2020年12月30日水曜日 0 コメント

定期的なワクチン接種の効果を考える(2)

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

免疫機能は人だけが持っているのではなくて
生物全体が持っているといわれています。
植物、無脊柱動物、脊柱動物、
脊柱動物の中でも顎がある動物、顎がない動物。
それぞれ免疫機能の働き方は異なりますが、
様々な環境に適応するためには
外敵から身を守る必要がありますから
進化の過程で結果的に生き残った生物は
その環境に適した免疫機能を有していると考えられます。
多細胞動物ではなくて
単細胞生物やミトコンドリアなどは
どのような防御機能があるのか?
そういった疑問も生まれる部分があります。
このような「違い」を考えることは
複雑に機能している人の免疫細胞のもつれた糸を
ほどく上では重要になる可能性があります。
例えば、
もし自然免疫系しか持たない植物に対して
人にとって脅威であるウィルス
例えば、インフルエンザ、コロナウィルスなどを
感染させることに成功すれば、
それらのウィルスにおける
植物が持つ自然免疫系の細胞の働きを「排他的に」
調べる事ができる可能性があります。
元々、獲得免疫系を持つ動物に対して
その機能をノックアウトさせたときに現れる結果とは
異なる可能性があります。
そこから何らかの発見が生まれる可能性があります。
--

Mihai G. Netea氏,Jorge Domínguez-Andrés氏
Luis B. Barreiro氏, Triantafyllos Chavakis氏, 
Maziar Divangahi氏, Elaine Fuchs氏, 
Leo A. B. Joosten氏, Jos W. M. van der Meer氏, 
Musa M. Mhlanga氏, Willem J. M. Mulder氏, 
Niels P. Riksen氏, Andreas Schlitzer氏, 
Joachim L. Schultze氏, Christine Stabell Benn氏, 
Joseph C. Sun氏, Ramnik J. Xavier氏
Eick Latz氏による国際的な医療、研究チームは
「訓練された免疫(trained immunity)」に対する
病気や健康について総括しています(1)。
本日はその内容の一部を
詳しく追記しながら読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は私の追記、考察

//免疫を訓練するという定義//--------
「Trained immunity」免疫を訓練する事の指針、コンセプトは
自然免疫系の免疫細胞を機能を「長期間」改変する事です。
それは外的な、内的な刺激によって引き起こされます。
その自然免疫系の機能を長期間改変させ、記憶させることで
再度同じ刺激が生じた時の反応を改変する事ができます。
それは「不活性、寛容的」になる可能性もあります。
あるいは少ないエネルギー、あるいは迅速に
免疫機能を発動できるようになる可能性もあります。
より好ましい改変としては
1度目の刺激よりも2回目の方が強く自然免疫系の細胞が
反応することで、それは可能であるとされています。
何か特定の遺伝子的な、機能的な変更を意味するものよりも
もっと長期的に記憶させるような改変です。
しかしながら、確かに
-
・β- glucan
 植物、菌類、最近などで広く分布する多糖
・LPS(リポ多糖体)
 グラム陰性細菌の細胞膜
・The bacillus Calmette–Guérin (BCG) vaccine
 ウシ型結核菌を使った結核に対する生ワクチン
-
これらのような違った刺激によって
それぞれ違った「trained immunity」が誘発されます。
-
生ワクチンによって引き出された異種の病原体に対する
身体の防御反応、免疫は長期間、5年続いた
という報告もあります(2)。
しかしながら、自然免疫系の免疫細胞に対する
免疫機能の記憶化、訓練は
抗原認識を伴うエピトープ特異的な獲得免疫系の記憶化よりも
その効力を失いやすい、可逆的である(reversible)
あるいは寿命、保持期間が短いと考えられています(3,4)。
しかしながら、重要な事として
このような自然免疫系の免疫訓練の
「継代効果(transgenerational effects)」について
近年の研究において述べられています(5,6)。
-----

例えば、母親のワクチン接種が
その後、出産した子供のワクチンに対する反応に対して
影響を与える事があるというのが継代効果です。
参考文献(1) Fig.1で示すように
自然免疫系の改変として
・後天的な遺伝子の変化
・代謝機能の改変
これらが挙げられていますが、
特に遺伝子に関しては人社会でどのようなワクチンを接種したか?
それが次世代の人たちに出産を通して
どのように受け継がれていくか?
それについて考えるのが「継代効果」ということになります。
-----

//免疫記憶に関する進化的な観点//--------
T細胞やB細胞などのリンパ球の中で確認される
獲得免疫系における抗原認識などを通した
エピトープ結合をベースとした免疫機能の記憶は
脊柱動物でおおよそ5億年前に発達したといわれています。
脊柱動物とは魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類です。
一方、無脊柱動物は病原体や組織の損傷における
免疫反応、防御反応においては
「自然免疫系の免疫細胞のみ」で行われるといわれています。
-
(「顎を持つ」脊柱動物における免疫記憶)
獲得免疫系の反応は
抗体やT細胞の抗原認識によって行われいます。
この「オンデマンド」つまりその病原体の特徴に合わせた
免疫反応はリンパ球を介した特異的な免疫記憶であります(7)。
-
(「顎を持たない」脊柱動物における免疫記憶)
ロイシン(※)を多く含んだ周期構造を作り出す
遺伝子の改変によって生じた様々なリンパ球の受容体によって
免疫記憶されます(8)。
(※)
ロイシンは人では合成できないアミノ酸の一種です。
必須アミノ酸の一つで多くの食べ物より接種できます。
-----

なぜ顎の有無で分けられるかというと
顎がある事によって「餌、食べ物が変わるから」です。
顎がある事によって咀嚼することができるので
より固い食べ物を食べることができるようになります。
食べるものが変わりますから
それによって身体の構成も異なってくると考えられます。
-
このように「顎の有無」「脊柱の有無」によって
免疫機能が異なることを利用して、
それぞれの免疫機能を排他的に調べる事ができる可能性があります。
例えば、自然免疫系しか持たない植物や無脊柱動物での
人と関連のある特定の病原体の免疫応答を調べることで
獲得免疫系の働きを排除した形で
自然免疫系の働きを分析することができます。
-----
上述した顎の有無における獲得免疫系の機序は
「受容体特異性をもつか」(顎あり)
「多様な受容体で系統的に働くか」(顎なし)
これらが異なりますが、働く免疫細胞も
「T、B細胞」(顎あり)
「gnathostome lymphocytes」(顎なし)
と異なります。
-----

今の生態系で進化の中で生き残ってきた生物は
人もその生態系の中で生存を確保していますから
いわば同じ環境内で生活しているとも言えますが、
そういった中で獲得している免疫機能を調べることは
意味がある事かもしれません。
-----
このような獲得免疫系の反応なしに
進化的に生き残ることができた生物は
地球全体で見るとその生物種は97%に達するといわれています(9)。
しかし、このような免疫の記憶は
獲得免疫系を有する脊柱動物だけが有している
とは考えにくいと考えられています。
実際に、植物も免疫記憶するといわれています。
この植物やイカ、貝類などの無脊柱動物が
実際に病原体に対する再感染を防ぐことが
近年の研究でわかってきています(7-12)。
これらの自然免疫系の記憶化、免疫訓練は
獲得免疫系の記憶に比べて、
特定の病原体に対する特異性が低く
短い期間しか持続しないと言われていますが(13)、
「迅速で」「強い免疫反応」を再感染に生み出すという
免疫記憶の特徴は自然免疫系のそれでも満たしている
と考えられています。
--------

以上です。

(参考文献)
(1)
Mihai G. Netea, Jorge Domínguez-Andrés, Luis B. Barreiro, Triantafyllos Chavakis, Maziar Divangahi, Elaine Fuchs, Leo A. B. Joosten, Jos W. M. van der Meer, Musa M. Mhlanga, Willem J. M. Mulder, Niels P. Riksen, Andreas Schlitzer, Joachim L. Schultze, Christine Stabell Benn, Joseph C. Sun, Ramnik J. Xavier & Eicke Latz 
Defining trained immunity and its role in health and disease
Nature Reviews Immunology volume 20, pages375–388(2020)
(2)
Nankabirwa, V. et al. 
Child survival and BCG vaccination: a community based prospective cohort study in Uganda. 
BMC Public Health 15, 175 (2015).
(3)
Netea, M. G. et al. 
Trained immunity: a program of innate immune memory in health and disease. 
Science 352, aaf1098 (2016).
(4)
Dominguez-Andres, J. & Netea, M. G. 
Long-term reprogramming of the innate immune system.  
J. Leukoc. Biol. 105, 329–338 (2018).
(5)
Berendsen, M. L. T. et al.
Maternal priming: bacillus Calmette-Guérin (BCG) vaccine scarring in mothers enhances the survival of their child with a BCG vaccine scar. 
J. Pediatric Infect. Dis. Soc. https://doi.org/ 10.1093/jpids/piy142 (2019).
(6)
Moore, R. S., Kaletsky, R. & Murphy, C. T. 
Piwi/PRG-1 argonaute and TGF-β mediate transgenerational learned pathogenic avoidance. 
Cell 177, 1827–1841 (2019)
(7)
Hirano, M., Das, S., Guo, P. & Cooper, M. D.  
The evolution of adaptive immunity in vertebrates.  in. 
Adv. Immunol. 109, 125–157 (2011).
(8)
Cooper, M. D. & Alder, M. N. 
The evolution of adaptive immune systems. 
Cell 124, 815–822 (2006).
(9)
Purvis, A. & Hector, A. 
Getting the measure of biodiversity. 
Nature 405, 212–219 (2000).
(10)
Conrath, U., Beckers, G. J. M., Langenbach, C. J. G.  & Jaskiewicz, M. R. 
Priming for enhanced defense. 
Annu. Rev. Phytopathol. 53, 97–119 (2015).
(11)
Gourbal, B. et al. 
Innate immune memory: an evolutionary perspective. 
Immunol. Rev. 283, 21–40 (2018).
(12)
Milutinović, B. & Kurtz, J. 
Immune memory in invertebrates. 
Semin. Immunol. 28, 328–342 (2016).
(13)
Kleinnijenhuis, J. et al. 
Bacille Calmette-Guerin  induces NOD2-dependent nonspecific protection from reinfection via epigenetic reprogramming of monocytes. 
Proc. Natl Acad. Sci. USA 109, 17537–17542 (2012).


