//背景//ー
喘息に罹患している人は世界で3億人といわれています。
その臨床症状は様々です。
・息切れ
・せき
・胸の逼迫
これら代表的な症状です。
ぜんそくの症状は
・慢性的な気道の炎症
・呼吸の障害
・気道の過敏反応性
これらと関係しているといわれています(2)。
-
喘息の治療、症状のコントロールは難しいといわれています。
その理由は
・吸入式グルココルチコイドが吸着しにくい
・吸入式投与技術の間違い
・併存症の条件
・アレルゲンや刺激物への暴露
これらが挙げられます(3)2。
グルココルチコイドの薬剤の投与、併存症の管理、
アレルゲンや刺激物の暴露を抑えることがうまくいったとしても
喘息の症状が重い時には臨床結果は良くないとされています(4,5)。
-
このような症状の重い、治療の難しい喘息は
・喘息を持つ大人の10%、子供の2.5%
これであるとされています。
喘息の症状が重いと生活の質が低下すると考えられます。
・呼吸がしにくい
・症状が再燃する
・ヘルスケア施設の利用必要性
・入院
さらに悪化した場合には命を落とす場合もあります(6)。
通常の治療では
・グルココルチコイド
このほか
・高持続性 β2亢進剤
・高持続性ムスカリン性抑制剤
これらの投与が検討されます(2)。
しかし、症状が重く、管理、治療において十分ではない場合
生物学的治療(抗体治療)を追加的な治療として必要とします(1)。
-
重篤な喘息の特徴は異種的であるとされています。
例えば、発症した時の年齢によって異なります。
またアレルギーの有無によっても同様です。
症状として
・呼吸能力
・再燃の頻度
これらによって治療の効き目、予後は変わります(7)。
-
また生物学的な特徴としては気道を中心とした組織の炎症です。
その炎症は
・唾液
・気管支生検
・血液
これら中の顆粒球によって程度を判断することもできます。
-
喘息の分類のうち、タイプ2の高炎症性喘息は
気道の炎症の中で好酸球、一酸化窒素(NO)
が増加する事が挙げられています。
(参考文献(1) Fig.1A)
-
その他のタイプとして
・顆粒球寡少型喘息(Paucigranulocytic asthma)
・好中球増加型喘息
これらがあります。
-
疫学的には症状が重い喘息に関しては
高い割合でタイプ2の喘息であるとされています(8,9)。
-
Guy G. Brusselle, Gerard H. Koppelman
(敬称略)からなる医療研究グループは
・現在明らかになっているタイプ2炎症の見識
・利用可能な生物学的治療(抗体治療)
これらについて総括されています(1)。
その中で生理機序、臨床効果、安全性に対して
見識を述べられています(1)。
本日は、その内容の一部を引用させていただき、
現状自身が保有する知識を付加しながら、記述します。
日本を含め、世界で喘息で苦しむ方の治療の一助になれば
と考えています。
//喘息におけるタイプ2炎症//ー
タイプ2のサイトカインは
・IL-5
・IL-4
・IL-13
これらといわれています。
これらが分泌される原因は、
・アレルゲン
・汚染物質(PM2.5など)
・ウィルス
・細菌
これらなどが挙げられます。
-
例えば、アレルゲンが入った場合
樹状細胞がそれを認識して、
ナイーブT細胞をMHC-Ⅱ結合を通じて活性化させます。
そこから分化したヘルパーT細胞が
上述したタイプ2のサイトカインを増加させ、
これによってアレルギーと関連の深い
・肥満細胞
・好酸球
これらが気道の粘膜で活性化されいます。
この時、
・IL-5⇒好酸球活性化
・IL-4⇒ヘルパーT細胞分化、IgE抗体クラススイッチ
・IL-13⇒NO合成、平滑筋の収縮
これらに関わっているとされています(1)。
-
タイプ2炎症の結果として、
唾液、気管支生検、血液
これらの検査でわかる好酸球やNOのレベルによって
喘息の症状を評価する事ができます。
これらのレベルがグルココルチコイドで下がる場合もありますが、
症状が重い患者さんの一部では、
好酸球のレベルがなかなか低下しない方もいます(10)。
//Anti-IgEモノクローナル抗体//ー
IgE抗体は肥満細胞や好酸球などに結合して
活性を高め、アレルギー反応の原因となる抗体です。
従って、このIgE抗体の働きを弱める薬剤が開発されました。
現在、FDAによって承認されているAnti-IgEモノクローナル抗体は
・オマリズマブ(Omalizumab)
これです。日本でも承認されています。
このオマリズマブはIgE抗体のFcドメインに結合して
アレルギー反応の現任となる肥満細胞や好酸球に対する
結合親和性を下げる事ができます。
この適用は
・既存のグルココルチコイドなどを使っても症状が制御できない
・アレルゲン特異的なIgEが検出
・6歳以上
これらが当てはまる中等症から重症の喘息です。
-
25の臨床試験を評価した総括報告では
オマリズマブは喘息の再燃や入院件数を減らし、
生活の質、肺の機能を改善したことが報告されています(11)。
副作用であるアナフィラキシーは0.1-0.2%程度です。
-
用量は75mg-375mgの間で皮下注射で
2-4週ごとに投与されます。
