//背景//--
分娩、出産を境に赤ちゃんは閾値的な環境の変化を経験します。
血液中の酸素飽和度は子宮内では50-60%であり、
そこから10分程度で85~95%まで酸素飽和度を上げる必要があります。
そのため分娩後の初期の呼吸時には経胸腔圧力が陰圧にあり
液体(羊水?)を気道から肺の間質へ輸送され、
肺の通気、血中酸素飽和度、肺動脈の拡張を促進する
と言われています(1)。
-
このように胎盤循環に依存していた状態から
胎外生活に適応した呼吸循環動態に劇的に、急速に切り替わります。
この呼吸循環動態の移行が順調に進行しない事例は
日本では全出産の約10%にみられ、
さらに全出生児の1%が救命のために本格的な蘇生手段
(胸骨圧迫,薬物治療,気管挿管)を必要とします。
適切に処置を受けなければ、
命を落とすか、重篤な障害を残すといわれています(2-4)。
そこで日本周産期・新生児医学会は
すべての分娩に新生児蘇生法を習得した
医療スタッフが新生児の担当者として立ち会うことができる
体制の確立をめざしているとされています(2)。
-
このように医師による蘇生を新生児に行う場合には
動脈の酸素飽和度(SpO2)と心拍(HR)の両方を
モニターする必要があります(5-7)。
-
胎児から新生児への移行にかけて
The American Heart Association (AHA)では
心拍100以上を維持した状態で
分娩から
1分後 60-65%
2分後 65-70%
3分後 70-75%
4分後 75-80%
5分後 80-85%
10分後 85-95%
これらの酸素飽和度の軌跡を描くことが推奨されています(8)。
-
Inmaculada Lara-Cantón(敬称略)ら医療研究グループは
臍帯の締め付けを1分以上遅らせることで
すぐに臍帯を締め付けるよりも
速く目標の酸素飽和度85-95%に到達し
胎児から新生児の移行が円滑に進んだことを示しています。
その内容、結果について総括されています(1)。
今、国際的なガイドラインは
臍帯の締め付けは30秒から60秒の間です(9)。
従って、それよりも遅らせて臍帯を締め付ける事で
心臓の心室前負荷が高まり
臍帯締め付けの前に肺の通気が起こる際に
血流が力学的に安定して移行することが示されています(10)。
-
本日はその内容の一部を引用させていただき
読者の方と情報共有したいと思います。
//酸素飽和度と呼吸//--
血中の酸素飽和度の上昇は
胎児から新生児への移行の成功のための
生理学的な変化において非常に重要な役割を果たします。
子宮内から赤ちゃんが外界に出たときには
呼吸などを通じて独立した循環系を築く必要があります。
その際に身体の熱の調整や呼吸などに必要な
エネルギーを得る必要があります。
そのため、代謝レートを上げる必要があります(11)。
その代謝レートを上げるためには酸素が必要です。
また、酸素レベルが低い状態では
胎児の呼吸への移行が抑制されるとされています(1)。
低酸素状態では呼吸を司る
神経器官(三叉神経、感覚神経)への神経伝達が抑制される(12)ため
自立的な呼吸を行う事への障害が生じる可能性があります。
特に早産児においては
呼吸しない、呼吸が弱いということが
低酸素状態では起こりやすいとされています(13,14)。
呼吸循環動態の移行が順調に進行しない事例が
日本では10%と多くなっていますが、
その理由として早産児が増えている事と
もう一つは
酸素飽和度の生後の上昇スピードがあるかもしれません。
//臍帯遅延結紮の効果//--
109人の満期産児に対して臍帯の締め付けを1分以上
遅らせた時の酸素飽和度と心拍について評価されています(15)。
臍帯の締め付けをすぐしたグループとの比較。
(結果)
・分娩3分後の酸素飽和度は顕著に高い。
・分娩5-10分後の酸素飽和度はやや低い(90-95%中央値)。
・分娩2分後の心拍が顕著に低い(85 vs 160 bpm)。
・分娩2分以降は心拍の差は18bpm以下です。
・頻脈(>180bpm)の頻度は顕著に低い(2.6% vs 19.3%)。
・徐脈(<80bpm)の頻度はやや高い(6.5% vs 4.8%)。
また、臍帯の締め付けを遅延させたグループは
すぐにスキン-スキンケアと授乳を始めたため、
(速く胎外環境に適応できたため(?))
このような結果になったかもしれないとされています(15)。
//まとめ//--
臍帯遅延結紮(臍帯の締め付けを遅延)が
良いかどうかの十分信頼できるデータはまだなく
Inmaculada Lara-Cantón氏らは
無作為試験の実施が待たれると明言されています(1)。
しかし、現在までのエビデンスからは
臍帯遅延結紮によって胎児から新生児へ順調な移行が
進む可能性があり、
臨床試験を実施する価値があると考えられます。
(参考文献)
(1)
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(2014).
オミクロン株の感染力はデルタ株よりも強く
自然選択的に現在の世界の主要流行株になっています。
重症化のリスクは疫学的には低い
一方で、割合が低くても肺炎に罹る人もいます。
そのように中等症以上に状態が悪化する人は
・ワクチンを未接種
・リスク因子(高齢、基礎疾患など)
これらが挙げられます。
従って、基礎疾患などリスク因子のある人には
一定の条件のもと(発症から5日以内)
現在承認されている飲み薬である
モルヌピラビルが処方されています。
ー
Emi Takashita(敬称略)ら医療研究グループは
このモルヌピラビル(EID-1931)に対して
ワイルドタイプ、アルファ、ベータ、ガンマ
デルタ、オミクロン株
それぞれの薬剤感受性(IC50)を調べてられています(1)。
オミクロン株はモルヌピラビルが作用する
RNAポリメラーゼに変異が入っている(1)ので、
薬剤感受性が変化することが懸念されていますが、
他の株に対して、ほとんど変わらない
抗ウィルス効果となっています。
**:0.51±0.14
アルファ:0.95±0.17
ベータ:0.60±0.21
ガンマ:0.41±0.13
デルタ:0.83±0.41
オミクロン:0.43±0.08
値が低いほど効果が高い。
**:SARS-CoV-2/UT-NC002-1T/Human/2020/Tokyo (A)
このモルヌピラビルにおける
オミクロン株に対する抗ウィルス効果の感受性
(ワイルドタイプと変わらないか、高い)
これについては他の報告と同様です(2)。
従って、複数の報告で確認されています。
ー
一方、レムデシビルは
**:1.04±0.32
アルファ:0.83±0.19
ベータ:0.63±0.20
ガンマ:0.91±0.33
デルタ:1.12±0.20
オミクロン:1.28±0.42
従って、ワイルドタイプとほぼ同等の効果があります。
ー
同様にプロテアーゼ抑制剤であるPF-07304814
これについても
オミクロン株を含めて
変異株同士での顕著な差はありません。
(参考文献(1) Table.1)
ー
一方、モノクローナル抗体については
他の報告でも示されているように
オミクロン株では効果が著しく低下します。
10倍から1000倍以上
ワイルドタイプに対して中和能力が低下します。
(参考文献(1) Table.1)
ー
これは臨床の結果ではないので、
そのまま結果が反映されるかわかりません。
その点は注意が必要であるとされています(1)。
特にモルヌピラビルの処方は世界的に始まっているので
その疫学的報告が待たれます。
(参考文献)
(1)
Emi Takashita, Ph.D. Noriko Kinoshita, M.D. Seiya Yamayoshi, D.V.M., Ph.D. Yuko Sakai-Tagawa, Ph.D. Seiichiro Fujisaki, Ph.D. Mutsumi Ito, D.V.M. Kiyoko Iwatsuki-Horimoto, D.V.M., Ph.D. Shiho Chiba, Ph.D. Peter Halfmann, Ph.D. Hiroyuki Nagai, M.D. Makoto Saito, M.D., D.Phil. Eisuke Adachi, M.D., Ph.D. David Sullivan, M.D. Andrew Pekosz, Ph.D. Shinji Watanabe, D.V.M., Ph.D. Kenji Maeda, M.D., Ph.D. Masaki Imai, D.V.M., Ph.D. Hiroshi Yotsuyanagi, M.D., Ph.D Hiroaki Mitsuya, M.D., Ph.D. Norio Ohmagari, M.D., Ph.D. Makoto Takeda, M.D., Ph.D. Hideki Hasegawa, M.D., Ph.D. Yoshihiro Kawaoka, D.V.M., Ph.D.
Efficacy of Antibodies and Antiviral Drugs against Covid-19 Omicron Variant
The New England Journal of Medicine January 26, 2022
(2)
Pengfei Li, Yining Wang, Marla Lavrijsen, Mart M. Lamers, Annemarie C. de Vries, Robbert J. Rottier, Marco J. Bruno, Maikel P. Peppelenbosch, Bart L. Haagmans & Qiuwei Pan
SARS-CoV-2 Omicron variant is highly sensitive to molnupiravir, nirmatrelvir, and the combination
Cell Research (2022)
//背景//--
人の脳は他の類人猿と比べても大きく、
その発達はゆっくりであるとされています。
人の赤ちゃん、乳児が自立して生活できるようになるまで
他の動物と比べて顕著に長い時間がかかります。
それは一つとして脳の発達がゆっくりであるから
であると考えられます。
心臓、肺、骨、筋肉に比べると早いものの
大人の90%の容量に脳が達するまでは5年かかり、
最終的に20歳まで漸近する形で脳が発達していきます。
これは脳神経の学習による可塑性を除いた
組織としての発達を主に指します。
--
このように脳は大きく、複雑であり、
生まれてから時間に対してLog曲線で成長する事から
最初の1年、数年間の脳の発達幅は非常に大きくなります。
このように組織が不可逆に発達して
非常に短い期間で大きくなる時に
何らかの遺伝子変異が入ると
組織としての異常をきたしやすくなります。
--
脳は湾曲した外側(皮質)を持ち、その表面積は大きいです。
その皮質に形成異常が出ると、
様々な神経発達疾患を発症すると言われています。
難治性の子供の発作などの突然の脳症状の約40%は
成長時の皮質の形成異常であるとされています(3)。
--
そのうちの一つとして結節性硬化症があります。
結節性硬化症は,複数の臓器
・脳
・心臓
・眼
・腎臓
・肺
・皮膚
に腫瘍(通常は過誤腫)が発生する
TSC1 or TSC2遺伝子の優性遺伝性疾患です。
6000人に1人の小児で発生するといわれています。
中枢神経系の結節が神経回路を遮断し、以下の症状を引き起こします。
・発達遅滞
・点頭てんかん
・自閉症
・知的障害
結節(しこり)が悪化すると神経膠腫となることもあります(2,4)。
結節は多くは良性の腫瘍であるといわれています。
脳に結節ができる場合は
脳のしわ上に湾曲した外側の組織である皮質に
形成されることが多いとされています(5,6)。
--
この塊上の結節は細胞の塊ですが、
その細胞がどの脳の細胞から由来しているか?
この事については今までよくわかっていませんでした。
--
Oliver L. Eichmüller(敬称略)ら医療研究グループは
ヒト細胞由来の脳の人工組織と
胎児の脳のscRNAシーケンスを比較する事によって
結節の原因となる細胞の種類を明らかにされています(1)。
細胞が明らかになったので、
その細胞の発達を防ぐ機序が分かれば、
結節の形成を防ぐことが可能です。
それについても記述されています。
本日はこれら重要な2つの結果の要約と
上述したことも含め、自身の調査を加筆して
読者の方と情報共有したいと思います。
//結果//--
(発生の起源)
妊娠中期に大脳基底核原基の尾側に
結節の原因となる細胞種が現れたとされています(1)。
この尾側基底核原基(caudal ganglionic eminence)は
大脳皮質および扁桃体に移動する抑制性神経細胞を
産生することが知られている部位です。
--
(結節を形成する細胞種)
Caudal late interneuron progenitor(CLIP)細胞です。
TSC2遺伝子が正常でmTORが抑制されている状態では
上述した尾側基底核原基に領域間をつなぐ
神経細胞の前駆細胞として形成されます。
TSC2遺伝子の対立遺伝子の1つが異常になると
優性遺伝の様式で結節の原因となる細胞種が生じます。
TSC1の染色体遺伝子異常が1つであれば
良性の結節ができます。
それが2つ両方になると悪性腫瘍となります(1)。
--
(治療)
上皮成長因子受容体信号(EGPR)を抑制すると
TSC遺伝子の異常が正常に戻り、結節が退行します。
EGFR受容体チロシンキナーゼ抑制剤である
Afatinib, Everolimus,
これらを脳のオルガノイドに投与すると
共に腫瘍の大きさは小さくなり、
Everolimusの方がより顕著でした。
(参考文献(1) Fig.6B)
//考察//--
結節性硬化症は脳以外の場所にも結節を形成する
と言われています。
組織が大きくなる前のできるだけ早い段階で、
TSC遺伝子異常を正常に戻す遺伝子治療が
より好ましいと考えられます。
Pike-See Cheah, Shilpa Prabhakar(敬称略)ら
医療研究グループは
TSC2を200kDaから85kDaまで濃縮した遺伝子を
発現させるための相補物を
アデノウィルスによって輸送しました(7)。
それによって「脳」において結節の減少がみられ、
「マウスのケース」で延命を実現しています(7)。
--
現状では対症療法が主体です(8)。
つまりお薬をやめれば、また状態が悪化します。
完治を目指すためには
原因となる遺伝子(TSC1, TSC2)の改変と
それをどの細胞種に運ぶかを明らかにする必要があります。
今回の脳のように
どの細胞種に運ぶかが明らかになれば、
その細胞種特異的に発現される表面受容体を見つけ
その受容体に結合親和性の高い表面タンパク質を装飾した
ナノ粒子をPike-See Cheah氏らが提案しているような
遺伝子改変相補物を封入し、遺伝子改変させます。
そのような展望が考えられます。
(参考文献)
(1)
Oliver L. Eichmüller, Nina S. Corsini, Ábel Vértesy, Ilaria Morassut, Theresa Scholl,Victoria-Elisabeth Gruber, Angela M. Peer, Julia Chu, Maria Novatchkova, Johannes A. Hainfellner,Mercedes F. Paredes, Martha Feucht, Jürgen A. Knoblich
Amplification of human interneuron progenitors promotes brain tumors and neurological defects
Science 375 , 401 (2022)
(2)
Margaret C. McBride , MD
結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC)
MSDマニュアル
(3)
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(4)
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(5)
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sclerosis complex: A comparative tissue analysis of cortical
tubers and perituberal cortex. Epilepsia 55, 539 – 550 (2014).