2020年12月29日火曜日 0 コメント

定期的なワクチン接種の効果を考える(1)

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

読者の方の中には
インフルエンザの予防接種を毎年行っている方もいると思います。
これまでの数年、あるいはそれ以上の
自身の風邪やインフルエンザの罹患状況を分析するとどうでしょうか?
予防接種の効果は少なくとも
翌年に接種するときに何らかの影響を与えている
というのは考えないものですが、そうとはいえないかもしれません。
新型コロナウィルスのワクチン接種も1シーズンで終了するでしょうか?
それは未知な部分がありますが、
もし繰り返し接種するとなれば、
抗体の持続期間、流行の時期などを考えて
そのタイミングを定める事になります。
しかし、T細胞やB細胞がワクチン接種によって
受けた抗原に対する記憶の効果は少なくとも1年以上は続くと
一般的には考えられています。
そうすると繰り返しワクチンを接種することは
身体の免疫機能にとってどのような影響があるでしょうか?
積み重なる効果、定期的に免疫を刺激する効果。
必ずしも良い効果だけではなく、副反応もあるかもしれません。
それについて考える事は
これから感染症に対して向き合っていく上で
一つの重要な学域であると考えられます。

Mihai G. Netea氏,Jorge Domínguez-Andrés氏
Luis B. Barreiro氏, Triantafyllos Chavakis氏, 
Maziar Divangahi氏, Elaine Fuchs氏, 
Leo A. B. Joosten氏, Jos W. M. van der Meer氏, 
Musa M. Mhlanga氏, Willem J. M. Mulder氏, 
Niels P. Riksen氏, Andreas Schlitzer氏, 
Joachim L. Schultze氏, Christine Stabell Benn氏, 
Joseph C. Sun氏, Ramnik J. Xavier氏
Eick Latz氏による国際的な医療、研究チームは
「訓練された免疫(trained immunity)」に対する
病気や健康について総括しています(1)。
本日はその内容の一部を
詳しく追記しながら読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は私の追記、考察

//概略//--------
免疫記憶はB細胞やT細胞に代表されるリンパ球などによる
獲得免疫系に対して一般的に定義されるものです。
しかし、マクロファージ、単球、樹状細胞、NK細胞などの
自然免疫系を新型コロナウィルスのワクチン接種などによって
刺激することで次に訪れる病原体などに対するきっかけに対しての
反応性を迅速にする、高めることが可能です。
もちろんそれは上述した獲得免疫系でもいえることです。
このプロセスを私たちは
「Trained immunity(訓練された免疫)」
このようにここで定義します。
ここ10年の研究では私たちの身体、つまり宿主の
そのような訓練された免疫によって構築された防御機能が
様々な病気に良い効果をもたらすことが示されています。
-----

つまり、このことはインフルエンザや新型コロナウィルスの
ワクチン接種によって免疫機能を定期的に訓練することは
それら特定の感染症に対する効果はもちろんのこと
他の疾患に対しても効果があるかもしれないことを示唆しています。
例えば、インフルエンザワクチンの接種で
新型コロナウィルス感染が病院内で抑えられ
その時のサイトカインの反応性が良いという報告もあります(2)。
そのような例はもっと広範に確認される可能性があります。
-----
しかし、一方で注意が必要です。
そのような免疫の刺激が免疫を介した、
あるいは慢性的な炎症疾患などに通ずる副反応を生み
潜在的に悪い結果を生み出すことも考えられます。
このような「コインの表側、裏側」の正負両方の側面が想定される事を考え
例えば、ワクチン接種に対する副反応を減らし、
相対的に良い効果を大きく引き出すためには
「trained immunity(免疫の訓練)」についての
生物学的なプロセスを理解する必要があります。
それは、身体に備わっている内的な刺激、
あるいは遺伝子、代謝機能などの後天的な変化を含みます。
--------

//背景//--------
脊柱動物の免疫システムは伝統的には
自然免疫系と獲得免疫系に分類することができます。
前述した単球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞などの
自然免疫系は例えば、
新型コロナウィルスやインフルエンザなどの病原体
それら疾患などによって損傷を受けたパターンを
・パターン認識受容体(pattern recognition receptors(PRRs))
この受容体で認識します(3,4)。
-
新型コロナウィルスやインフルエンザなどの病原体
これに対しては
病原体が持つ分子パターンを認識します。
(Pathogen-associated molecular patterns)
-
疾患など組織の炎症などが生じ損傷した場合には
損傷で生じた分子パターンを認識します。
(Damage-associated molecular patterns)
-
パターン認識受容体の働きによって活性化される過程は
基本的には「迅速である」といわれています。
その過程は基本的には「特異性が低い」と言われています。
特異性が低いとは、特定の病原体「だけ」認識して
それ特有の信号を出すわけではなく、
「病原体が広く持つ共通のパターン」を認識することを意味します。
そのパターン認識受容体が病原体の分子パターンを認識するときには
その病原体あるいはその一部を
樹状細胞、マクロファージ、単球などの自然免疫系の
細胞の中に取り込む
「ファーゴサイトーシス(phagocytosis)」
この過程があります。
その他、極性などによって細胞が移動する
「Cell locomotion」
あるいは
その過程の中で病原体や細胞そのものを死滅させることもあります。
またその病原体への攻撃を含む
サイトカインの放出も行われいます。
-
このような自然免疫系の機序は
一般的には侵入してきた病原体を消滅させるためには
非常に効率的であると言われています。
また、病原体に対する「門番」であり、
感染症などから体を守る初動を担うとも考えられます。
自然免疫系の樹状細胞
あるいは獲得免疫系のT細胞、B細胞は
「病原体にあった」免疫機能を獲得することに貢献します。
それらは自然免疫系の反応に加えて付随的に起こるとされています。
これらの獲得免疫のプロセスは
一般的に「遅い」と言われています。
-----

例えば、新型コロナウィルスのワクチン接種から
B細胞が十分な抗体を発現するまでには2週間程度かかります。
これは獲得免疫系の過程が遅いことを示しています。
-----
しかしながら、これらの獲得免疫系のプロセスは
自然免疫系と異なり、病原体に対して特異的な特徴を持ちます。
例えば、特定のインフルエンザだけに効果的に効く
免疫機能を構築することができます。
これらは冒頭で述べた様に長く記憶されると言われています(5)。
-----

このような「長く続く」免疫機能の記憶が
繰り返し、定期的にワクチンを接種するときの
積み重なる効果を科学的に考えていくときの一つの
鍵となる生理機能です。
-----
このような免疫機能の「記憶」は
獲得免疫機能「だけ」が排他的に持つ生理システムである
と長い間、常識的に考えられてきました。
しかしながら
自然免疫系の免疫細胞や組織に常在する幹細胞なども
このような「獲得免疫機能」を示す可能性が示唆されています(6-10)。
-
このような免疫の記憶によってウィルスなどに対する
再感染は人以外の植物や非脊柱動物でも確認されています(11-13)。
-----

植物など人とは離れた生物の免疫機能も
人のそれと類似性が見いだせるという事です。
植物の免疫機能などに特化した包括的な報告もあります(14)。
-----
しかし、興味深いことに
植物や非脊柱動物は獲得免疫系を持たないといわれています。
このことが自然免疫系が「記憶する」ということを暗示しています。
-
さらには特定の感染症に罹患する事
あるいはワクチンを接種することは
自然免疫系の生理機序を通して他の病原体に対して
広範な防御機能を示す可能性が示唆されています(7,15)。
-
「LPS tolerance」という現象があります。
このlipopolysaccharide(リポ多糖体)は
人や動物など生物の細胞に作用すると多彩な生物活性を示す
とされています。
このようなリポ多糖体や
自然免疫系の免疫細胞表面に広く形成される
・Toll-like receptor(Toll様受容体) 
これのリガンド
これらが外部刺激によって導入されることで
自然免疫系の免疫細胞が「改変される」ということです。
これはある種の「記憶性」を生み出し、
同じ刺激が2回あるとそれに対する炎症反応は小さくなります(16)。
-----

これは免疫寛容性と関係があるかもしれません。
例えば、自己免疫疾患の一つである
エリテマトーデス、関節リウマチでは
自分の身体の中に常時ある抗原を敵とみなして
免疫機能が過剰に反応(惹起)するといわれていますが、
このように自然免疫系の免疫機能の記憶性を利用することで
免疫寛容性を生み出すことが何らかの治療につながる可能性もあります。
しかしながら、一方で
感染症に対しては、再感染した時には
自然免疫系の寄与が小さくなり、獲得免疫系の抗病原体の寄与
が大きくなることを示している可能性があります。
その時には獲得免疫系が作用する「速度」が変わっている可能性があります。
-----
参考文献(1)ではワクチン接種の臨床的な応用も含めて
「免疫機能の訓練」に関する近年の発見について議論して
この学域における未来の研究の考えられる指針について
示していく事を目的とされています。
--------

