//Cell-type-specific delivery system//---
細胞種特異的輸送系統のコンセプトは
標的とする細胞種を明らかにして、
その細胞種(Cell-type)が特異的に(Specific)発現する
細胞表面に突出しているタンパク質に対して
高い親和性を持つたんぱく質を輸送媒体に装飾することで
標的とする細胞種まで輸送するというものです。
表面タンパク質をアンカーとして使用して
ナノ粒子などに封入した、
あるいは表面に複合体として装飾した薬剤を作用させます。
ナノ粒子薬剤の基本的なコンセプトである
エンドサイトーシスも想定します。
つまり細胞内に取り込ませて細胞質、細胞核で
狙いの薬理を発揮させます。
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"Cell-type-specific delivery sysytem"
これを実現するにはいくつか重要な事があります。
①肝臓や腎臓などで代謝されないようにする(灌流など)。
②標的細胞種だけが発現しているタンパク質を見つける。
③輸送媒体を分解、劣化させない。
④薬剤を標的付近で放出させる必要がある。
⑤免疫惹起(拒絶反応)を抑える必要がある。
⑥薬剤が本当に届いているか確認する必要がある。
⑦細胞輸送媒体では細胞内封入における
細胞質内での薬剤の分解を防ぐ必要がある。
⑧複合体として薬剤を表面に結合させる場合には
薬剤をナノ粒子に対して標的付近まで固定する必要がある。
⑨薬剤の循環を考慮して注入ルートを考える必要がある。
⑩最適な結合部位を見つける必要がある。
⑪結合部位に結合するタンパク質を正確に作製する必要がある。
⑫結合させるタンパク質をナノ粒子の表面に作製する必要がある。
⑬細胞輸送媒体では遺伝子と表面タンパク質の関係を知る必要がある。
⑭タンパク質のアイソフォーム、変形について考慮する必要がある。
、、、
いろんな項目があります。
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Zhongyi Hu, Jiao Yuan(敬称略)ら
医療研究グループは、
Surfaceome、表面タンパク質
この数千種類のデータベースの中から
癌細胞に特異的なたんぱく質を409種類見つけています。
例えば、CDH1, CDH3などは数種類の癌で
特異的な表面タンパク質として検出されています(2)。
これが上述する②にあたります。
癌細胞種だけが発現しているタンパク質を見つける
という事です。
これは細胞種特異的輸送系統の一つの根幹です。
仮に、癌以外のいくつかの組織で同じ表面タンパク質があれば、
それに特異的に結合するナノ粒子を輸送する際に
その組織にオフターゲットしてしまう可能性があります。
従って、「ただ一つだけの細胞種で発現」
このことが非常に大切です。
しかし、そのようなたんぱく質を見つける事は容易ではありません。
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Rafael D. Melani, Vincent R. Gerbasi, Lissa C. Anderson
(敬称略)ら医療研究グループは
Cell-specific-delivery systemの実現性を高めてくれる
可能性がある報告を上梓されています(1)。
タンパク質にはアイソフォームや構造的な変形などがあり
類似するタンパク質がそれぞれのタンパク質に存在します。
通常はこれらも含めて1種類とされますし、
同じ遺伝情報から転写、翻訳されるたんぱく質は1種類とされます。
しかしながら、それぞれ亜型が存在して、
いくつかの類似形のタンパク質があります。
これを含めた総体をProteoformと呼びます。
このプロテオフォームは造血系の細胞の場合には
おおよそプロテイン(タンパク質)の3倍から10倍多く存在します。
(参考文献(1) Fig.1Bより)
また、通常のタンパク質では
造血系の細胞の場合には約81%のタンパク質は
複数の細胞で発現されていました。
一方、プロテオフォームの場合は
約58%が単一の細胞特異的に発現されていました(1)。
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このことは、アイソフォーム、装飾、切断などを考慮した
プロテオフォームに基づいた情報では
より多くの細胞種特異的な標的を
見つけることができる事を示しています。
この場合、構造の類似性があるので、
構造上、異なる部分。
例えば、装飾、切断されている局所などを
エピトープ(結合部位)とする必要があるかもしれないですが、
より細かな標的の評価、選別につながります。
細胞種特異的な標的の選択性が向上します。
//プロテオフォームの可能性//---
(バイオマーカー)
血液、唾液、尿、便、汗、脳脊髄液など
体外で分析しやすい検体によって
身体の中の状態を調べる場合、
疾患の痕跡となるバイオマーカーを特定、検出する必要があります。
プロテオフォームではタンパク質に対して
より細かな分類となっており、細胞種特異性が高いため、
体内の状態をより細かく把握できる可能性があります。
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(タンパク質標的薬剤)
PROTACはリンカーによってヘテロ接合させた
複数の機能を持つ(Bifunctional)薬剤です。
1つのリガンドはタンパク質に接合させて、
もう一つのリガンドは分解酵素を引き付けます(3)。
この時、タンパク質に接合する側は
特に生理機能を持たせる必要はなく、