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(6)
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tuberous sclerosis complex. Front. Neurosci. 14, 899 (2020).
doi: 10.3389/fnins.2020.00899; pmid: 32973442
(7)
Pike-See Cheah, Shilpa Prabhakar, David Yellen, Roberta L Beauchamp, Xuan Zhang, Shingo Kasamatsu, Roderick T Bronson , Elizabeth A Thiele, David J Kwiatkowski, Anat Stemmer-Rachamimov, Bence György, King-Hwa Ling, Masao Kaneki, Bakhos A Tannous, Vijaya Ramesh, Casey A Maguire, Xandra O Breakefield
Gene therapy for tuberous sclerosis complex type 2 in a mouse model by delivery of AAV9 encoding a condensed form of tuberin
Sci Adv. 2021 Jan 8;7(2):eabb1703.
(8)
結節性硬化症(指定難病158)
難病情報センター
//背景//--
日本では1989年から2018年にかけて
早産の比率は4.4%から5.6%に高まっています。
従って、早産児のリスクを正しく分析して、
健康な予後を保障するための研究は
基礎から臨床研究にかけて非常に重要性が高まっています。
-
早産児(特に在胎期間が30週以下と短い場合)は
脳の発達に遅れが生じて
その結果、認知機能の低下を招くリスクが
高いかもしれないことが非常に重要な問題です(2-4)。
-
早産児と満期産児の違いは
当たり前ですが母親の子宮内の在胎期間の違いです。
脳の発達に焦点を当てれば、
在胎後期においる子宮環境内での脳の発達と
体外での脳の発達との違いが現れるということです。
例えば、在胎30週より前に子宮環境から離れると
・ミエリン鞘
・細動脈
・毛細血管
これらの形成不全が生じるとされています(5-11)。
従って、
脳の発達を決める基礎的な構成器官が未熟のまま、
体外に出てしまう事になります。
このような組織の発達が補完的に胎外でも可能かどうか?
このような議論が重要になってきます。
-
Takeshi Arimitsu, Naomi Shinohara
(敬称略)ら医療研究グループは
近赤外線を使って脳の休止モードの神経連携を分析することで
早産児(2グループ)と満期産児における
神経連携の縦断分析をされています(1)。
特に連合野間、左脳と右脳の連携(Inter-region)は
脳の認知などの高次機能と関わりがあるため、
脳の発達を分析するのに適しているとされています。
また特定のタスクに限定した
脳の活性を新生児で調べる事は難しいため、
休止状態(睡眠時?)での
脳の神経連携の状態を赤外線で調べられています。
休止状態は注意力などを測るための
バイオマーカーとして適していると言われています(12,13)。
本日はその結果の一部を引用させていただき、
自身の調査、考察を追記して、
読者の方と情報共有したいと思います。
//条件//--
満期産児に対して早産児を2つのグループに分けて
脳神経の状態、その発達について分析されています(1)。
早産児のうち在胎期間が短いグループ(low-GA)は
在胎30週以下の子供、
長いグループはそれ以上(High-GA)としています。
従って、在胎30週を境界条件としてグループ分けしています。
Low-GA:27人
High-GA:44人
Term-birth:32人
これらとなっています。
従って、実際の人の赤ちゃんの脳を分析しています。
日本では、早産児のうち
在胎30週以下で生まれる子供はおおよそ15%程度です。
従って、Low-GAにあたる早産児は約0.8%程度です。
このように見積もると決して低い数字ではありません。
//結果//--
①出生時の神経連携性は
野(領域)内(within)、領域間(inter)ともに
High-GAグループが高く
Term-birth、Low-Gaが低い
(参考文献(1) Fig.2)
-
②出生後の神経連携性の変化は
High-GAグループが変化が大きく向上
Low-Gaグループは緩やかに向上
(参考文献(1) Fig.3)
//考察//--
胎児、新生児、乳児期の脳の発達において
出生時の神経連結性はそれほど重要ではないかもしれません。
実際に満期産児の出生時の神経連結性の偏差、個人差は
非常に大きくなっています。
中には早産児よりも顕著に低い人もいます。
(参考文献(1) Fig.2)
脳神経の連結性は大人になっても発達する部分です。
言い換えれば、その後の環境次第で
仮に出生時で連結性が疎であっても
後で、その差を埋める事はできるということです。
--
そのような想定の中で重要になってくるのが
「子宮の中でしか」発達できない
あるいはその中で発達しやすい
基本的な脳の構成要素の違いということになってきます。
例えば、
上述したように
ミエリン鞘、毛細血管などの脳血管の
子宮内での発達が特に成長初期で重要であるかどうか?
ということです。
ただ、脳は血液の供給が他の臓器に比べて
非常に重要な組織なので、
初期の血管の発達の状態は非常に重要な要因である
可能性があります。
--
もう一つ重要な観点は
在胎期間30週以下で生まれた子供の
出生後の神経発達がやや鈍いかもしれないということです。
従って、妊娠後期で生後に神経を発達させるための
重要な要素が形成されると考える事も出来ます。
それが、神経伝達性を決めるミエリンや
脳血管である可能性があります。
--
逆にいうとその「不足要因」がわかっていれば、
生後にそれを認知トレーニングなども含めた
医療介入で補うことができるか?
という観点が生まれてきます。
例えば、早産児では
MRI画像によって血管の径はかわらないけど
「ねじれ」が少なかったという報告もあります(14)。
また、ミエリンが子宮内の発達要素で重要という事であれば、
ミエリンの状態を直接的に調べる事も必要です(15)。
//まとめ//--
人の子供の成長は非常に長い期間をかけて行われます。
従って、初期の状態での欠陥を
その後の継続的な介入で少なくとも部分的には
補うことができる可能性があります。
特に脳は可塑性の高い器官なので、
そのような継続的な介入が大切になります。
早産をどのように防ぐか?
この事は一つの骨子ですが、
早産であったとしても、その後の健全な成長を
保障するための必要条件は何か?
これについての研究の重要性は高いと考えられます。
(参考文献)
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Neuroimage. 2006 Sep;32(3):1050-9.
(15)
Matteo Mancini Is a corresponding author, Agah Karakuzu, Julien Cohen-Adad, Mara Cercignani, Thomas E Nichols, Nikola Stikov
An interactive meta-analysis of MRI biomarkers of myelin
eLife 2020;9:e61523
新型コロナウィルスに対するリスク因子において
顕著に高い疾患がある方がいます。
一般的には腎臓に疾患があり透析をしている人は
新型コロナウィルス感染症のリスクが高いとされています。
ただ、腎臓に疾患のある人はワクチンの接種対象となっています。
腎臓移植を受けた人の抗体陽転は低い値になっていますが、
透析を受けている患者さんの抗体陽転は7割以上となっています。
(参考文献(2) Table.1)
しかしながら、
ワクチンの評価から除外された難病を持つ患者さんがいます。
α1-アンチトリプシン欠乏症
(α1-antitrypsin deficiency:AATD)
この指定難病がそうです。
α1-アンチトリプシンは肺を始め、臓器を保護する役割を持つ
タンパク質であり、それが欠乏する事に寄って
例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を発症すると言われています。
日本では、1000人未満の患者さんがいるとされています。
全世界では340万人の方が重いAATD(homozygous AATD)を
発症しているとされています(3)。
-
上述したようには慢性閉塞性肺疾患を併存するほかに
免疫系の異常があるケースも多く、
ワクチン接種をしても抗体陽転するかどうか?
それについては定かではありません。
-
Alpha-1 Foundationの評価では
α1-アンチトリプシン欠乏症のおおよそ32%が
中等症以上で入院するといわれています(1)。
これは、通常の2倍の高さです。
さらに
新型コロナウィルスの後遺症と症状が重なる事から
感染症にかかった後、症状がより長く続く可能性も
示唆されています(1)。
ただ、それについては疫学データはなく
今後、追跡評価が必要であるとされています。
-
Chengliang Yang, Hedi Zhao & Scott J. Tebbutt
(敬称略)からなる医療研究グループは
①α1-アンチトリプシン欠乏症の人に対する
ワクチンプログラムの設定、実施。
②α1-アンチトリプシン投与よる治療。
③周りの方のワクチン接種
これらの必要性を訴えられています。
例えば、ワクチン接種において
2回目で十分な抗体量が得られなくても
3回目ブースター接種で
十分な血清陽転が実現するかもしれません。
また通常の方と副反応などの安全性が異なる可能性があります。
その様な事を確かめる必要があります。
-
α1-アンチトリプシン欠乏症
日本では10万人に1人以下
世界でも1万人に4人程度の非常に稀な疾患です。
しかし、
Chengliang Yang氏, Hedi Zhao氏、Scott J. Tebbutt氏は
持続可能な開発目標の標語としてある
"Leave no one behind"と表題を付けています(1)。
誰一人取り残さない包摂的な
新型コロナウィルス感染症対策の重要性が謳われています。
(参考文献)
(1)
Chengliang Yang, Hedi Zhao & Scott J. Tebbutt
Leave no one behind: inclusion of alpha-1 antitrypsin deficiency patients in COVID-19 vaccine trials
European Journal of Human Genetics (2022)
(2)
Merve AKYOL et al
Immunogenicity of SARS-CoV-2 mRNA vaccine in dialysis and kidney transplant patients: A systematic review
Tuberk Toraks 2021;69(4):547-560
(3)
Greene CM, Marciniak SJ, Teckman J, Ferrarotti I, Brantly ML, Lomas DA, et al.
α 1-Antitrypsin deficiency.
Nat Rev Dis Prim. 2016;2:16051.
//背景//
新型コロナウィルスの世界的流行から2年以上経ちます。
主に流行した系統、株は
アルファー株、デルタ株、(現在の)オミクロン株です。
一方、2021年1月ごろから
新型コロナウィルスのワクチン接種が始まりました。
そこから数か月後、
早い国ではワクチン接種が50%を超える国がある中で、
より感染力が強く、重症化リスクの高いデルタ株が流行し始めています。
そうした中で、流行株とワクチン接種率の変化によって
重症化リスクが変わるため、
一義的に重症化リスクを求める事は難しいです。
しかしながら、一般的には
基礎疾患がある事、高齢である事、男性であることは
重症化リスクが高いとされています。
高齢になると基礎疾患がどこかにあるケースが多いので
複合的な要因でより重症化リスクがより高くなります。
80歳以上で重症化して亡くなられる方の割合は
おおよそ8%程度であるという試算もあります(2-5)。
-
一方、若い人の中にも重症化する人はいます。
新型コロナウィルスは呼吸器系の感染症なので
重症化する場合には肺炎が診られます。
その肺炎に対する遺伝子的、免疫的なリスク何か?
Qian Zhang氏らは、この2年間で蓄積されたデータを集めて
肺炎に対する遺伝子的、免疫的なリスクを総括されています(1)。
本日はその内容の一部(Table 1を中心)を
自身の調査を加えながら
読者の方と情報共有したいと思います。
//遺伝子的なリスク//
-
①rs73064425/rs10490770 (3p21,intronic LZTFL1)
リスク 1.84-2.14倍
頻度 8% (全人口の)
全重症者の15%
遺伝的なリスクの中で一番普遍的なリスクとなっています。
この遺伝子異常はバルデー・ビードル症候群に関連します。
肥満、知能障害、網膜色素変性症、慢性腎障害、
性腺機能低下症、多指症・合指症を特徴とする
常染色体劣性疾患である疾患です。
また癌における上皮間葉転換にも関わります(6)。
上述したように新型コロナウィルスの
遺伝的なリスク因子として知られています(7,8)。
肺の組織が上皮間葉転換する事によって
組織が破壊されることが示唆されています(7)。
-
②染色体優性の欠損
TLR3, TRIF, TBK1, IRF3
リスク 20倍以上
頻度 0.1%以下 (全人口の)
全重症者の1.7%
この遺伝子異常があるとリスクは非常に高まりますが、
頻度が少ないため、重症者の1.7%程度となっています。
TLR3は樹状細胞などにある抗原認識受容体で
抗ウィルス性を示すⅠ型インターフェロン応答に関わります。
このインターフェロンは新型コロナウィルスの
重症化と関連があるとされています(9)。
TRIFはTLR3の信号伝達に関わる遺伝子です
TBK1, IRF3もⅠ型インターフェロン産生に関わります(1)。
ー
③常染色体優性の欠損
UNC93B1, IRF7, IFNAR1, IFNAR2
リスク 不明
頻度 0.2%以下 (全人口の)
全重症者の1.2%
IRF7はⅠ型インターフェロンの産生に関わる遺伝子です。
IFNAR1, IFNAR2はⅠ型インターフェロンが結合する受容体です。
UNC93B1はTLR7とTLR9のバランスを保ち
自然炎症から生体から守る働きがあります(10)。
-
④常染色体劣性の欠損
TRF7, IFNAR1
リスク 20倍以上
頻度 0.1%以下 (全人口の)
全重症者の0.6%
-
⑤X染色体連鎖性の欠損
TRF7
リスク 34.4
頻度 0.065%以下 (全人口の)
全重症者の1.3%
(参考文献(1) Table 1)
//免疫学的なリスク//
自己抗体としての種類は
(Ⅰ型インターフェロンのサブタイプ:IFNω、IFNβ、IFNα2)
anti-IFNω, anti-IFNβ, anti-IFNα2
これらがあります。
これらはインターフェロンの中和抗体として働き
IFN受容体との結合親和性を下げ、
Ⅰ型インターフェロンの効果を弱める働きがあります。
(参考文献(1) Fig.1)
重症者の頻度としての最大は13.6%。
自己抗体を有している人は高齢者の20%という報告もあります(1)。
また重症化リスクは3倍から67.6倍となっています。
(参考文献(1) Table 1)
//まとめ、考察//
参考文献(2)Fig.2で示されたように
細胞内の遺伝子的な欠損によって
様々な経路でⅠ型インターフェロンの働きを抑制する
ことが指摘されています。
また自己抗体がインターフェロンの受容体と結合する事により
インターフェロン信号の伝達を妨げます。
このⅠ型インターフェロンは
自然免疫系である樹状細胞によって産生されるため
新型コロナウィルス感染初期で抗ウィルス性を発揮する
主要な生理機序です。
このⅠ型インターフェロンの機能が先天的、
あるいは後天的に弱い状態にある人は、
初期でウィルスを減らす能力が低く、
感染後、ウィルス数が体内で増えやすい状態になります。
それにより気管や肺の炎症に繋がると考えられます。
その時に肺の組織がよりはがれやすいような
遺伝子的な特徴があるとより肺炎を起こしやすくなります。
一方で、
重症化する人の遺伝的、免疫的な特徴の80%くらいは
リスク因子が不明とされています(1)。
上述したようにウィルス株によっても変わると考えられます。
例えば、アルファ株、デルタ株、オミクロン株で
重症化する割合やリスクは変わります。
オミクロン株は肺に到達しにくいとも言われます。
また、初めのウィルス暴露量がどれくらいだったのか?