以上です。

(参考文献)
(1)
Mihai G. Netea, Jorge Domínguez-Andrés, Luis B. Barreiro, Triantafyllos Chavakis, Maziar Divangahi, Elaine Fuchs, Leo A. B. Joosten, Jos W. M. van der Meer, Musa M. Mhlanga, Willem J. M. Mulder, Niels P. Riksen, Andreas Schlitzer, Joachim L. Schultze, Christine Stabell Benn, Joseph C. Sun, Ramnik J. Xavier & Eicke Latz 
Defining trained immunity and its role in health and disease
Nature Reviews Immunology volume 20, pages375–388(2020)
(2)
Priya A. Debisarun, Patrick Struycken, Jorge Domínguez-Andrés, Simone J.C.F.M. Moorlag, Esther Taks, Katharina L. Gössling, Philipp N. Ostermann, Lisa Müller, Heiner Schaal, Jaap ten Oever, Reinout van Crevel,  View ORCID ProfileMihai G. Netea
The effect of influenza vaccination on trained immunity: impact on COVID-19
medRχiv doi.org/10.1101/2020.10.14.20212498
(3)
Medzhitov, R. & Janeway, C. 
Innate immune recognition: mechanisms and pathways. 
Immunol. Rev. 173, 89–97 (2000).
(4)
Lanier, L. L.
NK cell recognition. 
Annu. Rev. Immunol. 23, 225–274 (2005).
(5)
Bonilla, F. A. & Oettgen, H. C. 
Adaptive immunity.  
J. Allergy Clin. Immunol. 125, S33–S40 (2010).
(6)
Bowdish, D. M. E., Loffredo, M. S., Mukhopadhyay, S., Mantovani, A. & Gordon, S. 
Macrophage receptors implicated in the “adaptive” form of innate immunity. 
Microbes Infect. 9, 1680–1687 (2007).
(7)
Netea, M. G., Quintin, J. & Van Der Meer, J. W. M. 
Trained immunity: a memory for innate host defense. 
Cell Host Microbe 9, 355–361 (2011).  
(8)
Naik, S. et al. 
Inflammatory memory sensitizes skin epithelial stem cells to tissue damage. 
Nature 550, 475–480 (2017).  
(9)
Lay, K. et al. 
Stem cells repurpose proliferation to contain a breach in their niche barrier. 
eLife 7, e41661 (2018).
(10)
Christ, A. et al. 
Western diet triggers NLRP3-dependent innate immune reprogramming. 
Cell 172, 162–175 (2018).  
(11)
Kurtz, J. 
Specific memory within innate immunesystems. 
Tr ends Immunol. 26, 186–192 (2005).
(12)
Conrath, U., Beckers, G. J. M., Langenbach, C. J. G.  & Jaskiewicz, M. R. 
Priming for enhanced defense. 
Annu. Rev. Phytopathol. 53, 97–119 (2015).
(13)
Gourbal, B. et al. 
Innate immune memory: an evolutionary perspective. 
Immunol. Rev. 283, 21–40 (2018).
(14)
Isabel M. L. Saur, Ralph Panstruga & Paul Schulze-Lefert 
NOD-like receptor-mediated plant immunity: from structure to cell death
Nature Reviews Immunology (2020)
(15)
Netea, M. G. et al. 
Trained immunity: a program of innate immune memory in health and disease. 
Science 352, aaf1098 (2016).
(16)
Novakovic, B. et al. 
β-glucan reverses the epigenetic state of lps-induced immunological tolerance. 
Cell 167, 1354–1368.e14 (2016).  


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筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進展(2)

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

北祐会神経内科病院 野中道夫先生は
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の対症療法の重要性を謳われています。
症状として現れる事がある体重の減少や呼吸苦に対する
栄養や呼吸療法はALSの患者さんの今後の病状改善につながる
といわれています。
結果として出来なかったことができるようになるといった
機能の回復が見られることもあることから
対症療法はALSの積極的治療の要といえると言われています。
私は「ALSの患者さんは代謝が上がる」
この共通して現れる生理に着目しています。
人の代謝には様々なルートがあると理解しています。
その中には代謝効率が良いもの。
つまり少ない栄養で体重を維持できるもの。
もしくは代謝効率がよくないものがあります。
そのような代謝ルートの選択は
栄養、酸素、熱、水分の体内の状態、外気温などの環境、
あるいは脳の視床下部などから指令で決まっている部分がある
と考えています。
ALSでは体重減少で代謝が上がるという事ですから
代謝効率の良くない経路が選択されていると考えることもできます。
野中先生も栄養療法や呼吸療法の重要性を挙げられています。
・組織やその内の筋肉の維持に必要な栄養を送る
・代謝効率を上げるために全身に酸素を送り届ける
・環境を適温にする(あまり低温にしない)
など
人の通常の生活の中で常時
身体の恒常性に必要な環境を整えます。
そのうえで
薬剤などを通した代謝的なアプローチも考えられます。
実際にそのような研究も報告されています(2)。
一般的にALSの患者さんでは
脳神経の活動を支えているミトコンドリアの
酸素を使った呼吸のサイクルに異変がある可能性がある
とも言われています(3-7)。
いずれにしても、
これから研究開発、治験、臨床が進み
ALSに対して良い治療法が見つかったとしても
今まで培われてきた対症療法は同様に必要なものだと考えられます。
それが継続的な治療の中のベースとして存在すると思います。
また、損傷を受けた身体の組織を回復させて、
機能を取り戻すには必ずリハビリが必要だと考えられます。

本日は///ALS治療の発展///について
Matthew C. Kiernan氏, Steve Vucic氏, Kevin Talbot氏, 
Christopher J. McDermot氏, Orla Hardiman氏 Jeremy M. Shefner氏 
Ammar Al-Chalabi氏 William Huynh氏 Merit Cudkowicz氏 
Paul Talman氏 Leonard H氏 Van den Berg氏 
Thanuja Dharmadasa氏 Paul Wicks氏 Claire Reilly氏
Martin R. Turner氏からなる
国際の医療、研究チームが包括しています(1)。
その内容の一部について、追記を加えながら
読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は私の追記、考察です。

//精密医療のアプローチ、バイオマーカー//--------
ALSの患者さんはそれぞれ臨床症状が異なります。
・上部、下部運動神経システムの関与
・病状を示す分子生物学的な複雑性
これらの事から
患者さん一人一人に合った精密医療のアプローチが
今、ALS治療の一つの潮流として生まれつつあります。
参考文献(1) Fig.2で示されるように
・患者さんを分類
・症状、遺伝子的な特徴を掴む
・バイオマーカーの確認
・個別の診察、診断
・個人に合わせた治療、薬の処方
これらを系統的に行うことによって
その治療に合わない副反応、副作用が強く出てしまう
患者さんが出ないようにすることです。
これが精密医療のコンセプトです。
ALSの治療として挙げられるリチウムは神経保護の効果があります(9)。
このリチウムによって治療を行った3例における事後の分析において
その治療に対する違った効果が
UNC13Aという特定の遺伝子変異がある患者さんで生じた
と報告されています(10)。
このリチウムを使った治療は前述したように動物では
神経保護の効果があると期待されていましたが、
全体としては奏功を示さない、あるいは悪影響がある
といったネガティブな臨床結果となりました。
しかし、UNC13A変異がある患者さんでは
1年の生存率が28%向上するという一定の奏功を示しました。
-
そのような病気の特徴が異なる時の
臨床試験の結果の違いを分析するときには
進行の度合いに応じた連続的な検査、分析の中で
信頼できるバイオマーカーを見つける必要があります。
バイオマーカーとして
・血液、リンパ液、脳脊髄液などのBiofuidの検査
・神経生理学的検査
・神経状態を視覚化する検査
これらが挙げられています(9-13)。
これらを通して
①ネットワークを通した機能不全
②構造的な問題
③細胞レベルでの問題
これらの状況を分析します。
-----

①ネットワークというのはALSの症状に関わる
あらゆる筋肉を使った運動は
脳神経、脊髄、末梢神経に至るまでの神経系による
信号伝達が必要です。
その伝達経路が②構造的③細胞的な不全があり
遮断されると運動に障害がでます。
従って、マクロスコピック(巨視的)な視点で
症状を改善していくためには
そのようなネットワークベースの分析が大切になります。
-
②構造的とは、微視的、巨視的な視野を含めた
解剖学的な要素も含まれると思います。
脳に糖や酸素などの栄養がくまなく運ばれているか?
その障害となるたんぱく質などの蓄積はないか?
あるいは血栓はないか?
逆に不要なものをブロックする血管脳関門がしっかり
構造として守られているか?
このような事を解析する必要があります。
-
③細胞レベルでは神経細胞のミトコンドリアや
細胞核、リソソームなどの小器官が問題なく機能しているか?
その機能の中で細胞が正常に生命活動を続けるための
エネルギー循環は維持されているか?
また非神経細胞である脳の免疫機能を担う
マイクログリアの機能バランスは問題ないか?
星状膠細胞など他の細胞についてはどうか?
あるいは信号伝達のための軸索はどうか?
このような細胞を中心とした分析は
症状に関わる基礎的な部分なので
それをしっかりバイオマーカーによって診断する必要があります。
-----
しかし、これらのバイオマーカーは
上部運動神経系と下部運動神経系で異なり、
共通して存在するものは限られるとされています。
-
(共通するバイオマーカー、検査手法)
・Transcranial magnetic stimulation(経頭蓋磁気刺激法)(15)
急激な磁場の変化によって弱い電流を組織内に誘起させ
脳内の神経伝達を興奮させる、つまり活発にさせる
非侵襲的な方法です。
この方法により、最小限の不快感で脳活動を引き起こすことで
脳の回路接続の機能を調べることができます。
つまり、神経系の接続状況が確認できるので
そのネットワークの中で神経細胞や軸索に障害が出ているところを
視覚的に分析することができると考えられます。

この経頭蓋磁気刺激法という側頭部から磁場を当てて
脳内のネットワークの状況を調べる事は
必ずしも患者さんの予後や病気の進行度合いを
正確に予測する事にはつながらないと言われています。
しかし、リルゾールという
筋萎縮性側索硬化症の治療に使用される薬があります。
それを使用した時の脳内の変化について
この経頭蓋磁気刺激法が使わています(16,17)。
-----

