//背景//----------
小児癌は大人の癌とは特徴が異なると言われます。
小児が罹りやすいがんは脳腫瘍であり、
下記いくつかの特有の課題があります。
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〇予後が悪い。後遺症など。
Diffuse intrinsic pontine gliomas(DIPGs)
Other midline high-grade gliomas(HGGs)
これらの悪性度の強い癌は予後が良くないとされています(2)。
手術、薬物、放射線などの抗癌性を持つ積極的治療(Aggressive therapy)。
これは命が助かった子供に対して長期的な後遺症につながります。
その後遺症とは
・神経認知機能の異常
・内分泌系(ホルモン)などの異常
・毛髪のロス
・2次的な腫瘍(転移、再発など)
これらが挙げられています(1)。
---
〇癌免疫治療の治験が進んでいない。
脳は免疫的には血液脳関門によって他の組織と異なります。
(Immunologically privileged)
しかし、中枢神経系の癌においては
免疫的な治療が有効である可能性が示されています(1)。
・CAR-T
・免疫チェックポイント阻害
これらのような代表的な癌免疫治療がありますが、
子供の脳腫瘍における臨床データによる治療効果の評価の量は
まだ世界的に十分ではありません。
しかしながら、
上述した長期的な合併症、後遺症などを最小化しながら
腫瘍を消滅させる治療の選択してとして大きな注目を浴びています(1)。
---
Eugene I. Hwang(敬称略)ら医療研究グループは
小児の脳腫瘍における現在の進展と課題、
さらに有効な免疫治療をどう効果的に臨床応用するか
これについて総括されています(1)。
//大人の脳腫瘍免疫治療の状況//-----------
免疫治療の種類は
①免疫チェックポイント阻害
②CAR-T細胞療法
③癌ワクチン
④腫瘍溶解性ウィルス療法
⑤抗体療法
これらが考えられます。
-----
(臨床試験の状況)
①免疫チェックポイント阻害
再発性の膠芽腫(GBM)-フェーズ3の治験
(NCT02017717,CheckMate-143)(3)。
免疫機能をコントロールする
・ステロイド
・抗がん剤(化学療法)
これらと併用した場合には効果が弱まる可能性があるので
注意が必要だとされています(16)。
いくつかのサブタイプでは
免疫チェックポイント阻害剤による治療の適正に関わる
PD-L1のレベルが従来の想定よりも高いかもしれない
とされています(17)。
外科による切除と免疫チェックポイント阻害のタイミングが
重要であるとされています。
術前治療(Neo-adjuvant)の免疫チェックポイントの
臨床的な効果について調べられています(18)。
-----
②CAR-T細胞療法
再発性の膠芽腫(GBM)
フェーズ1/2の治験(NCT01454596)。
癌組織の単位あたりの変異数(mutation burden)が
低い傾向にある小児脳腫瘍に対して適性があるとされています。
現在の所、高い臨床効果の結果は不足していますが、
今、いくつかの臨床試験が行われているところです(22)。
現在、有望とされる癌種は
DIPGs(びまん性橋膠腫)であり、
それに対してエピトープをGD2に定めています(23)。
しかしながら、「マウスのケース」で
びまん性橋膠腫が退行したとしても
その後、急速に生存状態が悪化し、死亡してしまいました。
従って、強固な免疫反応による副作用も懸念され、
慎重に臨床応用していく必要があります(23)。
-----
③癌ワクチン
いくつかのフェーズ3の効果評価(4)。
癌細胞傷害性を示す結合部位(エピトープ)に対する
特異的な抗体、T細胞を
B細胞などを通した内的免疫機能を使って生成させます(24)。
そのためには抗原認識する樹状細胞に
十分な量の適切な抗原を輸送する必要があります。
もう一つのアプローチとして
自分の細胞を使った自家移植で
成熟した樹状細胞を生体内に移植する