それによっても変わる可能性があります。
単位時間あたり多くのウィルス量を吸い込めば、
迅速な抗ウィルス性を引き出す必要性があるからです。
加えて、
身体の水分量や季節によっても変わるかもしれません。
例えば、夏と冬に感染した場合で
重症化リスクが変わる可能性も考えられます。
(参考文献)
(1)
Qian Zhang, Paul Bastard, Adem Karbuz, Adrian Gervais, Ahmad Abou Tayoun, Alessandro Aiuti, Alexandre Belot, Alexandre Bolze, Alexandre Gaudet, Anastasiia Bondarenko, András N. Spaan, Andrea Guennoun, Andres Augusto Arias, Anna M. Planas, Anna Sediva, Anna Shcherbina, Anna-Lena Neehus, Anne Puel, Antoine Froidure, Antonio Novelli, Aslınur Özkaya Parlakay, Aurora Pujol, Aysun Yahşi, Belgin Gülhan, Benedetta Bigio, Bertrand Boisson, Beth A. Drolet, Carlos Andres Arango Franco, Carlos Flores, Carlos Rodríguez-Gallego, Carolina Prando, Catherine M. Biggs, Charles-Edouard Luyt, Clifton L. Dalgard, Cliona O’Farrelly, Daniela Matuozzo, David Dalmau, David S. Perlin, Davood Mansouri, Diederik van de Beek, Donald C. Vinh, Elena Dominguez-Garrido, Elena W. Y. Hsieh, Emine Hafize Erdeniz, Emmanuelle Jouanguy, Esra Şevketoglu, Estelle Talouarn, Eugenia Quiros-Roldan, Evangelos Andreakos, Eystein Husebye, Fahad Alsohime, Filomeen Haerynck, Giorgio Casari, Giuseppe Novelli, Gökhan Aytekin, Guillaume Morelle, Gulsum Alkan, Gulsum Iclal Bayhan, Hagit Baris Feldman, Helen C. Su, Horst von Bernuth, Igor Resnick, Ingrid Bustos, Isabelle Meyts, Isabelle Migeotte, Ivan Tancevski, Jacinta Bustamantem, Jacques Fellay, Jamila El Baghdadi, Javier Martinez-Picado, Jean-Laurent Casanova, Jeremie Rosain, Jeremy Manry, Jie Chen, John Christodoulou, Jonathan Bohlen, José Luis Franco, Juan Li, Juan Manuel Anaya, Julian Rojas, Junqiang Ye, K. M. Furkan Uddin, Kadriye Kart Yasar, Kai Kisand, Keisuke Okamoto, Khalil Chaïbi, Kristina Mironska, László Maródi, Laurent Abel, Laurent Renia, Lazaro Lorenzo, Lennart Hammarström, Lisa F. P. Ng, Lluis Quintana-Murci, Lucia Victoria Erazo, Luigi D. Notarangelo, Luis Felipe Reyes, Luis M. Allende, Luisa Imberti, Majistor Raj Luxman Maglorius Renkilaraj, Marcela Moncada-Velez, Marie Materna, Mark S. Anderson, Marta Gut, Marwa Chbihi, Masato Ogishi, Melike Emiroglu, Mikko R. J. Seppänen, Mohammed J. Uddin, Mohammed Shahrooei, Natalie Alexander, Nevin Hatipoglu, Nico Marr, Nihal Akçay, Oksana Boyarchuk, Ondrej Slaby, Ozge Metin Akcan, Peng Zhang, Pere Soler-Palacín, Peter K. Gregersen, Petter Brodin, Pierre Garçon, Pierre-Emmanuel Morange, Qiang Pan-Hammarström, Qinhua Zhou, Quentin Philippot, Rabih Halwani, Rebeca Perez de Diego, Romain Levy, Rui Yang, Şadiye Kübra Tüter Öz, Saleh Al Muhsen, Saliha Kanık-Yüksek, Sara Espinosa-Padilla, Sathishkumar Ramaswamy, Satoshi Okada, Sefika Elmas Bozdemir, Selma Erol Aytekin, Şemsi Nur Karabela, Sevgi Keles, Sevtap Senoglu, Shen-Ying Zhang, Sotirija Duvlis, Stefan N. Constantinescu, Stephanie Boisson-Dupuis, Stuart E. Turvey, Stuart G. Tangye, Takaki Asano, Tayfun Ozcelik, Tom Le Voyer, Tom Maniatis, Tomohiro Morio, Trine H. Mogensen, Vanessa Sancho-Shimizu, Vivien Beziat, Xavier Solanich, Yenan Bryceson, Yu-Lung Lau, Yuval Itan, Aurélie Cobat & Jean-Laurent Casanova
Human genetic and immunological determinants of critical COVID-19 pneumonia
Nature (2022)
(2)
Navaratnam, A. V., Gray, W. K., Day, J., Wendon, J. & Briggs, T. W. R.
Patient factors and temporal trends associated with COVID-19 in-hospital mortality in England: an observational study using administrative data.
Lancet Respiratory Medicine 9, 397–406 (2021).
(3)
Bennett, T. D. et al.
Clinical Characterization and Prediction of Clinical Severity of SARS-CoV-2 Infection Among US Adults Using Data From the US National COVID Cohort Collaborative.
JAMA Netw Open 4, e2116901 (2021).
(4)
Ricoca Peixoto V., et al.
Determinants for hospitalisations, intensive care unit admission
and death among 20,293 reported COVID-19 cases in Portugal, March to April 2020.
Euro surveillance : bulletin Europeen sur les maladies transmissibles = European
communicable disease bulletin 26 (2021).
(5)
Brodin, P.
Immune determinants of COVID-19 disease presentation and severity.
Nat Med 27, 28–33 (2021).
(6)
Seo S, Zhang Q, Bugge K, Breslow DK, Searby CC, Nachury MV, Sheffield VC (November 2011).
"A novel protein LZTFL1 regulates ciliary trafficking of the BBSome and Smoothened".
PLoS Genetics.
(7)
Damien J. Downes, Amy R. Cross, Peng Hua, Nigel Roberts, Ron Schwessinger, Antony J. Cutler, Altar M. Munis, Jill Brown, Olga Mielczarek, Carlos E. de Andrea, Ignacio Melero, COvid-19 Multi-omics Blood ATlas (COMBAT) Consortium, Deborah R. Gill, Stephen C. Hyde, Julian C. Knight, John A. Todd, Stephen N. Sansom, Fadi Issa, James O. J. Davies & Jim R. Hughes
Identification of LZTFL1 as a candidate effector gene at a COVID-19 risk locus
Nature Genetics volume 53, pages1606–1615 (2021)
(8)
COVID-19 Host Genetics Initiative
Mapping the human genetic architecture of COVID-19
Nature volume 600, pages472–477 (2021)
(9)
You-Me Kim & Eui-Cheol Shin
Type I and III interferon responses in SARS-CoV-2 infection
Experimental & Molecular Medicine volume 53, pages750–760 (2021)
(10)
Ryutaro Fukui, Shin-Ichiroh Saitoh, Atsuo Kanno, Masahiro Onji, Takuma Shibata, Akihiko Ito, Morikazu Onji, Mitsuru Matsumoto, Shizuo Akira, Nobuaki Yoshida, Kensuke Miyake
Unc93B1 restricts systemic lethal inflammation by orchestrating Toll-like receptor 7 and 9 trafficking.
Immunity, 35, 69-81 (2011)
細胞種特異的輸送系統を含むプロテオフォームの可能性と付加的考察
//Cell-type-specific delivery system//---
細胞種特異的輸送系統のコンセプトは
標的とする細胞種を明らかにして、
その細胞種(Cell-type)が特異的に(Specific)発現する
細胞表面に突出しているタンパク質に対して
高い親和性を持つたんぱく質を輸送媒体に装飾することで
標的とする細胞種まで輸送するというものです。
表面タンパク質をアンカーとして使用して
ナノ粒子などに封入した、
あるいは表面に複合体として装飾した薬剤を作用させます。
ナノ粒子薬剤の基本的なコンセプトである
エンドサイトーシスも想定します。
つまり細胞内に取り込ませて細胞質、細胞核で
狙いの薬理を発揮させます。
--
"Cell-type-specific delivery sysytem"
これを実現するにはいくつか重要な事があります。
①肝臓や腎臓などで代謝されないようにする(灌流など)。
②標的細胞種だけが発現しているタンパク質を見つける。
③輸送媒体を分解、劣化させない。
④薬剤を標的付近で放出させる必要がある。
⑤免疫惹起(拒絶反応)を抑える必要がある。
⑥薬剤が本当に届いているか確認する必要がある。
⑦細胞輸送媒体では細胞内封入における
細胞質内での薬剤の分解を防ぐ必要がある。
⑧複合体として薬剤を表面に結合させる場合には
薬剤をナノ粒子に対して標的付近まで固定する必要がある。
⑨薬剤の循環を考慮して注入ルートを考える必要がある。
⑩最適な結合部位を見つける必要がある。
⑪結合部位に結合するタンパク質を正確に作製する必要がある。
⑫結合させるタンパク質をナノ粒子の表面に作製する必要がある。
⑬細胞輸送媒体では遺伝子と表面タンパク質の関係を知る必要がある。
⑭タンパク質のアイソフォーム、変形について考慮する必要がある。
、、、
いろんな項目があります。
--
Zhongyi Hu, Jiao Yuan(敬称略)ら
医療研究グループは、
Surfaceome、表面タンパク質
この数千種類のデータベースの中から
癌細胞に特異的なたんぱく質を409種類見つけています。
例えば、CDH1, CDH3などは数種類の癌で
特異的な表面タンパク質として検出されています(2)。
これが上述する②にあたります。
癌細胞種だけが発現しているタンパク質を見つける
という事です。
これは細胞種特異的輸送系統の一つの根幹です。
仮に、癌以外のいくつかの組織で同じ表面タンパク質があれば、
それに特異的に結合するナノ粒子を輸送する際に
その組織にオフターゲットしてしまう可能性があります。
従って、「ただ一つだけの細胞種で発現」
このことが非常に大切です。
しかし、そのようなたんぱく質を見つける事は容易ではありません。
--
Rafael D. Melani, Vincent R. Gerbasi, Lissa C. Anderson
(敬称略)ら医療研究グループは
Cell-specific-delivery systemの実現性を高めてくれる
可能性がある報告を上梓されています(1)。
タンパク質にはアイソフォームや構造的な変形などがあり
類似するタンパク質がそれぞれのタンパク質に存在します。
通常はこれらも含めて1種類とされますし、
同じ遺伝情報から転写、翻訳されるたんぱく質は1種類とされます。
しかしながら、それぞれ亜型が存在して、
いくつかの類似形のタンパク質があります。
これを含めた総体をProteoformと呼びます。
このプロテオフォームは造血系の細胞の場合には
おおよそプロテイン(タンパク質)の3倍から10倍多く存在します。
(参考文献(1) Fig.1Bより)
また、通常のタンパク質では
造血系の細胞の場合には約81%のタンパク質は
複数の細胞で発現されていました。
一方、プロテオフォームの場合は
約58%が単一の細胞特異的に発現されていました(1)。
--
このことは、アイソフォーム、装飾、切断などを考慮した
プロテオフォームに基づいた情報では
より多くの細胞種特異的な標的を
見つけることができる事を示しています。
この場合、構造の類似性があるので、
構造上、異なる部分。
例えば、装飾、切断されている局所などを
エピトープ(結合部位)とする必要があるかもしれないですが、
より細かな標的の評価、選別につながります。
細胞種特異的な標的の選択性が向上します。
//プロテオフォームの可能性//---
(バイオマーカー)
血液、唾液、尿、便、汗、脳脊髄液など
体外で分析しやすい検体によって
身体の中の状態を調べる場合、
疾患の痕跡となるバイオマーカーを特定、検出する必要があります。
プロテオフォームではタンパク質に対して
より細かな分類となっており、細胞種特異性が高いため、
体内の状態をより細かく把握できる可能性があります。
---
(タンパク質標的薬剤)
PROTACはリンカーによってヘテロ接合させた
複数の機能を持つ(Bifunctional)薬剤です。
1つのリガンドはタンパク質に接合させて、
もう一つのリガンドは分解酵素を引き付けます(3)。
この時、タンパク質に接合する側は
特に生理機能を持たせる必要はなく、
少なくとも強く接合できればいいという任意性があります(3)。
このPROTACのタンパク質側の結合部位を考えるときに
より正確で、特異性のある構造がわかれば、
薬剤をより有効に働かせることができる可能性があります。
またこの薬剤の適応性、選択性も高まる事も考えられます。
---
(患者さん毎の詳しい体質を知る)
Rafael D. Melani氏らは造血系の免疫細胞を含む細胞についての
プロテオフォームについて報告されています(1)。
それぞれの免疫細胞に対する
プロテオフォームの情報量は
タンパク質に比べて3倍から10倍になっています。
このプロテオフォームを血液から詳しく分析して
患者さんの体質を詳しく知ることで
血液系の疾患や薬剤を輸送するときの
拒絶反応などのリスクを下げる事ができるかもしれません(1)。
また、肝臓などの移植などの際にも同様です。
(参考文献(1) Fig.4)
//付加的考察//---
タンパク質は糖などと複合体化していることがあります。
プロテオフォームでは
より細かい分類でタンパク質をデータベース化することですが、
糖たんぱく質データベース(Glycoproteome)も重要になります(4,5)。
Cell-type-specific delivery sysytemで重要になる
表面のタンパク質の場合はACE2受容体のように
結合特異性を持たせるために糖で部分的に保護されている
ケースもあると考えられます。
その時にプロテオソームのように
糖たんぱく質においても複合体としてのアイソフォーム
装飾、切断などを考慮したデータベース化も考えられます。
--
このような様々な軸でのデータベース化は
人工知能、機械学習とも適合性があると考えられるので
共通の雛形、方式の元、世界で共有されれば、
様々な医療分野で大きな価値になる可能性があります。
(参考文献)
(1)
Rafael D. Melani, Vincent R. Gerbasi, Lissa C. Anderson, Jacek W. Sikora, Timothy K. Toby,Josiah E. Hutton, David S. Butcher, Fernanda Negrão, Henrique S. Seckler, Kristina Srzentic´,Luca Fornelli, Jeannie M. Camarillo, Richard D. LeDuc, Anthony J. Cesnik, Emma Lundberg,Joseph B. Greer, Ryan T. Fellers, Matthew T. Robey, Caroline J. DeHart, Eleonora Forte,Christopher L. Hendrickson, Susan E. Abbatiello, Paul M. Thomas, Andy I. Kokaji,Josh Levitsky, Neil L. Kelleher
The Blood Proteoform Atlas: A reference map of proteoforms in human hematopoietic cells
Science 375 , 411 – 418 (2022)
(2)
Zhongyi Hu, Jiao Yuan, Meixiao Long, Junjie Jiang, Youyou Zhang, Tianli Zhang, Mu Xu, Yi Fan, Janos L. Tanyi, Kathleen T. Montone, Omid Tavana, Ho Man Chan, Xiaowen Hu, Robert H. Vonderheide & Lin Zhang
The Cancer Surfaceome Atlas integrates genomic, functional and drug response data to identify actionable targets
Nature Cancer volume 2, pages1406–1422 (2021)
(3)
Miklós Békés, David R. Langley & Craig M. Crews
PROTAC targeted protein degraders: the past is prologue
Nature Reviews Drug Discovery (2022)
(4)
Nicholas M. Riley, Alexander S. Hebert, Michael S. Westphall & Joshua J. Coon
Capturing site-specific heterogeneity with large-scale N-glycoproteome analysis
(5)
Hiroyuki Kaji
Development and Applications of Glycoproteome Analysis Technology
Proteome Letter volume 4 (2019) issue 2 pages 71-81
//背景//--
多発性硬化症は、神経細胞間の信号伝達の速度を決める
ミエリン鞘が脱離する疾患(中枢性脱髄疾患)で
脳、脊髄、視神経などに病変が起こり、
多様な神経症状が間欠的に生じるとされています。
日本においては指定難病とされています。
しかし、その疾患がどのような機序、原因で生じるのか?