用量の基準は体重やIgE抗体量などで決められますが、
IgE抗体量のレベルと臨床結果の相関はありません(1)。
//IL-5、IL-5R標的抗体//ー
IL-5標的抗体:①Mepolizumab, ②Reslizumab
IL-5R標的抗体:③Benralizumab
これらはFDA承認された生物学的治療薬剤です。
①メポリズマブ:日本承認
-
①Mepolizumab, ②Reslizumabに関しては
付加的な治療(グルココルチコイド併用?)において
再燃性の好酸球レベルの高い重篤な喘息に対して
再燃の確率が50%低減、生活の質が向上しました。
この場合、アレルギーの有無は関係ありませんでした(12-14)。
副作用、有害事象は
・呼吸器系の感染症
・頭痛
・喘息の悪化
・アナフィラキシー(0.3%程度)
これらでした(15,16)。
従って、一部の患者さんでは症状が悪化するケースもある
ということです。
-
③Benralizumabに関しては
気道の粘膜、唾液、血液において
好酸球の数は90%以上低減する事に成功しています(17)。
血中の好酸球の数が300/μLよりも高い場合において
・喘息症状の再燃頻度が減少
・呼吸機能(FEV1)が向上
これらが確認されています(18,19)。
//IL-4受容体標的抗体//ー
①Dupilumab
アトピー性皮膚炎、慢性副鼻腔炎の治療において
FDAによって承認されています。
-
①DupilumabはIL-4とIL-13両方の信号を抑制します。
-
第3相治験では
中等症から重症の喘息の患者さんにおいて
従来の治療では症状をコントロール出来ない場合において
①Dupilumabの効果が調べられました。
・再燃頻度の低下
・入院、緊急治療の低下
・呼吸機能の改善(FEV1)
これらが確認されています(20,21)。
適用としては
・血中好酸球数 150/μL以上
・FE-NO値 25ppb以上
これらが示されています(20,21)。
副作用は
・注入箇所の反応(15%)
・過好酸球増加症(4-25%)
これらとなっています。
//上皮サイトカイン標的抗体//ー
①Tezepelumab
anti-TSLP(上皮サイトカイン)
-
・第3相治験
・追加的治療(Add-on therapy:+グルココルチコイド?)
これらにおいて
・喘息再燃頻度56%低下
・好酸球数減少
これらが確認されています(22)。
しかし、好中球、肥満細胞、T細胞には
気道の粘膜において細胞数の変化は顕著ではありませんでした(23)。
//生物学的療法のメリット//ー
IgE抗体やIL標的抗体などの併用によって
グルココルチコイドの用量を減らすことが期待できます。
グルココルチコイドによる治療だけに頼ると
症状が重い場合は特に副作用が強く出る事があります。
従って、上述した薬剤と併用することは利点があります。
例えば、
6歳以上の子供のケースにおいて
IgE標的抗体であるオマリズマブが臨床適用されています。
1380人の子供におけるメタ分析によれば、
吸入式グルココルチコイドの用量を大きく減らすことに
成功しています。
それにより許容的な副作用に収まったとされています(24)。
//今後の展望//ー
・治療の効果を確認するためのバイオマーカーの必要性
・生物学的療法の薬は高いので
本当に利点がある人に絞って投与する必要があります。
・治療期間はどれくらい必要か?
・いくつかの抗体治療がありますが、
子供、青年、妊娠女性などにそれぞれ適した薬剤を評価するために
もう少しデータを積みあげる必要があります。
・タイプ2炎症性の喘息以外の低タイプ2喘息の場合には
抗体治療が適用範囲とされていません。
高齢の方、大人で発症、肥満、代謝異常、高血圧
グルココルチコイド抵抗性などに当たる患者さんにおいて
より有効な治療法を見つける必要性があります。
IL-6, CXCL8, IL-17A, IL-23, IFN-α, TNF、IL-33、TSLP
これらが標的の候補となっています(25)。
//考察//ー
アレルギーの治療には減感作療法というのがあります。
患者さんのアレルゲンを少しずついれ、
それに対する免疫の過敏な反応を減らすというものです(26)。
おそらく、喘息など制御できない免疫惹起に至るには
上述したアレルゲン、汚染物質、ウィルス、細菌などが
「一気に、許容範囲を超えて」体内に入った可能性が考えられます。
それによって、免疫感作が生じて悪化した可能性が考えられます。
このことからアレルゲンなど、原因となる物質を特定し
まずは、それから遠ざける事が当然重要です。
上述した免疫的な調整が必要ですが、
症状が落ち着いてきた時に、長期的な視点の元で
減感作療法を行う価値があるかどうか?
根本治療の一つであるとされているので、
この減感作療法も含めて考える必要性があるかもしれません。
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かわの内科 アレルギー科
減感作療法(免疫療法)
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