2022年4月30日土曜日 0 コメント

Author correction: ナノ粒子による核酸の輸送(13)-将来の展望-

例えば、細胞核内の特定の遺伝子を改変し、
遺伝子治療を行うためには
オフターゲットが無いように
特定の細胞に輸送し、細胞質を通って
核内の特定の遺伝子に作用させる必要があります。
標的となる重要な遺伝子が明らかになり、
その遺伝子を編集したり、
活性を変える事ができれば、
1つ、根本的な治療になりますが、
それを阻んでいるのが細胞特異的な標的性が
困難であるからであると理解しています。

例えば、癌など様々な疾患で
全ゲノム関連遺伝子評価が行われています。
それによって、場合によれば、数百個以上の
遺伝子異常が確認されることがありますが、
病気において重要な複数の遺伝子を見つける事も出来ます。
このような解析を有効にするためには
1つの大きな柱となるのが遺伝子治療です。
重要な遺伝子異常を標的として、
その遺伝子を改変する事ができれば、
病状が改善する可能性があります。
しかし、上述したように
その組織に有効に、特異的に核酸を輸送し、
さらには無数の膜を超えて細胞核まで届けるには
いくつかの大きなハードルがあります。
また、全ゲノム関連遺伝子評価から
標的とする遺伝子(群)を絞り込むところにも
まだ課題がある可能性があります。
個人差が大きければ、それも阻害要因となります。

そのような標的性以外にも
導入するナノ粒子が
例えば免疫的な拒絶反応が起こらないような
生体内で安全なものが強く求められています。
上述した免疫系は異物に対する高い除去能力を持っています。
通常、静脈注射などによる循環器を通した輸送では
血中に多種多様な免疫細胞が存在しているので
その複雑な監視を逃れる必要があります。
そのため特にナノ粒子の生体に対する互換性や
ナノ粒子表面の特性が重要になります。

RNAやDNAなどの核酸の輸送における
ナノ材料、ナノ粒子は上述した課題がありますが、
それらを満たす潜在性を有しています。
また、ナノ粒子を使う事によって
特定の遺伝子をオフ/オンにする遺伝子治療だけではなく
〇生物的な分析
〇タンパク質の補充、生成
〇ワクチン
これらにも応用することができます。
例えば、生物学的分析では
マーカー遺伝子、遺伝子のバーコード化によって、
ナノ粒子が標的細胞に届いたかどうか?
といった検査にも使うことができます。
また、遺伝子はタンパク質を生み出す元となる物質なので
タンパク質の分析、補充、生成を
人為的に行うことができます。
ワクチンにおいて
実際に新型コロナウィルスで使われた
mRNAワクチンは上述したナノ粒子によって
自然免疫系細胞まで輸送されていると考えられています。
このワクチンは樹状細胞などで
大量の新型コロナウィルスのSタンパク質を生み出し、そ
れを抗原とした免疫反応を
利用していると考えられています。
従って、ナノ粒子、mRNA(核酸)の技術は
現在ワクチンでは広く普及しています。
ーー
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir. 
(敬称略)ら医療研究グループは
効果的な核酸の輸送デザインの方法と
それによる診断や治療の効果について総括されています(1)。

ナノ粒子を使った医療は
研究、開発における標準化、言語化から
臨床デザインまですべての相で新たな変化が必要です。
従って、仮に動物実験で良い結果が出たとしても
実用化するまでに多くのハードルがあります。
Bárbara B. Mendes氏らは次の10年で
研究団体が直面する主要な挑戦についての展望を示しています。
その内容の一部と追記を読者の方と
情報共有したいと思います。

//肝臓以外の標的化//ーー
核酸のナノ粒子による輸送の困難性は
臓器や、細胞特異的な輸送を行うことです。
それを行うためにはナノ粒子の生体内分布を
制御する必要があります(2)。
核酸によるナノ医療の臨床的な成功は
肝臓を標的化するか、患部局所的な投与に限定されています。
核酸の輸送を含めたナノ医療の可能性を考えると
肝臓以外の臓器、組織、細胞への輸送は高く求められます。
このような臓器、組織、細胞向性を持つ輸送技術は
現在、学術界、産業界で積極的に開発されています。
脂質ナノ粒子の材料構成を調整することによって
肺へ選択的遺伝子編集のための
Cas9mRNA/sgRNAの全身への輸送が実現しています(3,4)。
生体内のスクリーニングによって
脂質の材料構成(例えば、コレステロール構造変異)は
肝臓の内皮細胞へのRNA輸送を制御する上で
非常に重要な要素であることが示されています(5)。
ポリマーの場合はより効率的に材料構成を
調整することができます。
それにより核酸輸送システムにおいて
循環器などの経路で、
意図しないタンパク質のナノ粒子への付着(コロナ、デブリ)
を防ぐことができます。
新しい生物物質やナノ粒子設計、製法の開発は
急速に進んでいます。
一方で、
ナノ粒子を介した臓器、組織、細胞への
走化性、向性の理解は進んでいません。
従って、ナノ医療における基礎的な生物物理の理解が
様々なナノ粒子条件での試行に比べて遅れているということです。
臨床的に承認されたsiRNAの脂質ナノ粒子(Onpattro)が
肝臓細胞に有効に輸送される理由は
静脈注射の後、血中でナノ粒子表面に付着した
アポリポタンパク質(ApoE)によると考えられています(6)。
この事は、ナノ粒子表面のタンパク質が
特定の臓器、組織、細胞に結合親和性を持つように
特異的に設計され、それが体内で維持されると
それぞれに走化性、向性を持つことができるかもしれない
ことを示しています。
前述したように血中のタンパク質やその他の物質が
ナノ粒子に引き寄せられて吸着し、
その機能を変えることが考えられるので、
その相互作用について理解する事が重要です。
特にナノ粒子の
ゼータ電位、表面電荷などに関わる物理化学特性が
どのように生体内の生物学、生理に影響を与えるか
を理解する事に寄って
細胞種特異的な(Cell-type-specific)輸送が可能になります。
遺伝子編集の為の核酸の輸送では
オフターゲットを防ぐ必要があるため、
肝臓を超えた他の臓器への適用において、
このような走化性、向性を得る事が求められます。

//実験データの標準化、再現性の課題//ーー
学術界だけに限らず、産業界においても
実験や製品に関わるデータの評価基準が定められていて
それに則した表記でそのデータを示す必要があります
つまり、データの透明性を示すということです。
あるいは、優れた研究結果であっても
その科学論文を見た後、他の研究者が
それと同様の結果を再現できる必要があります。
特定の優れた機能を持つナノ粒子も
示された同じ方法で作製すれば、
その結果において再現性が得られる必要があります。
しかしながら、
ナノ粒子は非常に細かに機能化されています。
全く同じ脂質ナノ粒子を
製造方法がわかっている同じ団体が作り直したとしても
その結果にバラツキ、偏差が生じていしまう可能性があります。
特に細胞種特異的なナノ粒子であれば、
それは感受性の高さを意味しますから、
再現性を得る事が難しいと考えられます。
その様な問題は、細胞外小胞であるエクソソームを
ナノ粒子として採用する場合はより顕著です。
生体内の細胞外小胞の材料構成、表面リガンド群は
より複雑だからです。
--
その製造方法においてポリマーは
核酸を封入したり、胞の外側のリガンドに結合させたりします。
しかし、このような方法は、
自己組織化ができる脂質ナノ粒子よりも
製造バラツキが大きいことが知られています(7)。
一方で、自己組織化の手法でも
製造スケールを大きくすることで
同様の特性偏差が生じてしまいます。
それを解決するために一つ一つのナノ粒子の
製造制御性を高めるためにマイクロ流体合成を使ったり、
あるいは成形押出技術(Extrusion technique)を使います。
最終的には特性が揃っているかどうか確認する
評価手法が必要です。それを元に
スクリーニング、精製する必要があります。
スクリーニングや精製を画像を元に行う際には
人工知能、機械学習を利用できる可能性もあります。
--
上述したように実験結果に大きく影響を与える
ナノ粒子の製造段階でのばらつきは
アカデミックバリューチェーンの上流側にある
研究段階から検討する必要があります。
早い段階で、お互いの価値観やポートフォリオの
一致性を確かめ、連携が得られれば、
製造技術などにおいて高い技術を保有している
産業界と学術界が連携することです。
つまり、産業界からナノ粒子のサンプルの提供を受け
それを元に再現性ある研究データの取得
その後の開示を行う事です。
あるいは、生産技術を研究している分野と
分野横断的にナノ粒子医療について研究する事も
1つの手法であると考えられます。
それだけ、ナノ粒子を使った研究は
その製造が大切であるという事が示されます。

//個別化医療のための人工知能//ーー
ナノ粒子の特性を一つ一つ従来の方式でチェックしていく事は
非常に骨の折れる作業です。時間、コストがかかります。
従って、ナノ粒子や核酸配列のデザインから評価まで
計算モデルや人工知能を組み込んでいくことが
考えられています(12-14)。
例えば、mRNAであれば転写されない領域の
構造はその安定性や転写効率に影響を与えます。
それを計算モデル、人工知能によって
最適化する事などが考えられます(15)。
タンパク質の構造予測の報告が増えているように、
ナノ粒子、内容物の設計、評価などにおいて
仮想的に評価できる空間が生まれると
実験データの信頼性、スループット効率などにも
影響を与える可能性があります。
個別化医療は
基礎から応用に至るトランスレーショナル医療において
あらゆるステップの変更が必要なので、
タンパク質構造予測、画像診断などで
普及しつつある人工知能をどのように利用するかは
1つの焦点です。

//mRNAワクチンとナノ医療について//ーー
上述したようにナノ粒子の制御性の問題はありますが、
すでに大量生産を可能にしたナノ粒子医療が
新型コロナウィルスワクチンによって実現されました。
このワクチンでは脂質ナノ粒子でmRNAワクチンの輸送が
可能になっています。
この脂質ナノ粒子がナノ粒子として
循環器内でどのように特異的に輸送されているか?
その生体内分布については
まだ理解が進んでいない可能性がありますが、
安全、量産性、急速な発展、高い効果、安価。
これらを持って普及させる事が可能になっています。
このいわば「成功」によって
ナノ粒子を使った核酸輸送の次の発展につながる
と考える事ができます。
特にハードルが高いと考えられる
健康な人に接種することができたという事は
大きなマイルストーンになると考えられます。
--
新型コロナウィルスが流行する前は
それを想定していたわけではないので、
〇癌
〇HIV
〇マラリア
〇エボラ出血熱
〇狂犬病
〇ジカウィルス
これらについてmRNAワクチンが検討されています(8-10)。
これらのワクチンにおいては課題もあります。
発展途上国までに十分行き届かなかったことが挙げられます。
製造が間に合わなかったことと、
購入するための資金を先進国に依存する必要があったことなど
が挙げられています(11)。
mRNAワクチンによって感染症を抑圧するためには
発展途上国から広がる事もあるので、
技術供与なども考える必要があります。
ナノ粒子医療においては、
まずは臨床承認をどのように得るか言う前段階にありますが、
mRNAワクチンに関しては、その次の段階に進んでいます。
つまり、世界的にどう普及させるかというステージです。
前段階にある現状で、現時点から考えられることは
研究、開発、製造の段階での国際的な協力において
その集団を先進国だけにするのではなく、
将来的な事も含めて発展途上国の研究者の方、団体を
加える事も検討する余地があります。
mRNAワクチンでもわかったように
有事の際に現地で製造できる環境にあれば、
普及不均等の課題のいくつかは超えられた可能性があるからです。

(参考文献)
(1)
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir, Haojun Liang, Jinjun Shi, Avi Schroeder & João Conde 
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(2)
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(7)
Vaughan, H. J., Green, J. J. & Tzeng, S. Y. 
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nucleic acid delivery. Adv. Mater. 32, 1901081 (2020).
(8)
Chakraborty, C., Sharma, A. R., Bhattacharya, M. & 
Lee, S.-S. From COVID-19 to cancer mRNA vaccines: 
moving from bench to clinic in the vaccine landscape. 
Front. Immunol. 12, 2648 (2021).
(9)
Tombácz, I., Weissman, D. & Pardi, N. in Vaccination 
with Messenger RNA: A Promising Alternative to  
DNA Vaccination BT - DNA Vaccines: Methods  
and Protocols (ed. Sousa, Â.) 13–31 (Springer US, 
2021).
(10)
Maruggi, G., Zhang, C., Li, J., Ulmer, J. B. & Yu, D. 
mRNA as a transformative technology for vaccine 
development to control infectious diseases. Mol. Ther. 
27, 757–772 (2019).
(11)
Fundytus, A. et al. Access to cancer medicines  
deemed essential by oncologists in 82 countries:  
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22, 1367–1377 (2021).
(12)
Yamankurt, G. et al. Exploration of the 
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(13)
Shamay, Y. et al. Quantitative self-assembly prediction 
yields targeted nanomedicines. Nat. Mater. 17,  
361–368 (2018).
(14)
Yesselman, J. D. et al. Computational design of 
three-dimensional RNA structure and function.  
Nat. Nanotechnol. 14, 866–873 (2019).
(15)
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10.1101/2021.03.29.437587 (2021).
(16)
Melanie S. Brucks & Jonathan Levav 
Virtual communication curbs creative idea generation
Nature (2022)