細胞ベースのワクチンが挙げられています(25)。
-----
④腫瘍溶解性ウィルス療法
再発性の膠芽腫(GBM)-フェーズ3の治験(5)。
腫瘍に浸潤し、癌細胞傷害性を示すウィルスを輸送します。
候補となるウィルスは以下です。
・はしかウィルス
・ポリオウィルス
・アデノウィルス
・ヘルペスウィルス
-----
⑤抗体療法
膠芽腫(GBM)-フェーズ3(6,7)。
H3K27M, H3G34R, H3G34Vなどの癌抗原と
特異的に結合するモノクローナル抗体を注入します。
これによってマクロファージなどの
癌細胞に対して食作用のある免疫細胞を
腫瘍組織に引き付けることができます(19)。
この抗原の認識性を1つの結合部位ではなく
2つの結合部位にするBi-specificなモノクローナル抗体も
提案されています(20)。
このモノクローナル抗体は
・放射線を使う免疫治療
・癌細胞に対する免疫毒性のある物質
これらの輸送において適性があります(21,36)。
//大人と小児の遺伝子的な違い//
*典型的な遺伝子の異常
(大人の膠芽腫)
EGFR, TP53, NF1, IDH1, IDH2(8-10)
(小児の膠芽腫)
H3F3A, HIST1H3B, ALK, NTRK1, NTRK2, NTRK3, ROS1, MET1(11-13)
//小児の癌の特質//------------
・Medulloblastomas(髄芽腫)
神経細胞とグリア細胞(神経膠細胞)に分化する前の
未熟な細胞に由来する悪性腫瘍です。
-
・DIPGs(びまん性橋膠腫)
脳幹の橋に発生する悪性で予後のとても悪い小児の脳腫瘍です。
-
・Atypical teratoid–rhabdoid tumors(ATRTs)
異型奇形腫瘍/ラブドイド腫瘍(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍)
中枢神経系のあらゆる部位に発症するが、約半数は後頭蓋窩に発生します。
中枢神経系に発生する極めて悪性度の高い腫瘍です。
//小児癌に対する免疫治療//--------
小児脳腫瘍は大人の脳腫瘍と同様に免疫原性が低く、
そのままでは免疫治療が効きにくい、
免疫的にコールドと言われています(14)。
しかしながら、
上述したように小児の膠芽腫に関わる遺伝子は多く、
免疫細胞の侵入、浸潤などの状況が
人によって異なることから
免疫的にホットか、コールドか?
つまり免疫治療に向いている特質を有しているかどうかは
単純には決められないとされています(1)。
-
小児の中枢神経系の悪性新生物を標的とした
効果的な免疫治療には下記の項目の理解が重要です。
①免疫プロファイル
免疫細胞やサイトカインなど
②候補となる抗原
癌抗原:H3K27M, H3G34R, H3G34Vなど(15)
③細胞傷害性の免疫細胞の相互作用
④免疫治療抵抗性のある癌微小環境
⑤複合的な要因
//懸念される副作用//-------------
免疫に関連する副作用
Immune-related adverse event(irAEs)
これが小児脳腫瘍の免疫治療を行ったうえで懸念されます。
その副作用は
(脳に関連するもの)
・てんかん
・失語症
・脳障害
・脳の浮腫
・頭痛
(脳以外のもの)
・胃腸
・皮膚
・内分泌系組織
・肝臓
・倦怠感
・衰弱
これらの異常が想定されます(26-30)。
従って、臨床応用、治験の中で
上述した副作用に注意を払いながら進めていく必要があります。
//小児脳腫瘍免疫治療の臨床前モデル//
Eugene I. Hwang氏らは臨床前モデルとして
主に4つの要素を挙げられています(1)。
-
①患者さん由来の異種移植(PDX)
患者さん由来の癌細胞、免疫細胞などを
マウスなどの動物に移植することで
一部、患者さん特異的な条件で
生体内生理反応を分析する事ができます。
-
②免疫不全マウスの利用1
免疫機能が働かないマウスでは
腫瘍近傍の環境や循環器で免疫細胞による改変が起こらないため
マウスの液体生検から真性のバイオマーカーを得ることができます。