これについてはまだはっきりとはわかっていないのが現状です。
//神経症状//--
・レルミット徴候
・視神経炎
・複視
・ウートフ徴候
・急性脊髄炎(横断性脊髄炎)
・四肢の筋力低下
・痙縮
・小脳失調症
・膀胱直腸障害
・認知機能障害
・疲労
神経症状としてはこれらが挙げられています。
//疫学//--
北米、北欧、オーストラリア:30~80人/10万人
アジア、アフリカ:4人/10万人
日本では有病率が増加してきています。
10万人あたり8~9人程度。
発症年齢はピークが30歳ごろであり、
約80%が50歳までに発症します。
//原因-遺伝//--
多発性硬化症は遺伝性の疾患であるとは考えられていません。
また、多発性硬化症に関わる特異的な遺伝子は
HLAタイプによって異なるとされています(3)。
これは染色体6の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に関わる部分の
遺伝子変異であり、免疫反応に関わります。
そのうちHLA-DR15,HLA-DQ6が関わるとされています(4)。
//原因-ウィルス感染//--
以前から、エプスタインバールウィルス(EBウィルス)
との関連が指摘されています(5)。
Kjetil Bjornevik, Marianna Cortese(敬称略)らは
1993年から2013年の20年間にわたって
約1000万人以上の若い人に対して縦断調査を
アメリカにおいて行われています(2)。
その結果、955人の人が多発性硬化症に罹りましたが、
発症したなかった人とのウィルス感染の状況を比較すると
上述したEBウィルスに感染している場合は
そうでない場合に比べて32倍高いことが示されました。
今回、10万人あたり9.55人以下の罹患率なので
やや疫学データに比べて低い値となっています。
発症から1年前の時点の血液検査で陰性で
その後感染した人は1人しかいなかったとされています(2)。
このEBウィルスは大人の95%が感染しているので
発症する人は疫学で示されたレベル程度のごく一部です。
しかし、発症した人の原因として
EBウィルスが関わっている可能性が考えられます。
//機序//--
上述したようにEBウィルスとの関連が示唆されています。
しかしながら、多発性硬化症の患者さんの脳、脳脊髄液
といった中枢神経系における直接のEBウイルスの感染は
稀であるという報告もあります(6-8)。
Tobias V. Lanz(敬称略)らは
EBウィルスがB細胞に感染したことによって生じた
抗体のFabドメイン MS39p2w174の体細胞超変異によって
中枢神経系に結合する分子 GlialCAと構造的に類似する事が
発症と関係している事を示唆されています(1)。
このGlialCAはアストロサイトや乏突起膠細胞などの
神経細胞間にあるグリア細胞に吸着、結合します(9-12)。
従って、この構造と類似性を持つ
EBウィルス由来の抗体(Fab:MS39p2w174)が
中枢神経系内に引き付けられる可能性が考えられます。
この観点で考えると
EBウィルス感染のB細胞は中枢神経系内への侵入しなくても
そこから産生された抗体は入ることができる。
このように考える事ができます。
そうすると上述した参考文献(6)-(8)の結果とは
矛盾しない形となります。
この抗体の転写因子のEBNA1は自己免疫性の
ミエリン鞘脱離に関わるという結果も得られています(1)。
-
一方、Takeharu Minamitani(敬称略)らは
通常、排除する抗原に合わない、自己抗原に反応する
異常なB細胞はアポトーシスによって排除されますが、
EBウィルスに感染するとこの細胞死プログラムが異常を起こし
ウィルスなど排除すべき抗原に反応しない
かつ/あるいは
自己抗原に反応する
免疫的に毒性のあるB細胞が
生き残ってしまうことを示しています(13)。
上述した抗体の模倣と合わせて、
自己免疫疾患性を示すB細胞の生存も
関係している可能性があります。
//疑問//--
EBウィルスは95%の人が感染していると言われています。
発症する人はごく一部ですが、
EBウィルス感染している状態で発症の有無を決める要因は何か?
それを明らかにすることは
人の体内に普遍的に存在するウィルスであるため
非常に重要であると考えられます。
インフルエンザや新型コロナウィルスなどの
感染症によって引き金となることがあるのか?
あるいは、
最近日本で増えている理由として食生活、衛生面などの
生活環境が考えられるのか?
それらが疑問として残ります。
(参考文献)
(1)
Tobias V. Lanz, R. Camille Brewer, Peggy P. Ho, Jae-Seung Moon, Kevin M. Jude, Daniel Fernandez, Ricardo A. Fernandes, Alejandro M. Gomez, Gabriel-Stefan Nadj, Christopher M. Bartley, Ryan D. Schubert, Isobel A. Hawes, Sara E. Vazquez, Manasi Iyer, J. Bradley Zuchero, Bianca Teegen, Jeffrey E. Dunn, Christopher B. Lock, Lucas B. Kipp, Victoria C. Cotham, Beatrix M. Ueberheide, Blake T. Aftab, Mark S. Anderson, Joseph L. DeRisi, Michael R. Wilson, Rachael J. M. Bashford-Rogers, Michael Platten, K. Christopher Garcia, Lawrence Steinman & William H. Robinson
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世界の疫学から見ると、必ずしも飽食環境にあることが
肥満率と正の相関があるとは限りません。
適性な価格で日常生活における飲食物を選択できるからこそ
よりバランスの取れた栄養状態を維持する事ができる。
このように考える事も出来ます。
--
持続可能な開発目標の2は
「飢餓をゼロ」となっています。
実際に食べ物が十分に行きわたらない低所得の国の
一部の人々は必ずしも低体重の状態にあるかわかりません。
むしろ、この記事で主に取り上げる
「砂糖入りの飲み物」などの多飲によって
肥満率が向上している可能性も考えられます。
実際に低中所得国の砂糖入り飲料の1日当たりの消費量は
1990年から2015年まで右肩上がりに増えています。
(参考文献(1) Fig.1)
また、これは世界全体ですが、
子供の肥満率は1975年では1%未満でしたが
2016年には6-8%となっています。
同時期における
一般男性は3%⇒11%, 女性は6%⇒15%です(7)。
--
この肥満はWHOの定義でいうと
BMIが30以上にあたる人です。
この数字は170cmの身長に対して約87kg以上です。
BMIが25以上は「Overweight」という定義になっています。
BMIが25以上になると170cmで73kg以上なので
おおよそ14kgの差があるので、
医学的に肥満の議論をするときには
その定義がどうなのか?というのは重要です。
--
肥満状態なると
〇Ⅱ型糖尿病
〇冠動脈心疾患
〇脳卒中
〇癌
これらのリスクが高まります(1)。
主に循環器系の機能が低下する可能性が高いので
体内の老化にも関係する可能性があります(2)。
これらのリスクについて、
下述する砂糖入り飲料との関連について
参考文献(1)で総括されています(1)。
--
Vasanti S. Malik & Frank B. Hu(敬称略)からなる
医療研究グループは
上述した砂糖入り飲料の日常的な消費量が
肥満や上述した慢性疾患と強い関わりがあるという事に
着目されています(1)。
--
この砂糖入り飲料の消費量は参考文献(1)Fig.2から
わかるように国、地域ごとに大きなsがあります。
特にアメリカ、中米、南米、アフリカ南部が多くなっています。
これは複数の因子が関係していると考えられます。
医学生理、環境、行動、社会、経済などの因子です。
例えば、
毎日通うスーパーマーケットに
多く、そして安く砂糖入りの飲料が陳列されていれば、
経済的に恵まれない人は、
このような砂糖入り飲料を常飲する可能性が高まります。
小さい頃からの習慣も関わると思います。
逆に、
砂糖入りではない飲料の選択肢が多ければ、
ゼロにはならなくても、1日の消費量は少なくなります。
実際にアジアでは1日の消費量が他の地域に比べて
顕著に少なくなっています。
おおよそ中米の消費量の1/7です。
1990-2015年の間でも消費量は増えていません。
例えば、ベトナム、インドの肥満率は1-2%程度です。
一方、インドネシア、日本は4-5%程度です。
世界の平均よりも顕著に少ない割合になっています。
これはVasanti S. Malik氏、 Frank B. Hu氏らが
指摘する砂糖入り飲料の消費量と関係している可能性があります。
-
砂糖入り飲料消費量とⅡ型糖尿病の関連では
ほとんどのコホートで
消費量が上がるとリスクが高まります。
体重の効果を補正してもリスクは上がります。
(参考文献1 Table.1)
--
また砂糖はドーパミン信号を通じた
依存的な作用もあります(3)。
従って、摂取量が多くなると
より多くの砂糖入りの飲料が欲しくなる傾向が
現れると考えられます。
これは動物による結果で
人においては必ずしも当てはまらないとされています(4)。
しかし、喫煙と同じように
依存的な症状というのは自覚できるので
1日に度々砂糖入りの飲料がほしくなる衝動が
現れている場合には注意が必要です。
--
代替として
フルーツジュースがありますが、
フルーツで糖をとる場合には
ジュースよりもそのまま果物として食べるほうが
吸収が少なくて済むといわれています(5,6)。
より好ましいのは
砂糖を含まない水、お茶、コーヒーなどです(1)。
コーヒーは砂糖の量を調整できるうえ、
砂糖以外のミルクなども選択することができます。
//まとめ//ーー
日常生活の中で糖の摂取が避けられないように
砂糖もありふれていて同様です。
但し、1日に食べられる飲食物の量というのは決まっています。
それが多くなると当然、肥満のリスクが高まります。
毎日、何を飲み、何を食べるか?
糖、タンパク質、脂質、ビタミン、食物繊維など
バランスを考える中で
砂糖の摂取量も決まってきます。
その中で如何に適正な水準にできるか?