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DNAベースの設計自由度の高い膜貫通ナノ細孔構造

被膜ナノ細孔は分子輸送において鍵を握ります。
それは
〇生物学
〇DNA配列決定(2-5)
〇ラベルフリーの単一分子分析(6-15)
〇ナノ医療(6)
これらに応用できます。
輸送は数ナノメートルのシリンダー様経路に依存します。
これらの方式はその設計自由度から
科学的、技術的に注目を浴びています。
しかし、ナノ細孔は自然には存在せず、
人工的にタンパク質の新たな経路を生み出すことは
技術的に難しいとされています(11,16-18)。
Yongzheng Xing, Adam Dorey, Lakmal Jayasinghe & Stefan Howorka 
(敬称略)からなる医療研究グループは
被膜ナノ細孔の構造的、機能的範囲を劇的に拡張できる
論理根拠あるDNAの設計を提供されています(1)。
DNA2重らせん構造を束上に形成し、
それを穴を形成するサブユニットとして組み込みます。
それによって穴の形、サイズを任意に変える事ができます。
穴の大きさは数十ナノメートルまで拡張する事が可能です(1)。
通過する分子の認識やそれによる信号のための
機能を持つユニットは選択的に構造の中に結合させる事が可能です。
重要なパラメータを調整する事によって
カスタムメイドのナノ細孔を作ることができます。
例えば、10nmサイズのタンパク質の
直接的な単一分子検知を電気信号を使って行うことができます。
これは研究への利用性は高く、
携帯できるほどの大きさの分析デバイスになります。
このDNAを使ったナノ技術は
〇合成生物学
〇単一分子酵素学
〇生物物理分析
〇環境センシング
〇携帯型分析装置
これらへの使用が想定されます。
--
膜のナノ細孔の内腔は生物学、技術の中の機能を決めます。
ナノ細孔センシング(検知)では内腔であるチャンネル幅が
検知の対象となる分子の入場と通過を制御します。
通過によって生じた電気信号は
通過する分子、あるいは大きさに影響を受けます(19-21)。
例えば、1-5nmの幅の生物学的タンパク質の細孔は
〇均等な大きさのDNAらせん構造のセンシング(3-5)
〇有機分子のセンシング(22,23)
〇小さなタンパク質のセンシング(12-14,21)
これらに使う事が出来ます。
この大きさが変われば、検知できる物質も
その大きさに応じて変わります。
従って、Yongzheng Xing氏らが示したの様に
ナノ細孔の大きさと形を可変性の高さは
様々な物質の詳細なセンシングに貢献すると考えられます。
また、ナノ細孔に特定の受容体を設ける事で
特定の分析対象物質を定めることもできます(12,13,24,25)。
--
今までは被膜貫通型のナノ細孔を形成する材料として
タンパク質やペプチドを使用する事は難しかったです。
なぜなら、複雑に折りたたまれた3次元構造であるからです(26-28)。
一方、DNAは大きなナノスケールの構造を作るための
代替となる材料とされていまs(29-33)。
今までのDNAベースのナノ細孔の内腔は10nm程度までです(34-40)。
--
DNAを使ったナノ細孔ユニットは
参考文献(1)からわかるように
一定の大きさを持った2本鎖のDNAユニットを
束状にした構造となっています。
その束の部分が形状の「辺」となっています。
そして三角形、四角形、五角形とするための
「角」の部分は大きさの異なる、小さな
2本鎖と1本鎖の組み合わせで出来ていて
それぞれの隣り合う「辺」を
1本鎖によって柔軟に架橋しています。
従って、「辺」と「角」を閉ループで繋いだ時に
自然にできる形は決まってきます。
例えば、辺が4つ、角が4つであれば、四角形となります。
辺は束の大きさを変える事で変化するので
それによってできる大きさも変わってきます。

//考察1//ーー
主に分子オーダーのセンシングに使われる
膜貫通のナノ細孔のユニットをタンパク質ではなく
核酸であるDNAで作ったことは
その形の安定性、制御性において論理根拠があります。
タンパク質の場合は構造の対称性が低く
複雑に折りたたまれています。
それをベースにナノオーダーの構造物を作った時の
形は不安定になり、かつ異種性が生じます。
一方、らせん構造はベクトルが定まっていて
中心線は直線となります。
従って、それがベースになる1本鎖、2本鎖の構造は
形として対称性が高く、安定であると考えられます。
それを束とすることで直線性の高い
ナノオーダーの円柱が得られるということです。
どれくらい絡ませるかによって
その構造物の堅牢性は決まってくると考えられます。
形が柔軟に変わってほしい角の部分は
より細い構造である1本鎖で架橋する構造となっています。
また、切断されないように適度な大きさで
2本鎖の束構造が角の部分の外側の中間部に挟まれてきます。

//考察2//ーー
Yongzheng Xing(敬称略)らが示した
膜にナノ細孔をDNA構造物で任意の形、大きさで開ける技術は
プラズマ膜を持つナノ粒子の薬剤の効率的な封入に使うことができるか?
という視点があります。
また、ナノ細孔によってセンシングができるというのは
ナノ粒子内に封入される薬剤や他の物質の検知にも使える
可能性があります。
つまり、実際にナノ粒子の中に入る物質を検知しながら
同時にナノ粒子の中にナノ細孔を通じて封入できるか?
という観点です。
また、一旦、穴をあけた膜が
再び、完全な膜として回復するかという視点もあります。

(参考文献)
(1)
Yongzheng Xing, Adam Dorey, Lakmal Jayasinghe & Stefan Howorka 
Highly shape- and size-tunable membrane nanopores made with DNA
Nature Nanotechnology (2022)
(2)
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Burns, J. R., Seifert, A., Fertig, N. & Howorka, S. A biomimetic DNA-based 
channel for the ligand-controlled transport of charged molecular cargo across 
a biological membrane. Nat. Nanotechnol. 11, 152–156 (2016).
(39)
Thomsen, R. P. et al. A large size-selective DNA nanopore with sensing 
applications. Nat. Commun. 10, 5655 (2019).
(40)
Diederichs, T. et al. Synthetic protein-conductive membrane nanopores built 
with DNA. Nat. Commun. 10, 5018 (2019).


2022年4月29日金曜日 0 コメント

細胞外小胞内microRNA181c依存の乳癌脳転移の機序

脳への転移は癌治療を難しくし、
患者さんの予後不良の結果を招きます。
それゆえに癌転移の過程の詳しい見識を得る事が
極めて重要になります。
その過程で必要になるのが
癌細胞が循環器を通して脳血管に到達し
血液脳関門を超えて癌細胞が脳内組織に
マイグレーション、滲出することです(2,3)。
その分布の箇所は微小環境を作ると知られている内皮細胞や
周辺の細胞からなります(4,5)。
血液脳関門は脳にとって脅威となる物質が浸透しないように
ブロックする働きがありますが、
脳に転移が起こる場合には事前の物質伝達によって
その組織が破壊されることが知られています(6)。
上皮間葉転換して循環してきた癌細胞は
血液内皮細胞のプラズマ膜上にあるリガンド、結合因子と
分子的に結合し、固定され、
そこから血液脳関門を超えて脳内に滲出します。
そうして微小環境を土壌にして
原発腫瘍に続く、第二、第三の腫瘍組織として
萌芽し、成長します(7,8)。
この時に脳内血管の管の一部である内皮細胞、組織が
ダメージを受けていなければ、
血液脳関門は癌細胞をブロックし、
癌細胞は脳内に滲出する事ができません。
この仮説はおおよそ受け入れられていますが、
癌細胞が血液脳関門を超えて滲出する事も含めた
分子的な機序については今までよくわかっていませんでした。
今まで、体液性の因子がこれらに関わっている
と考えられていました。
しかしながら、血液脳関門を構成する細胞の相互作用の
複雑性の観点から十分に血液脳関門の組織の破壊について
説明する事が難しいというものでした(9)。
一方、
エクソソームを含む細胞外小胞は癌細胞の悪性度の
複数の生理機序を制御するとして知られています(10-12)。
細胞外小胞は、細胞間のコミュニケーションを仲介します。
その内腔にはタンパク質、mRNAs, microRNAsが
含まれています(13)。
しかし、まだ脳への転移における
細胞外小胞の役割については知られていませんでした。
--
Naoomi Tominaga(敬称略)らは
乳癌細胞由来のエクソソームは血管の運動性に関わる
アクチンの動的機序を乱し
それによって血液脳関門を破壊する事を
試験管で示されています(1)。
これに関わっている物質はmiR-181cと呼ばれるmicroRNAです。
これが
3-phosphoinositide-dependent protein kinase-1 (PDPK1)。
これを抑制する事によって
拡張、収縮運動するアクチンファイバーの非局在化をもたらし
結果、血液脳関門が破壊されています。
PDPK1はリン酸化コフィリンと関わり、
それがアクチンダイナミクスに影響を与えています。
コフィリンとアクチンについては
他の報告でもコフィリンがアクチン繊維を切断する
ことが報告されています(14)。
このアクチンは細胞骨格線維のタンパク質で
血液脳関門の結合性に関わるTight junctionの
〇ZOタンパク質
〇クラウディン
〇オクルディン
これらと結合することが知られています(1)。
従って、このアクチンに異常が出る事で
組織の連結性が損なわれることが考えられます。
--
上述したmiR-181c(microRNA)は
肝細胞癌(15)、基底細胞癌(16)、乳癌(17)において
その悪性度と関連があることが示されています。
--
実際に細胞外小胞は
タンパク質、脂質、核酸など様々な物質を含んでいる
と考えられます。
乳癌細胞から分泌した細胞外小胞は
乳癌細胞の中に含まれるこれらの物質を内容物として
含んでいる可能性が極めて高いです。
従って、単一の物質のみが関与しているかどうかは
わかりません。
Naoomi Tominaga(敬称略)らが指摘しているように
miR-105も関わっている事が過去示されています。

//考察//ーー
今回の結果から、miR-181cは
乳癌の悪性度を「事前に」予測する上での
血中のバイオマーカーになる可能性があります。
まだ、脳への転移が顕著ではなく
かつmiR-181cのレベルが高いのであれば、
脳への転移のリスクが高いとして
予め転移させないように治療することができる
可能性があります。

(参考文献)
(1)
Naoomi Tominaga, Nobuyoshi Kosaka, Makiko Ono, Takeshi Katsuda, Yusuke Yoshioka, Kenji Tamura, Jan Lötvall, Hitoshi Nakagama & Takahiro Ochiya 
Brain metastatic cancer cells release microRNA-181c-containing extracellular vesicles capable of destructing blood–brain barrier
Nature Communications volume 6, Article number: 6716 (2015) 
(2)
 Arshad, F., Wang, L., Sy, C., Avraham, S. & Avraham, H. K. Blood-brain barrier
integrity and breast cancer metastasis to the brain. Patholog. Res. Int. 2011,
920509 (2010).
(3)
Bos, P. D., Nguyen, D. X. & Massague´, J. Modeling metastasis in the mouse.
Curr. Opin. Pharmacol. 10, 571–577 (2010).
(4)
Winkler, E. A., Bell, R. D. & Zlokovic, B. V. Central nervous system pericytes in
health and disease. Nat. Neurosci. 14, 1398–1405 (2011).
(5)
Ballabh, P., Braun, A. & Nedergaard, M. The blood-brain barrier: an overview:
structure, regulation, and clinical implications. Neurobiol. Dis. 16, 1–13 (2004).
(6)
Lee, T. H., Avraham, H. K., Jiang, S. & Avraham, S. Vascular endothelial
growth factor modulates the transendothelial migration of MDA-MB-231
breast cancer cells through regulation of brain microvascular endothelial cell
permeability. J. Biol. Chem. 278, 5277–5284 (2003).
(7)
Nicolson, G. L. Organ specificity of tumor metastasis: role of preferential
adhesion, invasion and growth of malignant cells at specific secondary sites.
Cancer. Metastasis Rev. 7, 143–188 (1988).
(8)
Orr, F. W., Wang, H. H., Lafrenie, R. M., Scherbarth, S. & Nance, D. M.
Interactions between cancer cells and the endothelium in metastasis. J. Pathol.
190, 310–329 (2000).
(9)
Yano, S. et al. Expression of vascular endothelial growth factor is necessary but
not sufficient for production and growth of brain metastasis. Cancer Res. 60,
4959–4967 (2000).
(10)
Yang, C. & Robbins, P. D. The roles of tumor-derived exosomes in cancer
pathogenesis. Clin. Dev. Immunol. 2011, 842849 (2011).
(11)
Bobrie, A. et al. Rab27a supports exosome-dependent and -independent
mechanisms that modify the tumor microenvironment and can promote tumor
progression. Cancer Res. 72, 4920–4930 (2012).
(12)
Peinado, H. et al. Melanoma exosomes educate bone marrow progenitor cells
toward a pro-metastatic phenotype through MET. Nat. Med. 18, 883–891 (2012).
(13)
Valadi, H. et al. Exosome-mediated transfer of mRNAs and microRNAs is a novel
mechanism of genetic exchange between cells. Nat. Cell Biol. 9, 654–659 (2007).
(14)
成田 哲博,田中 康太郎
コフィリンによるアクチン線維切断とその制御
Journal of Japanese Biochemical Society 91(1): 109-113 (2019)
(15)
Ji, J. et al. Identification of microRNA-181 by genome-wide screening as a
critical player in EpCAM-positive hepatic cancer stem cells. Hepatology 50,
472–480 (2009).
(16)
Sand, M. et al. Expression of microRNAs in basal cell carcinoma. Br. J.
Dermatol. 167, 847–855 (2012).
(17)
Lowery, A. J. et al. MicroRNA signatures predict oestrogen receptor,
progesterone receptor and HER2/neu receptor status in breast cancer. Breast
Cancer Res. 11, R27 (2009).

