2022年1月24日月曜日

骨髄増殖性癌のドライバー変異導入タイミング

//背景//ーー
癌の成長に大きくかかわる変異は癌ドライバー変異と言われます。
実際の人の癌組織の中には体細胞のDNA変異数は数千種類と言われます。
前述したドライバー変異はそのごく一部であるとされています(2)。
Nicholas Williams氏らによって今回対象となった癌種である
骨髄増殖性の悪性新生物-Myeloproliferative neoplasms(MPN)。
この癌種においては血液系分化過程の中で初期に当たる
造血系幹細胞の時点で癌ドライバー変異が入ると言われています(3)。
しかしながら、骨髄増殖性の癌に罹患した方において
その人生の中のいつのタイミングで癌ドライバー変異が入っているか?
というのは今までよく理解されていませんでした(2,4,5)。
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Nicholas Williams, Joe Lee, Emily Mitchell(敬称略)ら
医療研究グループは骨髄増殖性の悪性新生物を発症した
12人の患者さんにおいて
1013のクローナルコロニーの全ゲノム解析
これにおける胎児から数十年にかけて縦断調査を行われています(1)。
本日はその内容の一部を引用させていただき、
概要について読者の方と情報共有したいと思います。

//結果//ーー
以下の3つのドライバー変異のタイミング。
44歳から90歳の患者さん12人。
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①JAK2-V617F:5人
妊娠33週から10.8歳までに導入
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②DNMT3A変異:4人
妊娠8週から7.6歳までに導入
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③PPM1D変異
5.8歳までに導入
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①JAK2-V617Fにおいて遺伝子変異が導入されてから
癌であると診断されるまでの平均の潜伏期間は
約30年(年齢範囲:11-54歳)とされています。
従って、多くの場合、胎児から子供の時代から
このドライバー変異が導入されていると考えられます。
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これらのドライバー変異が混在している患者さんもいます。

//考察//ーー
血液の癌に限らず、他の癌においても
今回の結果のように数十年かけて身体の環境に適応しながら
ゆっくり成長して、やがて何らかのきっかけによって
免疫などで制御できない大きさ、量になっているかもしれません。
そのような長期間の発達過程を経験した癌組織を
治療ではそれよりも圧倒的に速い速度で退行させる
ことを目的とするので、
その中でアンバランスになることが考えられます。
そうした進行と(治療による)退行の経時的な不均衡が
身体への負担、副作用に繋がっている可能性を想定しました。

(参考文献)
(1)
Nicholas Williams, Joe Lee, Emily Mitchell, Luiza Moore, E. Joanna Baxter, James Hewinson, Kevin J. Dawson, Andrew Menzies, Anna L. Godfrey, Anthony R. Green, Peter J. Campbell & Jyoti Nangalia 
Life histories of myeloproliferative neoplasms inferred from phylogenies
Nature (2022)
(2)
ICGC/TCGA Pan-Cancer Analysis of Whole Genomes Consortium. 
Pan-cancer analysis of whole genomes. 
Nature 578, 82–93 (2020).
(3)
Vainchenker, W. & Kralovics, R. 
Genetic basis and molecular pathophysiology of classical myeloproliferative neoplasms. 
Blood 129, 667–679 (2017).
(4)
Gerstung, M. et al. 
The evolutionary history of 2,658 cancers. 
Nature 578, 122–128  (2020).
(5)
Mitchell, T. J. et al. 
Timing the landmark events in the evolution of clear cell renal cell cancer: TRACERx Renal. 
Cell 173, 611–623.e17 (2018).

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