//背景//---
多発性骨髄腫は
B細胞が分化したプラズマ細胞、形質細胞の腫瘍の一種であり、
難治性の血液腫瘍です。
多発性骨髄腫は単一の疾患ではなく一連の血液成分が
臨床症状の関連しており、癌化した血液細胞の遺伝子は
全体の中で異種性が高いとされています(1)。
このような遺伝子の異種性は
プラズマ細胞から発出される免疫グロブリンの異常を
分析する事で明らかにされます(1)。
例えば、重鎖の転座において
t(11;14), t(4;14), t(14;16), t(6;14) and t(14;20)
これらのタイプがあり、
それぞれ
15-20%, 6-15%, 5%, 1-2%, 1%の患者さんで見られます(4,5)。
このような免疫グロブリンの異常は
無症状の多発性骨髄腫(Smouldering MM)でも起こります。
この前段階として無症状状態があるのがなぜなのか?
というのは明確にはされていません(1)。
多発性骨髄腫治療効果を改善させるためには
多発性骨髄腫が持つ癌化した血液細胞全体が持つ異種性を
詳しく分析し、患者さんを層化、分類して
特異的な治療を提供する必要があります。
あるいは無症状状態を含む前段階で治療することです。
//臨床症状//---
多発性骨髄腫による臨床症状は
〇骨の痛み
〇感染症
〇腎障害
〇貧血
〇神経症状
これらがあげられています。
骨髄腫は骨の中の免疫細胞に異常がでるので骨の異常が
生じやすいと考えられます。
骨の堅牢性の変化などによって
骨と血液のカルシウムバランスが変わり
カルシウムが血中に多く溶け出すことで、
高カルシウム血症になるといわれています。
IgMの軽鎖の異常はアミロイドタンパク質の蓄積につながるので
カルシウム異常と合わせて腎臓に障害が出たり、
アミロイドーシスとして神経症状が出ることがあります。
感染症のリスクが高まるのは
感染症を防ぐ役割のある抗体の構造に異常が出ていることが
一因であると想定しました。
//液体生検//---
マルチオミックス解析をするための検体として
患者さんの血液などの液体生検を調べる事が挙げられています。
その中で血中に循環している癌細胞(CTCs)や
血漿中に細胞外に出ているDNA(cfDNA)
これらを分析する事が挙げられています(1)。
//主に引用した報告(1)について//---
Ankit K. Dutta, Jean-Baptiste Alberge, Romanos Sklavenitis-Pistofidis, Elizabeth D. Lightbody, Gad Getz & Irene M. Ghobrial
(敬称略)からなる医療研究グループは
単一細胞レベルの遺伝子の分析から
遺伝子の違いがどのように形質細胞の分化、進化に影響を与えるか?
これについて議論されています。
またこのような遺伝子分析を含めた単一細胞レベルの
マルチオミックス解析を診断、リスク分析、治療戦略など
臨床に応用するか総括されています(1)。
その概要、病気の進行、治療、分析の概要について
内容を抜粋させていただきました。
またいくつかの情報と考察を追記しています。
//特徴と性質//---
多発性骨髄腫(MM)に発展するまでの前段階として
①不確定の免疫グロブリン異常
Monoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS)
②症状のない多発性骨髄腫
Smouldering multiple myeloma (SMM)
これらがあります。
参考文献(1)Fig.2で示されているように
成熟B細胞である形質細胞群の異種性については
これらの症状の発展に伴って高まっていくと考えられます。
最終的に骨髄腫までに発展するきっかけは
1つとしては以下のような癌のドライバー変異が挙げられます。
KRAS, NRAS, BRAF, TP53, DIS3 or TENT5C
このようなドライバー変異が
クローン性の環境適合性を向上させます。
従って、血液の中で安定なので、
多くの形質細胞がこのようなドライバー因子によって
置き換わっていくのではないか?と考えられます。
このようなドライバー変異によって
成熟B細胞から発出される免疫グロブリンの重鎖、軽鎖の
構造に異常が生じます。
多発性骨髄腫は成熟B細胞に関連する腫瘍なので
発生部位としては2次リンパ節の胚中心で発生すると考えられます。
新型コロナウィルスの抗体産生でも同じように
胚中心で抗原認識して免疫グロブリンを発出し、クラススイッチ
させるためには体細胞超変異が生じる必要があります。
そのため、上述した変異が起こりやすいと考えられています。
//休眠について//---
多発性骨髄腫に発展するまでの時間的猶予を与える因子もあります。
その一つは休眠(Dormancy)です(2)。
この形質細胞中の癌細胞の休眠の一部は、
癌微小環境が関連していると考えられています。
この休眠段階では治療抵抗性を示すので
何らかのきっかけで再成長すると、
そのことは治療後の癌の再発に関係する可能性があります。
//サブクローンの種類//---
一般的に最終的な多発性骨髄腫に発展した時の
サブクローンの種類は
2~6種類であるとされています(3)。
上述したように免疫グロブリンの重鎖の転座と
癌細胞内のドライバー変異の種類の相関があります。
ドライバー変異が多様であれば、
サブクローンの種類は多くなると考えられるので
結果として生じる血中の免疫グロブリンの転座の多様性が
高まると推測しました。
//現在の治療//---
現在の治療としては
〇プロテアソーム抑制
〇免疫改変
〇癌細胞死の導入
これらが挙げられています(6,7)。
//考察//---
多発性骨髄腫に対する骨髄移植(8)やCAR-T療法(9)が提案されています。
血液系の系統樹では
造血幹細胞⇒リンパ球前駆細胞
これらがあり、
そこから
B細胞、T細胞、NK細胞などに分化していきます。
これらの細胞のバランスが崩れるという説明はあります。
一方、多発性骨髄腫ではT細胞、NK細胞は癌化していないのか?