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エクソソームの生物学的生成機序

エクソソームがどのように生物学的に生成されるのか?
これにおける基礎的な事も含む、より詳しい調査は
エクソソームの構成要素である
〇内容物
〇プラズマ膜
〇表面リガンド
これらの材料を推定し、あるいは特定する上で非常に重要です。
例えば、表面リガンドがどのようであるかは
陥入プロセスを追うことで推定することができます。
また、内容物に関しては
細胞内のどの器官(トランスゴルジ網)から
物質が運ばれて、生成したのか?
ということを調べる事によって一部明らかになります。
例えば、
自己免疫疾患を持つ患者さんの免疫細胞から
分泌されるエクソソームによる物質輸送は
病態において重要な可能性があります。
そうした場合、
エクソソームの内容物を調べる事は1つ重要になります。
その内容物がトランスゴルジ網から輸送されるのであれば、
異常のある免疫細胞のトランスゴルジ網を調べる事に寄って
何か重要な発見がある可能性もあります。
エクソソームを薬剤のナノキャリアとして使う場合には
生成、精製したエクソソームに元々含まれている
内容物や表面リガンドに注意する必要があります。
従って、内容物がどのように生じているかを
エクソソームの生成過程を詳しく調べることで
推定することは、
少なくとも一定の意義があります。
また、プラズマ膜がより複雑な事もわかります。
これらの事を総合的に把握するためには
エクソソームの生物学的な生成過程の基礎を学ぶ必要があります。
--
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu(敬称略)からなる
医療研究グループはエクソソームの生成過程の基礎について
総括されています(1)。
その内容について独自の説明、考察を加えながら、
読者の方と情報共有したいと思います。

エクソソームはプラズマ膜の2度の陥入によって生じます。
この「2度の陥入(double invagination)」とは
エンドサイトーシスするときに
細胞膜に陥入するプロセスと
それによってできたエンドソームに
陥入するプロセスを指します。
エンドソーム内に複数の腔内膜小胞ができている状態では、
多胞体(multivesicular bodies(MVBs))。
このように呼ばれます。
エンドソーム内にある状態では
腔内膜小胞(intraluminal vesicles (ILVs)。
このように呼ばれ、エキソサイトーシスにより
細胞外に放出されるとエクソソームと呼ばれます。
そのサイズは40~160nmの大きさです。
従って、肝臓にも消化されにくく、
かつ、単球などによる除去も起こりにくい大きさである
と認識しています。
--
前述したように1度目の陥入はエンドソームの形成に関わります。
その初期のエンドソームの形成、量は
小胞体のトランスゴルジ網が関係しています(2-7)。
エンドソームは細胞質内で成熟し、
後期のエンドソームでは後にエクソソームとなる
腔内膜小胞を多く含んだ多胞体となります。
2度目の陥入はトランスゴルジ網から供給される
タンパク質を含む物質の機械的な圧力によって(??)
エンドソームが陥入されることです。
それによって腔内膜小胞が複数、エンドソーム内腔に生じます。
--
この多胞体は全て細胞外に放出されるわけではありません。
一部はリソソーム、オートファゴソームと融合し、
それによって分解されます。
残りを含む一部は細胞膜であるプラズマ膜と融合して
空内膜小胞がエクソソームとして細胞外に放出されます(3,8)。
--
エクソソーム生成の起源(材料)は
〇The Ras-related protein GTPase Rab
〇Sytenin-1
〇TSG101(tumor susceptibility gene 101)
〇ALIX(apoptosis-linked gene 2-interacting protein X)
〇syndecan-1
〇ESCRT (endosomalsorting complexes required for transport) proteins
〇phospholipids
〇tetraspanins
〇ceramides
〇sphingomyelinases,
〇SNARE [soluble N-ethylmaleimide-sensitive factor (NSF) attachment protein receptor] complex proteins
これらです。
しかし、さらなる深堀が生体内の正確な律速機序を
把握するため必要となります(5,9,10)。
〇エクソソームの生物生成の経路と
〇細胞内小胞内外を行き来する(trafficking)事に関連した
 細胞内の他の分子経路
これらの交絡はエクソソームの機能的な研究の解釈を
より複雑にしてきました。
例えば、上述したタンパク質RabやESCRTなどの
タンパク質のloss- or gain-of-function実験で
物質、機能の有無がどのような影響を与えるか調べられました。
しかし、オートファジー、リソソーム経路、
ゴルジ体由来の小胞交換など
多くの機能に影響を与えてしまいました。
従って、エクソソームにだけ影響を与える要因を
調べる事は容易ではありませんでした。
一方で、
特定の細胞種では培養条件や細胞の遺伝子状態は
生体内でエクソソームの生物生成の制御において
想定上の鍵の要因となっているかもしれないとされています(5)。
従って、エクソソームに関連する制御因子が
それぞれで異なる事は、
その調査が異なる方法によって行われたからである
と考える事ができます(6)。
--
エクソソーム生成がどれくらいの速さ、率で起こるか
という計算は難しいとされています。
なぜならその動的機序は新たな生成だけではなく、
周りの細胞、あるいは自分の細胞(?)への
取り込み、再取り込み(?)も関わるからです。
そういった中で、
単一細胞レベルで低速度撮影で
エクソソームに含まれるテトラスパニン抗体の
信号を検知して、その正味の生成量を
癌化していない乳房上皮細胞と
癌化したそれとを比較しています。
その比較によれば、
癌細胞のほうが一時間、一細胞あたり
60~65個のエクソソーム生成が
通常細胞よりも少なかったことが示されました(11)。
しかし、この結果は報告によって異なります(2,9)。
異なる単離方法である、
もしくは、
エクソソームと大きさが一部重複する
エクトサムを同時にカウントしていた可能性もあります。

//考察//ーー
エクソソームの生成が培養条件や遺伝子の状態によって
変わるという事は、エクソソームを薬剤封入のための
ナノキャリアとして使う際の特性異種性と関わると考えられます。
ナノ粒子を利用した薬剤輸送システムでは
このような特性バラつきが度々問題視されています。
エクソソームの生成に関わる物質は多岐にわたり、
その条件によっても変わるとなると
よりこの異種性、ばらつきの問題が複雑となります。
少なくとも現時点で言えることは
エクソソームのもととなる細胞や
エクソソームを取り出した時の細胞の培養条件などの
より詳しい情報を掲載する必要があると考えられます。

(参考文献)
(1)
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu
The biology, function, and biomedical applications of exosomes
Science 367 , eaau6977 (2020)
(2)
R. Kalluri, The biology and function of exosomes in cancer.
J. Clin. Invest. 126, 1208 – 1215 (2016). doi: 10.1172/JCI81135;
pmid: 27035812
(3)
G. van Niel, G. D ’ Angelo, G. Raposo, Shedding light on the cell
biology of extracellular vesicles. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 19,
213 – 228 (2018). doi: 10.1038/nrm.2017.125; pmid: 29339798
(4)
K. M. McAndrews, R. Kalluri, Mechanisms associated with
biogenesis of exosomes in cancer. Mol. Cancer 18, 52 (2019).
doi: 10.1186/s12943-019-0963-9; pmid: 30925917
(5)
M. Mathieu, L. Martin-Jaular, G. Lavieu, C. Théry, Specificities
of secretion and uptake of exosomes and other extracellular
vesicles for cell-to-cell communication. Nat. Cell Biol. 21,
9 – 17 (2019). doi: 10.1038/s41556-018-0250-9;
pmid: 30602770
(6)
E. Willms, C. Cabañas, I. Mäger, M. J. A. Wood, P. Vader,
Extracellular vesicle heterogeneity: subpopulations, isolation
techniques, and diverse functions in cancer progression.
Front. Immunol. 9, 738 (2018). doi: 10.3389/
fimmu.2018.00738; pmid: 29760691
(7)
N. P. Hessvik, A. Llorente, Current knowledge on exosome
biogenesis and release. Cell. Mol. Life Sci. 75, 193 – 208
(2018). doi: 10.1007/s00018-017-2595-9; pmid: 28733901
(8)
G. van Niel, G. D ’ Angelo, G. Raposo, Shedding light on the cell
biology of extracellular vesicles. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 19,
213 – 228 (2018). doi: 10.1038/nrm.2017.125; pmid: 29339798
(9)
M. P. Bebelman, M. J. Smit, D. M. Pegtel, S. R. Baglio,
Biogenesis and function of extracellular vesicles in cancer.
Pharmacol. Ther. 188, 1 – 11 (2018). doi: 10.1016/
j.pharmthera.2018.02.013; pmid: 29476772
(10)
C. Ciardiello et al., Focus on extracellular vesicles: New
frontiers of cell-to-cell communication in cancer. Int. J. Mol.
Sci. 17, 175 (2016). doi: 10.3390/ijms17020175;
pmid: 26861306
(11)
Y. J. Chiu, W. Cai, Y. R. Shih, I. Lian, Y. H. Lo, A single-cell
assay for time lapse studies of exosome secretion and cell
behaviors. Small 12, 3658 – 3666 (2016). doi: 10.1002/
smll.201600725; pmid: 27254278

2022年4月27日水曜日 0 コメント

脳転移性乳癌の細胞外小胞を介した機序と治療

エクソソームによる治療を考えていくときには
いくつかのアプローチがあると思っています。
1つはエクソソームの生成や伝搬など
その基礎的生理について詳しく調べ、明らかにしていくことです。
もう1つは、すでに明らかにされている
エクソソーム治療の報告例を調べていく事です。
それに加えて、より多次元的なアプローチで
治療可能性を探っていくためには
エクソソームがそれぞれの疾患で
どのような機能を担っているかを個別に調べていく事です。
それによってより具体的にエクソソーム治療の
方法を考える事ができるからです。
Naoomi Tominaga, Nobuyoshi Kosaka(敬称略)ら
医療研究グループは脳に転移した乳癌のケースについて
細胞内小胞の寄与、機能について報告されています(1)。
本日は、その要約部分を少し詳しく掘り下げ、
細胞種特異的輸送系統による治療について考察いたします。

乳癌の患者さんにおいて脳への転移が治療を難しくします。
命を落とされる主要な原因の一つです。
脳への転移過程では乳房で生じた原発腫瘍から
上皮間葉転換を経て循環器に滲出し、
何らかの走化性を持ち、脳血管に循環し、
血液脳関門を超えて癌細胞が頭蓋内脳組織に滲出する
と考えられます。
その中で特に血液脳関門を超える分子的な機序については
よくわかっていませんでした。
Naoomi Tominaga(敬称略)ら医療研究グループは
癌細胞由来の細胞外小胞が輸送するタンパク質、
microRNAsが血液脳関門の組織を破壊し
バリア機能を低下させることを示しました(1)。
特にmiR-181cが遺伝子PDPK1の抑制を通して
アクチンを異常な局在性を通して
血液脳関門の組織を破壊することが示されています(1)。
アクチンは血管の筋細胞の収縮や
細胞質流動など運動性に関わるフィラメントタンパク質です。
これが局在化する事によって
血管の収縮、拡張の連動性が局所的に失われ
それによって破壊、あるいはリーキーになった
と考える事も出来ます。
miR-181cによるPDPK1抑制はリン酸化コフィリンを抑制します。
このコフィリンはアクチン結合タンパク質であり
運動性に関わっています。これが活性化して
アクチンの異常な運動を引き起こしたとされています。
細胞外小胞は生体内で脳に効率的に取り込まれる事が示されました。
つまり、一定の脳向性が示されました。
これらの結果は、乳癌から脳へ転移する際に新しくわかった
機序であります。その一つの大きな原因は
脳へ走化性を持ったエクソソームを含む
細胞内小胞の内容物miR-181cが
アクチン異常運動性依存的に血液脳関門組織を破壊することである
と考えられています。

//細胞種特異的輸送系統(*)の観点//ーー
(*)Cell-type-specific delivery system
今回はすでに転移が生じてしまっている
難治性のケースについて考えます。
エクソソームなど細胞内小胞は乳癌のケースでは
内皮細胞に取り込まれるとあります(2)。
従って、脳腫瘍組織の土壌は脳内の血管から生じている
ケースが多いかもしれないと考える事も出来ます。
従って、他の組織にできる癌組織に比べて
血液からアクセスした治療が有効である可能性があります。
例えば、脳に向性を持つインテグリンのβ鎖はβ3
であるといわれています(2)。
従って、このβ3インテグリンを持つエクソソームなど
ナノ粒子を循環器から注入します。
その時にナノ粒子内(エクソソームなど)に
脳腫瘍に効果を発揮する抗がん剤を封入します。
乳癌細胞由来のエクソソームを輸送媒体として使う場合は
内容物や表面リガンドが発がん性を持つ可能性があるので
注意が必要です。
マクロファージや樹状細胞など
血液性由来のエクソソームの方が
高い奏功が得られるかもしれません。
アクセスルートが血液中だからです。

(参考文献)
(1)
Naoomi Tominaga, Nobuyoshi Kosaka, Makiko Ono, Takeshi Katsuda, Yusuke Yoshioka, Kenji Tamura, Jan Lötvall, Hitoshi Nakagama & Takahiro Ochiya 
Brain metastatic cancer cells release microRNA-181c-containing extracellular vesicles capable of destructing blood–brain barrier
Nature Communications volume 6, Article number: 6716 (2015) 
(2)
Ayuko Hoshino, Bruno Costa-Silva, Tang-Long Shen, Goncalo Rodrigues, Ayako Hashimoto, Milica Tesic Mark, Henrik Molina, Shinji Kohsaka, Angela Di Giannatale, Sophia Ceder, Swarnima Singh, Caitlin Williams, Nadine Soplop, Kunihiro Uryu, Lindsay Pharmer, Tari King, Linda Bojmar, Alexander E. Davies, Yonathan Ararso, Tuo Zhang, Haiying Zhang, Jonathan Hernandez, Joshua M. Weiss, Vanessa D. Dumont-Cole, Kimberly Kramer, Leonard H. Wexler, Aru Narendran, Gary K. Schwartz, John H. Healey, Per Sandstrom, Knut Jørgen Labori, Elin H. Kure, Paul M. Grandgenett, Michael A. Hollingsworth, Maria de Sousa, Sukhwinder Kaur, Maneesh Jain, Kavita Mallya, Surinder K. Batra, William R. Jarnagin, Mary S. Brady, Oystein Fodstad, Volkmar Muller, Klaus Pantel, Andy J. Minn, Mina J. Bissell, Benjamin A. Garcia, Yibin Kang, Vinagolu K. Rajasekhar, Cyrus M. Ghajar, Irina Matei, Hector Peinado, Jacqueline Bromberg & David Lyden
Tumour exosome integrins determine organotropic metastasis
Nature volume 527, pages329–335 (2015)


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エクソソーム研究の背景と課題

エクソソームを使った薬剤輸送を実現するためには
今までの輸送媒体としてのエクソソームを調べるだけではなく、
その起源も含めた基礎的な知識を得る必要があります。
それによってより精密にエクソソームを使った
薬剤輸送システムを実現できると考えられます。
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu(敬称略)からなる
医療研究グループは、エクソソームの生物学、機能など
基礎的な事から、生物医療への応用まで総括されています(1)。
その要約と背景の内容を精査し、追記したうえで
読者の方とそれに関する情報共有をしたいと思います。

//要約//ーー
エクソソーム、エクトサムに代表される細胞外小胞の研究は
臓器の恒常性、疾患、細胞間のコミュニケーションにおける
細胞、分子の機序を明らかにする潜在性を有しています。
細胞外小胞のエクソソームの大きさは平均で100nmです。
エクソソームの発生はエンドソームの中にその起源があります。
また他の細胞内輸送媒体と相互作用します。
細胞内小器官はエクソソームの内腔の内容部を生成します。
その内容物は、核酸(遺伝子)、タンパク質、脂質、
アミノ酸、代謝生成物など多岐にたわります。
それはエクソソームが生み出された細胞に依存します。
従って、様々な疾患では細胞が特異的な状態になりますが、
その改変された状態はエクソソームにも反映されます。
従って、細胞外に放出され、血液や尿などの
液体生検の中に含まれたエクソソームを分析する事で
病気の診断にも利用する事ができます。
エクソソームはドナー細胞からエクソサイトーシスし
受け細胞でエンドサイトーシスし、
プラズマ膜が開放することで、
上述した細胞内の内容物を伝達する事ができます。
その内容物や伝達手段を制御する事によって
エクソソームベースの治療を任意に設計することができます。