つまり薬剤などの化学療法に限らず
リハビリなどの運動療法、栄養療法、呼吸療法
様々な介入を行って症状に変化が現れた時に
実際に脳内のネットワークがどのように変わっているか?
そのような検査に使うことができるかもしれません。
-----
・MRI(磁気共鳴映像法)
白質や灰白質などの脳の構造的な変化を検査することができます。
しかしながら、時間経過とともに
その傾向をグループレベルで
連続的な検査によって比較評価していくときに
この検査方法の精度、感度は一定ではないと言われています。
従って、身体の機能的な変化を
この解析方法に依拠して定量化するのは難しいという見解もあります(18)。
-
このような神経の画像と神経系の機能を
うまく組み合わせて評価していく手段は求められています。
・脳波記録法(electroencephalography)
これはALSの信頼できる信号を拾うことができるかもしれない
と期待されています(19)。
-----

これは脳の部位によっての脳波の信号を読むことができるため
ある程度脳のどの部位がどのような運動に関わっている
というのがわかっているならば、
その点にフォーカスして運動時の脳波を調べることで
その波形から脳の機能の評価を定量的に評価できる可能性があります。
シミュレーションや人工知能などによる
波形の細かい分析により
より詳細に脳の状態を分析できる可能性があります。
-----
・脳脊髄液、血液などによる分析
この分析で病気の進行度合いとの関連を調べることができます。
とりわけ頭脳の部分にあたる上部運動神経系の症状に
関連性の高い要因を分析することができます(20,21)。
例えば、
神経フィラメントの軽鎖のレベル
これを調べることができます(21)。
----

この神経フィラメントの軽鎖は神経細胞の細胞質(細胞内空間)の
タンパク質を示しており神経細胞を繋ぐ軸索にも
多く存在していることが分かります。
この軸索がダメージを受けていると
(その室内にあるたんぱく質が外部に流れ出すためか?)
その周辺に流れている脳脊髄液や
そこから流入される脳の血液に
この細胞質のタンパク質(神経フィラメントの軽鎖)が
多く混じることになります(22)。
従って、このレベルを評価することで
神経細胞や軸索がどれくらい損傷を受けているか測ることができます。
このような神経フィラメントに限らず
脳の神経細胞の中の代謝生成物質の中で特異的に表れるもので
それがミトコンドリアやオートファジーの改変と関係があるのであれば、
その物質を液体生体検査で特異的に調べることで
代謝機能の評価もできる可能性があります。
----
従って、治療を行っていく際に
この神経フィラメントの量が減っていくようであれば
神経細胞や軸索のダメージが減っていることであり
治療の効果が出ている事が示されます。
-----

もし、神経フィラメント軽鎖が減っているにもかかわらず
運動機能が改善していない場合には、
細胞などのベースとしての機能は改善されているけど
そのネットワークを機能させる
リハビリなどの運動介入が不足している
という風に捉えることもできるかもしれません。
-----
しかしながら、バイオマーカーを使った
ALSの評価は複雑性も孕んでいます。
その理由はALSは複数の経路の関係性、流れの中で
決まっている可能性があるからです。
-
ALSには「Airlie House guidelines」という
治療のガイドラインがあります。
それによると個別治療、精密治療を可能にする
特異的なバイオマーカー、検査方法の必要性が謳われています(23)。
-
このようなバイオマーカーが定まると
ALSのリスクが高い予備群に当たる人の
予防的な治療が可能になる可能性もあります。
-
現状では脳脊髄液、末梢の血液検査によって
・intronic GGGGCC expansion in C9orf72 
これを調べることで
症状が生じる数十年前にリスクについて評価できる
可能性が示されています(24)。
その他に
糖、脂質、アポリポタンパク質
これらの代謝的なバイオマーカーによって
ALSのリスクを評価できる可能性が示されています(25)。
-----

神経細胞内や軸索などの代謝機能が変わるというのは
ALS患者さんでは広く症状として現れていますので
細胞内の代謝プロセスを詳しく研究して
その中で現れる特異的な代謝生成物を探索できれば
その代謝生成物が液体生体検査における
バイオマーカーになる可能性があります。
なぜなら、細胞内の物質は
神経細胞や軸索の膜が破壊されると外に出るからです。
-----

//追記//
画像や磁気波形を使った構造的、機能的な解析
あるいは脳脊髄液、血液などの分泌物の解析
これらによって
・ネットワーク
・構造
・細胞
これらについて多面的に分析できる可能性があります。
また、人工知能などを解析評価手段として両立させることもできます。
さらに患者さんのデータがもし国際的に共有されれば、
統計的な分析から様々な事が導き出せるかもしれません。
それによって
ある程度の治療のガイドラインの設定に役に立つ可能性があります。
また、脳の血管や間質のタンパク質の状態
あるいは脳血管関門の状態など
脳の疾患に共通して関係のあるようなバイオマーカーの検出
分析もALSの症状の状態を診断する上での一つの情報になる
と考えることもできます。
-----

以上です。

(参考文献)
(1)
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2020年12月28日月曜日 0 コメント

増殖に関わるたんぱく質、薬剤について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

今、新型コロナウィルスの治療薬として承認されている
レムデシビル。
あるいは承認申請されているアビガン。
レムデシビルはエボラ出血熱、アビガンはインフルエンザの
治療薬として開発されたもので、
それを新型コロナウィルスの治療に生かそうというものです。
共に細胞内でウィルスの増殖に関わるRNAに作用するものです。
RNAが増殖して、ウィルスが細胞内で数を増やすので
その働きをブロックすることで増殖を抑えようとするものです。
このようなアプローチは
RNAウィルスの治療薬開発において一つの中核となるものだと思います。
従って、新型コロナウィルスの治療薬をスクリーニングして
多くの候補の中から効果的なものを選び出す際には
如何にRNAの増殖機能を抑制できるか?
このような視点で考えられるものだと理解しています。

Nora Schmidt氏ら研究グループは
新型コロナウィルスRNAの増殖の際に
その宿主、人が持っているタンパク質の作用に注目し
RNA増殖に関連性の高いタンパク質を選び出し、
その働きを阻害することで効果的に薬を生み出すことを提案しています(1)。

新型コロナウィルスは+単鎖のRNAらせん構造を持っていますが、
そのRNAが増殖する際には転写、翻訳というプロセスが必要ですが、
翻訳の準備のためRNA分子は、
宿主である人などの細胞内のタンパク質を取り込んで
その過程に利用すると言われています(2)。
このような事を含めて新型コロナウィルスは
存在を繋ぐために宿主細胞の様々な因子に依存します。
それはRNAの安定性、過程、局所性、翻訳など様々です(1)。
一方で
宿主細胞はそのような新型コロナウィルスなどの
未知の侵入に対して適切な免疫反応を持っていて
自ら感染細胞を自滅させたりするような
内的な、自然免疫反応を有しています(3)。

従って
①ウィルス抑制に働くタンパク質
②ウィルス増殖を助けるタンパク質
これらの両方が人や動物などの宿主細胞にあると考えられます。
従って、薬剤における介入においては
①を強める、維持する薬
②を弱める、消去する薬
これらが求められます。
そこでNora Schmidt氏ら研究グループは
1万種類以上の人の肝臓の細胞のタンパク質を振るいにかけ
その中で重要なたんぱく質を5種類抽出しました。
①ウィルス抑制に働くタンパク質
CNBP、LARP1
②ウィルス増殖を助けるタンパク質
PPIA、ATP1A1、ARP2/3 
これら5種類です。
以下、これらにおいて個別に詳しく説明していきます。

//ウィルス抑制タンパク質:CNBP//-----------
Cellular nucleic acid-binding protein (CNBP)
CNRPは細胞内の自然免疫系反応を活性化させるタンパク質です。
新型コロナウィルスなどの病原体を認識して
自らの細胞を細胞死させるような
炎症性サイトカインを放出します(4,5)。
このCNRPを人の肝臓の細胞においてノックアウトさせたところ
ウィルスのRNAレベルは3倍程度に高まりました。
(参考文献(1) Fig.4(b)より)
このことから新型コロナウィルスにおいて
CNRPが抗ウィルス効果を持っていることが
「試験管の結果において」確認されました。
-----------

//ウィルス抑制タンパク質:LARP1//-----------
 La-related protein (LARP) 
ヌクレカプシドタンパク質で
タンパク質とタンパク質の相互作用を促す物質です(6)。
このたんぱく質はウィルスの増殖に関わる
PI3K/Akt/mTOR経路を抑制することで抗ウィルス性を示します(7)。
これはmRNAに結合することが知られています。
このLARPをノックアウトさせた細胞では
5倍高い細胞内RNAが確認されました。
(参考文献(1) Fig.5(e)より)
従って、新型コロナウィルスにおける
抗ウィルス性に関わっているタンパク質です。
それが「試験管の結果において」確認されました。
-----------

②ウィルス増殖を助けるタンパク質
PPIA、ATP1A1、ARP2/3
これらを抑制すると抑制量依存的に
他の候補となるたんぱく質に比べて
新型コロナウィルスにおける抗ウィルス性において
顕著な効果が得られています。
(参考文献(1) Fig.6より)

//ウィルス増殖タンパク質:PPIA//-----------
ウィルスの増殖に置いて必要な
タンパク質の折り畳み(適切な配座、構造の変化)
これに関与するタンパク質です(8,9)。
これを抑制するAlisporivir(アリスポリビル)が
薬剤の候補として挙げられます(10)。
-----------

//ウィルス増殖タンパク質:ATP1A1//-----------
ウィルスのRNAに結合する代謝機能を調整する酵素です(11)。
呼吸器系疾患に繋がるウィルスにおいて
このたんぱく質の役割が以前から報告されています(12,13)。
ATP1A1はウィルスによって細胞が死滅する
つまり組織の炎症などにつながる機序において
重要な役割を担っていると考えられています(14)。
-----------

//ウィルス増殖タンパク質:ARP2//-----------
Actin-related protein 2/3 complex
これは細胞の形状や運動性に関わるたんぱく質で
細胞内の病原体に影響を与えます(10)。
ARP2は呼吸系疾患に繋がるウィルスに対して
働く宿主細胞の一つのタンパク質であり
filopodiaという細胞質突起の形成に関わる物質です(15)。
ウィルスはこの突起の部分に局在して
多く存在することがわかっており、
新型コロナウィルス感染細胞では
この細胞質突起が多く存在していることが確認されています(16)。
-----
(追記、考察)