少なくとも強く接合できればいいという任意性があります(3)。
このPROTACのタンパク質側の結合部位を考えるときに
より正確で、特異性のある構造がわかれば、
薬剤をより有効に働かせることができる可能性があります。
またこの薬剤の適応性、選択性も高まる事も考えられます。
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(患者さん毎の詳しい体質を知る)
Rafael D. Melani氏らは造血系の免疫細胞を含む細胞についての
プロテオフォームについて報告されています(1)。
それぞれの免疫細胞に対する
プロテオフォームの情報量は
タンパク質に比べて3倍から10倍になっています。
このプロテオフォームを血液から詳しく分析して
患者さんの体質を詳しく知ることで
血液系の疾患や薬剤を輸送するときの
拒絶反応などのリスクを下げる事ができるかもしれません(1)。
また、肝臓などの移植などの際にも同様です。
(参考文献(1) Fig.4)
//付加的考察//---
タンパク質は糖などと複合体化していることがあります。
プロテオフォームでは
より細かい分類でタンパク質をデータベース化することですが、
糖たんぱく質データベース(Glycoproteome)も重要になります(4,5)。
Cell-type-specific delivery sysytemで重要になる
表面のタンパク質の場合はACE2受容体のように
結合特異性を持たせるために糖で部分的に保護されている
ケースもあると考えられます。
その時にプロテオソームのように
糖たんぱく質においても複合体としてのアイソフォーム
装飾、切断などを考慮したデータベース化も考えられます。
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このような様々な軸でのデータベース化は
人工知能、機械学習とも適合性があると考えられるので
共通の雛形、方式の元、世界で共有されれば、
様々な医療分野で大きな価値になる可能性があります。
(参考文献)
(1)
Rafael D. Melani, Vincent R. Gerbasi, Lissa C. Anderson, Jacek W. Sikora, Timothy K. Toby,Josiah E. Hutton, David S. Butcher, Fernanda Negrão, Henrique S. Seckler, Kristina Srzentic´,Luca Fornelli, Jeannie M. Camarillo, Richard D. LeDuc, Anthony J. Cesnik, Emma Lundberg,Joseph B. Greer, Ryan T. Fellers, Matthew T. Robey, Caroline J. DeHart, Eleonora Forte,Christopher L. Hendrickson, Susan E. Abbatiello, Paul M. Thomas, Andy I. Kokaji,Josh Levitsky, Neil L. Kelleher
The Blood Proteoform Atlas: A reference map of proteoforms in human hematopoietic cells
Science 375 , 411 – 418 (2022)
(2)
Zhongyi Hu, Jiao Yuan, Meixiao Long, Junjie Jiang, Youyou Zhang, Tianli Zhang, Mu Xu, Yi Fan, Janos L. Tanyi, Kathleen T. Montone, Omid Tavana, Ho Man Chan, Xiaowen Hu, Robert H. Vonderheide & Lin Zhang
The Cancer Surfaceome Atlas integrates genomic, functional and drug response data to identify actionable targets
Nature Cancer volume 2, pages1406–1422 (2021)
(3)
Miklós Békés, David R. Langley & Craig M. Crews
PROTAC targeted protein degraders: the past is prologue
Nature Reviews Drug Discovery (2022)
(4)
Nicholas M. Riley, Alexander S. Hebert, Michael S. Westphall & Joshua J. Coon
Capturing site-specific heterogeneity with large-scale N-glycoproteome analysis
(5)
Hiroyuki Kaji
Development and Applications of Glycoproteome Analysis Technology
Proteome Letter volume 4 (2019) issue 2 pages 71-81
2022年1月28日金曜日
Cell-type-specific delivery system,
計算医工学,
循環器学,
分析手法,
薬学
細胞種特異的輸送系統を含むプロテオフォームの可能性と付加的考察
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