//背景//ーー
多細胞生物の細胞外小胞の生成、機能を支配する機序は
生理学的な組織の制御から病原性の創傷、
臓器の再形成までの幅広い機序に関係します。
細胞外小胞の研究は様々な病気の診断や治療に使える
可能性があるため推し進められてきました。
例えば、対象となる病気は
〇神経変性疾患
〇心臓血管不全
〇癌
これらなどです。
これらの研究は
〇細胞外小胞の分類
〇単離法、精製
〇病気に対する機能
これらを狙いとして増えています(2-6)。
細胞外小胞の生物学的な特性調査は
〇組織培養
〇非生理的な読み出し
〇多様な細胞外小胞の単離法
これらに依存します。
さらに精製する必要があります(7,8)。
検査をうける生物が健康か病気の状態にあるか?
それを細胞外小胞の情報から読み解くには
まだいくつかの課題があります。
細胞による細胞外小胞の生成は
単純なたんぱく質循環機能を超えて拡大します。
例えば、網状赤血球のトランスフェリン受容体で
それが報告されています(9,10)。
またそれは、細胞の起源、代謝状態
細胞の環境によっても変わります。
細胞外小胞の研究は以下、難しさがあります。
〇単一粒子検出
〇単一粒子隔離
〇イメージの解像度不足(生体内)
〇軌跡を追えない。高解像度の動画撮影難(生体内)
しかし、いくつかの発見があります。
液体生検によって取り出した細胞外小胞を
多様に分析する事です(3)。
--
細胞外小胞は
〇エクソソーム
〇エクトサーム
大きくは2つに分類することができます(11)。
エクトサムはエクソソームと形成方法が異なります。
細胞膜(plasma membrane)から直接発芽して
細胞外に放出されます。
サイズはエクソソームよりもバラつき、平均値が大きく、
50nm~1μmの径を有します。
一方、エクソソームはエンドソームの後期課程における
発芽によって生じ、その大きさは
40~160nm(平均100nm)と報告されています。
--
本記事では細胞外小胞のうちエクソソームに焦点を当てます。
エクソソーム研究の為の精製、分析は
その異種性から難しいとされています。
例えば、エクトサムも含めて
大きさで選別した場合、重複する領域もある事から
エクソソームだけを精製することが難しく
他の細胞外小胞も交じってしまうことがあります。
しかし、
エクソソームはドナー細胞内の制御プロセスを含み
それらが材料構成比や機能を決定すると考えられます。
それが細胞外に放出されます(3,7,12)。
従って、研究対象としては魅力があります。
エクソソームの隔離方法はまだ十分ではなく
現在の生物学的バイオマーカーによる単離法では
特定の内容物を持つ一部のエクソソームしか
認識する事ができないかもしれません(2,8,13,14)。
従って、単離するためのより有効な方法の開発が必要です。

//考察//ーー
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu(敬称略)からなる
エクソソームの研究者の方は
少なくとも2020年2月に報告された時点では
エクソソーム研究を推し進めるために
エクソソームをどうやって仕分け、単離するか?
ということが背景で多く触れられています。
細胞外小胞はエクトサムも含めて
様々な種類があり、大きさ、内容物、表面リガンドなども
おそらく異なります。
その中で、どういう基準で、どうやって
特定のエクソソームを単離するか?
それは、特性評価などの基礎的な研究だけではなく
治療の為の応用の際にも必要になる事です。
エクソソームは輸送媒体としては
生体互換性が高く有望である可能性がありますが、
その異種性、複雑性が他のナノ粒子に比べて
実現可能性を制限している可能性があります。
従って、単胞レベルでの効果的な選別法について
継続的な調査、開発が必要になります。

(参考文献)
(1)
Raghu Kalluri and Valerie S. LeBleu
The biology, function, and biomedical applications of exosomes
Science 367 , eaau6977 (2020)
(2)
C. Théry et al., Minimal information for studies of
extracellular vesicles 2018 (MISEV2018): A position
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Vesicles and update of the MISEV2014 guidelines.
J. Extracell. Vesicles 7, 1535750 (2018). doi: 10.1080/
20013078.2018.1535750; pmid: 30637094
(3)
R. Kalluri, The biology and function of exosomes in cancer.
J. Clin. Invest. 126, 1208 – 1215 (2016). doi: 10.1172/JCI81135;
pmid: 27035812
(4)
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influence cancer progression and metastasis. J. Mol. Med. 91,
431 – 437 (2013). doi: 10.1007/s00109-013-1020-6;
pmid: 23519402
(5)
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biology of extracellular vesicles. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 19,
213 – 228 (2018). doi: 10.1038/nrm.2017.125; pmid: 29339798
(6)
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biogenesis of exosomes in cancer. Mol. Cancer 18, 52 (2019).
doi: 10.1186/s12943-019-0963-9; pmid: 30925917
(7)
M. Mathieu, L. Martin-Jaular, G. Lavieu, C. Théry, Specificities
of secretion and uptake of exosomes and other extracellular
vesicles for cell-to-cell communication. Nat. Cell Biol. 21,
9 – 17 (2019). doi: 10.1038/s41556-018-0250-9;
pmid: 30602770
(8)
M. J. Shurtleff, M. M. Temoche-Diaz, R. Schekman,
Extracellular vesicles and cancer: Caveat lector. Annu. Rev.
Cancer Biol. 2, 395 – 411 (2018). doi: 10.1146/annurev-
cancerbio-030617-050519
(9)
C. Harding, J. Heuser, P. Stahl, Receptor-mediated
endocytosis of transferrin and recycling of the transferrin
receptor in rat reticulocytes. J. Cell Biol. 97, 329 – 339 (1983).
doi: 10.1083/jcb.97.2.329; pmid: 6309857
(10)
B. T. Pan, K. Teng, C. Wu, M. Adam, R. M. Johnstone,
Electron microscopic evidence for externalization of the
transferrin receptor in vesicular form in sheep reticulocytes.
J. Cell Biol. 101, 942 – 948 (1985). doi: 10.1083/jcb.101.3.942;
pmid: 2993317
(11)
E. Cocucci, J. Meldolesi, Ectosomes and exosomes: Shedding
the confusion between extracellular vesicles. Trends Cell Biol.
25, 364 – 372 (2015). doi: 10.1016/j.tcb.2015.01.004;
pmid: 25683921
(12)
M. P. Bebelman, M. J. Smit, D. M. Pegtel, S. R. Baglio,
Biogenesis and function of extracellular vesicles in cancer.
Pharmacol. Ther. 188, 1 – 11 (2018). doi: 10.1016/
j.pharmthera.2018.02.013; pmid: 29476772
(13)
D. K. Jeppesen et al., Reassessment of exosome composition.
Cell 177, 428 – 445.e18 (2019). doi: 10.1016/
j.cell.2019.02.029; pmid: 30951670
(14)
E. Willms, C. Cabañas, I. Mäger, M. J. A. Wood, P. Vader,
Extracellular vesicle heterogeneity: subpopulations, isolation
techniques, and diverse functions in cancer progression.
Front. Immunol. 9, 738 (2018). doi: 10.3389/
fimmu.2018.00738; pmid: 29760691

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ナノ粒子による核酸の輸送(12)-制限要因-

例えば、細胞核内の特定の遺伝子を改変し、
遺伝子治療を行うためには
オフターゲットが無いように
特定の細胞に輸送し、細胞質を通って
核内の特定の遺伝子に作用させる必要があります。
標的となる重要な遺伝子が明らかになり、
その遺伝子を編集したり、
活性を変える事ができれば、
1つ、根本的な治療になりますが、
それを阻んでいるのが細胞特異的な標的性が
困難であるからであると理解しています。

例えば、癌など様々な疾患で
全ゲノム関連遺伝子評価が行われています。
それによって、場合によれば、数百個以上の
遺伝子異常が確認されることがありますが、
病気において重要な複数の遺伝子を見つける事も出来ます。
このような解析を有効にするためには
1つの大きな柱となるのが遺伝子治療です。
重要な遺伝子異常を標的として、
その遺伝子を改変する事ができれば、
病状が改善する可能性があります。
しかし、上述したように
その組織に有効に、特異的に核酸を輸送し、
さらには無数の膜を超えて細胞核まで届けるには
いくつかの大きなハードルがあります。
また、全ゲノム関連遺伝子評価から
標的とする遺伝子(群)を絞り込むところにも
まだ課題がある可能性があります。
個人差が大きければ、それも阻害要因となります。

そのような標的性以外にも
導入するナノ粒子が
例えば免疫的な拒絶反応が起こらないような
生体内で安全なものが強く求められています。
上述した免疫系は異物に対する高い除去能力を持っています。
通常、静脈注射などによる循環器を通した輸送では
血中に多種多様な免疫細胞が存在しているので
その複雑な監視を逃れる必要があります。
そのため特にナノ粒子の生体に対する互換性や
ナノ粒子表面の特性が重要になります。

RNAやDNAなどの核酸の輸送における
ナノ材料、ナノ粒子は上述した課題がありますが、
それらを満たす潜在性を有しています。
また、ナノ粒子を使う事によって
特定の遺伝子をオフ/オンにする遺伝子治療だけではなく
〇生物的な分析
〇タンパク質の補充、生成
〇ワクチン
これらにも応用することができます。
例えば、生物学的分析では
マーカー遺伝子、遺伝子のバーコード化によって、
ナノ粒子が標的細胞に届いたかどうか?
といった検査にも使うことができます。
また、遺伝子はタンパク質を生み出す元となる物質なので
タンパク質の分析、補充、生成を
人為的に行うことができます。
ワクチンにおいて
実際に新型コロナウィルスで使われた
mRNAワクチンは上述したナノ粒子によって
自然免疫系細胞まで輸送されていると考えられています。
このワクチンは樹状細胞などで
大量の新型コロナウィルスのSタンパク質を生み出し、そ
れを抗原とした免疫反応を
利用していると考えられています。
従って、ナノ粒子、mRNA(核酸)の技術は
現在ワクチンでは広く普及しています。
ーー
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir. 
(敬称略)ら医療研究グループは
効果的な核酸の輸送デザインの方法と
それによる診断や治療の効果について総括されています(1)。
その内容の一部と追記を
読者の方と情報共有したいと思います。

//ナノ粒子医療の制限と機会//ーー
ナノ材料のデザインのスタンダード、ガイドライン
実験レポートの正確性、データ蓄積を改善するために
今まで関係団体によって大きな労力が割かれてきました。
しかし、これらの実施は現状では困難なままです(2,3)。
これらを実現するためにいくつか重要な要素を
議論する必要があります。
--
ナノ工学材料は細胞の微小環境は非常に複雑であるため
多くの生物物理学的、かつ生理学的な難しさを克服するように
デザインされています(4,5)。
しかし、加えて、
患者さんごとに遺伝子的、表現的な異種性があります。
それがナノ材料輸送媒体のデザインにおいて
付加的な難しさを与えます(6,7)。
〇血液中や組織との衝突によって生じるせん断応力
〇核酸の劣化
〇タンパク質の付着
これらはナノ粒子の生体内の分布、機能、
薬剤輸送プロファイルに影響を与えます。
その特徴を一義的に評価することは難しいです。
ナノ粒子のそのような振る舞いは
従来の薬に比べて複雑であるので、
再現性を得る事、臨床応用に成功する事は
より難しいと考えられます。
上述したような異種性をしっかり調べ、
「one-size-fits-all」の
理想的なモデルだけに焦点を当てるのではなく、
患者さん特異的なデータ、
そこで示される生理学的な特徴を反映した
精密医療のデザインをよく考える必要があります。
--
物理化学特性のデータ
〇表面電荷
〇コーティング材料
〇積載材料
〇封入効率
臨床前データ
〇生体内分布
〇オフターゲット組織
〇病変部位の変化(例えば、腫瘍組織の低下量
これらデータの欠乏は
ナノ材料の研究と生体とナノ材料界面の基礎的な理解
の比較を危うくさせます。
また不均一性の問題があります。
〇体重当たりのナノ材料の重さの大きな差
〇薬剤/ナノ粒子/材料の量、濃度
これらのパラメータは
付加的な実験の不一致を招き、
再現性を得る事が難しくなります。
最近、MIRIBEL評価指標として
生体とナノ材料の一般的な情報と
重要な特性パラメータの情報を
開示する事を求める動きがあります(2)。
さらに、このナノ粒子材料を使った薬物治療の
より広範な理解について幅広く議論されています(8)。
研究機関の主な心配事は
本当に実現できるか?コストはどうか?
このような事が含まれます。
少なくとも発展途上国や歴史の浅い小さな研究所で
学際的な協力が必要なナノ粒子医療を
MIRIBEL criteriaを満たしながら実現する事は
極めて難しいと考えられています。
データの再現性報告は
学術界と産業界では大きく異なります(8-11)。
従って、産学連携の取り組みが必要になります。
産業界が積み上げた製造管理の技術、知見は
ナノ粒子医療の臨床応用のステップのいくつかに
貢献すると考えられるからです。
--
前述したようにナノ粒子を使った医療は
工学、化学、生物学、薬学、医学といった
学際的な協力がその発展のために必要になります。
そういった異分野連携が必要な事が
スケールを大きくする事、
知識、データ(マルチオミックスなど)を
蓄えることを難しくします。
例えば、
ナノ粒子医療に関わる
全ゲノムデータを貯蔵するインターネットアドレスが
様々な場所に散在してしまう事も考えられます。
そのような学術界だけの学際的な連携だけではなく
ガイドラインの制定や臨床応用の為には
産官学の連携も必要になります。
そういった中において組織間の摩擦やズレを
少なくする、修正するためには
統一的なビジョンを共有することが大事になると考えられます。
また、プロトコル、今述べたガイドラインの制定に
当たっては、手順だけではなく、
略語や頭字語の決定なども行う必要があります。
上述したようなマルチオミックスデータなどの
インターネット上のデータ貯蔵庫において
任意のデータを閲覧できるように
検索システムなどを整える必要があります。
また、近年様々な分野で取り入れられている
人工知能、機械学習を使って
ナノ材料医療に伴う複雑性を紐解く観点もあります。
それに付随するソフトウェアが
フリーで使える環境を整える事も
ナノ粒子を使った医療の発展に貢献します。
--
治療目的で遺伝子の輸送を効率的に行う事は
難しさがあります。
オリゴヌクレオチドは大きいので
ナノ粒子の膜に対して貫入することができない
とされています。
また
〇分解酵素による劣化
〇細網内皮系による食作用
〇腎臓による除去
これらを輸送のために避ける必要があります。
ウィルス、非ウィルスナノキャリアは
これらの制限を克服したと言われています。
例えば
Gendicineは初めて承認された遺伝子用製剤で
アデノウィルスキャリアによって
癌抑制p53を発現させます(12)。
多くの臨床試験が行われています(13)。
その中で今のところはウィルスキャリアの方が
結果が上回るものとなっています。
これは、細胞質や細胞膜まで到達するまでの
いくつかのバリアを乗り越える必要があるからです(14)。
また、オリゴヌクレオチドベース治療は
血液脳関門を超えないと言われています。
従って、脳神経疾患の治療において難しさがあります。
物理、化学特性である
〇次元性
〇形
〇表面電荷
〇表面リガンド密度
〇構成物質比
これらは、非ウィルス輸送システムにおいて
安定性、生体内分布、薬物動態。
これらに影響を与え、治療効率や生体反応に関わります(15-17)。
凍結乾燥法は貯蔵や輸送において
脂質、ポリマーナノ粒子の
安定性を高める事が知られています。
これらは凝集したり、溶液中で不安定であるので有効です(18,19)。
承認された遺伝子治療は
脊髄、目、肝臓がメインです
リーキーな類洞内皮を持つので
取り込み効率が高いからです(20)。
上述したナノ粒子の物理化学特性は極めて重要です。
しかし、その特性に基づいた薬物動態は
非常に複雑です。
それらの特性評価は難しいです。
不均一なので値の決定が困難です。
ナノ医療の研究における標準化、ガイドラインがないので
生物工学よってエンジニアリングしたナノ粒子の評価、
他のナノ粒子との比較を難しくします。
また、臨床試験へのトランスレーションに必要な
ナノ-生物の界面、関連の中で生じている
基本的な特性の理解がしにくい状態にあります(21)。
例えば、
癌に対する遺伝子治療をナノ粒子媒体で行う際
組織への滲出の向上や保持効果によって
ナノ粒子が集まりやすい状態にありますが、
この現象は癌種によって異なり、
その評価が難しい状態にあります。
その中で、より特異的で活性な輸送戦略が必要であると
されています(22,23)。
--
複雑なナノ医療においてデータ開示における透明性や
再現性を得る事は非常に重要です。
そのために協力的な努力が必要になります。
現状で有効な治療法のない希少疾患において
ナノ粒子輸送による遺伝子治療が有効な場合があります。
その改善は関係される方から強く求められています。
それを実現するためにも
国際的、産官学、学際的な連携によって
複雑に絡んだ糸を一つ一つほどいていき、
ナノ材料医療の標準化を含めた
共通の資産を築いていく事が求められます。