①の患者さん由来の異種移植と合わせれば、
患者さん特有のバイオマーカーを得ることもできます。
-
③免疫不全マウスの利用2
獲得免疫であるT細胞の機能喪失が起こっている条件で
マウスで調べる事によって、
それ以外のB細胞、NK細胞、マクロファージなど
自然免疫系なども含めて、T細胞が干渉することなしに
調べる事ができます。
-
④液体生検による分析
循環癌細胞DNA(circulating tumor cell DNA)
尿からのバイオマーカー取得
これらは新しいバイオマーカーを見つけるのに貢献します(31,32)。
//小児脳腫瘍免疫治療の臨床試験//
参考文献(1)を参照し、
臨床試験の為に必要な事を6つ抽出いたしました。
-
①高い異種性
組織学的には類似していても、患者さん事
あるいは組織内での分子的異種性があります(33,34)。
ターゲットとするエピトープの発現レベルなどがあります。
例えば、PD-L1の発現レベルによって
免疫チェックポイント抑制剤による治療効果が
変わる可能性があります。
-
②自己免疫疾患を持つ患者さん
自己免疫疾患を持つ患者さんは免疫機能が全体的に高まっているため
基本的に免疫機能を抑えて、コントロールする
ステロイドなどを使った治療が考えられます。
そのような患者さんにおいて免疫治療は適していないため
臨床試験のスクリーニングの段階で
試験対象から外しておく必要があります。
-
③組み合わせ治療
外科治療、化学治療、放射線治療との組み合わせの時
脳腫瘍の特質をより詳しく理解する必要があります。
例えば、癌微小環境や免疫表現型などです。
なぜなら、上述した今のメインの治療は
治療中に免疫機能を改変する必要があるからです。
従って、フェーズ0の初期の段階では
治療の段階ごとに癌組織を分析して、
複数の治療の効果を切り分けて考える必要があります。
あるいは相乗効果、相殺効果についても考慮する
ことが求められます。
-
④コルチコステロイドについて
小児脳腫瘍の治療では免疫機能を抑える
コルチコステロイドが広く使われます。
神経性の症状や癌組織周辺の浮腫を緩和するためです。
しかし、コルチコステロイドは免疫抑制性があるため
T細胞死、樹状細胞の成熟を抑える働きがあります(35)。
従って、癌免疫治療と相反性があるため、
治験前のスクリーニングの段階で
コルチコステロイドをどの程度使用したかという
情報開示と層化は必要になります。
-
⑤免疫惹起による周辺の炎症
腫瘍組織を積極的に免疫細胞で治療していく方式では
その高まった免疫細胞が脳の周辺の組織にも
影響を与えてしまうことが考えられます。
(Pseudoprogression)
小児の脳は発達段階にあるため、
腫瘍の周りの脳の組織が炎症を起こすと
発達において影響を与える事が考えられます。
脳幹など重要な部分においては特に配慮が必要です。
-
⑥協力体制
小児癌の治療では、複数の分野が横断的に
治療に関わる必要があります。
小児科、脳神経科、腫瘍内科、腫瘍外科など。
患者さんを中心にして
様々な分野の医師、研究者が協力体制を作って
癌治療を行っていく必要があります。
一方、高齢の方に比べて患者数が少ないため
臨床応用や実用化のために必要は
資金確保が難しいという潜在的な課題があります。
産学連携、官民連携、国際連携などを通じて
効果的にトランスレーショナル医療を実現する必要があります。
//まとめ//------------
小児癌の免疫治療はまだ萌芽期、黎明期を
完全には脱していなく、
これから治療の選択肢の一つとして普及するために
様々な改善が必要だと考えられます。
他の従来の治療との組み合わせも考えられるため
丁寧な特質の理解が必要だと考えられます。
また、分野横断的な協力が
小児癌、特に小児脳腫瘍の治療の為には
より必要だと考えられます。
命を救うだけではなく、生活の質の向上、
少ない副作用を実現するためには
特に悪性度の強いタイプの脳腫瘍においては
高い壁が幾重にも存在します。
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