新型コロナウィルスの治療においては
体内でウィルス量が増えないようにする事が
一つの大きな方針です。
〇細胞内でのRNAの増殖を抑制する
〇細胞内侵入に関わる酵素の働きを抑制する
これらの薬理を持つ薬剤があります。
一方でワクチンと同様に
モノクローナル抗体を体内に入れて
新型コロナウィルスが細胞内侵入に関わる受容体(ACE2)に
結合する事を防ぐ方式もあります。
ー
一方で、このACE2タンパク質を細胞とは独立した形で
単一で体内に入れる治療方式があります。
これはウィルスをおびき寄せるという意味で
「デコイ受容体」と呼ばれます。
この細胞のないACE2デコイタンパク質に
「細胞表面のACE2受容体と結合する代わりに」
ウィルスが結合することで細胞内感染を防ぐことができる
という治療構想です。
ー
しかしながら、
〇過去の治験では酸素レベルは向上したものの
死亡率を改善させなかった。
(ClinicalTrials.gov ID: NCT04335136)
〇ウィルスの中和能力は生体内で十分ではなかった(2)。
これらのように十分な効果は確認されませんでした。
ー
Soumajit Dutta, Shiqin Xiong, Matthew Chan.
(敬称略)ら医療研究グループは
より効率の高い抗ウィルス性を発揮させるために
ACE2デコイタンパク質の構造を改変しました(1)。
具体的には
3つの変異
T27Y, L79T, N330Y
これらを構造に加えました(1)。
(名称:sACE2-2-v2.4 IgG1)
このデコイ受容体において試験管、マウスのケースで
VOC株、アルファー、ベータ、デルタ株などについて
それぞれ効果を調べられています(1)。
本日はその内容の一部を引用させていただき、
読者の方と情報共有したいと考えます。
//結果//---
(ウィルスの細胞内エントリー)
※マウス体内
※従来デコイ変異なしWT
*肺
構造改善デコイ 300-500
従来デコイ: 900-1100
なし:2000-2500
*肝臓
構造改善デコイ 400-600
従来デコイ: 600-800
なし:1400-1600
*脳
構造改善デコイ 250-350
従来デコイ: 300-500
なし:1400-1600
*心臓
構造改善デコイ 250-350
従来デコイ: 400-600
なし:800-1000
(参考文献(1) Fig.3c)
⇒
肺、肝臓、脳、心臓すべての臓器でウィルス細胞内侵入の
顕著な減少が見られています。
また、従来のデコイ受容体に比べても改善が見られています。
ー
肺の浮腫が顕著に減少。ベースラインと同レベル。
(参考文献(1) Fig.3g)
ー
マウス生存率は6割程度。
ウィルス導入から14日間。
治療なしでは生存なしで、寿命8日。
(参考文献(1) Fig.4a)
ー
デルタ株に対する結合性
改善デコイ受容体:KD = 0.3nM
モノクローナル抗体
VIR-7831:KD = <0.1nM
LY-CoV555:KD = 9100nM
REGN10933:KD = 1.7nM
REGN10987:KD = 5.1nM
(参考文献(1) Supplementary Figure 7)
⇒
デルタ株に対する結合はモノクローナル抗体と同等か
それよりも高い。
//考察//---
基本的にどの系統、株のウィルスが
自然選択か中立選択の中で進化し、主要になるかは
過去の例を見ると細胞感染性、増殖性が高くなっている
ことが一つの大きな要因となっています。
その細胞感染性を決めるのはACE2受容体です。
つまり、アルファー株、デルタ株、オミクロン株は
ACE2受容体との結合親和性が高いです。
このACE2デコイ受容体で治療するアプローチは
このような進化に対して逆に効果を高める可能性もあります。
なぜなら細胞のACE2受容体をコピーした構造だからです。
ACE2受容体の親和性が高まる傾向にある
ウィルスの進化の中で
ACE2デコイ受容体で治療するアプローチは
高まる変異に対する脅威に対して
より効果的である可能性があります。
なぜならACE2受容体の結合性が高まれば、
ACE2デコイ受容体の結合性も高まると考えるのが自然だからです。
実際に今回のSoumajit Dutta氏らの結果でも
変異に関わらず高い結合性を示していました。
過去の治験に対して効果が十分でなかった理由は
もう少し掘り下げて考える必要があるかもしれません。
おそらく現在流行しているオミクロン株に対しても
効果があると推測されます。
(参考文献)
(1)
Lianghui Zhang, Soumajit Dutta, Shiqin Xiong, Matthew Chan, Kui K. Chan, Timothy M. Fan, Keith L. Bailey, Matthew Lindeblad, Laura M. Cooper, Lijun Rong, Anthony F. Gugliuzza, Diwakar Shukla, Erik Procko, Jalees Rehman & Asrar B. Malik
Engineered ACE2 decoy mitigates lung injury and death induced by SARS-CoV-2 variants
Nature Chemical Biology (2022)
(2)
Iwanaga, N. et al.
Novel ACE2-IgG1 fusions with improved in vitro and in vivo activity against SARS-CoV2.
Preprint at bioRxiv https://doi.org/10.1101/2020.06.15.152157 (2020).
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