この事が肥満のリスク低減と関わります。
特に中高年になると考える必要が出てくると思います。
また、
低中所得国の飲食料支援にあたる際には
穀物や砂糖入り飲料水だけではなく、
他の必要栄養素を含む飲食物を
バランスよく提供するという事は
1つの視点になると考えられます。
(参考文献)
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//背景//---
特定のタンパク質を標的として分解させる薬剤は
癌などの疾患を含め、1つの大きな治療戦略ですが、
従来の低分子量の薬剤では標的化して
設計することは困難でした。
その理由は以下です。
①活性部位が多様である事
②構造上のポケットが狭い、小さい事
③表面が平坦で結合しにくい事
これらが挙げられています(1)。
このような従来の薬剤ではアクセスできなかった
タンパク質に対して、分解できるような物質が開発されました。
その一つが本日紹介する
「Proteolysis-targeting chimera(以下PROTAC)」
これです。
2001年に初めてMETAP2と呼ばれる
標的タンパク質分解物質が開発されて以来、
20年間、開発が進められ、
現在ではいくつかの臨床試験が行われています。
このPROTACの幕開けについて
Miklós Békés, David R. Langley & Craig M. Crews
(敬称略)からなる医療研究グループが総括されています(1)。
自身の調査、考察を加筆の上
その内容の概要、一部について引用させていただき、
読者の方と情報共有したいと思います。
//薬剤PROTACの治験//---
PROTACは近年(2019年~)臨床応用が進んでいます。
例えば、性ホルモン受容体の癌標的として
臨床試験されています(1)。
現在、最も進んでいる治験がフェーズ2で
対象の疾患が性ホルモン受容体が標的となるので
前立腺癌、乳癌が主です。
その他、血液性の癌、自己免疫疾患などがあります。
(参考文献(1) Table 1参照)
//薬剤PROTACの薬理//---
このPROTACは二つのリガンドからなります。
それらがリンカーによって結合されています。
それぞれのリガンド役割は
①対象のタンパク質(POI)を引き寄せ、結合
②E3ユビキチン合成酵素を引き寄せ、結合
これらとなっています。
(参考文献(1).Fig.2a)
これにより対象タンパク質POIはユビキチン化され、
その後、分解されます。
(Ubiquitin-proteasome system(UPS))
参考文献(1)Fig.1に示しているように
PROTACはユビキチン分解酵素とタンパク質を
引き寄せて、酵素による分解を促進させるため
互いの物質を引き付ける
「仲介物質」
「触媒」
「Intermolecular glues(分子間の接着剤)」
これらのような働きをします。
タンパク質をユビキチン化を利用して分解した後
PROTACはリサイクルされ、
再び、標的のタンパク質に結合することができます。
このPROTACはユビキチン合成酵素を
標的とするタンパク質に引き付ける役割があるので
最初に標的タンパク質と結合する際には
必ずしも分子生物学的に機能性を持つ部位に結合する
必要がないとされています(1)。
従って、①の標的タンパク質の結合部位の選択性は
従来の薬剤よりも有意に高いと考えられます。
このことから「Undrugable」とされる
結合部位、それを持つ標的タンパク質であっても
タンパク質分解という薬理機能を発揮することができます。
//標的性について//---
標的性を上げるためにはタンパク質分解酵素である
E3ユビキチン分解酵素を引き付ける必要があります。
そのためのリガンドの発見、設計が不可欠です。
このリガンドの分解酵素に対する親和性が薬理を決める
と考える事ができます。
この分解酵素は組織、細胞種特異的であるため
「ニッチ(niche)」な働きを併せ持つ
タンパク質分解機能を与える事が原理的には可能になります。
組織や細胞種以外にも癌の状態によっても
分解酵素の特異性が生まれます。
従って、癌治療において特定タンパク質除去による
任意性の高い治療を進める事が可能です。
(参考文献(1) Fig.6より)
//癌免疫治療について//---
癌細胞が免疫逃避する機序として
PD1/PDL1があります。
免疫チェックポイント阻害薬として
こえらの働きを抑える場合とは別の方式として
これらの受容体タンパク質を
タンパク質分解酵素で分解して、
細胞上に発現している免疫チェックポイントの量を
減らすという治療戦略も考えられます(2-4)。
//PROTAC薬剤の機能、利点//---
①標的タンパク質に固定される(Target scaffolding functions)
②高い標的性、広範な結合性
③繰り返し機能する
④高い組織浸潤、浸透性
⑤経口投与可能
⑥易製造性
⑦臨床前実用性確認済み
⑧臨床試験中(フェーズ2)
(参考文献(1) Table 3)
//Cell-type-specific delivery system//---
PROTACをナノ粒子、ウィルスベクトルに封入、複合体化
させて輸送するタイプをBioPROTACと呼びます。
PROTACの分子設計で不可能な結合部位をアンカーとして
利用する場合には細胞種特異的輸送系統が利用できます。
また、細胞内にエンドサイトーシスさせて
細胞内のタンパク質を除去する場合には
ナノ粒子、ウィルスベクトルを含めた
この薬剤輸送システムを利用することができます。
//考察//---
PROTACによる適用範囲化どうかという枠組みを超えて
タンパク質を取り除くという観点を中心に考察を提供します。
-
老化研究でも老化細胞を取り除くことが重要である
とされています(6,7)。
この老化も含めて、癌、神経変性、代謝系などの疾患では
タンパク質の消化や分解機序の異常によって
不要なたんぱく質が蓄積する事が考えられます。
実際にPROTACで利用された
ユビキチン依存性タンパク質分解。
Ubiquitin-dependent proteolysis。
これの異常と上述した疾患の関連性が報告されています(8)。
例えば、
p53タンパク質の蓄積が卵巣癌で確認されています(9)。
タウタンパク質の蓄積が神経変性で起こります。
老化によっても毒性のあるタンパク質の蓄積が起こります(10)。
タウタンパク質に対するPROTACによる分解について
報告されています(11)。
このタウタンパク質ついてはMiklós Békés氏らが
参考文献(1)で現状について詳しく述べられています(1)。
PROTAC薬剤によるユビキチン依存性タンパク質分解が
タウタンパク質分解、神経変性の疾患に対して
どのような臨床効果をもたらすかという事に対しては
現在、研究開発が進められているところです(5)。
-
PROTACのように標的となるたんぱく質を分解させるという
コンセプトは身体の循環の健全性を高める事を
手助けできる可能性を示しています。
身体に普遍的に存在する不要なたんぱく質を取り除くことが
原理的にできる可能性が示唆されているからです。
元々、若くて健康な時にはタンパク質の取り込みと排出の
バランスが健全であると考えられます。
PROTACは分解酵素とタンパク質を仲介して
触媒のように反応性を高める働きがあるので、
特定のタンパク質に対して分解、排出能力が衰えた人に対して
補助的に排出能力を高める役割を
少なくとも発揮できると想定されます。
-
但し、こうしたタンパク質を取り除くという操作は
免疫機能と同じようにバランスがあると思います。
その様な事からPROTACのような標的性が重要になる
と考えれます。
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COVID-19:感染で生じた組織損傷の機序、治療、付加的価値と考察
//背景//
新型コロナウィルスに感染して、ウィルス量が
検査キットによって検出できないレベルまで下がるのは
潜伏期も含めると1週間半、2週間くらいであると考えられます。
しかしながら、特に急性期に肺炎を起こし、
重症まで症状が進行すると、
退院まで1か月以上かかることもあります(8)。
また退院しても呼吸器機能低下や神経症状が後遺症として
生じる事があります。
そのような急性期から慢性期にかけたPost-acuteの
新型コロナウィルスの症状の生理については
今まで詳細については明らかになっていませんでした。
ー
Shunya Tsuji(敬称略)ら医療研究グループは
ウィルスがすでに体内から十分になくなった後の
Post-Acute期にあたる新型コロナウィルスの
炎症反応について分子レベルで詳しく評価されています(1)。
本日はその内容の一部を引用させていただき、
読者の方と情報共有したいと思います。
//結果//
・老化細胞様の細胞周期停止が生じる(2,3)。
これは、ウィルス感染に誘発されたサイトカインの産生によって
その近隣の細胞に対して傍分泌様の機序で生じます。
これが
・人の細胞
・気管支の人工組織
これらで確認されています。
老化を示す細胞の老化マーカー表現型(SASPs)は
CDKN2A、p16^INK4a, IL-1β
IL-32、CXCL14、MMP10
これらが確認されています(4-6,14-16)。
(Fig.2d)(Fig.3d)
(Extended Data Fig. 2a,b)
マウスの実験では細胞の老化を示すサインSASPsが
ウィルスが検出されない感染から14日後に
肺組織で確認されています。
治療として、老化細胞除去薬(Senolytic drugs)(7)。
この薬(ABT263)を使用するとその表現型分泌レベルが
顕著に低下しています。
マウスの体重の増加も未感染のマウスと同等の
レベルまで回復しています。
(Fig.4f,4g,4h)
//考察//
通常細胞死した細胞は分解され、組織に蓄積する事がありませんが、
老化細胞はすぐには死滅せず、その場に蓄積する傾向があります(2,9)。
その細胞が
・炎症性サイトカイン
・炎症性成長因子
・細胞外マトリックス劣化酵素
これらを放出する事が知られています(10-12)。
それらの一部が上述したSASPsです。
今回、傍分泌の様式で周辺の組織を劣化させる事が分かったため
老化細胞除去薬を使って、ウィルス感染によって蓄積した老化細胞を
組織から除去することは周辺組織を健全に守るために必要です。
その様な理由から治療として老化細胞除去薬が選択された
と考える事ができます(13)。
-
これを人の治療に適用する前には
まず上述した老化マーカーが
人の中等症や重症で組織の損傷を受けた患者さんで
本当に上昇しているかを調べる必要があります。
この治療はダメージを受けた組織を回復させるものなので
中等症、重症で特に呼吸器系に後遺症がある人に対する
1つの根本治療になる可能性があります。
これは今のところ実現できていないことです。
今は抗ウィルスと免疫調整しか治療の手段がありません。
従って、
さらなる研究の進展、臨床応用が待たれます。
加えて、
世界(日本では特に)高齢化社会の中で
如何に心身ともに長く健康を保つか?
これについては個人の問題を超えた社会問題となっています。
国、自治体の医療負担などの問題もあるからです。
新型コロナウィルスの老化細胞の除去が
もし、上述した結果と一致して
人の場合でも
・組織の修復のため
・後遺症治療のため
これらの一つの根本治療になるのであれば、
その延長線上に高齢化社会の医療問題の解決も
「同時に」含まれることから、
研究の価値が高まることが考えられます。
-
一方、老化細胞を除去した後に
どのように組織が回復するのか?
その分子、細胞レベルの動的機序がわかれば、
さらに臨床応用の実現に近づくと考えられます。
すでにマウスの体重が戻っている事から、
組織の状態が改善している可能性もあります。
このような事は
人の幹細胞(iPS, ES, ミューズ、臍帯血など)を使った
今回のような人工臓器などで可視化された
分析が実現される可能性もあります。
-
日本の死因の第一位である癌においても
老化⇔癌化
これらの双方向の関係が考えられます(19)。
抗がん剤の治療によっても細胞が老化する事も
考えられます(19)。
そうした損傷を負った組織の修復においても
上述した「老化細胞を取り除く」というコンセプトが
生かされる可能性があります。
//細胞種特異的輸送系統//
老化細胞を除去するための物質は複数ありますが、
老化細胞の分布が体内でどのようになっているか?
また新型コロナウィルスなどを始め、感染症などの疾患によって
どのように分布し、増加するかはわかっていません。
そういった中で、
「老化細胞だけを検出して薬剤を届ける。」
という需要が老化治療全般に存在すると考えられます。
例えば、
DPP4(dipeptidyl peptidase 4)
これは老化細胞の表面に選択的に発現しているといわれています(17)。
これと特異的に結合する物質、胞、粒子と
老化細胞除去の薬剤を複合体化させることで
より標的化された治療が実現するかもしれません。
最終的な老化治療は、「全身性」である可能性もあるので
標的性が上がると副作用が少ない形で
体中の老化細胞だけを取り除いて、
若くて、健康な細胞だけを残すことができるかもしれません。
Cell-type-specific delivery systemは
癌治療だけではなく、老化治療においても
何らかの価値を提供できる可能性があります。
すでに老化細胞を選択的に除去するGLP-1が
糖尿病や老化に関わる疾患の症状を緩和する事が知られています(18)。
老化治療の一つのコンセプト
「蓄積する老化細胞を取り除く」
これをどうやって効率的、効果的に行うか?
SASPsを通じた傍分泌がある特徴(1)を考えて、
周辺組織も含めてよりよい治療を実現する事が
医療の問題だけではなく、社会的な問題に対しても
大きな価値として関係します。
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Senolysis by glutaminolysis inhibition ameliorates various age-associated disorders
SCIENCE • 15 Jan 2021 • Vol 371, Issue 6526 • pp. 265-270
(19)
Soyoung Lee & Clemens A. Schmitt
The dynamic nature of senescence in cancer
Nature Cell Biology volume 21, pages94–101 (2019)
//背景//ーー
成人する前の子供は両親の手助けなしに
社会の変化に対して、自ら環境を変える事は難しいです。
新型コロナウィルスの世界的流行によって
学校生活だけではなく、社会活動にも影響を与えました。
大人であれば、住居の場所を変える事は出来る場合もあります。
中には感染リスクの低い地域に移住した人もいます。
しかし、お子さんは親御さんの決断、
社会(保育園、幼稚園、学校など)の定められた
環境の従うほかありません。
こうした住環境、社会環境だけではなく、
食環境や、経済的環境なども同様です。
このような受動的な背景が考えられ、
子供たちは今回のパンデミックのような
社会的な大きな変化に脆弱であるとされています。
感染症の流行のような大きな負の変化が
運動、睡眠サイクル、食欲、心の健康などに
影響を与える可能性があるという報告もあります(4,5)。
ー
Hiromichi Hagihara, Nozomi Yamamoto(敬称略)ら
医療研究グループは
0歳から9歳までの数百人の日本の若い子供を持つ親に対して
2020-21年の新型コロナウィルス感染症流行下にあった
3つのタイムポイント(T1, T2, T3)において
アンケートによって子供の状態を分析されています(1,2)。
そのタイムポイントは
T1:第一波、学校閉鎖期間(2020/4/20-5/20)
T2:第二波と三波の間、感染者数やや少(2020/10/20)
T3:第三波、2回目緊急事態宣言(2021/1/21-3/21)
その結果について引用させていただき、
内容の概要を読者の方と情報共有したいと思います。
//結果//ーー
行動の問題、情緒の問題、多動性、仲間関係、高社会性
これらにおいて幼児、児童(Schooler)両方において
T1, T2, T3の時期の比較の中で変化は見られませんでした。
(参考文献(2)図3)
ー
一方、包含スケール(IOS, inclusion of other in the self)
と呼ばれる尺度(3)を用いて
子供と他者の心理的距離を包含スケールの指標の中での
スケールの重なりによって評価されています。
このスケールでは
0歳から9歳の年齢に関わらず、
その心理的距離は
〇子供-保護者:T1<T2≒T3
〇子供-友達:T1>T2≒T3
このようになっています。
(参考文献(2)図4)
学校閉鎖中は、保護者との時間が長く、
友人関係は短いと考えられるため、
一緒に過ごした時間と心理的距離の近さ(親密さ)は
正の相関がある程度見られると評価できます。
ー
上述した指標において、学校閉鎖の影響は
それほど顕著ではないと評価することができます。
ただし、Hiromichi Hagihara氏らが指摘しているように
この結果は全体の平均的な結果であり、
個別で評価した場合には
参考文献(2)図3,図4で示されているように
バラツキがあることが考えられます。
従って、大きく影響を受けた家庭もあると推定されます。
//考察//ーー
評価手段の有無の問題はありますが、
実際にパンデミックの影響を調べるためには
パンデミック前後での同じ指標での評価に対して
パンデミック中の結果がどうであるか見る必要があります。
ただし、パンデミックの中での
学校閉鎖の有無や感染状況の状態などの大きな変化の中で
お子さんの顕著な変化はみられてないので、
Hiromichi Hagihara氏, Nozomi Yamamoto氏らが
言及されているようにパンデミックによる
乳幼児期および児童期の若い子供に対しては
大きな影響をあたえていないと評価できるかもしれません。
しかし、これは全体的な傾向、
及び日本での評価に留まります。
(参考文献)
(1)
Hiromichi Hagihara, Nozomi Yamamoto, Xianwei Meng, Chifumi Sakata, Jue Wang, Ryoichi Watanabe & Yusuke Moriguchi
COVID-19 school and kindergarten closure relates to children's social relationships: a longitudinal study in Japan
Scientific Reports volume 12, Article number: 814 (2022)
(2)
新型コロナウイルスによるパンデミック下の子どもの社会性発達
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https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2022-01/20220124-moriguchi-91a3a5341fd0049c1b429b3f4ae9226b.pdf
(3)
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Prev. Med. 143, 106349. https:// doi. org/ 10. 1016/j. ypmed. 2020. 106349 (2021).
(5)
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Health-related behaviors among school-aged children and adolescents during the Spanish Covid-19 confinement.
Front. Pediatr. 8, 573. https:// doi. org/ 10. 3389/ fped. 2020. 00573 (2020) (Pubmed:33042917).
//背景//ーー
癌の成長に大きくかかわる変異は癌ドライバー変異と言われます。
実際の人の癌組織の中には体細胞のDNA変異数は数千種類と言われます。
前述したドライバー変異はそのごく一部であるとされています(2)。
Nicholas Williams氏らによって今回対象となった癌種である
骨髄増殖性の悪性新生物-Myeloproliferative neoplasms(MPN)。
この癌種においては血液系分化過程の中で初期に当たる
造血系幹細胞の時点で癌ドライバー変異が入ると言われています(3)。
しかしながら、骨髄増殖性の癌に罹患した方において
その人生の中のいつのタイミングで癌ドライバー変異が入っているか?
というのは今までよく理解されていませんでした(2,4,5)。
-
Nicholas Williams, Joe Lee, Emily Mitchell(敬称略)ら
医療研究グループは骨髄増殖性の悪性新生物を発症した
12人の患者さんにおいて
1013のクローナルコロニーの全ゲノム解析
これにおける胎児から数十年にかけて縦断調査を行われています(1)。
本日はその内容の一部を引用させていただき、
概要について読者の方と情報共有したいと思います。
//結果//ーー
以下の3つのドライバー変異のタイミング。
44歳から90歳の患者さん12人。
-
①JAK2-V617F:5人
妊娠33週から10.8歳までに導入
-
②DNMT3A変異:4人
妊娠8週から7.6歳までに導入
-
③PPM1D変異
5.8歳までに導入
---
①JAK2-V617Fにおいて遺伝子変異が導入されてから
癌であると診断されるまでの平均の潜伏期間は
約30年(年齢範囲:11-54歳)とされています。
従って、多くの場合、胎児から子供の時代から
このドライバー変異が導入されていると考えられます。
---
これらのドライバー変異が混在している患者さんもいます。
//考察//ーー
血液の癌に限らず、他の癌においても
今回の結果のように数十年かけて身体の環境に適応しながら
ゆっくり成長して、やがて何らかのきっかけによって
免疫などで制御できない大きさ、量になっているかもしれません。
そのような長期間の発達過程を経験した癌組織を
治療ではそれよりも圧倒的に速い速度で退行させる
ことを目的とするので、
その中でアンバランスになることが考えられます。
そうした進行と(治療による)退行の経時的な不均衡が
身体への負担、副作用に繋がっている可能性を想定しました。
(参考文献)
(1)
Nicholas Williams, Joe Lee, Emily Mitchell, Luiza Moore, E. Joanna Baxter, James Hewinson, Kevin J. Dawson, Andrew Menzies, Anna L. Godfrey, Anthony R. Green, Peter J. Campbell & Jyoti Nangalia
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Nature (2022)
(2)
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Nature 578, 82–93 (2020).