細胞質の突起に新型コロナウィルスが多くいるならば
細胞質の内側にいるのではなく
尖った表面近くに多くいるということですから
薬剤で新型コロナウィルスRNAを攻撃するときには
そのような「場所特異性」をうまく生かして
薬剤アクセスさせるような方法が考えられます。
-----
-----------

//追記、考察//------------
新型コロナウィルスウィルス増殖のためには
・折り畳み(構造的な要因)
・代謝、反応(エネルギー、栄養的な要因)
・運動(場所、空間的な要因)
これらが関わっていることが考えられます。
従って、一つの要因を抑制するだけではなく
複数の要因を絡めて薬剤介入することができないか
と考えられます。
また体に備わっている防御機構もあるので
それを阻害しない、あるいは高めるためにどうしたらいいか?
薬剤的、化学的な介入だけではなく
環境的な介入も含めて考える必要があります。
------------

(参考文献)
(1)
Nora Schmidt, Caleb A. Lareau, Hasmik Keshishian, Sabina Ganskih, Cornelius Schneider, Thomas Hennig, Randy Melanson, Simone Werner, Yuanjie Wei, Matthias Zimmer, Jens Ade, Luisa Kirschner, Sebastian Zielinski, Lars Dölken, Eric S. Lander, Neva Caliskan, Utz Fischer, Jörg Vogel, Steven A. Carr, Jochen Bodem & Mathias Munschauer 
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(2)
Tay, M. Z., Poh, C. M., Rénia, L., MacAry, P. A. & Ng, L. F. P. 
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(3)
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Cell 182, 685–712 (2020).

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生体工学ナノ粒子輸送系統と精密医療(8)

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

関節リウマチなどの自己免疫疾患はもちろんの事
新型コロナウィルス、インフルエンザなどの感染症、
癌や脳神経疾患などほとんどの疾患は、
少なくとも患部局所において
免疫機能のバランス、均衡状態崩れていると考えられます。
身体に何らかの異常が生じた時
健康維持のために全身、24時間監視を行っている
免疫機能はそれを鎮めるために活性化されますが、
その異常が許容範囲を超えると
免疫機能だけでは抑えきれなくなり、
攻撃性を持つ免疫機能が逆に体を傷つけてしまうことがあります。
そのような損傷を炎症と呼びますが、
患部の細胞が損傷し、組織としての機能に異常が生じている状態です。
また、癌などでは免疫を逃れるシステムもあり、
腫瘍組織として成長すると
それを退行させるための免疫機能が働きにくくなることもあります。
そうした疾患を治癒していくためには
身体が持つ自然の治癒能力だけでは疾患が進行してしまうので、
それを治癒に向かわせるようにバランスを整える必要があります。
そのバランスの一つは今述べた様に免疫機能です。
崩れた、歪められた免疫機能の天秤の状態を整えつつ
患部の治癒を促すためには
患者さんの免疫の状態の検査、分析と
治癒に必要な免疫機能を引き出す必要があります。
そうした場合には、特定の免疫機能をできるだけ正確に引き出すような
薬剤などの介入が必要になります。
免疫療法における精密医療の目指すところの一つは
今述べたような任意の免疫機能を引き出すことにあると思っています。

本日は免疫療法に対するナノ粒子の輸送について
Michael J. Mitchell氏, Margaret M. Billingsley氏, 
Rebecca M. Haley氏, Marissa E. Wechsler氏, 
Nicholas A. Peppas氏, Robert Langer氏の研究グループが
今までの研究実績を包括している(1)ので
その内容の一部について考察を追記しながら
読者の方と情報共有したいと思います。

//癌に対するナノ粒子輸送//---------
癌に対して免疫細胞が働くときには
その癌組織から放出される癌抗原(Cancer associeted antigen)を
免疫細胞が認識して、癌細胞に特異的に結合して
例えば、細胞傷害性を発揮して癌細胞を死滅させます。
その際に癌から生み出されるたんぱく質などの抗原に着目して
それを感染症などで使われるワクチンの機序で
その抗原を生み出して、癌組織に対して
免疫細胞が働きやすくなるようにするのが
癌ワクチン(Cancer vaccine)であると考えています。
それを患者さん個人個人に合うように作れないか?
これについて鋭意研究開発されています(2-4)。
これをナノ粒子による輸送によって
運ばれる間、抗原が周辺物質から影響を受けて
変質しないようにすることが試みられています。
実際に、新型コロナウィルスのワクチンでは
・モデルナ社(さん)
・ファイザー社(さん)、ビオンテック社(さん)
これらの企業によって
身体の細胞と性質が似ている脂質ベースのナノ粒子によって
抗原の情報(核酸)が運ばれています。
このようなナノ粒子を使った輸送によって
新型コロナウィルスのワクチンによる予防の効果が得られています。
このような技術、実績は
ナノ粒子を使った他の免疫療法に生かすことができます。
--------------

//抗原提示細胞へのナノ粒子輸送//-----------
マクロファージ、樹状細胞、B細胞は抗原提示細胞です。
これらの抗原提示細胞は負に帯電しているため
その相互作用を高めるために正に帯電したナノ粒子が
輸送媒体として選択されることがあります(5,6)。
これらの抗原提示細胞は
糖を認識するレクチン受容体があり
この受容体を使って抗原を取り込んで抗原提示するので
その受容体との結合性、親和性が利用されることがあります(7)。
-
(樹状細胞)
・C-type lectin receptors lymphocyte antigen 75 (DEC-205)
・C-type lectin domain family 9 member A (CLEC9A)
これらがナノ粒子の標的とされます(8)。
脂質タンパク質のナノ粒子表面が
・Scavenger receptor class B1 (SRB1)受容体
これを活性化させることがあります(15)。
-
(マクロファージ)
・Mannose 
これがナノ粒子の標的とされます(9-11)。
マクロファージに輸送される場合
・Galactose・Dextran・Sialoadhesin 
これでナノ粒子の周りがコーティングされることがあります(11-13)。
-
(B細胞)
・CD-19
これが標的とされます(14)。
-
(ナノ粒子の設計)
ナノ粒子は免疫作用を持つ抗原が自然に生み出される
肝臓や脾臓などの臓器に蓄積されるように最適化されます(16)。
抗原提示をする免疫細胞を引き付けるシステムとして
ポリマー性のヒドロゲル、土台が使われることがあります(17)。

//インターフェロン誘発因子STINGへのナノ粒子輸送//-------------
免疫作用を活性化させるための
インターフェロン誘発因子STINGの機能を高める
・Cyclic dinucleotides
これが使われることがあります。
しかし、極性が強く不安定性が高く
それによって免疫細胞内への取り込みが阻害されます(18)。
その様な極性をナノ粒子で保護することで
輸送の際に弱めることができるため
ナノ粒子によってSTINGアゴニストの輸送効率を高める事ができます(19-21)。
そのようなアゴニストと近い周期構造を
脂質からなるナノ粒子に組み込むことで
ナノ粒子そのものがSTING経路を高める事にも成功しています(22)。
-------------

//T細胞へのナノ粒子輸送//-------------
標的とする受容体
・PD1(23)・CD3(24)・THY1(CD90)(25)
-
(癌)
・tLyP(制御型T細胞)(26)
・PD1・PDL1・CTLA4(免疫チェックポイント阻害)
PD1のモノクローナル抗体をナノ粒子で輸送(27,28)

(CAR-T細胞:キメラ抗原T細胞)
癌細胞への標的性、選択的傷害性を高めるために
患者さんから取り出したT細胞の遺伝子を組み換えをします(29)。
その際に人工的な抗原提示細胞が使われることがありますが、
これらは通常、生体外の試験管内で行われますが、
ナノ粒子を使うことによって
これらのプロセスを生体内で行うことも可能です(29,30)。
このような生体内の構想では
T細胞に特異的に発現させたい糖たんぱく質受容体の
遺伝子情報をナノ粒子にT細胞まで輸送することが可能です(31,32)。
-------------

//免疫抑制因子ナノ粒子輸送(自己免疫疾患治療)//------------
(エリテマトーデス、関節リウマチ)
これらの疾患では自分の体の中に本来多く存在する
抗原(自己抗原)に対して過剰に免疫細胞が反応することで
全身や関節などの炎症が生じる事です。
T細胞やB細胞の獲得免疫系が
この自己抗原に対して感受性を示すようになります(33)。
これらの免疫機能を抑えるように免疫機能抑制剤が使われますが、
通常、重篤な副作用があるとされています。
従って、
これらの免疫機能が「どの自己抗原」に対して
抗原認識して獲得免疫系の惹起が起こっているかを明らかにして
「その特異的な自己抗原だけ」標的した治療が提案されています(33)。
--
免疫機能を調整する制御性T細胞の数を増やすために
抗CD2/CD4抗体がT細胞に対してナノ粒子を通して
輸送することが検討されています(34)。
--
自己免疫疾患は免疫機能が敏感になることですから
「免疫寛容性」を手に入れることが大切です。
つまり、抗原に対する一定の感受性を下げて、
「それは体の中に存在しても問題ない」と
免疫機能に憶えさせることです。
例えば、B細胞では
・Sialic acid- binding immunoglobulin-like lectins(Siglecs)
これが免疫寛容性を上げると言われています(35)。
--
制御性T細胞の数を増やすためのサイトカイン
・IL-2・TGFβ
これらをナノ粒子で輸送することで
エリテマトーデスの症状緩和につながったという報告もあります(34)。
--
また自然免疫系の樹状細胞の機能を
ビタミンDで改変する事で免疫機能抑制効果があります(36)が
系統的に投与することは
カルシウム濃度の異常上昇(Hypercalcaemia)を生じてしまうために
ナノ粒子による選択的投与が考えられています。
--
Clarithromycin-Loaded Poly (Lactic-co-glycolic Acid) (PLGA)
これによるナノ粒子は免疫抑制を輸送することができ
拒絶反応が起きにくいといわれています(37)。
タクロリムス(免疫抑制剤)の28日間の継続輸送が
ヒドロゲルに固定したナノ粒子によって可能になりました(38)。
--
長期的には遺伝子のレベルで
自己抗原に反応する免疫細胞の機能を改変するようにすることが
より効果的である可能性があります(39)。
この際にもCrispr Cas9などの遺伝子編集を細胞特異的に行うためには
その細胞内までの輸送をナノ粒子などを使って行う必要があります。
-------------

