2022年1月22日土曜日

自ら命を絶つ状況をどのように改善するか?

//背景//
先進国を中心に世界的に高齢化が進んでいきます。
日本では2021年時点の65歳以上の高齢化率は29.1%です。
2040年には35.3%になると見込まれています。
高齢者の心身の健康を遺伝子レベルで考えていく事で
標的を絞った有効な薬剤開発ができる可能性もあります(2)。
また、生活習慣などを見直し予防的に疾患を防ぐことも考えられます。
健康を考える中で、無視できない医療、社会問題は
未遂を含む高齢者の自殺の問題です。
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参考文献(1)Fig.1に示されているように
世界の統計では2017年時点では
高齢になるほど10万人当たりの自殺者数は高くなります。
全ての年齢では10.39人に対して
70歳以上では27.45人です。
70歳を超えるあたりから一気に自殺者数が変わります.
(50-69歳:16.17人)
しかし、1998年と比べると全年齢層で自殺者数は少なくなっています。
70歳以上でも同様です。
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若年層での自殺は、うつ病を発症しているケースが多いですが、
高齢層の場合は、うつ病を発症している場合が少なく
全体の疫学的な割合も低いとされています(3,4)。

//原因と兆候//
高齢者の自殺は、具体的な要因が関係していることが多くあります。
例えば
〇慢性痛
〇他人への依存、補助なしで生活できない(要介護など)
〇寂しさによる苦痛
〇諦め
〇人生の意義の喪失
これらが挙げられています(5)。
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自殺のリスクを示すサインとして
〇抑うつ症状
〇不安、睡眠異常(過少、過剰)
〇感情のスイング、情緒不安定
〇自分の衛生、見た目への不注意
〇社会的孤立
〇罪悪感、恥など
〇食べ物への興味喪失
〇たばこ、アルコール消費の増大
〇死について考える、話す
〇意思、考えが変わる
〇良い感情に関わる対象を手放す(趣味など)
〇突然、友人を訪ねる(あたかも別れを告げるように)
これらが挙げられています(6)。
(参考文献(1) Box1)
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//コロナ禍の影響//
この2年間のコロナ禍が高齢の方の自殺問題に
どのように影響を与えたかといのはまだ世界的には明らかではありません。
しかし、負の影響を与えたという報告もあります(7)。
日本では、寂しさ、孤独の問題と向き合う省庁が設置されています。
自殺者数の推移では、低下傾向にありましたが、
コロナ禍の中で11年ぶりに増加に転じたからです。
ソーシャルディスタンス、外出、運動、社交機会などが
制限されることで、自殺や未遂に繋がることが
考えられるとされています(8,9)。

//考察//
心の状態が悪化することにおいて
具体的な要因が関係している場合には、
薬物治療よりも、まずは
その原因を取り除くことが好ましいとされます。
例えば、寂しさ、孤独が原因であれば、
それをどのように「具体的に」取り除くか考えます。
人それぞれ、様々な選択肢があります。
人生の意義の喪失といった難しい問題もありますが、
一方で、残りの人生が若い時に比べて
短いからこそ、先の事ではなく今に集中できます。
晩年こそ好きな事をする
という事は様々な場面できかれます。
そのような自分の好きな事を大切にする
"Emotion-centered stagegies(1)"をとる事ができます。
一般的に高齢の人のほうが、
感情的な幸福が高いともいわれます(1)。
人生経験から感情の制御も若い人に比べて
優れているといわれているからです(1)。
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上述したような認知療法や具体的に解決策を考える事で
状況が改善し、未然に防ぐことができる
可能性があると考えられます。

(参考文献)
(1)
Diego De Leo 
Late-life suicide in an aging world
Nature Aging volume 2, pages7–12 (2022)
(2)
Paul R. H. J. Timmers, Evgeny S. Tiys, Saori Sakaue, Masato Akiyama, Tuomo T. J. Kiiskinen, Wei Zhou, Shih-Jen Hwang, Chen Yao, Biobank Japan Project, FinnGen, Joris Deelen, Daniel Levy, Andrea Ganna, Yoichiro Kamatani, Yukinori Okada, Peter K. Joshi, James F. Wilson & Yakov A. Tsepilov 
Mendelian randomization of genetically independent aging phenotypes identifies LPA and VCAM1 as biological targets for human aging
Nature Aging volume 2, pages19–30 (2022)
(3)
Steffens, D. C. et al. 
Prevalence of depression and its treatment in an  elderly population. The Cache County study. 
Arch. Gen. Psychiatry 57,  601–607 (2000).
(4)
World Health Organization (WHO). 
Depression and Other Common Mental Disorders (WHO, 2017).
(5)
Wand, A., Draper, B., Brodaty, H. & Peisah, C. 
Self-harm in the very old one year later: has anything changed? 
Int. Psychogeriatr. 31, 1559–1568 (2019).
(6)
De Leo, D. 
I comportamenti sucidari degli anziani (suicidal behaviour of older adults). 
Supplemento di Psicogeriatria N.1, 1–74 (2017).
(7)
Wand, A. P. F., Zhong, B. L., Chiu, H. F. K., Draper, B. & De Leo, D. 
COVID-19: the implications for suicide in older adults. 
Int. Psychogeriatr. 32, 1225–1230 (2020).
(8)
De Leo, D. & Trabucchi, M. 
COVID-19 and the fears of Italian senior citizens. 
Int. J. Environ. Res. Public Health 7, 3572 (2020).
(9)
Santini, Z. I. et al. 
Social disconnectedness, perceived isolation, and symptoms of depression and anxiety among older Americans (NSHAP): a longitudinal mediation analysis. 
Lancet Public Health 5, e62–e70 (2020).


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