(3)
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(4)
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(5)
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Cell 173, 611–623.e17 (2018).
//背景//----------
小児癌は大人の癌とは特徴が異なると言われます。
小児が罹りやすいがんは脳腫瘍であり、
下記いくつかの特有の課題があります。
---
〇予後が悪い。後遺症など。
Diffuse intrinsic pontine gliomas(DIPGs)
Other midline high-grade gliomas(HGGs)
これらの悪性度の強い癌は予後が良くないとされています(2)。
手術、薬物、放射線などの抗癌性を持つ積極的治療(Aggressive therapy)。
これは命が助かった子供に対して長期的な後遺症につながります。
その後遺症とは
・神経認知機能の異常
・内分泌系(ホルモン)などの異常
・毛髪のロス
・2次的な腫瘍(転移、再発など)
これらが挙げられています(1)。
---
〇癌免疫治療の治験が進んでいない。
脳は免疫的には血液脳関門によって他の組織と異なります。
(Immunologically privileged)
しかし、中枢神経系の癌においては
免疫的な治療が有効である可能性が示されています(1)。
・CAR-T
・免疫チェックポイント阻害
これらのような代表的な癌免疫治療がありますが、
子供の脳腫瘍における臨床データによる治療効果の評価の量は
まだ世界的に十分ではありません。
しかしながら、
上述した長期的な合併症、後遺症などを最小化しながら
腫瘍を消滅させる治療の選択してとして大きな注目を浴びています(1)。
---
Eugene I. Hwang(敬称略)ら医療研究グループは
小児の脳腫瘍における現在の進展と課題、
さらに有効な免疫治療をどう効果的に臨床応用するか
これについて総括されています(1)。
//大人の脳腫瘍免疫治療の状況//-----------
免疫治療の種類は
①免疫チェックポイント阻害
②CAR-T細胞療法
③癌ワクチン
④腫瘍溶解性ウィルス療法
⑤抗体療法
これらが考えられます。
-----
(臨床試験の状況)
①免疫チェックポイント阻害
再発性の膠芽腫(GBM)-フェーズ3の治験
(NCT02017717,CheckMate-143)(3)。
免疫機能をコントロールする
・ステロイド
・抗がん剤(化学療法)
これらと併用した場合には効果が弱まる可能性があるので
注意が必要だとされています(16)。
いくつかのサブタイプでは
免疫チェックポイント阻害剤による治療の適正に関わる
PD-L1のレベルが従来の想定よりも高いかもしれない
とされています(17)。
外科による切除と免疫チェックポイント阻害のタイミングが
重要であるとされています。
術前治療(Neo-adjuvant)の免疫チェックポイントの
臨床的な効果について調べられています(18)。
-----
②CAR-T細胞療法
再発性の膠芽腫(GBM)
フェーズ1/2の治験(NCT01454596)。
癌組織の単位あたりの変異数(mutation burden)が
低い傾向にある小児脳腫瘍に対して適性があるとされています。
現在の所、高い臨床効果の結果は不足していますが、
今、いくつかの臨床試験が行われているところです(22)。
現在、有望とされる癌種は
DIPGs(びまん性橋膠腫)であり、
それに対してエピトープをGD2に定めています(23)。
しかしながら、「マウスのケース」で
びまん性橋膠腫が退行したとしても
その後、急速に生存状態が悪化し、死亡してしまいました。
従って、強固な免疫反応による副作用も懸念され、
慎重に臨床応用していく必要があります(23)。
-----
③癌ワクチン
いくつかのフェーズ3の効果評価(4)。
癌細胞傷害性を示す結合部位(エピトープ)に対する
特異的な抗体、T細胞を
B細胞などを通した内的免疫機能を使って生成させます(24)。
そのためには抗原認識する樹状細胞に
十分な量の適切な抗原を輸送する必要があります。
もう一つのアプローチとして
自分の細胞を使った自家移植で
成熟した樹状細胞を生体内に移植する
細胞ベースのワクチンが挙げられています(25)。
-----
④腫瘍溶解性ウィルス療法
再発性の膠芽腫(GBM)-フェーズ3の治験(5)。
腫瘍に浸潤し、癌細胞傷害性を示すウィルスを輸送します。
候補となるウィルスは以下です。
・はしかウィルス
・ポリオウィルス
・アデノウィルス
・ヘルペスウィルス
-----
⑤抗体療法
膠芽腫(GBM)-フェーズ3(6,7)。
H3K27M, H3G34R, H3G34Vなどの癌抗原と
特異的に結合するモノクローナル抗体を注入します。
これによってマクロファージなどの
癌細胞に対して食作用のある免疫細胞を
腫瘍組織に引き付けることができます(19)。
この抗原の認識性を1つの結合部位ではなく
2つの結合部位にするBi-specificなモノクローナル抗体も
提案されています(20)。
このモノクローナル抗体は
・放射線を使う免疫治療
・癌細胞に対する免疫毒性のある物質
これらの輸送において適性があります(21,36)。
//大人と小児の遺伝子的な違い//
*典型的な遺伝子の異常
(大人の膠芽腫)
EGFR, TP53, NF1, IDH1, IDH2(8-10)
(小児の膠芽腫)
H3F3A, HIST1H3B, ALK, NTRK1, NTRK2, NTRK3, ROS1, MET1(11-13)
//小児の癌の特質//------------
・Medulloblastomas(髄芽腫)
神経細胞とグリア細胞(神経膠細胞)に分化する前の
未熟な細胞に由来する悪性腫瘍です。
-
・DIPGs(びまん性橋膠腫)
脳幹の橋に発生する悪性で予後のとても悪い小児の脳腫瘍です。
-
・Atypical teratoid–rhabdoid tumors(ATRTs)
異型奇形腫瘍/ラブドイド腫瘍(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍)
中枢神経系のあらゆる部位に発症するが、約半数は後頭蓋窩に発生します。
中枢神経系に発生する極めて悪性度の高い腫瘍です。
//小児癌に対する免疫治療//--------
小児脳腫瘍は大人の脳腫瘍と同様に免疫原性が低く、
そのままでは免疫治療が効きにくい、
免疫的にコールドと言われています(14)。
しかしながら、
上述したように小児の膠芽腫に関わる遺伝子は多く、
免疫細胞の侵入、浸潤などの状況が
人によって異なることから
免疫的にホットか、コールドか?
つまり免疫治療に向いている特質を有しているかどうかは
単純には決められないとされています(1)。
-
小児の中枢神経系の悪性新生物を標的とした
効果的な免疫治療には下記の項目の理解が重要です。
①免疫プロファイル
免疫細胞やサイトカインなど
②候補となる抗原
癌抗原:H3K27M, H3G34R, H3G34Vなど(15)
③細胞傷害性の免疫細胞の相互作用
④免疫治療抵抗性のある癌微小環境
⑤複合的な要因
//懸念される副作用//-------------
免疫に関連する副作用
Immune-related adverse event(irAEs)
これが小児脳腫瘍の免疫治療を行ったうえで懸念されます。
その副作用は
(脳に関連するもの)
・てんかん
・失語症
・脳障害
・脳の浮腫
・頭痛
(脳以外のもの)
・胃腸
・皮膚
・内分泌系組織
・肝臓
・倦怠感
・衰弱
これらの異常が想定されます(26-30)。
従って、臨床応用、治験の中で
上述した副作用に注意を払いながら進めていく必要があります。
//小児脳腫瘍免疫治療の臨床前モデル//
Eugene I. Hwang氏らは臨床前モデルとして
主に4つの要素を挙げられています(1)。
-
①患者さん由来の異種移植(PDX)
患者さん由来の癌細胞、免疫細胞などを
マウスなどの動物に移植することで
一部、患者さん特異的な条件で
生体内生理反応を分析する事ができます。
-
②免疫不全マウスの利用1
免疫機能が働かないマウスでは
腫瘍近傍の環境や循環器で免疫細胞による改変が起こらないため
マウスの液体生検から真性のバイオマーカーを得ることができます。
①の患者さん由来の異種移植と合わせれば、
患者さん特有のバイオマーカーを得ることもできます。
-
③免疫不全マウスの利用2
獲得免疫であるT細胞の機能喪失が起こっている条件で
マウスで調べる事によって、
それ以外のB細胞、NK細胞、マクロファージなど
自然免疫系なども含めて、T細胞が干渉することなしに
調べる事ができます。
-
④液体生検による分析
循環癌細胞DNA(circulating tumor cell DNA)
尿からのバイオマーカー取得
これらは新しいバイオマーカーを見つけるのに貢献します(31,32)。
//小児脳腫瘍免疫治療の臨床試験//
参考文献(1)を参照し、
臨床試験の為に必要な事を6つ抽出いたしました。
-
①高い異種性
組織学的には類似していても、患者さん事
あるいは組織内での分子的異種性があります(33,34)。
ターゲットとするエピトープの発現レベルなどがあります。
例えば、PD-L1の発現レベルによって
免疫チェックポイント抑制剤による治療効果が
変わる可能性があります。
-
②自己免疫疾患を持つ患者さん
自己免疫疾患を持つ患者さんは免疫機能が全体的に高まっているため
基本的に免疫機能を抑えて、コントロールする
ステロイドなどを使った治療が考えられます。
そのような患者さんにおいて免疫治療は適していないため
臨床試験のスクリーニングの段階で
試験対象から外しておく必要があります。
-
③組み合わせ治療
外科治療、化学治療、放射線治療との組み合わせの時
脳腫瘍の特質をより詳しく理解する必要があります。
例えば、癌微小環境や免疫表現型などです。
なぜなら、上述した今のメインの治療は
治療中に免疫機能を改変する必要があるからです。
従って、フェーズ0の初期の段階では
治療の段階ごとに癌組織を分析して、
複数の治療の効果を切り分けて考える必要があります。
あるいは相乗効果、相殺効果についても考慮する
ことが求められます。
-
④コルチコステロイドについて
小児脳腫瘍の治療では免疫機能を抑える
コルチコステロイドが広く使われます。
神経性の症状や癌組織周辺の浮腫を緩和するためです。
しかし、コルチコステロイドは免疫抑制性があるため
T細胞死、樹状細胞の成熟を抑える働きがあります(35)。
従って、癌免疫治療と相反性があるため、
治験前のスクリーニングの段階で
コルチコステロイドをどの程度使用したかという
情報開示と層化は必要になります。
-
⑤免疫惹起による周辺の炎症
腫瘍組織を積極的に免疫細胞で治療していく方式では
その高まった免疫細胞が脳の周辺の組織にも
影響を与えてしまうことが考えられます。
(Pseudoprogression)
小児の脳は発達段階にあるため、
腫瘍の周りの脳の組織が炎症を起こすと
発達において影響を与える事が考えられます。
脳幹など重要な部分においては特に配慮が必要です。
-
⑥協力体制
小児癌の治療では、複数の分野が横断的に
治療に関わる必要があります。
小児科、脳神経科、腫瘍内科、腫瘍外科など。
患者さんを中心にして
様々な分野の医師、研究者が協力体制を作って
癌治療を行っていく必要があります。
一方、高齢の方に比べて患者数が少ないため
臨床応用や実用化のために必要は
資金確保が難しいという潜在的な課題があります。
産学連携、官民連携、国際連携などを通じて
効果的にトランスレーショナル医療を実現する必要があります。
//まとめ//------------
小児癌の免疫治療はまだ萌芽期、黎明期を
完全には脱していなく、
これから治療の選択肢の一つとして普及するために
様々な改善が必要だと考えられます。
他の従来の治療との組み合わせも考えられるため
丁寧な特質の理解が必要だと考えられます。
また、分野横断的な協力が
小児癌、特に小児脳腫瘍の治療の為には
より必要だと考えられます。
命を救うだけではなく、生活の質の向上、
少ない副作用を実現するためには
特に悪性度の強いタイプの脳腫瘍においては
高い壁が幾重にも存在します。
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19, 1040–1050 (2018).
//背景//
先進国を中心に世界的に高齢化が進んでいきます。
日本では2021年時点の65歳以上の高齢化率は29.1%です。
2040年には35.3%になると見込まれています。
高齢者の心身の健康を遺伝子レベルで考えていく事で
標的を絞った有効な薬剤開発ができる可能性もあります(2)。
また、生活習慣などを見直し予防的に疾患を防ぐことも考えられます。
健康を考える中で、無視できない医療、社会問題は
未遂を含む高齢者の自殺の問題です。
-
参考文献(1)Fig.1に示されているように
世界の統計では2017年時点では
高齢になるほど10万人当たりの自殺者数は高くなります。
全ての年齢では10.39人に対して
70歳以上では27.45人です。
70歳を超えるあたりから一気に自殺者数が変わります.