(参考文献)
(1)
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir, Haojun Liang, Jinjun Shi, Avi Schroeder & João Conde 
Nanodelivery of nucleic acids
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(2)
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bio–nano experimental literature. Nat. Nanotechnol. 
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(3)
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Nat. Nanotechnol. 7, 546–548 (2012).
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(7)
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(10)
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Challenges in the implementation of MIRIBEL criteria 
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627–628 (2019).
(11)
[No authors listed] Voices from the community.  
Nat. Nanotechnol. 14, 625 (2019).
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(20)
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strategies to improve the EPR effect in the tumor 
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(2019).


2022年4月26日火曜日 0 コメント

癌転移の臓器向性に一致したエクソソーム向性

癌は全身の様々な組織にできる事が知られています。
しかし、原発腫瘍がどの組織、臓器に転移するかは
全くランダムではなく、一定の傾向があるとされています。
例えば、乳癌では骨、肺、肝臓、脳に転移しやすい
ことが知られています。
このような転移の臓器特異性については
今まで多くの研究がされてきました(1-6)。
その距離を繋ぐ何らかの信号伝達があると考えられる中で
吸着や腫瘍組織近くで亢進する細胞外マトリックス。
これらに関わる
〇インテグリン
〇テネイシン
〇ペリオスチン
これらは癌細胞の転移に関わる表面タンパク質である
ということが知られています(7-10)。
--
その中でインテグリンは転移のおける臓器向性を決める上で
重要な役割をはたしている事が報告されています(1)。
例えば、原発腫瘍が乳癌や膵臓癌であり
転移先が肺、肝臓であるそれぞれの細胞から
分泌されるエクソソームを調べると
そのエクソソームは転移先である肺、肝臓に
取り込まれる効率がそれぞれ数倍高いことが示されています(1)
その臓器向性に影響を与えている要因は
エクソソームによって
細胞のマイグレーションや炎症を高める
S100遺伝子が亢進され、
それによって癌が転移しやすい環境が整えられる
ということです(1)。
そして、エクソソームの臓器向性に大きく影響を与えているのは
表面に高い確率で発現されているインテグリンです。
インテグリンはα鎖とβ鎖があり
それぞれ18種類、8種類が報告されています。
そのインテグリンの型が向性を示す臓器ごと
異なることが示されています(1)。
肺:α6, β4, β1
肝臓:αv, β5
脳:β3
これらです。
また、エクソソームがインテグリンを通じて
転移サイトのどの細胞に取り込まれるかは関心の高い結果を
示しています(1)。
例えば、肺では
線維芽細胞と上皮細胞に取り込まれます。
一方、脳では
内皮細胞に取り込まれます。
これは、臓器特異的な微小環境、転移ニッチの形成過程に
影響を与える可能性があります。
一方で、
肺における転移では
血管内の内皮細胞の転移ニッチは
内皮細胞とマクロファージの活性を経て
上述したテイネシン依存的に生じる事が示されています(11)。
線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞
それぞれに癌転移ニッチができる可能性があります。
肺では線維芽細胞、上皮細胞由来の転移ニッチは
エクソソーム依存的に生じやすくて
脳ではそれが内皮細胞である
ということを示している可能性を考えます(1)。
また
骨、肺、肝臓、脳などに関わらず転移全体で亢進されていた
インテグリンの型はα2、β1であることが示されています。
従って、統一的な転移リスクのバイオマーカーとして
使える可能性があります。
また、それぞれの臓器特異的な感度の高いインテグリンに関しては
すでに患者さんの血液分析で
転移サイト特異的に型が一致するインテグリン分泌量が
有意に向上していることが確認されています(1)。
この事は、将来的な転移リスクとその場所の特定ができる
可能性を示します。

//考察//ーー
外科手術で癌組織を取り除くとき
組織への癒着性の強さが切除範囲の判断の一つになると
認識しています。
その組織への癒着性は
1つは細胞接着に関わる
〇インテグリン
〇テネイシン
〇ペリオスチン
これらの発現量に関わっているかもしれません。
エクソソームに発現されているということは
同様に癌細胞にも発現されている可能性が高いので
その接着因子の発現量が転移の可能性や
組織に対する癒着性を決める要因かもしれません。

//疑問//ーー
エクソソームはプレ転移ニッチの環境を
癌が成長しやすいように整えるという認識でいます。
つまり、原発腫瘍から上皮間葉転換を経て
転移サイトにたどり着くことを前提としています。
一方で、
エクソソームの内容物が細胞内に取り込まれることによって
そのニッチに存在する細胞が癌化する事はないでしょうか?
癌細胞由来のエクソソームの内容物は
癌細胞の中の核酸(遺伝子)、タンパク質、脂質が含まれます。
それによって受け細胞が癌化する可能性です。

//細胞種特異的輸送系統(*)の観点//ーー
(*)Cell-type-specific delivery system
細胞種特異的輸送系統では
目的とする細胞種にアンカーさせて
その局所で薬剤を放出させる
あるいは、細胞内に取り込ませて薬剤を放出する
ということを想定しています。
一方で、転移性の癌については
デコイ機能を持たせて、転移を防ぐという考え方もあります。
実際にAyuko Hoshino氏ら参考文献(1)でも提案されています。
特にまだ転移先で癌細胞が大きくない段階で
転移のリスクがある場合には
デコイ機能によって事前に転移を防ぐという
治療戦略が好ましい可能性があります。
原発腫瘍や血中で癌細胞やエクソソームに
影響を与える場合、実際に転移先に局所的に薬剤を作用させる
場合と比べてターゲットとなる表面タンパク質の
設計やナノ粒子の種類なども異なる可能性があります。
また、一般的にナノ粒子を使った薬剤輸送は
血液性の治療において実績があるので
特に転移がまだ可視できない段階で
転移のリスクがある場合において適している可能性もあります。
1つのメインとなる薬理作用部位が循環器になるからです。

(参考文献)
(1)
Ayuko Hoshino, Bruno Costa-Silva, Tang-Long Shen, Goncalo Rodrigues, Ayako Hashimoto, Milica Tesic Mark, Henrik Molina, Shinji Kohsaka, Angela Di Giannatale, Sophia Ceder, Swarnima Singh, Caitlin Williams, Nadine Soplop, Kunihiro Uryu, Lindsay Pharmer, Tari King, Linda Bojmar, Alexander E. Davies, Yonathan Ararso, Tuo Zhang, Haiying Zhang, Jonathan Hernandez, Joshua M. Weiss, Vanessa D. Dumont-Cole, Kimberly Kramer, Leonard H. Wexler, Aru Narendran, Gary K. Schwartz, John H. Healey, Per Sandstrom, Knut Jørgen Labori, Elin H. Kure, Paul M. Grandgenett, Michael A. Hollingsworth, Maria de Sousa, Sukhwinder Kaur, Maneesh Jain, Kavita Mallya, Surinder K. Batra, William R. Jarnagin, Mary S. Brady, Oystein Fodstad, Volkmar Muller, Klaus Pantel, Andy J. Minn, Mina J. Bissell, Benjamin A. Garcia, Yibin Kang, Vinagolu K. Rajasekhar, Cyrus M. Ghajar, Irina Matei, Hector Peinado, Jacqueline Bromberg & David Lyden
Tumour exosome integrins determine organotropic metastasis
Nature volume 527, pages329–335 (2015)
(2)
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(5)
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Nature 459, 1005–1009 (2009).
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(7)
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(8)
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(9)
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(10)
Weaver, V. M. et al. Reversion of the malignant phenotype of human breast 
cells in three-dimensional culture and in vivo by integrin blocking antibodies.  
J. Cell Biol. 137, 231–245 (1997).
(11)
Tsunaki Hongu, Maren Pein, Jacob Insua-Rodríguez, Ewgenija Gutjahr, Greta Mattavelli, Jasmin Meier, Kristin Decker, Arnaud Descot, Matthias Bozza, Richard Harbottle, Andreas Trumpp, Hans-Peter Sinn, Angela Riedel & Thordur Oskarsson 
Perivascular tenascin C triggers sequential activation of macrophages and endothelial cells to generate a pro-metastatic vascular niche in the lungs
Nature Cancer (2022)


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エクソソームの機能化と実用化に向けて

エクソソームを使った治療の報告は数多くありますが、
エクソソームに特定の機能化をしたうえで
かつ薬剤輸送媒体として使う研究に関しては
現在においてもまだ黎明期であると認識しています。
そのステージを押し上げていくためには
産官学のあらゆるステークホルダーの方と
エクソソームを使ったナノ医療の可能性と課題について
情報共有する必要があります。
需要が高く、効果があれば利益の見込める
肌の美容、化粧品などとも関連がある可能性があるので
そのような点も魅力の一つとして訴求する必要があります。
エクソソームの量産、精製など製造面で
医療と技術共有できる可能性があるからです。
--
Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun 
(敬称略)からなる医療研究グループは
細胞種特異的輸送系統とも関わる
エクソソームの機能化について概説されています(1)。
その内容の一部と追記を読者の方と情報共有したいと思います。

//エクソソームの機能化//ーー
エクソソームは細胞から分泌された細胞外小胞なので、
信号を受け取る細胞の特定の型のリガンドを
自発的に標的とした脂質、細胞吸着分子、リガンドを
内的に発現しています。
従って、最適なエクソソームを選べば、
外的に細胞種特異的なリガンドを形成しなくても
細胞種特異的輸送系統(*)を実現できる可能性があります。
(*)Cell-type-specific delivery system
例えば、神経芽細胞腫から取り出したエクソソームは
スフィンゴ糖脂質グリカン基を発現し、
これが脳のアミロイドβと結合して
アルツハイマー病の効果的な治療に貢献する
という報告もあります(2)。
標的リガンドはエクソソームの表面に発現させる事ができます。
特定のタンパク質をエンコードをした遺伝子を
ドナー細胞の中に入れる事によって
エクソソームはそのたんぱく質を含むことができます。
遺伝子導入されたドナー細胞由来のエクソソームは
エクソソーム膜のLamp2b表面タンパク質を通じて
神経細胞特異的なRabiesウィルス糖たんぱく質を
強く融合させていました。
これはウェスタンブロット法によって確認されました。
この標的化されたエクソソームは
マウスモデルで脳へsiRNAを効率的に輸送しました(3)。
もう一つの研究では
EGFR-過剰発現の乳癌細胞を持つマウスにおいて
let-7a miRNAを標的化された状態で輸送する事が試されています。
GE11とEGFが遺伝子導入されました。
静脈注射でlet-7a miRNAを封入したエクソソームが
GE11を標的として乳癌細胞まで輸送されました。
マウスの異種移植モデルで確認されています(4)。
--
クリックケミストリーは生物マクロ分子の修正の為の
1つの有望な選択肢です。
生体内でエクソソームの分布をみるために
小分子量の分子、大きな生物マクロ分子、ポリマーを持つ
エクソソーム表面を機能化しました(5)。
クリックケミストリーは
標的模倣物(RGD派生物)の複合体化を通して
エクソソームの生体内分布に影響を与えるかもしれません。
エクソソームに非共有結合性の結合によって
表面を安定的に機能化する事もできます。
例えば、エクソソーム表面に陽イオン性の脂質を
静電気力を使って結合させました。
それによってエクソソームの細胞内への取り込み効率が
向上しています(6,7)。
血液由来のエクソソームの表面に
エクソソーム表面に存在する自然のトランスフェリン受容体を
ターゲットとしたトランスフェリン複合体超常磁性ナノ粒子を
結合させています(8)。
しかしながら、表面機能化によるエクソソームの
効率的輸送の効果は自明ではありません。
特に作成過程でエクソソームの破壊や凝集を
避ける必要があります。
温度、圧力、浸透圧など最適化する必要があります(6)。