それが重要だと考えました。
その理由は、造血系の細胞の分化の系統樹の中で
どの段階で癌化するためのドライバー変異が入ったのか?
この事を明らかにするためです。
B細胞だけが問題であるかどうかは
移植治療やCAR療法のアプローチと評価に関わると考えられます。
また、ナノ粒子に上述した
〇プロテアソーム抑制、〇癌細胞死の導入抑制の
薬剤を複合体化させて、
CAR療法で標的としたB細胞の受容体を同時に認識することで
標的治療の実現ができるかもしれません。
(参考文献)
(1)
Ankit K. Dutta, Jean-Baptiste Alberge, Romanos Sklavenitis-Pistofidis, Elizabeth D. Lightbody, Gad Getz & Irene M. Ghobrial
Single-cell profiling of tumour evolution in multiple myeloma — opportunities for precision medicine
Nature Reviews Clinical Oncology (2022)
---
Author information
Affiliations
Center for Prevention of Progression of Blood Cancers, Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA, USA
Ankit K. Dutta, Jean-Baptiste Alberge, Romanos Sklavenitis-Pistofidis, Elizabeth D. Lightbody & Irene M. Ghobrial
Department of Medical Oncology, Harvard Medical School, Boston, MA, USA
Ankit K. Dutta, Jean-Baptiste Alberge, Romanos Sklavenitis-Pistofidis, Elizabeth D. Lightbody & Irene M. Ghobrial
Cancer Program, Broad Institute of MIT and Harvard, Cambridge, MA, USA
Ankit K. Dutta, Jean-Baptiste Alberge, Romanos Sklavenitis-Pistofidis, Elizabeth D. Lightbody, Gad Getz & Irene M. Ghobrial
Cancer Center and Department of Pathology, Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA, USA
Gad Getz
(2)
Khoo, W. H. et al.
A niche-dependent myeloid transcriptome signature defines dormant myeloma cells.
Blood 134, 30–43 (2019).
(3)
Melchor, L. et al.
Single-cell genetic analysis reveals the composition of initiating clones and phylogenetic patterns of branching and parallel evolution in myeloma.
Leukemia 28, 1705–1715 (2014).
(4)
Manier, S. et al.
Genomic complexity of multiple myeloma and its clinical implications.
Nat. Rev. Clin. Oncol. 14, 100–113 (2017).
(5)
Fonseca, R. et al.
International Myeloma Working Group molecular classification of multiple myeloma: spotlight review.
Leukemia 23, 2210–2221 (2009).
(6)
Andrulis, M. et al.
Targeting the BRAF V600E mutation in multiple myeloma.
Cancer Discov. 3, 862–869 (2013).
(7)
Paiva, B., van Dongen, J. J. & Orfao, A.
New criteria for response assessment: role of minimal residual disease in multiple myeloma.
Blood 125, 3059–3068 (2015).
(8)
Luciano J. Costa, Simona Iacobelli, Marcelo C. Pasquini, Riddhi Modi, Luisa Giaccone, Joan Blade, Stefan Schonland, Andrea Evangelista, Jose A. Perez-Simon, Parameswaran Hari, Elizabeth E. Brown, Sergio A. Giralt, Francesca Patriarca, Edward A. Stadtmauer, Laura Rosinol, Amrita Y. Krishnan, Gösta Gahrton & Benedetto Bruno
Long-term survival of 1338 MM patients treated with tandem autologous vs. autologous-allogeneic transplantation
Bone Marrow Transplantation volume 55, pages1810–1816 (2020)
(9)
Phaik Ju Teoh & Wee Joo Chng
CAR T-cell therapy in multiple myeloma: more room for improvement
Blood Cancer Journal volume 11, Article number: 84 (2021)
登録:
コメントの投稿 (Atom)

0 コメント:
コメントを投稿