//背景//--
人の最高齢はここ100年の医薬学、医療、衛生などの
飛躍的な改善にも関わらず、あまり伸びていないと言われています。
しかし、平均余命は顕著な向上が見られています。
今後、100歳以上生きる人の割合が増える事が考えられます。
しかし、重い病気を背負いながら、晩年の長い期間過ごすのは
本人だけではなく、家族など親密な関係の人にも負担になります。
あるいは医療費などの国に対する負担もあります。
病気とどうやってうまく付き合うかという軸もあります。
一方で、健康寿命を延ばし、生活の質を如何に長い時間
高く保つかというのは今後、先進国を中心に大きな課題となります。
特に高齢化が進んでいて、寿命の長い日本は
どのようにこの問題を医学薬学、医療として向き合っていくか?
福祉、経済的な問題も含めて世界のモデルケースとなります。
従って、特に日本においては老化に関する研究は
重要な位置づけになると考えられます。
ー
老化に関しては人によって大きな差があります。
後期高齢期である90代でも自立した生活を送っている方も多くいます。
そうした中で、心身ともに健康な方と、
そうではなく重い疾患を患ってしまう方との
「違い」を分析する事は、
上述した本人だけではなく、広く社会や国の問題と関連します。
ー
そのための一つの手法は
様々な心身の状態の人から採血をして、
その血液から全遺伝子情報を取得して、
膨大な得られたデータといくつかの因子と紐づけて
多角的に分析していく事です。
ー
Paul R. H. J. Timmers(敬称略)ら医療研究グループは
①心身耐性-Resilience
②(自覚的)健康-Health(self-rated)
③健康寿命-Healthspan
④父親の寿命-Fathre lifespan
⑤母親の寿命-Mother lifespan
⑥寿命-Longevity
これらを老化の特質と定義し
それらと遺伝子群の因果関係をメンデルランダム化によって
包括的に調べられています(1)。
本記事ではその内容の結果の一部を引用させていただき
そこから老化因子において重要な部分について
追加的に記述していきます。
//結果//--
上述した①~⑥の老化因子と最も関わりの
深い遺伝子群はGIP1。
(参考文献(1) Fig.3b)
-
GIP1遺伝子群と負の相関がある疾患
(#の数は相関の程度)
〇神経的性向、うつ ##
〇負の感情 #
〇髪の毛のロス #
〇手術の回数 ##
〇頭痛 #
〇癌 #
〇喘息 #
〇肺機能の低下 #
〇低い教育レベル ##
〇喫煙年数 ###
〇貧困 ##
〇腸疾患 ###
〇慢性痛 ###
〇骨関節炎 ###
〇高血圧 ###
〇疾患、薬物治療数 ####
〇心血管疾患 ####
〇高脂血症 #
〇低HDLコレステロールレベル #
〇腕と足の重さ #
〇体脂肪 ##
〇2型糖尿病 ##
〇血栓閉栓症 ##
〇不健康な生活(食生活、運動) #
〇赤血球 #
特に関連が深いのが
喫煙年数、腸疾患、慢性痛、骨関節炎、高血圧
疾患数、薬の数、心血管疾患
これらが挙げられています。
生活習慣でいうと喫煙です。
-
GIP1と関わる遺伝子群
NEGR1、PHTF1、AFF3、TRAIP、ADD1、HTT、ANAPC4
4q13.2、MAML3、C6orf47、HLA-DRB1、SLC22A1
LPA、MAD1L1、FOXP2、CSMD3、CDKN2B、CTSF
CCDC90B、TTC12、USP28、MIR6074、12q21.31
LINC01065、ZNF652、APOE、ZFP64
(参考文献(1) Fig.4b)
-
これらの遺伝子全体と関連が深い老化因子
②(自覚的)健康-Health(self-rated)
-
健康寿命、両親寿命の関連のある遺伝子
LPA
これの異常形成は
腫瘍形成と転移に寄与する過剰増殖を誘導します。
従って、癌とその重症化に関わる遺伝子です。
-
両親の寿命と寿命に関連のある遺伝子
APOE
これの異常APOEε4は
脳血管関門の組織異常(リーク)や
アミロイドβ、タウの蓄積(2)。
ー
GIP1関連遺伝子群と負の相関がある
LPA、VCAM1、OLFM1、LRP12
(参考文献(1) Fig.5)
LPAはVCAM1との関わりがあります。
共に
血管内皮と柔軟性と組織健全性に関わります(3)。
細胞壁に対する白血球の吸着にも関わります(4)。
OLFM1は神経発達、維持、大腸がんの転移に関わる遺伝子です(5,6)。
LRP12も神経形成に関わると考えられる遺伝子です。
従って、老化因子を悪化させる遺伝子は
神経状態と血管の状態に関わるものです。
//考察//--
老化因子と関連の深い要因は心臓血管疾患、高血圧
これらであり、
それらに関連する遺伝子も血液や脳血管に関わる遺伝子です。
ヨーロッパのデータも含まれるので、
これが全ての民族に当てはまるかわかりません。
なぜなら、日本の死因の一位は「癌」だからです。
二位は高血圧性を除く心疾患とされています。
従って、上述したリスク因子の結果と傾向は異なる可能性があります。
この場合、今回抽出されたLPA遺伝子が重要になるかもしれません。
しかしながら、
循環器の健全性と老化との関連については
今後、注視が必要です。
これらは食生活、睡眠、運動、喫煙など
生活習慣と関わる疾患だからです。
また、アルツハイマー病やパーキンソン病
あるいは認知症などの治療改善も老化因子と強く関わります。
(参考文献)
(1)
Paul R. H. J. Timmers, Evgeny S. Tiys, Saori Sakaue, Masato Akiyama, Tuomo T. J. Kiiskinen, Wei Zhou, Shih-Jen Hwang, Chen Yao, Biobank Japan Project, FinnGen, Joris Deelen, Daniel Levy, Andrea Ganna, Yoichiro Kamatani, Yukinori Okada, Peter K. Joshi, James F. Wilson & Yakov A. Tsepilov
Mendelian randomization of genetically independent aging phenotypes identifies LPA and VCAM1 as biological targets for human aging
Nature Aging volume 2, pages19–30 (2022)
(2)
Montagne, A. et al.
APOE4 leads to blood–brain barrier dysfunction predicting cognitive decline.
Nature 581, 71–76 (2020).
(3)
Cho, T., Jung, Y. & Koschinsky, M. L.
Apolipoprotein(a), through its strong lysine-binding site in KIV 10, mediates increased endothelial cell contraction and permeability via a rho/rho kinase/MYPT1-dependent pathway.
J. Biol. Chem. 283, 30503–30512 (2008).
(4)
Kong, D. H., Kim, Y. K., Kim, M. R., Jang, J. H. & Lee, S.
Emerging roles of vascular cell adhesion molecule-1 (VCAM-1) in immunological disorders and cancer.
Int. J. Mol. Sci. 19, 13–17 (2018).
(5)
Nakaya, N., Sultana, A., Lee, H. S. & Tomarev, S. I.
Olfactomedin 1 interacts with the Nogo A receptor complex to regulate axon growth.
J. Biol. Chem. 287, 37171–37184 (2012).
(6)
Shi, W. et al.
Olfactomedin 1 negatively regulates NF-κB signalling and suppresses the growth and metastasis of colorectal cancer cells.
J. Pathol. 240, 352–365 (2016).
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