(50-69歳:16.17人)
しかし、1998年と比べると全年齢層で自殺者数は少なくなっています。
70歳以上でも同様です。
-
若年層での自殺は、うつ病を発症しているケースが多いですが、
高齢層の場合は、うつ病を発症している場合が少なく
全体の疫学的な割合も低いとされています(3,4)。
//原因と兆候//
高齢者の自殺は、具体的な要因が関係していることが多くあります。
例えば
〇慢性痛
〇他人への依存、補助なしで生活できない(要介護など)
〇寂しさによる苦痛
〇諦め
〇人生の意義の喪失
これらが挙げられています(5)。
-
自殺のリスクを示すサインとして
〇抑うつ症状
〇不安、睡眠異常(過少、過剰)
〇感情のスイング、情緒不安定
〇自分の衛生、見た目への不注意
〇社会的孤立
〇罪悪感、恥など
〇食べ物への興味喪失
〇たばこ、アルコール消費の増大
〇死について考える、話す
〇意思、考えが変わる
〇良い感情に関わる対象を手放す(趣味など)
〇突然、友人を訪ねる(あたかも別れを告げるように)
これらが挙げられています(6)。
(参考文献(1) Box1)
-
//コロナ禍の影響//
この2年間のコロナ禍が高齢の方の自殺問題に
どのように影響を与えたかといのはまだ世界的には明らかではありません。
しかし、負の影響を与えたという報告もあります(7)。
日本では、寂しさ、孤独の問題と向き合う省庁が設置されています。
自殺者数の推移では、低下傾向にありましたが、
コロナ禍の中で11年ぶりに増加に転じたからです。
ソーシャルディスタンス、外出、運動、社交機会などが
制限されることで、自殺や未遂に繋がることが
考えられるとされています(8,9)。
//考察//
心の状態が悪化することにおいて
具体的な要因が関係している場合には、
薬物治療よりも、まずは
その原因を取り除くことが好ましいとされます。
例えば、寂しさ、孤独が原因であれば、
それをどのように「具体的に」取り除くか考えます。
人それぞれ、様々な選択肢があります。
人生の意義の喪失といった難しい問題もありますが、
一方で、残りの人生が若い時に比べて
短いからこそ、先の事ではなく今に集中できます。
晩年こそ好きな事をする
という事は様々な場面できかれます。
そのような自分の好きな事を大切にする
"Emotion-centered stagegies(1)"をとる事ができます。
一般的に高齢の人のほうが、
感情的な幸福が高いともいわれます(1)。
人生経験から感情の制御も若い人に比べて
優れているといわれているからです(1)。
-
上述したような認知療法や具体的に解決策を考える事で
状況が改善し、未然に防ぐことができる
可能性があると考えられます。
(参考文献)
(1)
Diego De Leo
Late-life suicide in an aging world
Nature Aging volume 2, pages7–12 (2022)
(2)
Paul R. H. J. Timmers, Evgeny S. Tiys, Saori Sakaue, Masato Akiyama, Tuomo T. J. Kiiskinen, Wei Zhou, Shih-Jen Hwang, Chen Yao, Biobank Japan Project, FinnGen, Joris Deelen, Daniel Levy, Andrea Ganna, Yoichiro Kamatani, Yukinori Okada, Peter K. Joshi, James F. Wilson & Yakov A. Tsepilov
Mendelian randomization of genetically independent aging phenotypes identifies LPA and VCAM1 as biological targets for human aging
Nature Aging volume 2, pages19–30 (2022)
(3)
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Arch. Gen. Psychiatry 57, 601–607 (2000).
(4)
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(5)
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Self-harm in the very old one year later: has anything changed?
Int. Psychogeriatr. 31, 1559–1568 (2019).
(6)
De Leo, D.
I comportamenti sucidari degli anziani (suicidal behaviour of older adults).
Supplemento di Psicogeriatria N.1, 1–74 (2017).
(7)
Wand, A. P. F., Zhong, B. L., Chiu, H. F. K., Draper, B. & De Leo, D.
COVID-19: the implications for suicide in older adults.
Int. Psychogeriatr. 32, 1225–1230 (2020).
(8)
De Leo, D. & Trabucchi, M.
COVID-19 and the fears of Italian senior citizens.
Int. J. Environ. Res. Public Health 7, 3572 (2020).
(9)
Santini, Z. I. et al.
Social disconnectedness, perceived isolation, and symptoms of depression and anxiety among older Americans (NSHAP): a longitudinal mediation analysis.
Lancet Public Health 5, e62–e70 (2020).
//背景//
新型コロナウィルスのオミクロン株の感染者数が増えています。
日本全体では5万人に迫る数となっています。
オミクロン株は逃避変異が入っているため
現在のワクチンの中和能が1/16以下と低くなっています。
そうした中で感染性が高まっていますが、
世界的でも同様なようにオミクロン株の重症化リスクは
他のウィルス株よりも小さいとされています。
しかしながら、
高齢の方や基礎疾患などリスク因子になる方は
重症化リスクが上がり、
仮に重症化リスクが従来株に対して1/10でも
全体の感染者数が10倍、100倍になれば、
絶対数は上回る事になります。
従って、感染初期に特例承認されたモルヌピラビルを
適切に処方する事によって、
重症化する方を付加的に減らすことが非常に重要になります。
このモルヌピラビルと
日本で承認申請中のニルマトレルビル(パクスロビド配合薬)は
ともにオミクロン株において顕著な抗ウィルス性が確認されています(3)。
オミクロン株の感染の波を乗り越えるためには
ワクチンの効果が低い以上、
治療薬による治療が必要不可欠です。
ー
Peter J. Halfmann, Shun Iida, Kiyoko Iwatsuki-Horimoto, Tadashi Maemura, Maki Kiso
(敬称略)ら医療研究グループは
マウス、ハムスターのケースでオミクロン株による感染症のリスクを
ウィルス注入後のウィルス数、体重減少、免疫反応などを
他の過去流行した株(アルファ株、デルタ株)と比較されています(1)。
その結果の一部を読者の方と情報共有したいと思います。
//結果//
<体重減少について>
オミクロン株(B.1.1.529)においては
体重減少が感染後1~8日の間で
マウスの年齢、ウィルス量に関わらずみられない。
一方、
N501Y/D614G(アルファー株に主に含まれる変異)、
ベータ株(B.1.351)では
上述した条件で体重減少がみられる。
(参考文献(1) Fig.1a)
-
<ウィルス数>
ベータ株に対するオミクロン株のウィルス数(2-4日後)
マウス
鼻:100-1000倍低い
肺:10-10000倍程度低い
(参考文献(1) Fig.1b,c,d)
デルタ株に対するオミクロン株のウィルス数(3日後)
ハムスター
鼻:ほぼ同じ
肺:10-100000倍程度低い-個体差が大きい
他の報告(2)でも
アルファ株に対して鼻、肺のウィルス数は
マウスにおいて10倍から100倍
オミクロン株では低い。
-
<サイトカイン>
CCL4,IL-18,CCL11,CXCL2,CCL2,CCL7,CCL3
TNF-α,CXCL1,GM-CSF,IL-12p70,IFN-γ
IL-6,IL-5,CXCL-10,IL-1β
これらのサイトカインレベルは
B.1.351(ベータ株)ではマウスで感染後高くなりますが、
B.1.1.529+A701V(オミクロン株)では
上述したサイトカインは反応ないか、軽微です。
(参考文献(1) Fig.1i)
-
<肺画像>
肺のCT画像ではオミクロン株ではCTスコアは
わずかに上昇するが、
B.1.617.2(デルタ株)に対して1/5以下です。
(参考文献(1) Fig.2i,j)
//考察//
今回の結果は人ではなく、マウス、ハムスターであります。
また、これらの動物において
ワクチンを接種していない中での比較です。
日本のケースではワクチン接種率は80%程度です。
ゆえに大方の人がワクチンによる抗体、免疫を持っています。
ワクチンの効果が変異株ごとに異なれば、
ワクチンを接種していない状況での比較の値は
当然、異なると推定されます。
冒頭でも述べた様にオミクロン株のワクチンの効果は
ワイルドタイプに対して1/16以下なので、
上述した他の脅威株との比較の値は
ワクチン接種の状態では異なる可能性があります。
例えば、10倍くらいの差は逆転して
オミクロン株の方が今の人のケースでは多いかもしれません。
従って、
冒頭で述べた様に治療薬をどう有効に使うか?
それがこの感染の波では重要になります。
また今後、変異する(可能性がある)株においても
副作用なども含めた治療薬を使った感染対策のノウハウを
蓄積する必要があります。
(参考文献)
(1)
Peter J. Halfmann, Shun Iida, Kiyoko Iwatsuki-Horimoto, Tadashi Maemura, Maki Kiso, Suzanne M. Scheaffer, Tamarand L. Darling, Astha Joshi, Samantha Loeber, Gagandeep Singh, Stephanie L. Foster, Baoling Ying, James Brett Case, Zhenlu Chong, Bradley Whitener, Juan Moliva, Katharine Floyd, Michiko Ujie, Noriko Nakajima, Mutsumi Ito, Ryan Wright, Ryuta Uraki, Prajakta Warang, Matthew Gagne, Rong Li, Yuko Sakai-Tagawa, Yanan Liu, Deanna Larson, Jorge E. Osorio, Juan P. Hernandez-Ortiz, Amy R. Henry, Karl Ciouderis, Kelsey R. Florek, Mit Patel, Abby Odle, Lok-Yin Roy Wong, Allen C. Bateman, Zhongde Wang, Venkata-Viswanadh Edara, Zhenlu Chong, John Franks, Trushar Jeevan, Thomas Fabrizio, Jennifer DeBeauchamp, Lisa Kercher, Patrick Seiler, Ana Silvia Gonzalez-Reiche, Emilia Mia Sordillo, Lauren A. Chang, Harm van Bakel, Viviana Simon, Consortium Mount Sinai Pathogen Surveillance (PSP) study group, Daniel C. Douek, Nancy J. Sullivan, Larissa B. Thackray, Hiroshi Ueki, Seiya Yamayoshi, Masaki Imai, Stanley Perlman, Richard J. Webby, Robert A. Seder, Mehul S. Suthar, Adolfo García-Sastre, Michael Schotsaert, Tadaki Suzuki, Adrianus C. M. Boon, Michael S. Diamond & Yoshihiro Kawaoka
SARS-CoV-2 Omicron virus causes attenuated disease in mice and hamsters
Nature (2022)
(2)
Huiping Shuai, Jasper Fuk-Woo Chan, Bingjie Hu, Yue Chai, Terrence Tsz-Tai Yuen, Feifei Yin, Xiner Huang, Chaemin Yoon, Jing-Chu Hu, Huan Liu, Jialu Shi, Yuanchen Liu, Tianrenzheng Zhu, Jinjin Zhang, Yuxin Hou, Yixin Wang, Lu Lu, Jian-Piao Cai, Anna Jinxia Zhang, Jie Zhou, Shuofeng Yuan, Melinda A. Brindley, Bao-Zhong Zhang, Jian-Dong Huang, Kelvin Kai-Wang To, Kwok-Yung Yuen & Hin Chu
Attenuated replication and pathogenicity of SARS-CoV-2 B.1.1.529 Omicron
Nature (2022)
(3)
Pengfei Li, Yining Wang, Marla Lavrijsen, Mart M. Lamers, Annemarie C. de Vries, Robbert J. Rottier, Marco J. Bruno, Maikel P. Peppelenbosch, Bart L. Haagmans & Qiuwei Pan
SARS-CoV-2 Omicron variant is highly sensitive to molnupiravir, nirmatrelvir, and the combination
Cell Research (2022)
//背景//--
人の最高齢はここ100年の医薬学、医療、衛生などの
飛躍的な改善にも関わらず、あまり伸びていないと言われています。
しかし、平均余命は顕著な向上が見られています。
今後、100歳以上生きる人の割合が増える事が考えられます。
しかし、重い病気を背負いながら、晩年の長い期間過ごすのは
本人だけではなく、家族など親密な関係の人にも負担になります。
あるいは医療費などの国に対する負担もあります。
病気とどうやってうまく付き合うかという軸もあります。
一方で、健康寿命を延ばし、生活の質を如何に長い時間
高く保つかというのは今後、先進国を中心に大きな課題となります。
特に高齢化が進んでいて、寿命の長い日本は
どのようにこの問題を医学薬学、医療として向き合っていくか?
福祉、経済的な問題も含めて世界のモデルケースとなります。
従って、特に日本においては老化に関する研究は
重要な位置づけになると考えられます。
ー
老化に関しては人によって大きな差があります。
後期高齢期である90代でも自立した生活を送っている方も多くいます。
そうした中で、心身ともに健康な方と、
そうではなく重い疾患を患ってしまう方との
「違い」を分析する事は、
上述した本人だけではなく、広く社会や国の問題と関連します。
ー
そのための一つの手法は
様々な心身の状態の人から採血をして、
その血液から全遺伝子情報を取得して、
膨大な得られたデータといくつかの因子と紐づけて
多角的に分析していく事です。
ー
Paul R. H. J. Timmers(敬称略)ら医療研究グループは
①心身耐性-Resilience
②(自覚的)健康-Health(self-rated)
③健康寿命-Healthspan
④父親の寿命-Fathre lifespan
⑤母親の寿命-Mother lifespan
⑥寿命-Longevity
これらを老化の特質と定義し
それらと遺伝子群の因果関係をメンデルランダム化によって
包括的に調べられています(1)。
本記事ではその内容の結果の一部を引用させていただき
そこから老化因子において重要な部分について
追加的に記述していきます。
//結果//--
上述した①~⑥の老化因子と最も関わりの
深い遺伝子群はGIP1。
(参考文献(1) Fig.3b)
-
GIP1遺伝子群と負の相関がある疾患
(#の数は相関の程度)
〇神経的性向、うつ ##
〇負の感情 #
〇髪の毛のロス #
〇手術の回数 ##
〇頭痛 #
〇癌 #
〇喘息 #
〇肺機能の低下 #
〇低い教育レベル ##
〇喫煙年数 ###
〇貧困 ##
〇腸疾患 ###
〇慢性痛 ###
〇骨関節炎 ###
〇高血圧 ###
〇疾患、薬物治療数 ####
〇心血管疾患 ####
〇高脂血症 #
〇低HDLコレステロールレベル #
〇腕と足の重さ #
〇体脂肪 ##
〇2型糖尿病 ##
〇血栓閉栓症 ##
〇不健康な生活(食生活、運動) #
〇赤血球 #
特に関連が深いのが
喫煙年数、腸疾患、慢性痛、骨関節炎、高血圧
疾患数、薬の数、心血管疾患
これらが挙げられています。
生活習慣でいうと喫煙です。
-
GIP1と関わる遺伝子群
NEGR1、PHTF1、AFF3、TRAIP、ADD1、HTT、ANAPC4
4q13.2、MAML3、C6orf47、HLA-DRB1、SLC22A1
LPA、MAD1L1、FOXP2、CSMD3、CDKN2B、CTSF
CCDC90B、TTC12、USP28、MIR6074、12q21.31
LINC01065、ZNF652、APOE、ZFP64
(参考文献(1) Fig.4b)
-
これらの遺伝子全体と関連が深い老化因子
②(自覚的)健康-Health(self-rated)
-
健康寿命、両親寿命の関連のある遺伝子
LPA
これの異常形成は
腫瘍形成と転移に寄与する過剰増殖を誘導します。
従って、癌とその重症化に関わる遺伝子です。
-
両親の寿命と寿命に関連のある遺伝子
APOE
これの異常APOEε4は
脳血管関門の組織異常(リーク)や
アミロイドβ、タウの蓄積(2)。
ー
GIP1関連遺伝子群と負の相関がある
LPA、VCAM1、OLFM1、LRP12
(参考文献(1) Fig.5)
LPAはVCAM1との関わりがあります。
共に
血管内皮と柔軟性と組織健全性に関わります(3)。
細胞壁に対する白血球の吸着にも関わります(4)。
OLFM1は神経発達、維持、大腸がんの転移に関わる遺伝子です(5,6)。
LRP12も神経形成に関わると考えられる遺伝子です。
従って、老化因子を悪化させる遺伝子は
神経状態と血管の状態に関わるものです。
//考察//--
老化因子と関連の深い要因は心臓血管疾患、高血圧
これらであり、
それらに関連する遺伝子も血液や脳血管に関わる遺伝子です。
ヨーロッパのデータも含まれるので、
これが全ての民族に当てはまるかわかりません。
なぜなら、日本の死因の一位は「癌」だからです。
二位は高血圧性を除く心疾患とされています。
従って、上述したリスク因子の結果と傾向は異なる可能性があります。
この場合、今回抽出されたLPA遺伝子が重要になるかもしれません。
しかしながら、
循環器の健全性と老化との関連については
今後、注視が必要です。
これらは食生活、睡眠、運動、喫煙など
生活習慣と関わる疾患だからです。
また、アルツハイマー病やパーキンソン病
あるいは認知症などの治療改善も老化因子と強く関わります。
(参考文献)
(1)
Paul R. H. J. Timmers, Evgeny S. Tiys, Saori Sakaue, Masato Akiyama, Tuomo T. J. Kiiskinen, Wei Zhou, Shih-Jen Hwang, Chen Yao, Biobank Japan Project, FinnGen, Joris Deelen, Daniel Levy, Andrea Ganna, Yoichiro Kamatani, Yukinori Okada, Peter K. Joshi, James F. Wilson & Yakov A. Tsepilov
Mendelian randomization of genetically independent aging phenotypes identifies LPA and VCAM1 as biological targets for human aging
Nature Aging volume 2, pages19–30 (2022)
(2)
Montagne, A. et al.
