPEG(ポリエチレングリコール)
が採用されることがあります。
そのPEG先端にさらに細胞種特異的な高分子を
形成することがあります。
アテローム性動脈硬化では
炎症部に存在するマクロファージ受容体Stabilin-2に
特異的に結合するペプチドであるS2Pを
PEGに結合させる構造となります(7)。
これによりさらに標的性が上がる可能性があります。
一方、
陽イオン性脂質によってイオン化させることによって
核酸などの積荷の封止効率を上げる事ができます(4)。
このようにスループットを上げる事は
薬剤の原価を下げる上では重要です。
しかしながら、
陽イオン性リポソームの使用は
投与の箇所における毒性によって制限されます(4)。
下述するように酸性度が高い状態では
単核細胞であるリンパ球、単球、樹状細胞などによる
急速な取り込みが生じます。
それによって、あるいは他の経路によって
免疫的な毒性が生じたり、
あるいは免疫細胞に取り込まれる事に寄って
輸送効率が低下してしまいます。
ただし、
脂質ナノ粒子が酸性である事は重要な意味を持ちます。
陽イオン化された脂質ナノ粒子は
環境中が酸性であると錯体形成を好みます。
細胞内に取り込まれた後の胞である
エンドソームは酸化環境にあるので(8)
その錯体形成によりエンドソームから放出され(5)
細胞質内、細胞核への輸送が促されます。
この脂質ナノ粒子のpKa値は6.4程度であることが好ましいです。
上述したように弱酸性で中性に近い条件によって
単核細胞の食作用による急速な取り込みや
免疫反応や毒性効果などの活性を弱めることができます。
このような副作用は静脈注射後に速やかに
生じる可能性があるものです(6)。
従って、
〇ナノ粒子への核酸の封止効率向上、
〇標的細胞への取り込み率向上
〇免疫監視からの逃避
これらを同時に実現するためには
脂質ナノ粒子のイオン性の制御を精密に行う必要があります。

(参考文献)
(1)
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir, Haojun Liang, Jinjun Shi, Avi Schroeder & João Conde 
Nanodelivery of nucleic acids
Nature Reviews Methods Primers volume 2, Article number: 24 (2022) 
(2)
Iyer, A. K., Duan, Z. & Amiji, M. M. Nanodelivery 
systems for nucleic acid therapeutics in drug resistant 
tumors. Mol. Pharm. 11, 2511–2526 (2014).
(3)
Rajala, A. et al. Nanoparticle-assisted targeted 
delivery of eye-specific genes to eyes significantly 
improves the vision of blind mice in vivo. Nano Lett. 
14, 5257–5263 (2014).
(4)
Ren, T., Song, Y. K., Zhang, G. & Liu, D. Structural 
basis of DOTMA for its high intravenous transfection 
activity in mouse. Gene Ther. 7, 764–768 (2000).
(5)
Maugeri, M. et al. Linkage between endosomal escape 
of LNP-mRNA and loading into EVs for transport to 
other cells. Nat. Commun. 10, 4333 (2019).
(6)
Witzigmann, D. et al. Lipid nanoparticle technology  
for therapeutic gene regulation in the liver. Adv. Drug 
Deliv. Rev. 159, 344–363 (2020).
(7)
Xiangang Huang, Chuang Liu, Na Kong, Yufen Xiao, Arif Yurdagul Jr., Ira Tabas & Wei Tao
Synthesis of siRNA nanoparticles to silence plaque-destabilizing gene in atherosclerotic lesional macrophages
Nature Protocols (2022)
(8)
Lafourcade C, Sobo K, Kieffer-Jaquinod S, Garin J, van der Goot FG (July 2008). Joly E (ed.). 
"Regulation of the V-ATPase along the endocytic pathway occurs through reversible subunit association and membrane localization". 
PLOS ONE. 3 (7): e2758.
(9)
Zvi Yaari, Dana da Silva, Assaf Zinger, Evgeniya Goldman, Ashima Kajal, Rafi Tshuva, Efrat Barak, Nitsan Dahan, Dov Hershkovitz, Mor Goldfeder, Janna Shainsky Roitman & Avi Schroeder 
Theranostic barcoded nanoparticles for personalized cancer medicine
Nature Communications volume 7, Article number: 13325 (2016) 


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