//まとめ//ーー
ナノ粒子による薬剤の輸送は
薬物療法の相転換をもたらします。
新型コロナウィルスワクチンのおける脂質ナノ粒子による
mRNAの輸送は今後の医療において重要な
マイルストーンになると考えられます。
そのナノ粒子のうち
エクソソームも臨床応用するためのナノ粒子の
重要な選択肢のうちの一つです。
なぜなら、細胞間のコミュニケーションの為に
生体内で自然に備わってる機能であり、
生体互換性が非常に高いことが考えられるからです。
しかしながら、
エクソソームの選択、機能化が不適切であると
免疫機能に悪影響を与えたり、
腫瘍形成を促したりする可能性もあります(9-11)。
エクソソームは人工的に作り出す脂質ナノ粒子、ポリマー
金属ナノ粒子に比べて、内容物、膜、表面リガンド
などが複雑なので、エクソソームの生理について
より詳細な理解が必要になります。
そのうえで、安全かつ効率的なエクソソーム薬剤輸送の
システムを構築する必要があります。
エクソソームは臨床応用の為に
大規模生産、量産の確立において難しさがあるとされています(12)。
以前の研究では、これらの実現と迅速な精製が
可能になったと報告されています(13)。
これは血液の樹状細胞由来のエクソソームなので
他の組織常在型の細胞由来のエクソソームも含めて
同様に量産性と精製の効率化が実現できるか?
について追究していく必要があります。

//考察//ーー
エクソソームをより安全に、効率的に薬剤輸送媒体として
活かすためには
〇エクソソーム内に含まれる内容物
〇膜の構成
〇表面リガンド
これらの情報をできるだけ正確に得る必要があります。
例えば、癌細胞由来のエクソソームでは
これらの構成要素において
発がん作用のある物質が多く含まれています。
従って、癌の治療の為に癌由来のエクソソームを
そのまま使うことは、避ける必要性があるかもしれません。
上述した要素を遺伝子導入なども含めて
うまく制御して狙いの薬理を効率的に得る必要があります。
例えば、
転移癌におけるインテグリンなど
関わりの深いと考えられる表面受容体が発現するように
遺伝子導入し、機能化させることで
癌由来のエクソソームではなく
免疫細胞由来、腫瘍形成している通常組織由来のエクソソームでも
効率的な輸送ができる可能性があります。
そのうえで内容物を抗がん剤に入れ替えます。
こうした治療戦略は他の疾患にも生かすことができます。
--
このような条件をクリアしたうえで
系統的な安全性、効果の確認と
量産性の確保、精製方法の確立をしていく必要があります。

(参考文献)
(1)
Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun 
Engineering exosomes as refined biological nanoplatforms for drug delivery
Acta Pharmacologica Sinica volume 38, pages754–763 (2017)
(2)
Hood JL.  Post isolation modification of exosomes for nanomedicine 
applications.  Nanomedicine (Lond) 2016; 11: 1745–56.
(3)
Alvarez-Erviti L, Seow Y, Yin H, Betts C, Lakhal S, Wood MJ.  Delivery of 
siRNA to the mouse brain by systemic injection of targeted exosomes.  
Nat Biotechnol 2011; 29: 341–5.
(4)
Ohno S, Takanashi M, Sudo K, Ueda S, Ishikawa A, Matsuyama N, et 
al.  Systemically injected exosomes targeted to EGFR deliver antitumor 
microRNA to breast cancer cells.  Mol Ther 2013; 21: 185–91.
(5)
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et al.  Surface functionalization of exosomes using click chemistry.  
Bioconjugate Chem 2014; 25: 1777–84.
(6)
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10.1021/acsnano.6b07607.
(7)
Nakase I, Futaki S.  Combined treatment with a pH-sensitive fusogenic 
peptide and cationic lipids achieves enhanced cytosolic delivery of 
exosomes.  Sci Rep 2015; 5: 10112.
(8)
Qi H, Liu C, Long L, Ren Y, Zhang S, Chang X, et al.  Blood exosomes 
endowed with magnetic and targeting properties for cancer therapy.  
ACS Nano 2016; 10: 3323–33. 
(9)
Shao Y, Shen Y, Chen T, Xu F, Chen X, Zheng S.  The functions and 
clinical application of tumor-derived exosomes.  Oncotarget 2016; 7: 
60736–51.
(10)
Whiteside TL.  Tumor-derived exosomes and their role in cancer 
progression.  Adv Clin Chem 2016; 74: 103–41.  
(11)
Whiteside TL.  Exosomes and tumor-mediated immune suppression.  J 
Clin Invest 2016; 126: 1216–23.
(12)
van der Meel R, Fens MH, Vader P, van Solinge WW, Eniola-Adefeso 
O, Schiffelers RM.  Extracellular vesicles as drug delivery systems: 
lessons from the liposome field.  J Control Release 2014; 195: 72–
85.
(13)
Lamparski HG, Metha-Damani A, Yao JY, Patel S, Hsu DH, Ruegg C, 
et al.  Production and characterization of clinical grade exosomes 
derived from dendritic cells.  J Immunol Methods 2002; 270: 211–26.

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ナノ粒子による核酸の輸送(11)-応用-

例えば、細胞核内の特定の遺伝子を改変し、
遺伝子治療を行うためには
オフターゲットが無いように
特定の細胞に輸送し、細胞質を通って
核内の特定の遺伝子に作用させる必要があります。
標的となる重要な遺伝子が明らかになり、
その遺伝子を編集したり、
活性を変える事ができれば、
1つ、根本的な治療になりますが、
それを阻んでいるのが細胞特異的な標的性が
困難であるからであると理解しています。

例えば、癌など様々な疾患で
全ゲノム関連遺伝子評価が行われています。
それによって、場合によれば、数百個以上の
遺伝子異常が確認されることがありますが、
病気において重要な複数の遺伝子を見つける事も出来ます。
このような解析を有効にするためには
1つの大きな柱となるのが遺伝子治療です。
重要な遺伝子異常を標的として、
その遺伝子を改変する事ができれば、
病状が改善する可能性があります。
しかし、上述したように
その組織に有効に、特異的に核酸を輸送し、
さらには無数の膜を超えて細胞核まで届けるには
いくつかの大きなハードルがあります。
また、全ゲノム関連遺伝子評価から
標的とする遺伝子(群)を絞り込むところにも
まだ課題がある可能性があります。
個人差が大きければ、それも阻害要因となります。

そのような標的性以外にも
導入するナノ粒子が
例えば免疫的な拒絶反応が起こらないような
生体内で安全なものが強く求められています。
上述した免疫系は異物に対する高い除去能力を持っています。
通常、静脈注射などによる循環器を通した輸送では
血中に多種多様な免疫細胞が存在しているので
その複雑な監視を逃れる必要があります。
そのため特にナノ粒子の生体に対する互換性や
ナノ粒子表面の特性が重要になります。

RNAやDNAなどの核酸の輸送における
ナノ材料、ナノ粒子は上述した課題がありますが、
それらを満たす潜在性を有しています。
また、ナノ粒子を使う事によって
特定の遺伝子をオフ/オンにする遺伝子治療だけではなく
〇生物的な分析
〇タンパク質の補充、生成
〇ワクチン
これらにも応用することができます。
例えば、生物学的分析では
マーカー遺伝子、遺伝子のバーコード化によって、
ナノ粒子が標的細胞に届いたかどうか?
といった検査にも使うことができます。
また、遺伝子はタンパク質を生み出す元となる物質なので
タンパク質の分析、補充、生成を
人為的に行うことができます。
ワクチンにおいて
実際に新型コロナウィルスで使われた
mRNAワクチンは上述したナノ粒子によって
自然免疫系細胞まで輸送されていると考えられています。
このワクチンは樹状細胞などで
大量の新型コロナウィルスのSタンパク質を生み出し、そ
れを抗原とした免疫反応を
利用していると考えられています。
従って、ナノ粒子、mRNA(核酸)の技術は
現在ワクチンでは広く普及しています。
ーー
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir. 
(敬称略)ら医療研究グループは
効果的な核酸の輸送デザインの方法と
それによる診断や治療の効果について総括されています(1)。
その内容のうち応用の内容の一部を
読者の方と情報共有したいと思います。

核酸ベースの治療は薬剤による治療の景観を変えるものです。
なぜなら、下流の生理経路であるタンパク質に作用するのではなく、
大元の遺伝子を標的にするからです。
従って、難治性の疾患に対しても長く続く、
もしくは完治するような結果が期待されます。
以下にナノ粒子ベースの核酸輸送の応用について記述します。

//タンパク質補充//ーー
タンパク質補充療法は特定のタンパク質コードのmRNAを
輸送する事を通して、病気によって生み出された
不全を正すものです。
治療の選択肢のうち有望な方法の一つであると言われています(2)。
脂質ナノ粒子を利用したmRNAの全身への輸送は
〇血友病
〇肝臓線維化
〇肺線維化
〇代謝性疾患
これらに対して前臨床試験で行われ、
タンパク質補充療法として評価されています(2)。
動物での試験における
人の赤血球生成因子であるエリスロポエチンの生成の成功は
脂質ナノ粒子にmRNAを積載し、全身に投与することで
達成されました(3)。
いくつかのmRNAを積載したナノ粒子は
マウスの肝臓でHIV-1に対する抗体のような
治療効果のある抗体の生成のための使用を前提として
開発されています。
モデルナ社による臨床試験(NCT03829384)では
チクングンヤ熱ウィルスに対する抗体を分泌するように
コード化されたmRNA積載ナノ粒子の全身への投与における
効果が調べられています。
また、mRNA積載ナノ粒子は以下の癌抑制物質の
生成の為に使われます。
〇PTEN(phosphatase and tensin homologue deleted on chromosome 10)
〇p53
それによって癌の成長を抑えるだけではなく、
化学療法や免疫チェックポイント療法など
他の治療への感度を向上させます(4-6)。
このようなたんぱく質の生成は
新型コロナウィルスワクチンにおける
Sタンパク質の生成でも利用され、広く普及しています。

//ワクチンと免疫療法//ーー
核酸ベースのワクチンは
新型コロナウィルス感染症のパンデミックに立ち向かうため
迅速なプロセスを経て、開発、普及しています。
代表的なものは
〇BNT162b2(Pfizer/BioNTech)
〇mRNA-1273(Moderna)
これらです。
これらによる成功は他のmRNAワクチンで使われた
輸送方法に倣って、脂質ナノ粒子によって実現されました(7,8)。
例えば、
脂質ナノ粒子にSARS-CoV-2スパイクタンパク質を
エンコードしたsaRNAは用量依存的に
マウスの血清中で高い抗体量を分泌しています。
この抗体はSARS-CoV-2特異的な抗体です。
それによってウィルスを中和することができます。
ワクチンの持続性、反応性は
免疫刺激性を持つアドジュバントを
同時輸送する事によって高まります(9)。
近年、
脂質アドジュバントmRNAワクチンは
陽イオン性脂質の高いスループット仕分けによって
発達しています。
それによってmRNAの輸送だけではなく、
STING経路やToll様受容体4経路による
免疫性刺激(アドジュバント効果)も発揮します(10)。
その他の
ポリマーナノ粒子、無機のナノ粒子は
ワクチンに対する核酸の輸送のために採用されます。
--
核酸積載のナノ粒子は癌免疫療法においても利用されます。
このナノ粒子により癌抑制性を持つPTENを生み出し
オートファージーによる食作用や
免疫活性により細胞死を促します(6)。
これを免疫チェックポイント阻害薬(anti-PD1 antibody)
と併用して治療することで高い抗がん作用が
確認されています(6)。
また
〇Plasmids encoding a 194-1BBz CAR
〇A piggyBac transposase to T cells
これらを生体内ナノ粒子輸送し、CAR-T細胞を発現
またその数を増やすことに成功しています。
それによる癌治療の治験が現在行われています(11)。
免疫チェックポイント阻害薬による
癌免疫療法において抵抗性が現れることがありますが、
核酸積載ナノ粒子によって
〇B7 immunoglobulin
〇Tumour necrosis factor
これらを亢進し、T細胞を活性化させる事によって
免疫治療の効果が高められています(12)。
IL-23, IL-36γ and OX40L
これらを刺激するトリプレットmRNA脂質ナノ粒子と
免疫チェックポイント阻害薬の併用によって
そうでなければ、全身で抵抗性が現れるケースで
持続性のある抗がん作用が得られたとされています(13)。
また、核酸ベースの免疫刺激アドジュバントであるasCpG。
これをナノ粒子と共に輸送する事で
獲得免疫系統を刺激する事ができるかが
現在一つの有望な手法として検討されています(14)。

//核酸ナノバーコード//ーー
ナノ粒子の生体内分布を分析するために、
任意の細胞種にあるDNAにタグをつけることができます。
このようなDNAバーコード技術において
任意の細胞に対するナノ粒子の高いスループットの
生体内スクリーニングが
GuideTx (now part of Beam Therapeutics, Inc.)
によって商用化されています。
mRNAバーコードは
特にmRNAナノ粒子に対して、
生体内スクリーニングを加速する事ができます(15)。
強くて、特異的なワトソン-クリック塩基対によって
DNAによって機能化されたナノ粒子は
ナノ粒子が特異的な物理、化学、生物学的な特性を持つように
任意に設計されることが可能になります(16)。
これはナノ粒子の周りに核酸を装飾する技術です。
DNAはデータ搭載媒体として有望であり、
それをナノ粒子の中に長く、ナノ粒子の構造完全性を
保った状態で積載されるために研究が続けられています。

//考察//ーー
核酸のバーコード化によってナノ粒子の生体内分布を調べる事は
細胞種特異的輸送系統(*)で機能化されたナノ粒子が
本当に狙いの細胞種まで輸送されているか確かめる
1つの重要は方法です。
(*)Cell-type specific delivery system
人の場合は、臓器、組織を大量に切り取ることはできませんから
液体生検や便の中にある情報で読み取る必要があります。
従って、DNAによってつけられたタグ付けされた核酸が
細胞種特異的に血液や便に流出することがないか?
それを確かめることが重要になります。