APOE4 leads to blood–brain barrier dysfunction predicting cognitive decline.
Nature 581, 71–76 (2020).
(3)
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Apolipoprotein(a), through its strong lysine-binding site in KIV 10, mediates increased endothelial cell contraction and permeability via a rho/rho kinase/MYPT1-dependent pathway.
J. Biol. Chem. 283, 30503–30512 (2008).
(4)
Kong, D. H., Kim, Y. K., Kim, M. R., Jang, J. H. & Lee, S.
Emerging roles of vascular cell adhesion molecule-1 (VCAM-1) in immunological disorders and cancer.
Int. J. Mol. Sci. 19, 13–17 (2018).
(5)
Nakaya, N., Sultana, A., Lee, H. S. & Tomarev, S. I.
Olfactomedin 1 interacts with the Nogo A receptor complex to regulate axon growth.
J. Biol. Chem. 287, 37171–37184 (2012).
(6)
Shi, W. et al.
Olfactomedin 1 negatively regulates NF-κB signalling and suppresses the growth and metastasis of colorectal cancer cells.
J. Pathol. 240, 352–365 (2016).
//背景//--
今、日本ではオミクロン株の流行により
現場の医師の方の情報によると子供の感染が増えている
ということです。
新型コロナウィルスは幸いにも子供のリスクは低く、
日本において死亡例は確認されていません。
しかし、世界を含めて考えると
少ないケースではありますが、重症化する事があります。
12歳以下の子供においてはワクチン接種も承認されていませんから
子供に対するリスクの経過観察は少なくとも必要です。
その重症化の代表的な症状として
多系統炎症性症候群(MIS-C)。
これが挙げられています。
今後、ワクチン接種を考えていく中で、
子供の新型コロナウィルスのMIS-Cに対するリスク因子を
抽出していく事は非常に重要になります。
リスク因子が高い子供においては
ワクチン接種の安全性を担保したうえで、
その実施の推奨レベルについて考える必要があります。
-
Adam D. Nahari, Mary Beth F. Son, Jane W. Newburger & Ben Y. Reis
(敬称略)からなる医療研究グループは
新型コロナウィルス世界的流行前の
5年間、7520834ケースの臨床テストのにおける
一般的なMIS-Cに対する関連データと
新型コロナウィルス流行の中で集められたデータを組みあわせて
上述したMIS-Cに対するリスク因子を抽出されています(1)。
本日はその結果の概要の一部について引用、抽出し
読者の方と情報共有したいと思います。
//結果//--
MIS-Cと関係性の強い要因
〇IL-4,
〇IL-10
〇Ferritin
〇D-dimer
〇Fibrinogen
〇Alanine transaminase
〇C-reactive protein
※
新型コロナウィルス流行時における
MIS-Cの患者さんは
ボストン・チルドレンズ病院の52名のデータに基づく。
//考察//--
上の多系統炎症性症候群(MIS-C)との関連性の高い要因が
すでに何らかの急性疾患や慢性疾患によって
異常な数値を示している場合、
あるいは新型コロナウィルス感染症によって
上述した数値が異常になった場合において、
重症化する可能性を想定する必要があると考えられます。
(参考文献)
(1)
Adam D. Nahari, Mary Beth F. Son, Jane W. Newburger & Ben Y. Reis
An integrated framework for identifying clinical-laboratory indicators for novel pandemics: COVID-19 and MIS-C
npj Digital Medicine volume 5, Article number: 9 (2022)
//背景//--
授乳中の女性においては
自分が感染した場合、母乳を通じて
自分の子供、乳児に新型コロナウィルスが感染しないか?
このような心配があると思います。
特にオミクロン株は感染力が強く、
現在、日本において感染者数が増えている状況ですから
母乳による感染の状況について気になります。
ー
Paul Krogstad, Deisy Contreras(敬称略)ら
医療研究グループは
アメリカの65人の授乳中の女性に対して
母乳の新型コロナウィルスの存在における分析を
経時的に行われています(1)。
その結果の概要を引用させていただき
読者の方と情報共有したいと思います。
//結果//--
〇SARS-CoV-2 vRNAは9%の女性について確認された。
(65人中6人)
但し、その期間はおおよそ発症から1週間以内
最大で2週間。
確認された方も、RNAの検出は
その後のサンプリングによって検出されなくなりました。
従って、ウィルスRNA検出は一時的です。
ウィルスのRNAは一部確認されますが、
そのRNAの検出は感染急性期にほぼ限られるということです。
ー
〇SARS-CoV-2の生きたウィルスは検出されなかった。
ウィルスの中に含まれるvRNA単体は確認されましたが、
感染力、増殖能力のあるウィルス自体は
今回の調査では確認されませんでした。
ー
今回の母乳の分析は発症後から27週(約半年)まで
調べられていいます。
//まとめ//--
この調査から母乳を通じた子供への感染のリスクは
極めて低いと評価する事ができます。
(参考文献)
(1)
Paul Krogstad, Deisy Contreras, Hwee Ng, Nicole Tobin, Christina D. Chambers, Kerri Bertrand, Lars Bode & Grace M. Aldrovandi
No infectious SARS-CoV-2 in breast milk from a cohort of 110 lactating women
Pediatric Research (2022)
新型コロナウィルスの飲み薬の治療薬として
メルク社 モルヌピラビルが日本において特例承認されました。
このモルヌピラビルは
NHC triphosphateとして
ウィルスのRNAの複製を防ぐ働きがあります(2-4)。
すでにフェーズ3の治験で経口投与で
新型コロナウィルス感染症の患者さんにおいて
臨床症状の顕著な改善が見られています(5)。
一方、
ファイザー社のニルマトレルビルは
プロテアーゼ3CL-proは
ウイルスRNAから翻訳されたポリタンパク質を
プロセシングするのに不可欠な役割を果たしている酵素で
この働きを抑える働きがあります(6)。
すでに治験フェーズ2/3で89%の入院、死亡リスクの低下が
確認されています(7)。
今、日本で申請中の薬「パクスロビド」は
このニルマトレルビルとリトナビルの配合剤です。
ー
培養細胞に感染させてウィルス定量をする方法である
TCID50 assayによってウィルス量を
Pengfei Li(敬称略)ら医療研究グループは
上述したモルヌピラビルとニルマトレルビルの
抗ウィルス性についてワイルドタイプとオミクロン株について
比較評価されています(1)。
ー
その結果によると
モルヌピラビルに関してはWTよりもオミクロン株の方が
少ない用量でウィルス量が低下しています。
例えば、ウィルス量が半分になる濃度は
〇WT:1.965μM / オミクロン株:0.7556μM
このようになっています。
より少ない用量でウィルス量が低下しており、
オミクロン株 5μMにおいて
900倍のウィルス量低下が見られています。
(ref.(1), Fig.1)
一方
ニルマトレルビルにおいても
WTよりもオミクロン株の方が
少ない用量でウィルス量が低下しています。
例えば、ウィルス量が半分になる濃度は
〇WT:0.1765μM / オミクロン株:0.02462μM
このようになっています。
より少ない用量でウィルス量が低下しており、
オミクロン株 2.5μMにおいて
1200倍のウィルス量低下が見られています。
(ref.(1), Fig.1)
またモルヌピラビルとニルマトレルビルを
両方同時に投与した時の培養細胞内のウィルス量評価では
単一の場合より高いウィルス量低下が見られています。
Synagy score;4.131
(ref.(1), Fig.1oより)
ー
これらの結果を踏まえて、
新型コロナウィルスのオミクロン株の治療に対して
Pengfei Li氏らはモルヌピラビルとニルマトレルビルの
同時投与条件での臨床研究の必要性を訴求しています。
(考察)
少なくともオミクロン株に進化したことによって
薬剤の抵抗性を持っているということはありません。
ワクチンの効果の低下はありますが、
RNAの複製を防ぐような薬剤における効果は
むしろオミクロン株の方がワイルドタイプよりも高くなっています。
従って、罹患初期のウィルス量を減らす事が
より求められる時期に適切に投与する事によって
すでに臨床結果でも示されている(5,7)ように
入院、重症化のリスクを下げる事ができると考えられます。
(参考文献)
(1)
Pengfei Li, Yining Wang, Marla Lavrijsen, Mart M. Lamers, Annemarie C. de Vries, Robbert J. Rottier, Marco J. Bruno, Maikel P. Peppelenbosch, Bart L. Haagmans & Qiuwei Pan
SARS-CoV-2 Omicron variant is highly sensitive to molnupiravir, nirmatrelvir, and the combination
Cell Research (2022)
(2)
Wang, Y. et al. Virology 564, 33 – 38 (2021).
(3)
Wahl, A. et al. Nature 591, 451 – 457 (2021).
(4)
Toots, M. et al. Sci. Transl. Med. 11, eaax5866 (2019).
(5)
Jayk Bernal, A. et al. N. Engl. J. Med.
https://doi.org/10.1056/NEJMoa2116044 (2021).
(6)
Owen, D. R. et al. Science 374, 1586 – 1593 (2021).
(7)
Mahase, E. BMJ 375, n2713 (2021).
新型コロナウィルスのオミクロン株の感染者数が
世界的に激増し、日本でも1日の感染者数が3万人を超えました。
未だ、ピークを脱したとはいえず、
日本では10万人規模の感染者数になる可能性もあるという予測もあります。
また、オミクロン株は症状が比較的軽いケースが多いことから
実際の感染者数は現時点でも確認されているよりも多い可能性があります。
3回目接種の後でもブレークスルー感染が確認されている事から
オミクロン株の感染力の強さとワクチンの効力の低下が考えられます。
オミクロン株は下に一部、明記するように30以上の変異が入ってます。
その変異のうち逃避変異も複数みられることから
従来から開発されてきた抗体の効果も著しい低下が見られています。
ー
Laura A. VanBlargan(敬称略)ら医療研究グループは
各種抗体の中和能力のオミクロン株とワイルドタイプの
比較評価を行われています(1)。
以前、上梓した内容(Ref.(2))を引用し、
それに加えて具体的な数字データを引用させていただきます。
//変異箇所(ref.(2), Fig.1)//
<S1 region>
(NTD)
A67V, Del69-70, Del143-145, G142D, Del211, L2121, Ins214EPE
(RBD)
G339D, S371L*, S373P, S375F, (R346K),
K417N, G446S*, T478K, Q493R*, Q498R, Y505H
N440K*, S477N, E484K*, G495S, N501Y**
(SD1)
T547K
(SD2)
D614G**, H655Y, N679K, P681H
<S2 region>
N856K, Q954H, N969K, L981
*は逃避変異
**感染力を高める変異
//各種抗体の評価(1)//
Vir Biotechnology (⑩S309),
AstraZeneca (①COV2-2196 and ②COV2-2130, ⑫AZD8895 and ⑬AZD1061),
Regeneron (⑤REGN10933 and ④REGN10987),
Eli Lilly (⑦LY-CoV555 and ⑧LY-CoV016)
Celltrion (⑪CT-P59)
-
WA:ワイルドタイプ
B.1.1.529:オミクロン株
数字:IC50 ng/ml
Vero-hACE2-TMPRSS2 cells
-
①COV2-2196 WA:8 / B.1.1.529 126
②COV2-2130 WA:38 / B.1.1.529 471
③COV2-2196/COV2-2130 WA:16 / B.1.1.529 181
④REGN10987 WA:42 / B.1.1.529 >10000
⑤REGN10933 WA:14 / B.1.1.529 >10000
⑥REGN10987/REGN10933 WA:11 / B.1.1.529 >10000
⑦LY-CoV555 WA:14 / B.1.1.529 >10000
⑧LY-CoV016 WA:50 / B.1.1.529 8369
⑨LY-CoV555/LY-CoV016 WA:25 / B.1.1.529 >10000
⑩S309 WA:1168 / B.1.1.529 7756
⑪CT-P59 WA:3 / B.1.1.529 >10000
SARS-2-38 WA:5 / B.1.1.529 5733
⑫AZD8895 WA:4 / B.1.1.529 369
⑬AZD1061 WA:24 / B.1.1.529 1185
AZD7442 WA:5/ B.1.1.529 163
(参考文献(1) Fig.3g)
⇒
すべての抗体でオミクロン株で中和能力が低下。
4桁程度下がる抗体もあります。
一方、
①COV2-2196、AZD7442
これらは比較的低下率は低くなっています。
抗体を2種類カクテルさせたものも劇的な中和能の改善は
見られていません。
(参考文献)
(1)
Laura A. VanBlargan, John M. Errico, Peter J. Halfmann, Seth J. Zost, James E. Crowe Jr., Lisa A. Purcell, Yoshihiro Kawaoka, Davide Corti, Daved H. Fremont & Michael S. Diamond
An infectious SARS-CoV-2 B.1.1.529 Omicron virus escapes neutralization by therapeutic monoclonal antibodies
Nature Medicine (2022)
(2)
Lihong Liu , Sho Iketani , Yicheng Guo , Jasper F-W. Chan , Maple Wang , Liyuan Liu , Yang Luo , Hin Chu , Yiming Huang , Manoj S. Nair , Jian Yu , Kenn K-H. Chik , Terrence T-T. Yuen , Chaemin Yoon , Kelvin K-W. To , Honglin Chen , Michael T. Yin , Magdalena E. Sobieszczyk , Yaoxing Huang , Harris H. Wang , Zizhang Sheng , Kwok-Yung Yuen & David D. Ho
Striking antibody evasion manifested by the Omicron variant of SARS-CoV-2
Nature (2021)
doi: https://doi.org/10.1038/d41586-021-03826-3

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