2022年1月22日土曜日

COVID-19:他の主要変異株とオミクロン株の比較評価

//背景//
新型コロナウィルスのオミクロン株の感染者数が増えています。
日本全体では5万人に迫る数となっています。
オミクロン株は逃避変異が入っているため
現在のワクチンの中和能が1/16以下と低くなっています。
そうした中で感染性が高まっていますが、
世界的でも同様なようにオミクロン株の重症化リスクは
他のウィルス株よりも小さいとされています。
しかしながら、
高齢の方や基礎疾患などリスク因子になる方は
重症化リスクが上がり、
仮に重症化リスクが従来株に対して1/10でも
全体の感染者数が10倍、100倍になれば、
絶対数は上回る事になります。
従って、感染初期に特例承認されたモルヌピラビルを
適切に処方する事によって、
重症化する方を付加的に減らすことが非常に重要になります。
このモルヌピラビルと
日本で承認申請中のニルマトレルビル(パクスロビド配合薬)は
ともにオミクロン株において顕著な抗ウィルス性が確認されています(3)。
オミクロン株の感染の波を乗り越えるためには
ワクチンの効果が低い以上、
治療薬による治療が必要不可欠です。

Peter J. Halfmann, Shun Iida, Kiyoko Iwatsuki-Horimoto, Tadashi Maemura, Maki Kiso
(敬称略)ら医療研究グループは
マウス、ハムスターのケースでオミクロン株による感染症のリスクを
ウィルス注入後のウィルス数、体重減少、免疫反応などを
他の過去流行した株(アルファ株、デルタ株)と比較されています(1)。
その結果の一部を読者の方と情報共有したいと思います。

//結果//
<体重減少について>
オミクロン株(B.1.1.529)においては
体重減少が感染後1~8日の間で
マウスの年齢、ウィルス量に関わらずみられない。
一方、
N501Y/D614G(アルファー株に主に含まれる変異)、
ベータ株(B.1.351)では
上述した条件で体重減少がみられる。
(参考文献(1) Fig.1a)
-
<ウィルス数>
ベータ株に対するオミクロン株のウィルス数(2-4日後)
マウス
鼻:100-1000倍低い
肺:10-10000倍程度低い
(参考文献(1) Fig.1b,c,d)
デルタ株に対するオミクロン株のウィルス数(3日後)
ハムスター
鼻:ほぼ同じ
肺:10-100000倍程度低い-個体差が大きい
他の報告(2)でも
アルファ株に対して鼻、肺のウィルス数は
マウスにおいて10倍から100倍
オミクロン株では低い。
-
<サイトカイン>
CCL4,IL-18,CCL11,CXCL2,CCL2,CCL7,CCL3
TNF-α,CXCL1,GM-CSF,IL-12p70,IFN-γ
IL-6,IL-5,CXCL-10,IL-1β
これらのサイトカインレベルは
B.1.351(ベータ株)ではマウスで感染後高くなりますが、
B.1.1.529+A701V(オミクロン株)では
上述したサイトカインは反応ないか、軽微です。
(参考文献(1) Fig.1i)
-
<肺画像>
肺のCT画像ではオミクロン株ではCTスコアは
わずかに上昇するが、
B.1.617.2(デルタ株)に対して1/5以下です。
(参考文献(1) Fig.2i,j)

//考察//
今回の結果は人ではなく、マウス、ハムスターであります。
また、これらの動物において
ワクチンを接種していない中での比較です。
日本のケースではワクチン接種率は80%程度です。
ゆえに大方の人がワクチンによる抗体、免疫を持っています。
ワクチンの効果が変異株ごとに異なれば、
ワクチンを接種していない状況での比較の値は
当然、異なると推定されます。
冒頭でも述べた様にオミクロン株のワクチンの効果は
ワイルドタイプに対して1/16以下なので、
上述した他の脅威株との比較の値は
ワクチン接種の状態では異なる可能性があります。
例えば、10倍くらいの差は逆転して
オミクロン株の方が今の人のケースでは多いかもしれません。
従って、
冒頭で述べた様に治療薬をどう有効に使うか?
それがこの感染の波では重要になります。
また今後、変異する(可能性がある)株においても
副作用なども含めた治療薬を使った感染対策のノウハウを
蓄積する必要があります。

(参考文献)
(1)
Peter J. Halfmann, Shun Iida, Kiyoko Iwatsuki-Horimoto, Tadashi Maemura, Maki Kiso, Suzanne M. Scheaffer, Tamarand L. Darling, Astha Joshi, Samantha Loeber, Gagandeep Singh, Stephanie L. Foster, Baoling Ying, James Brett Case, Zhenlu Chong, Bradley Whitener, Juan Moliva, Katharine Floyd, Michiko Ujie, Noriko Nakajima, Mutsumi Ito, Ryan Wright, Ryuta Uraki, Prajakta Warang, Matthew Gagne, Rong Li, Yuko Sakai-Tagawa, Yanan Liu, Deanna Larson, Jorge E. Osorio, Juan P. Hernandez-Ortiz, Amy R. Henry, Karl Ciouderis, Kelsey R. Florek, Mit Patel, Abby Odle, Lok-Yin Roy Wong, Allen C. Bateman, Zhongde Wang, Venkata-Viswanadh Edara, Zhenlu Chong, John Franks, Trushar Jeevan, Thomas Fabrizio, Jennifer DeBeauchamp, Lisa Kercher, Patrick Seiler, Ana Silvia Gonzalez-Reiche, Emilia Mia Sordillo, Lauren A. Chang, Harm van Bakel, Viviana Simon, Consortium Mount Sinai Pathogen Surveillance (PSP) study group, Daniel C. Douek, Nancy J. Sullivan, Larissa B. Thackray, Hiroshi Ueki, Seiya Yamayoshi, Masaki Imai, Stanley Perlman, Richard J. Webby, Robert A. Seder, Mehul S. Suthar, Adolfo García-Sastre, Michael Schotsaert, Tadaki Suzuki, Adrianus C. M. Boon, Michael S. Diamond & Yoshihiro Kawaoka 
SARS-CoV-2 Omicron virus causes attenuated disease in mice and hamsters
Nature (2022)
(2)
Huiping Shuai, Jasper Fuk-Woo Chan, Bingjie Hu, Yue Chai, Terrence Tsz-Tai Yuen, Feifei Yin, Xiner Huang, Chaemin Yoon, Jing-Chu Hu, Huan Liu, Jialu Shi, Yuanchen Liu, Tianrenzheng Zhu, Jinjin Zhang, Yuxin Hou, Yixin Wang, Lu Lu, Jian-Piao Cai, Anna Jinxia Zhang, Jie Zhou, Shuofeng Yuan, Melinda A. Brindley, Bao-Zhong Zhang, Jian-Dong Huang, Kelvin Kai-Wang To, Kwok-Yung Yuen & Hin Chu 
Attenuated replication and pathogenicity of SARS-CoV-2 B.1.1.529 Omicron
Nature (2022)
(3)
Pengfei Li, Yining Wang, Marla Lavrijsen, Mart M. Lamers, Annemarie C. de Vries, Robbert J. Rottier, Marco J. Bruno, Maikel P. Peppelenbosch, Bart L. Haagmans & Qiuwei Pan 
SARS-CoV-2 Omicron variant is highly sensitive to molnupiravir, nirmatrelvir, and the combination
Cell Research (2022)

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