以上です。

(参考文献)
(1)
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2020年12月27日日曜日 0 コメント

B細胞を通した抗体発現の機序

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスの感染拡大が関東を中心に続いています。
昨日は東京では949人の新型コロナウィルス感染者が確認されています。
週平均で見ても爆発的ではないですが、
東京の感染拡大は続いているという評価がほぼ確定的にできます。
医療崩壊、医療従事者の方の負担にもつながる
中等症、重症患者数も感染拡大に伴い増加しています。
経済の事も見ながら、ギリギリの状態で耐えているという状況だと思います。
もし、インフルエンザのように特効薬があって
また、治療のガイドラインも定まっていれば、
感染した時に最寄りの診療所で発病初期に処方されて
それを服用すれば治ります。
そうであれば普通に社会経済活動をする事や
国際関係を築くことができますが、
実際にはそのような特効薬もなく、
治療のガイドラインも定まっていません。
また新型コロナウィルスは潜伏期間が長いことから
「治療が後手に回る」という特徴もあります。
医療の介入が必要な時には症状がかなり進行しているということです。
そのような事を総合的に考えると
今、世界で承認され始めているワクチン接種が
もっとも合理的な対策だと考えられます。
ワクチンは「発病前の予防的な介入」だからです。
日本政府も2月末に医療従事者から接種する計画を立てています。
それが1日でも1週間でも前倒しされれば、
社会経済にも大きなインパクトがありますし、
医療従事者の方を始め、今大変な思いをされている方の
「耐える時間」を短くすることができます。
現状で薬よりもワクチンの開発が先行されていますから
そのワクチンについて詳しく考える事の重要性は高いと考えています。

そのワクチンは様々な種類がありますが、
新型コロナウィルスの抗原、
あるいは抗原を作る設計図を入れて
その抗原を自然免疫系などの力を借りながら、
B細胞やT細胞に認識させて、そのB細胞が独自に発展を遂げて
新型コロナウィルスに対して中和能力を持つ
特異的な抗体を発現することができるようになります。
新型コロナウィルスのワクチンは
肩の三角筋に筋肉注射されますが、
そこで抗原やその設計図、アドジュバントが
身体の中に入ってから抗体が発現するまでの詳細なプロセスは
まだ不透明な部分は多くあると思っています。
その過程を細かく考えることは
よりワクチン開発を「統一的(ユニバーサル)」にする上で大切になります。
つまり、抗体の発現までの過程を理解することは
インフルエンザなどの他の呼吸器疾患感染症
今後生じるかもしれない別のコロナウィルス
あるいは他の感染症のワクチン開発にも生かせる可能性があります。
また、新型コロナウィルスはこれだけ世界中に蔓延しているので
一部の国が集団免疫を獲得しても、
すぐに世界から消えるわけではないと思います。
インフルエンザのように毎年流行することも否定はできません。
そうした場合には「継続的なワクチン接種」が必要になりますが、
その場合においても
繰り返しワクチンを接種した時の免疫機能を始め体の効果を
理解するためには上述した抗体が生み出される過程を理解する
必要があります。

Dennis S. W. Lee氏、Olga L. Rojas氏、ennifer L. Gommerman氏
研究グループは今述べた抗体の発現までのプロセスに関わる
B細胞の活性化、生理機序について詳しく包括しています(1)。
本日は、その内容の一部を追記を加えながら
読者の方と共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は私の追記、考察

//胚中心の過程について//----------
胚中心は新型コロナウィルスのような感染症において
その抗原に特異的なB細胞、T細胞の相互生理作用において
重要な微小環境にある部位であると考えられます。
この胚中心は
・扁桃腺・脾臓・リンパ節
これらの2次リンパ臓器の中に存在します。
---
胚中心は「①Dark zone」と「②Light zone」の
二つの区域に分かれます。
①Dark zoneには多くのB細胞が所せましと存在し
そこで体細胞の変異を経て抗原に特異的な発展を遂げています。
そして①Dark zone⇒②Light zoneにB細胞が輸送され
そこで抗原を捕獲します。
この領域でB細胞は抗原を効率的に認識するために
T細胞から補助的な作用を受けます。
-
胚中心があるリンパ節では祖先が異なるB細胞が
マクロファージから胚中心に存在する樹状細胞に
抗原を輸送する役目を果たします(2,3)。
その樹状細胞によって影響を受けた抗原は長い間持続します。
その抗原は表面が覆われていて
エンドソーム(樹状細胞の中の胞)と
樹状細胞の表面の間を移動します(4)。
このような樹状細胞は胚中心の中で
B細胞の受容体を調整することによって
B細胞の胚中心の分布を安定化させるような作用を生み出します(5-7)。
-----

樹状細胞は胚中心の中でネットワークを形成していて
胚中心の中のB細胞の分布、輸送などを制御すると考えられます。
マクロファージや樹状細胞は
ワクチンで使われるアドジュバントに対して
パターン認識受容体で抗原を認識する際において重要な役割を担っています。
B細胞が胚中心で抗原特異的に発展を遂げるためには
・パターン認識して活性化する事
・マクロファージや樹状細胞が胚中心に向けて移動する事
・マクロファージや樹状細胞が胚中心に存在する事
これらが必要な可能性があります。
-----
胚中心の中ではナイーブB細胞が
記憶B細胞、血液中のB細胞に発展を遂げます。
その過程において抗原特異的な抗体を生み出す能力を
少しずつ獲得していきます。
(参考文献(1) Fig.1より)
-----

従って、その過程において胚中心から
血液中への移動があり、血液中において
新型コロナウィルスなどのウィルスに特異的な抗体が発現され、
全身に運ばれると考えられます。
-----
その初期段階の発展では
ヘルパーT細胞からの生理的な影響を受けます。
CD40-CD40Lの結合を通して
ヘルパーT細胞から必要な信号を受けて
B細胞は抗原特異的な抗体(はじめはIgM、IgD)を
細胞表面に発現できるようになります。
それは扁桃腺で起こるといわれています(8)。
-----

扁桃腺は喉の部分にあり、
口腔、鼻腔、気管入口近くにあります。
ゆえにワクチン接種によって抗体をうまく生み出すことができれば
ウィルスの入り口である口腔や鼻腔でウィルスに対して抗体が働き
そこから気管支や肺胞に入る時には
すでに入り口で抗体がウィルスに作用している状態を
一定割合実現できる可能性があります。
従って、ワクチンにおける呼吸器系の感染症に対しては
初期消火という点において有効性が高いと
解剖、組織の観点から見ればいえる可能性があります。
-----

//B細胞の発展、変化について//----------
活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)によって
B細胞などの体細胞の遺伝子は変異して
B細胞表面にある受容体を変化させます。
結果として新型コロナウィルスの中和の高い抗体が発現している
場合には、この受容体の変化において
抗原に対して特異的、親和性の高い受容体の発現が
促されたと考えることができます。
----------

//胚中心の外(Extrafollicular)の過程について//
胚中心以外のExtrafollicular B細胞においても
感染中の抗体の早期の源となっていることがわかっています(9)。
抗体を発現するプロセスは胚中心の場合と異なり
ヘルパーT細胞の相互作用を受け
CXCR4受容体やGPR183受容体の発現を通して抗体を分泌します。
--
Extrafollicularとは
具体的にどのような身体の臓器、場所が含まれるか?
--
・扁桃腺
・腸
(10,11)
--
・滑膜(関節の部分を覆う膜)※リウマチ患者
・唾液腺※Sjögren syndrome(ドライアイ、ドライマウス)
(12-15)
--
これらでのB細胞の活性化が確認されています。
この領域でのB細胞は
・BAFF(B細胞活性化因子)
・Toll様受容体7(TLR7)
これらが生存因子となり
B細胞の生成において重要な役割を果たしています(16,17)。
-----

Toll様受容体は自然免疫系だけではなく
B細胞にも複数の種類が形成されているため
ウィルスなどの病原体をパターン認識して
いくつかの機能を有していると考えられます。
例えば、ウィルス特異的な抗体の反応、発展に関わっています(18)。
従って、ワクチン接種において
アドジュバントを混入させたものに関しては
自然免疫系だけではなく、B細胞にも働きかけ、
その機能が抗体発現に影響を与えている可能性があります。
-----
胚中心との違いは
その外側では成熟B細胞の生成の後に
ウィルスのパターンに合った抗体を出すために
機能をスイッチさせることです(class-switched B細胞)。
胚中心ではナイーブで未成熟な(?)段階から
B細胞の発展に寄与すると考えられています(19)。
従って、胚中心とそれ以外の所では
基礎となるB細胞の発達段階が異なるということです。
メモリーB細胞の少なくとも一部は
脾臓やリンパ節の胚中心で発現されるCXCR5が陰性であり
そのことは胚中心の外(Extrafollicular)で成熟したことを
意味しています(20)。