(参考文献)
(1)
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir, Haojun Liang, Jinjun Shi, Avi Schroeder & João Conde 
Nanodelivery of nucleic acids
Nature Reviews Methods Primers volume 2, Article number: 24 (2022)
(2)
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(3)
Sabnis, S. et al. A novel amino lipid series for mRNA 
delivery: improved endosomal escape and sustained 
pharmacology and safety in non-human primates. 
Mol. Ther. 26, 1509–1519 (2018).
(4)
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suppression in vivo via systemic nanoparticle-mediated 
delivery of PTEN mRNA. Nat. Biomed. Eng. 2,  
850–864 (2018).
(5)
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restoration of p53 tumor suppressor sensitizes p53-
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PTEN by mRNA nanoparticles enhances antitumor 
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eaba9772 (2021).
(7)
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mRNA vaccines for infectious diseases: principles, 
delivery and clinical translation. Nat. Rev. Drug Discov. 
20, 817–838 (2021).
(8)
Pardi, N., Hogan, M. J., Porter, F. W. & Weissman, D. 
mRNA vaccines — a new era in vaccinology. Nat. Rev. 
Drug Discov. 17, 261–279 (2018).
(9)
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120431 (2021).
(10)
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a lipid-like material potentiates antitumor efficacy 
through Toll-like receptor 4 signaling. Proc. Natl  
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Nat. Nanotechnol. 12, 813–820 (2017).
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2022年4月25日月曜日 0 コメント

エクソソーム、インテグリンによる癌転移機序と背景

1889年にStephen Pagetは転移癌について
"Seed-and-soil"仮説を提唱されています(2)。
癌には土壌となる微小環境があって、
そこに癌細胞の「情報」を持った「何かが」
「種として」まかれる事によって
そこに腫瘍組織が出来上がるとも考える事ができます。
植物が種を風や蝶などに依存して周囲に蒔いて
繁殖するように土壌があるところに
植物が茎、枝、葉を伸ばすように
癌は成長すると考える事もできます。
しかし、何がその種で、
また特定の癌細胞が特定の臓器に転移しやすい
といった組み合わせを示す
「Organotropism」に関してはよくわかっていませんでした(1)。
Hart, I. R. & Fidler, I. J(敬称略)の研究では
ある転移部位からの癌細胞は
特定の臓器へ転移する能力が高い事を示しました(3)。
いくつかの研究では
そのような転移する臓器特異性は
遺伝子、繁殖を制御する生理経路などの
元々の癌細胞の特性が大きく影響を与えるのではないか
とされていました(4-9)。
乳癌細胞に発現するCXCR4, CCR7からなる受容体は
リンパ節のCXCL12, 肺のCCL21と組みやすく
それがこの部位への転移を促進すると考えられています(4,5)。
癌より分泌される物質は
循環器の血管に穴をあけ、転移しやすい環境を
形成するとも言われています(6)。
癌組織の血管生成を促す免疫細胞を促進することで
臓器特異性、走化性に影響を与える可能性もあります(7,8)。
乳癌は溶骨性の部位を形成するので
それによって破骨細胞刺激成長因子を放出して
骨に癌微小環境を作るともいわれています(5,9)。
前転移ニッチ形成にはS100タンパク質、フェブロネクチン亢進が
肺常在細胞によって形成されることが必要です。
また腫瘍組織分泌因子に反応する骨髄性免疫細胞も必要です(10)。
このようなニッチ環境が播種してきた癌細胞の成長の為に
必要となると考えられています(10-12)。
--
近年、Ayuko Hoshino, Bruno Costa-Silva, Tang-Long Shen
(敬称略)ら医療研究グループはエクソソームが
〇血管のリーク
〇炎症
〇癌関連骨髄性免疫細胞の引き寄せ
これらに関与し、転移を促進することがわかっています(12)。
エクソソームは30-100nmの細胞外輸送媒体で
タンパク質、脂質、核酸などの物質を含んでいます。
それを受け手の細胞に輸送する事ができます(13-20)。
このような内容物から
転移のリスクや転移を形成する過程を評価ことができます(12,21)。
このようなエクソソームの生物学的情報から
特定の臓器への輸送を予測する事ができるでしょうか?
Ayuko Hoshino, Bruno Costa-Silva, Tang-Long Shen(敬称略)らは
〇骨肉腫
〇横紋筋肉腫
〇Wilms癌
〇皮膚癌
〇乳癌
〇大腸癌
〇膵臓癌
〇胃癌
これらの複数の癌からエクソソームのタンパク質を分析しています(1)。
この結果から特定のサイトへ転移する可能性を探ります。
また、癌由来のエクソソームの生体内分布についても
分析されています(1)。
その中で、エクソソーム表面に発現されている
吸着に関わる膜タンパク質であるインテグリンが
組織特異的な様式で標的細胞と融合しています。
それによってプレ転移ニッチ形成を促進します(1)。
また、この腫瘍由来のエクソソームは
転位能力のない癌細胞に転位能力を与えます。
血液検査によって癌細胞由来のエクソソームのインテグリンを
調べる事によって、将来の転移の場所、可能性を推測することができます。
逆に言えば、インテグリンに薬剤によって蓋をして
その生理活性を抑える事ができたら、
転移のリスクを下げる事ができるかもしれません。

このようなインテグリンと転移の関係は
細胞種特異的輸送系統(*)でも利用できる可能性があります。
(*)Cell-type-specific delivery system
インテグリンは細胞の吸着に関わる受容体なので
型が合えば結合力は高いかもしれません。
全身に転移していて、手術が難しい
ステージの進んだ癌に対して、
そのインテグリンの特徴を掴み、
エクソソームなどの輸送媒体を利用して、
型の合うインテグリンリガンドを形成し、
ナノ粒子中に有効な抗がん剤を封入する事で
患者さんの命を救うことができるかもしれません。

(参考文献)
(1)
Ayuko Hoshino, Bruno Costa-Silva, Tang-Long Shen, Goncalo Rodrigues, Ayako Hashimoto, Milica Tesic Mark, Henrik Molina, Shinji Kohsaka, Angela Di Giannatale, Sophia Ceder, Swarnima Singh, Caitlin Williams, Nadine Soplop, Kunihiro Uryu, Lindsay Pharmer, Tari King, Linda Bojmar, Alexander E. Davies, Yonathan Ararso, Tuo Zhang, Haiying Zhang, Jonathan Hernandez, Joshua M. Weiss, Vanessa D. Dumont-Cole, Kimberly Kramer, Leonard H. Wexler, Aru Narendran, Gary K. Schwartz, John H. Healey, Per Sandstrom, Knut Jørgen Labori, Elin H. Kure, Paul M. Grandgenett, Michael A. Hollingsworth, Maria de Sousa, Sukhwinder Kaur, Maneesh Jain, Kavita Mallya, Surinder K. Batra, William R. Jarnagin, Mary S. Brady, Oystein Fodstad, Volkmar Muller, Klaus Pantel, Andy J. Minn, Mina J. Bissell, Benjamin A. Garcia, Yibin Kang, Vinagolu K. Rajasekhar, Cyrus M. Ghajar, Irina Matei, Hector Peinado, Jacqueline Bromberg & David Lyden
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エクソソームに封入された薬剤の効果

エクソソームは離れた細胞間のコミュニケーションの
伝達役として、身体のあらゆる(?)細胞に備わった
内胞システムです。
従って、同じように胞を持つナノ粒子を使って
輸送する場合に、エクソソームを含む細胞外輸送媒体を
使う事は極めて合理的であると言えます。
エクソソームの内外にはドナー細胞の情報が
多く詰まっています。
中にタンパク質や核酸、脂質などが含まれています。
これを狙いの薬理を生むようにエンジニアリングする事で
身体の自然な機序を使って、治療することが
可能になるかもしれません。
--
Xin Luan, Kanokwan Sansanaphongpricha, Ila Myers, Hongwei Chen, Hebao Yuan & Duxin Sun
(敬称略)からなる医療研究グループは
エクソソームに様々な薬理を持つ物質を輸送する事を
想定して、それに関する情報を総括されています。
その内容の一部と追記を読者の方と情報共有したいと思います。

//低分子量分子の輸送//ーー
受動的、能動的な方法でエクソソームの中に
様々な低分子量の薬剤を封入する事ができます。
その分子は親水性、疎水性、両方の場合は想定されます。
ほとんどのケースで
エクソソームによる輸送は
〇標的細胞での高い薬剤蓄積(標的性向上)
〇薬剤分子の安定性向上
〇血液循環時間の向上
〇低いIC-50(輸送、取り込み効率向上)
これらが挙げられています。
<研究①>
牛乳由来のエクソソームの中に抗がん剤を
受動的方法によって封入。
封入された抗がん剤。
〇Paclitaxel
〇Doxorubicin
〇Withaferin
これらです(2)。
これらの抗がん剤はエクソソームからゆっくりと
放出されています。
Paclitaxel、Withaferin封入エクソソームでは
A549肺癌細胞に対する抗増殖活性において
露出されたそのままの状態よりも
低いIC-50値でありました。
これは異種移植マウスのモデル、生体内で確認されています。
特にWithaferin封入エクソソームが効果がありました(2)。
<研究②>
EL-4マウスリンパ腫細胞から取り出したエクソソームに
クルクミンを封入しました。
それによると試験管内で高いクルクミン安定性。
生体内で高い血中濃度がありました(3)。
クルクミンレベルはCD11b+Gr-1+標的細胞で増えました。
また、IL-6やTNF-αなど炎症性サイトカインも
免疫応答性マウスで顕著に低減しています(3)。
つまり、拒絶反応が起こりにくい薬剤輸送システムである
という事も考えられます。
--
<考察>
研究②から血液性のエクソソームは
血中での寿命が長く、とどまりやすい事を示しています。
こういった一致性は他の臓器や組織でも同様かもしれません。
例えば、心筋細胞からのエクソソームは
心筋近くに蓄積しやすいという事がある可能性があります。
iPS細胞で脳神経など取得が難しい細胞も含めて
様々な細胞に分化させることができたら
任意の細胞からエクソソームを生み出すことができます。
そうすれば、
エクソソームを使った細胞種特異的輸送系統(*)の
可能性が広がります。
(*)Cell-type-specific delivery system。
--
<研究③>
マクロファージ由来のエクソソームにPaclitaxel封入しました。
3LL-M227ネズミ科のLewis肺癌細胞において
脂質ナノ粒子に同じPaclitaxelを封入した場合に比べて
顕著に細胞内への取り込みが増えた事が示されています(4)。
Paclitaxel封入エクソソームは
MDCK MDR1細胞で薬剤抵抗性の問題を克服したことが
確認されています。
エクソソームはP糖たんぱく質薬物流出システムを
逃れる事ができるとされていますが、
エクソソームそのものがP糖たんぱく質を
阻害するわけではなく、
薬剤抵抗性をなぜ防いだのかはわかっていません(1)。
またマクロファージ由来のエクソソームに封入する事で
そのままのPaclitaxelよりも
顕著なIC-50値の減少が確認されています(4)。

//治癒性RNAの輸送//ーー
RNAは大きな分子なので生体内で輸送するのは難しい
とされています
そのため
〇陽イオン性リポソーム(5,6)
〇デンドリマー(7)
〇陽イオン性ポリマー(8)
これらのナノ粒子使用の検討がされてきました。
しかしながら、これらの輸送媒体は
臨床で使用するには
〇安定性
〇安全性
〇オフターゲット問題
これらなどいくつか超えないといけない壁があります(9)。
一方、
siRNAやmiRNAをエクソソームの中に封入する
最も共通的な方法は電子穿孔法です。
この方法はエクソソーム膜に穴をあける
能動的封入法であり、大きな分子を封入するのに
適しているからです。
しかしながら、電気穿孔法の電流印加の間
エクソソームやRNAが凝集してしまう問題があります。
<研究①>
マウス樹状細胞由来のエクソソームによって
Lamp2bタンパク質(リソソーム関連タンパク質)を標的にし
GADPH siRNAとBACE1 siRNAを
血液脳関門を超えて輸送しました。
それにより静脈注射の後、ワイルドタイプのマウスの脳において
mRNA発現とβアミロイドタンパク質が強く減少しました。
Lipofectamine(遺伝子導入試薬)
siRNA-RVG-9R(siRNA神経細胞伝達)
これらよりも減少しています(10)。
<研究②>
人の血漿から取り出したエクソソーム内にsiRNAを導入。
単球とリンパ球を標的にすることが可能になりました。
それによりMAPK1遺伝子の働きを抑制することに成功しています。
siRNA積載エクソソームは受け細胞の細胞質に蓄積しています。
生体内での環境では試験管よりもエクソソームの取り込みが
難しくなります(11)。
<研究③>
GE-11標的エクソソームにlet-7a miRNAを封入し
EGFRが過剰発現した乳癌細胞に輸送しました。
マウスの異種移植モデルです。
それによりコントロール条件よりも
エクソソームの高い腫瘍蓄積が見られました。
以前にlet-7a miRNAを遺伝子導入された
ドナー細胞から取り出したエクソソームは
マウスのモデルで腫瘍の成長を抑制しました(12)。
エクソソームは遺伝子輸送をより安全に行うことができます。
ウィルス、陽イオン脂質、ポリマーから成る
ナノ粒子よりも安全である可能性があります。

//治癒性タンパク質の輸送//ーー
エクソソームはマクロ分子タンパク質を輸送する
有望な方法の一つです。
タンパク質はドナー細胞の遺伝子エンジニアリングを
通して封入することもできます。
あるいはエクソソームに直接積載することもできます。
ドナー細胞にプラスミドを持つ遺伝子が導入されます。
細胞はその遺伝子によって生み出された
タンパク質を細胞質に含み
それがエクソソームの中に取り込まれます。
その後、取り出されたエクソソームを精製します。
-
カタラーゼ、レドックス酵素を積載した
マクロファージ由来のエクソソームは
急性脳炎症を持つマウスの酸化ストレスに対する
神経保護機能がありました。
カタラーゼ積載エクソソームは
マイクログリオーシスとアストロサイトーシス
を顕著に減少させました。
これらは共に脳の病原性の作用です。
これらは経鼻投与の後確認されました(13)。

//イメージング分子の輸送//ーー
イメージングの為、エクソソームの表面構造を修正する
手法が開発されています。
<研究①>
人、胚の腎臓293Tエクソソームは
Gaussian luciferase(発光酵素)を発現しています。
それをビオチン受容体ドメインと融合させます。
これによって蛍光発光するエクソソームを
生体内で追跡することができます(14)。
<研究②>
エクソソームタンパク質CD24, AQP2に
蛍光色素分子を複合体化させた抗体を使っています。
それによってCD24, AQP2を持つエクソソームを
試験管内で追跡する事ができます(15)。
<研究③>
内皮細胞由来のエクソソームに
抗CD63抗体-マイクロビーズ複合体
Q-dots(量子ドット)-抗体複合体
これらを組み込みナノ粒子追跡分析を行っています(16)。