-----

//追記、考察//---------
今までは胚中心でB細胞が発展して抗体発現に関わっている
と考えていましたが、
その経路の有無にかかわらず、
血液内に存在する成熟したB細胞が
B細胞活性因子やパターン認識受容体などが刺激されることで(?)
B細胞の特性が変わり(Class-switching)、
その信号に応じた抗体を発現するようになる可能性も示唆されています。
胚中心がある場所は
脾臓、扁桃腺、リンパ節など限られていますが、
胚中心以外でもB細胞を通した免疫活性があることから
体中どこでも外部刺激に応じた免疫反応を示すことが考えられます。
実際に新型コロナウィルスのワクチンを接種した時
あるいは感染した時に発現される抗体が
どのようなプロセスを経ているか?
これを考えるときには大枠として
胚中心内外のB細胞の発展について個別に考える事が挙げられます。
ひょっとすると胚中心の中、胚中心の外の経路で
それぞれ発展を遂げた特異的B細胞は異なり
それによって発現される抗体も微妙に違うという事は
可能性としてはあるかもしれません。
----------
-----

(参考文献)
(1)
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筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進展(1)

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

アルツハイマー病、パーキンソン病などを始め
この筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィーなど
様々な脳の疾患があります。
肝臓の病気でも
脂肪肝、肝硬変、肝臓癌などがあります。
これらの一連の肝臓の疾患は
組織が線維化して硬化して
やがて癌化するといった「進行性」があります。
上述した脳の疾患の特徴も「進行性」というがあります。
少しずつ病状が重くなっていくといったことです。
このような傾向は脳神経の疾患は強いかもしれません。
病気が不治であるというのは、
「進行性の疾患に対して回復軌道に乗せる事ができない。」
ということです。
組織には免疫細胞を始め、損傷を修復するという機能がありますが、
なぜか脳の疾患については
修復>損傷という不等号の関係が
明かな疾患が発症した後、起きないということです。
つまり、修復<損傷という明らかな関係が生まれると
この不等号は今のところ反転させることができないということです。
もし、修復のほうが上回れば、
時間が経つにつれて組織の状態は良くなっていくので
回復する、治癒するという事が考えられます。
それがなぜ起きないのか?というのが一つの疑問ではあります。

Matthew C. Kiernan氏, Steve Vucic氏, Kevin Talbot氏, 
Christopher J. McDermot氏, Orla Hardiman氏 Jeremy M. Shefner氏 
Ammar Al-Chalabi氏 William Huynh氏 Merit Cudkowicz氏 
Paul Talman氏 Leonard H氏 Van den Berg氏 
Thanuja Dharmadasa氏 Paul Wicks氏 Claire Reilly氏
Martin R. Turner氏からなる多国間の医療、研究チームは
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の臨床を踏まえた進展について包括しています(1)。
その内容の一部について、追記を加えながら
読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は私の追記、考察です。

//背景//--------
名古屋大学大学院 医学系研究科 祖父江先生の調査(~2015)によれば
日本におけるALSの患者さんの数は1万人で
毎年1000人~2000人が新たに診断されると言われています。
ALSの発症数は50~70代に多く1975年から増加傾向にあります。
人によって症状は様々であると言われますが、
今の医療では典型的な機関としては2~3年で命を落とされる
といわれています(2,3)。
ここ25年間の研究でALSに関する病理の理解は進んできましたが、
この治験を効果的な治療に結びつけるトランスレーショナル医療においては
課題が山積されています。
今日においても、ALSの患者さんは次世代の有望な医療の治験には
ほとんど参加できない状況です(4)。
その原因は
①大規模な研究施設、設備が整っていない事
②治験に必要な協力の不足
③症状が個人個人バラバラである事(Heterogeneity)
④治験には長い期間必要な事
⑤確証のあるバイオマーカーがない事
⑥治験結果を評価する基準が定まっていない事
これらが挙げられています(5)。
-----

③⑤⑥ある薬Aの効果を試す治験をするとします。
その場合薬Aを投薬するグループと偽薬のグループをランダムに設けます。
もちろん患者さんにはそれについては知らせていません。
両方とも「治療に良い効果が期待される薬を投薬されている。」
と医師の方から告げられます。
その比較の際には
できるだけそれぞれのグループの年齢、性別、既往歴などを
揃えることが薬の真の効果を試すうえで好ましいです。
しかし、肝心のALSの特徴が異なると
そもそも一つの薬に対する効果は当然異なるわけですから
薬効を比較の中で確かめることができません。
その薬が「治癒に向かう」というブレークスルーがあれば、
今までそれが確認されていないわけですから
確かに薬は効いていそうだとわかりますが、
そうではなく進行を遅らせる薬であれば、
どれくらいの期間、程度、薬が進行を抑えたのかというのは
比較ができないのであれば測りようがありません。
従って、薬の効果を試すためには
何らかの基準が必要です。
あるいは今までには全く確認されなかった
なんらかの良い効果(例えば治癒、回復)が必要です。
-
②④脳の疾患の進行を遅らせる事、あるいは回復を評価するためには
リハビリも必要なので長い期間の経過観察が必要です。
長い期間かかるという事は
それだけ人的資源や金銭が必要です。
また、効果が確認できなかった時のリスクも大きくなります。
それが治験を阻んでいる理由の一つだと考えられます。
-
従って、ALS医療の発展を短期間で実現するには
その安全性や効果を短期間で測れるような客観的な指標が必要になります。
もし仮に寿命のサイクルの早い動物でALSの回復が確認出来て
それを人で応用しようとしたときには
まずは人に近い動物、人による小規模の試験、中規模、大規模となっていきます。
それを数年で実現しようすれば、
それぞれ半年くらいで終わらせる必要があります。
治験において半年で結果を判断するためには
生命のサイクルが速い動物で回復の時に見せた特異的で疑いのない
何らかの信号(バイオマーカー)などを見つけて、
それが確かに人に近い動物で確認されたときに
安全で、回復の基調を見せる、、、
という事でよいかどうか?です。
おそらくALSを完治させるのは
細胞や細胞外の組織を短期間で修復できたとしても
それを運動につなげるのに時間がかかると考えられるので
それ相応の時間が必要になると推測しています。
もしそれが当てはまるとするならば、
それぞれの段階で完治を待っていれば、
あっという間に5年、10年過ぎてしまいます。
そのような治験を行う実施側の体力もありません。
従って、どのようにして短くするか?
色んなストーリーを描きながら現実的に考えていく必要があります。
-----
上述したような課題があるため
臨床やトランスレーショナル(基礎から応用までの)神経科学を
含めた強いネットワークが必要だと考えられています(1)。
参考文献(1)では
基本的な神経科学の観点から
ALSの現在の状況について評価されています。
その中には近年、
・分子生物学的(細胞などの観点)で分かったこと
・治療の観点での進歩
⇒バイオマーカー、過去の薬を再利用(リパーポス)、
 高生産性の薬の選び出しなど
-
次の事を分析しています。
・分子生物学的な技術
・遺伝子や細胞などに対する治療
-
次の事を考えます
・患者さんの検査結果や症状の評価制度を高め
そこから新しい治験のプログラムを提案する事
--------

//ALSについて//--------
(ALSの診断)
ALSの診断は上部、下部の運動神経細胞の異常の確認から始まります。
その運動神経細胞は脳、脊椎、末梢神経系を含みます(6)。
--
(症状について)
典型的な症状は
・話しづらくなること
・飲食物を飲み込みづらくなること
・手足が弱くなること⇒進行すると麻痺につながる
これらが挙げられています(2,3,7)。
-
逆に症状として現れる事が稀なもの
・2型の呼吸障害(肺胞の酸素と二酸化炭素の通気が不適になる)
・体重の減少
・激しい腹痛
・筋肉が弱ることがなく生じる筋肉のけいれん
・感情的な不安定性
・認知機能の異常
これらが挙げられています(8,9)。
-----

このような症状の傾向は統一的なALSの治療につながる可能性があります。
典型的に表れる症状の原因を分子生物学的、神経科学的な観点で
分析するだけではなく、
なぜ、共通して現れにくい症状があるのか?
それが共通しているのか?
そこから病理、治療に対するヒントが生まれることもあると思います。
-----
上部の運動神経細胞の機能改変は
痙攣や活発な深部反射につながります(3)。
従って、運動が制御できない形で活発に起こることがある
ということです。
一方、
下部の運動神経細胞の異常な症状は
筋肉が衰弱することに関わります。
そうした中で痙攣が起こることがあります(10-12)。
-
放射線による、あるいは血液によるALS患者さんだけに現れる
特異的なバイオマーカー(物質)が今のところ見つかっていないので
診断は基本的には「決められた評価基準」に従って
臨床症状を基本、基軸にして行われます(6)。
--
(遺伝子について)
ALSの15%は家族による遺伝的な要素であると言われています(13,14)。
-----

これは国によって偏差があるかもしれません。
日本では5%以下という調査結果もあります。
-----
変異遺伝子
C9orf72, SOD1, TARDBP, FUS, ANG and OPTN 
特に多くのケースで見られる遺伝子変異は
C9orf72です。
しかし、散発的なALSでは10%程度となっています。
従って、「典型的な」遺伝子変異は今のところ見つかっていないか
もしくはないということになります。
(参考文献(1) Table 1より)
-----

典型的な遺伝子変異があれば、
Crispr cas9などによる遺伝子編集を細胞内で行うことで
症状が改善することも期待できますが、
人によってばらつきがあるならば、
その点において遺伝子的な治療
あるいはそれに基づく治験の難しさがあります。
-----
これらの多くの遺伝子異常は
・転写因子の制御
・microRNAプロセス
・RNAの成熟化、スプライシング
これらを通してタンパク質に影響を与えます。
--
ALSは
・タンパク質の生成、消化、反応などの均衡状態
・RNA機能
・細胞骨格
これらのいずれかに主要に影響を与えるかによって
グループ分けされます(15-17)。
--
脳の他の疾患との遺伝子的な重複も見られると言われています(18-20)。
-----

このことは脳の他の疾患の治療がALSの治療のヒントになる
可能性を示していますし、その逆もそうです。
-----
(ALSの細胞レベルでの病理)
ALSでは基本的に以下のような異常があります(21,22)。
①グルタミン酸塩の興奮毒性
②ミトコンドリアの構造的な異常
③オートファジーの異常
④神経炎症
⑤軸索の輸送機序の異常
(参考文献(1) Fig.1より)
-----