//まとめ//ーー
エクソソームは後期のエンドソームの発芽によって
形成され、多胞体(MVBs)となり、
その後、細胞外に放出されます。
従って、エンドソームに含まれるたんぱく質
〇Sortingタンパク質(Rab5, Rab27 and Rab35)
〇ヒートショックタンパク質
〇テトラスパニン(CD9, CD63 and CD81) 
これらをエクソソームが含むことは自然な流れです。
従って、どのエクソソームを選ぶかは
治療を行う上で重要です。
これらの情報はエクソソームの内腔だけではなく
膜や表面リガンドでも当てはまると考えられます。

(参考文献)
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ナノ粒子による核酸の輸送(10)-応用-

例えば、細胞核内の特定の遺伝子を改変し、
遺伝子治療を行うためには
オフターゲットが無いように
特定の細胞に輸送し、細胞質を通って
核内の特定の遺伝子に作用させる必要があります。
標的となる重要な遺伝子が明らかになり、
その遺伝子を編集したり、
活性を変える事ができれば、
1つ、根本的な治療になりますが、
それを阻んでいるのが細胞特異的な標的性が
困難であるからであると理解しています。

例えば、癌など様々な疾患で
全ゲノム関連遺伝子評価が行われています。
それによって、場合によれば、数百個以上の
遺伝子異常が確認されることがありますが、
病気において重要な複数の遺伝子を見つける事も出来ます。
このような解析を有効にするためには
1つの大きな柱となるのが遺伝子治療です。
重要な遺伝子異常を標的として、
その遺伝子を改変する事ができれば、
病状が改善する可能性があります。
しかし、上述したように
その組織に有効に、特異的に核酸を輸送し、
さらには無数の膜を超えて細胞核まで届けるには
いくつかの大きなハードルがあります。
また、全ゲノム関連遺伝子評価から
標的とする遺伝子(群)を絞り込むところにも
まだ課題がある可能性があります。
個人差が大きければ、それも阻害要因となります。

そのような標的性以外にも
導入するナノ粒子が
例えば免疫的な拒絶反応が起こらないような
生体内で安全なものが強く求められています。
上述した免疫系は異物に対する高い除去能力を持っています。
通常、静脈注射などによる循環器を通した輸送では
血中に多種多様な免疫細胞が存在しているので
その複雑な監視を逃れる必要があります。
そのため特にナノ粒子の生体に対する互換性や
ナノ粒子表面の特性が重要になります。

RNAやDNAなどの核酸の輸送における
ナノ材料、ナノ粒子は上述した課題がありますが、
それらを満たす潜在性を有しています。
また、ナノ粒子を使う事によって
特定の遺伝子をオフ/オンにする遺伝子治療だけではなく
〇生物的な分析
〇タンパク質の補充、生成
〇ワクチン
これらにも応用することができます。
例えば、生物学的分析では
マーカー遺伝子、遺伝子のバーコード化によって、
ナノ粒子が標的細胞に届いたかどうか?
といった検査にも使うことができます。
また、遺伝子はタンパク質を生み出す元となる物質なので
タンパク質の分析、補充、生成を
人為的に行うことができます。
ワクチンにおいて
実際に新型コロナウィルスで使われた
mRNAワクチンは上述したナノ粒子によって
自然免疫系細胞まで輸送されていると考えられています。
このワクチンは樹状細胞などで
大量の新型コロナウィルスのSタンパク質を生み出し、そ
れを抗原とした免疫反応を
利用していると考えられています。
従って、ナノ粒子、mRNA(核酸)の技術は
現在ワクチンでは広く普及しています。
ーー
Bárbara B. Mendes, João Conniot, Aviram Avital, Dongbao Yao, Xingya Jiang, Xiang Zhou, Noga Sharf-Pauker, Yuling Xiao, Omer Adir. 
(敬称略)ら医療研究グループは
効果的な核酸の輸送デザインの方法と
それによる診断や治療の効果について総括されています(1)。
その内容のうち応用の内容の一部を
読者の方と情報共有したいと思います。

核酸ベースの治療は薬剤による治療の景観を変えるものです。
なぜなら、下流の生理経路であるタンパク質に作用するのではなく、
大元の遺伝子を標的にするからです。
従って、難治性の疾患に対しても長く続く、
もしくは完治するような結果が期待されます。
ナノ粒子ベースの核酸輸送の応用について記述します。

//生物分析//ーー
核酸とナノ粒子の複合体は様々な検体において
超高感度の検出を可能にします。
その検体とは
〇核酸(2)
〇タンパク質(3)
〇小さな分子(4)
〇金属イオン(5)
これらです。
最も優れた例は球形の核酸複合体です。
金ナノ粒子の上にオリゴヌクレオチドらせん構造を
共有結合させることで分析が可能になります。
複数の部位で補完の配列を含む
オリゴヌクレオチド結合部位の存在の中で
これら核酸と金ナノ粒子の結合は
溶液の中で塊を作り、金ナノ粒子の光学特性を変化させます。
例えば、表面プラズマ共鳴が分析の為の現象として
対象となります。
この原理は溶液中のRNA,DNAターゲットの比色分析に
利用されます(2,6)。
この方法は特別な装置を必要としない
新型コロナウィルス感染の裸眼での診断のような
多様な生物分析の応用を可能にします(2)。
核酸と金ナノ粒子は非常に狭域の融点を示し
単一塩基のミスマッチで標的を区別することができます(6)。
アレイベースの遺伝子検出キットは
〇チップの上にオリゴヌクレオチドに固定する事
〇核酸と金ナノ粒子を使用する事によって
作られています。
これらは共に標的遺伝子の異なる領域を補完する
遺伝子配列を含みます。
表面上の銀イオンの金ナノ粒子仲介の触媒反応による還元
を利用して、金ナノ粒子の信号は強調され
その信号を様々方法で読み取ることができます。
その方法とは
〇光散乱(7)
〇表面増強ラマン分光法(8)
〇高感度電気伝導性検査(7)
このアレイベース遺伝子検出技術を組み込んだ自動システムは
臨床現場の感染症の迅速な診断の為、普及しています(9)。
--
信号増強によるタンパク質の超高感度検出は
〇ナノ粒子とDNA2本鎖
〇ナノ粒子と抗体
〇磁性マイクロ粒子と抗体(3)
これらの2元型を形成することで可能になります。
標的タンパク質(例えば、抗原)の存在の中で
ナノ粒子とマイクロ粒子ともに
抗体-抗原相互作用を通して抗原に結合します。
この複合体は磁場をかけることによって
簡単に分離する事が出来ます。
その後、構成要素であるDNAが読み取り可能な
バーコード化された状態で放出され、
それを検出します。
それぞれのナノ粒子を含む複合体は
1回のタンパク質結合イベントごとに
多くのDNAバーコードを輸送するので
顕著な信号増強があります。
標的タンパク質を臨床現場で使われる
従来のタンパク質アッセイよりも
6桁程度強い感度で分析することができます。
この方法は
アルツハイマー病のアミロイドβタンパク質を
脳脊髄液の中から分析する事に応用されています。
これは、従来のELISA、Blottingアッセイなどで
低濃度の為、検出できないケースにおいて適用されます(10)。
上述した拡散やタンパク質の他に
核酸とナノ粒子の複合体によって
小さな分子や金属イオンのような検体も
高感度で分析することができます。
その際
〇DNA結合分子(11)
〇アパタマー-基板相互作用(4)
〇金属イオン依存ヌクレアーゼ活性(12)
これらの物理が利用されます。

//遺伝子抑制//ーー
〇ASOs
〇RNAi 
これらに基づく遺伝子抑制技術は製薬業界によって
推し進められています。
それによって病気の原因となっていると考えられる
標的遺伝子を抑制することが可能です。
これらを実現するための輸送媒体は
〇脂質ナノ粒子(13)
〇ポリマーナノ粒子(14)
〇脂質-ポリマー混合ナノ粒子(15)
〇無機のナノ粒子(16)
これらが選択肢として挙げられています。
ナノ粒子によるASOs、RNAiの全身への輸送は
〇癌
〇心臓血管疾患
〇神経疾患
〇感染症
〇遺伝子疾患
これらの疾患に対して利用が検討されています(17,18)。
ナノ粒子は体内へ投与した後、
肝臓に取り込まれる傾向があります。
従って、肝臓はASOs、RNAiによる遺伝子抑制治療において
重要です。対象となる肝臓に関連がある疾患は
〇脂質異常症(19)
〇感染症(20)
組織常在型の固形癌においても
組織破壊による血管からの滲出の増強や
保持効果のため
特に標的化していなくても
ナノ粒子は病変部位に集まる傾向があります。
それによって遺伝子抑制が可能になります。
内的、外的な刺激に反応するナノ粒子は
より制御性を持って、病変部位に特異的に輸送する
事が可能になります(21)。
その刺激とは
〇pH
〇酵素
〇低酸素
これらの癌の微小環境に関わる刺激を利用します。
それによって腫瘍組織における
遺伝子抑制要素(siRNAなど)の
〇浸入
〇細胞取り込み
〇輸送
これらを高める事ができます(22)。
ASO/siRNAをより精密に標的細胞種に輸送するためには
〇表面リガンドによる標的化
〇生体内でのタンパク質コロナ(付着)の制御
これらが挙げられています。
上の選択肢は細胞種特異的輸送系統(*)の
コンセプトと一致します。
(*)Cell-type specific delivery system
さらに
より効果的、かつ持続性のある遺伝子抑制をしたい場合には
〇患部局所的な投与
これが方法として挙げられています。
対象となる疾患はHIVなどです(23)。
ナノ粒子に封入されたsiRNAとASOsは
消化器系の劣化、分解しやすい環境から核酸を
守ることができます。
それによって消化器系の疾患に対して
ナノ粒子製剤による経口投与での治療が可能になります(24)。
--
核酸に対する化学的な特性修正は
酵素に対する安定性を向上させます。
臨床承認されているASO/siRNA薬剤は
化学的に修正されており、
Onpattroを除いてナノ粒子を必要としません。
〇N-acetylgalactosamine (GalNAc) 
このような標的リガンドと
ASO/siRNAを結合させ、複合体化することで
特定の細胞や組織に特異的な輸送をすることができます。
--
(考察)
これは細胞種特異的輸送系統の
最もシンプルな方法となります。
ナノ粒子表面につける細胞種特異的なリガンドを
そのような胞による内腔を設けずに
直接薬剤に結合させる事によって
環境に暴露はされますが、特異的輸送ができるか?
という観点です。系としてはシンプルになります。
--
このGalNAc–siRNA複合体でFDA承認されているのは
〇急性肝性ポルフィリン症(givosiran)
〇Ⅰ型原発性シュウ酸尿(lumasiran) 
〇高コレステロール血症 (inclisiran)
〇脂質異常症 (inclisiran)
これらの疾患に対してです(25)。
またGalNAc–siRNA複合体治療で強固なパイプラインが
形成され、推し進められているのが肝臓に関連する疾患です。
〇B型肝炎
〇トランスチレチン関連アミロイド症
〇α1-抗トリプシン欠乏症
これらです。
--
このような複合体治療戦略を超えて
ナノ粒子輸送は遺伝子抑制技術を多くの生物応用に
適用する事が可能です。

//遺伝子編集//ーー
現代の遺伝子編集ツールは
〇Zinc-finger nucleases
〇Activator-like effector nucleases
〇CRISPR–Cas9
これらです。
遺伝子抑制と異なり、遺伝子編集技術は
遺伝子配列の特定個所の永続的な修正を可能にします。
ナノ粒子は直接的に遺伝子編集するために
核酸分解酵素を輸送します(26)。
pDNA,もしくはmRNAエンコード遺伝子編集核酸分解酵素
がナノ粒子の中に積載されます。
それによって比較的少数の遺伝子コピーの輸送が可能になり
同じ遺伝子編集効率を達成することができます。
遺伝子編集のためのpDNAもしくはmRNAsの輸送は
遺伝子抑制のためのASOsもしくはRNAiの輸送よりも
難しいとされています。
pDNAもしくはmRNAs。
これらは大きな分子の為、それを収納できる
ナノ粒子が必要であり、かつ細胞内に効率的に
取り込まれる必要があります(27,28)。
現在では
脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子が
非ウィルス媒体としては一番研究が進んでいます。
その理由、化学的構成の制御性の高さと
形成過程を最適化できることです(29)。
また遺伝子積載容量が大きいことも挙げられます。
--
DNA形成の中(pDNA)で遺伝子編集ツールを輸送する事は
いくつかの潜在的な欠点があります。
〇突然変異生成
〇永続的な拡散分解酵素の発現
これらはオフターゲット編集や遺伝子不安定性を導きます。
一方、mRNAの輸送は核酸分解酵素の一時的な発現となり
オフターゲット効果や意図しない遺伝子挿入を
最小化することができます。
トランスチレチン関連アミロイド症のマウスモデルでは
化学的に修正されたsgRNAと
Cas9 mmRNAを脂質ナノ粒子に封入した輸送した結果
97%以上の肝臓で70%の遺伝子編集を可能にしました。
同じように人のケースでも
血清のトランスチレチンレベルが顕著に低下した
と報告されています(NCT04601051)。
標的リガンドがあるナノ粒子による
遺伝子編集物質をコード化したmRNAの輸送は
特定の細胞種の遺伝子を編集する事を可能にするかもしれません。
例えば、免疫細胞であるT細胞、マクロファージなど。
またこのように標的化することで
精緻、かつコストのかかる細胞精製プロセスを
省くことができるかもしれません。
それによりCAR-T細胞治療のための遺伝子編集を
生体内で行うことができる可能性もあります(30)。
ナノ粒子の構成比はCas9 mRNA/sgRNAを輸送する臓器に合わせて
調整する必要があるかもしれません。
それによって組織特異的な疾患に対する
新しい治療の発展に貢献する事ができます(31)。

//考察//ーー
標的化治療では肝臓、血液中など
より標的化されやすい、蓄積しやすい部位から
承認されている事がわかります。
細胞種特異的輸送系統では
それに対する付加価値を提供するため、
〇標的化しにくい臓器も含めた特異的輸送、
〇臓器内の特定の細胞種へのより精密な特異的輸送、
これらを可能にする機能を持たせる必要があります。
特異的リガンド形成技術を確立するとともに
臨床前段階から
本当に標的細胞種まで輸送されたかどうかの確認をする必要があります。
〇遺伝子バーコード技術
〇Organ-on-chip技術、
〇Microfludic技術
などを使って確かめる必要があります。
人への応用、臨床ではそのような確認はより難しくなりますが、
より精密に輸送することができたかどうかの
確認、評価は同様に必要になります。

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