①グルタミン酸塩は神経細胞をつなぐ神経伝達物質のうち
約90%を示す主要な化学物質です。
それらが興奮するという事は
神経伝達が過剰になっている事を示します。
一般的にはそのような過剰は治療としては
その受容体に対してアンタゴニスト(機能を弱める)薬が使われます。
-
②ミトコンドリアに異常が出るという事は
主に酸素を使ったエネルギーの代謝経路が乱れるということです。
それによって、代謝は嫌気性の糖代謝に変わる可能性もあります。
そうした場合Fig.1に示されているように
細胞毒性のある活性酸素(oxidative stress)が生まれる可能性があります。
これが④神経炎症につながる可能性もあります。
他には一酸化窒素(NO)などが炎症物質として挙げられます。
一般的に細胞毒性を示す活性酸素や神経炎症は
「免疫細胞」に強く発現される傾向にあるので
脳のそれにあたる「マイクログリア」などの代謝経路の改変も
同様に調査が大切になります。
そうすると治療的な介入としては
基本的には脳に酸素をしっかり送るという事が大切になるか?
ということです。
但し、ミトコンドリアの異常が何に依るかの分析は必要です。
もしそうであって、それを実現するためには
・脳の血管の状態をよくすること
・血管脳関門を正常にすること
・脳脊髄液の流れをよくすること
これらを実現したうえで酸素を十分に送る事です。
-
③オートファジーに異常が起こるという事は
タンパク質の生成と消化、分解のサイクルが崩れるということです。
オートファジーはタンパク質をリソソームで消化するときの
プロセスを意味しますので
おそらくオートファジーが乱れると
タンパク質が異常になくなるか
タンパク質が蓄積するか
どちらかになると考えられます。
アルツハイマー病、パーキンソン病では
神経細胞の間の間質にタンパク質が異常に堆積するといわれているので
もしこの病理と重なるのであれば、
同様にALSでも神経細胞間の間質のタンパク質の状態の改変が疑われます。
それによって脳脊髄液の流れが滞れば、
酸素や他の栄養の供給も一部遮断される事を意味するかもしれません。
そうすると②のミトコンドリアの異常につながることも考えられます。
-
⑤軸索に障害が出ると基本的に運動はネットワークの
パターンによって実現しているとすれば
それが阻害されることになるので
基本的に運動障害が出るという事になります。
--
こういった細胞内のお互いにつながりのある異常の連鎖が
なぜ「運動系の神経細胞だけに」現れるのか?
もしくはそうではないのか」?
結果的にそうなっているからALSなのか?
それが一つ気になる点ではあります。
-----
神経細胞では、星状膠細胞、マイクログリアは
・神経毒性物質を分泌
・グルタミン酸塩の受容体の発現の改変
これらによってALSの神経劣化において
重要な要因となっています(23,24)。
--
タンパク質のうち
TAR DNA-binding protein 43 (TDP43) 
これはALSの病理に関わっています。
このたんぱく質は細胞質性であり、
基本的には細胞内に蓄積すると考えられます。
-----

神経細胞が肥大してストレスを受ける
あるいは硬化して機能を失う、あるいは壊れる
そのようなことが起きるかもしれません。
-----
このたんぱく質に関連のある遺伝子TARDBPは
ALSの病気の有無で変異において明確な差はなく
その遺伝子変異が原因とは考えにくいとされています(25)。
-----

遺伝子変異によるタンパク質の生成に問題があるのではなく
オートファージーの不全によるタンパク質の消化の問題が
主要に関係している可能性があると考えられます。
従って、
細胞内の代謝経路の正常化、オートファージの機能回復を
行う必要があるのではないかと考えられます。
-----

-----

//追記//
ALSは遺伝子的な要因もありますが
解剖学的なつながり、循環の面で説明できる部分もあるかもしれません。
例えば、脳血管系の傷害はALSのリスク要因になる
という報告もあります(26)。
つまり、脳の血管の状態を正常にして、
神経系に血液を運びしっかり糖や酸素を送り込むこと
あるいは細胞内外の不要なたんぱく質がなく
脳脊髄液の流れをよくする事
これらを確保し
基本的に神経細胞、マイクログリア、星状膠細胞などの
細胞が基本的な活動を問題なくできて恒常性が保てるように
環境を整える事がベースとしてあるのではないかと思います。
そうすると
そういったことに関わる脳神経の状態を
MRI、CT、血液検査、脳脊髄液検査などを通じて行うことができるか?
好ましくは局所的な異常を検知できるか?
それが治療の上で重要になる可能性を考えました。
-----

以上です。

(参考文献)
(1)
Matthew C. Kiernan, Steve Vucic, Kevin Talbot, Christopher J. McDermott, Orla Hardiman, Jeremy M. Shefner, Ammar Al-Chalabi, William Huynh, Merit Cudkowicz, Paul Talman, Leonard H. Van den Berg, Thanuja Dharmadasa, Paul Wicks, Claire Reilly & Martin R. Turner 
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Nature Reviews Neurology (2020)
(2)
Hardiman, O., van den Berg, L. H. & Kiernan, M. C. 
Clinical diagnosis and management of amyotrophic lateral sclerosis. 
Nat. Rev. Neurol. 7, 639 (2011).
(3)
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Lancet Neurol. 17, 423–433 (2018).
(4)
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Amyotroph. Lateral Scler. 9, 257–265 (2008).
(5)
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(6)
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A proposal for new diagnostic criteria for ALS. Clin. 
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(7)
Dharmadasa, T., Matamala, J. M., Howells, J., Vucic, S. & Kiernan, M. C. 
Early focality and spread of cortical dysfunction in amyotrophic lateral sclerosis: a regional study across the motor cortices. 
Clin. Neurophysiol. 131, 958–966 (2020).
(8)
Vucic, S., Rothstein, J. D. & Kiernan, M. C. 
Advances in treating amyotrophic lateral sclerosis: insights  from pathophysiological studies. 
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(9)
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Occasional essay: upper motor neuron syndrome in amyotrophic lateral sclerosis.  
J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 91, 227–234 (2020).
(10)
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Assessment of the upper motor neuron in amyotrophic lateral sclerosis. 
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(11)
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Quantifying disease progression  in amyotrophic lateral sclerosis. 
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(12)
de Carvalho, M., Kiernan, M. C. & Swash, M. 
Fasciculation in amyotrophic lateral sclerosis:  origin and pathophysiological relevance. 
J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 88, 773–779 (2017).
(13)
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Nat. Rev. Neurol. 9, 617 (2013).
(14)
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(15)
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J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 81, 639–645 (2010).
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(18)
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Aggregation of neurologic and neuropsychiatric disease in amyotrophic lateral sclerosis kindreds: a population-based case–control cohort study of familial and sporadic amyotrophic lateral sclerosis. 
Ann. Neurol. 74, 699–708 (2013).
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Neurology 91, e1498–e1507 (2018).
(21)
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(22)
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N. Engl. J. Med. 368, 1326–1334 (2013)
(23)
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Aberrant RNA processing in a neurodegenerative disease: the cause for absent EAAT2, a glutamate transporter, in amyotrophic lateral sclerosis. 
Neuron 20, 589–602 (1998).
(24)
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Nat. Neurosci. 2, 427–433 (1999).
(25)
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Science 314, 130–133 (2006).
(26)
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Cerebrovascular injury as a risk factor for amyotrophic lateral sclerosis
J Neurol Neurosurg Psychiatry 2016;87:244–246.


 

2020年12月26日土曜日 0 コメント

ワクチンに対するアドジュバントの役割(3)

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスのワクチンは
世界で100種類以上開発され、
動物実験やその他条件をクリアしたものが治験に進んでいます。
日本ではアンジェス社(さん)が
大阪大学と共同でワクチンの開発が進んでいて、
現在治験の第二段階です。
接種を進められている医師(の方)のメディアでのコメントによれば
結果は良好であるということです。
新型コロナウィルスのワクチンであれば、
ウィルスが細胞感染の時に結合するSタンパク質に
高い中和能を持ってぴったり結合するような
質の良い抗体を作ることが目的となります。
一般にワクチンのテストでは抗体価、中和能力を
新型コロナウィルスに罹患した後、回復した人の
それらと比較します。
その値を上回っていれば
ワクチンとして十分機能するだろうということです。
そして大規模に接種した時に
安全性の問題、感染が実際に防がれるか
ということを偽薬群と比較評価することになります。
その他、気になる点としては
ワクチンの効果はどれだけ続くか?
また変異があった時に同様に効果があるか?
これらがあります。
ワクチンの効果の継続性に対しては
抗体価、中和能、疫学調査などがあります。
変異があった時の評価
あるいは継続的に接種していくときの評価の中には
抗体だけではなく
他の免疫細胞のワクチンの効果も同様に考える必要があります。
また抗体を生み出すプロセスについても考える必要があります。
他の免疫細胞について考える
あるいは抗体のプロセスを考えるときには
ワクチン接種によって改変された免疫細胞
記憶化された免疫細胞を評価することになります。
それらは一般的に抗体の持続時間よりも長いと考えられていますし
抗体に比べれば交差性が高く、変異にも強いと考えられるので
継続的にワクチン接種していく上で非常に重要な情報になります。
インフルエンザのように毎年接種していく事になれば、
積みあがる効果について副反応、リスクにも留意しながら
その利点について考えていく必要があります。

今述べたワクチン接種から抗体が生み出されるプロセスも
まだよくわかっていない部分が多くあると思っています。
・抗原が認識されるまでの経路
・抗原認識されてから抗体が生み出されるまでの経路
・B細胞以外の免疫細胞の貢献、影響
これらそれぞれに対して
身体のどのような経路で?という
幾何学的な要素
細胞同士の遺伝子変化、物理化学的な結合という
生物学的な要素
これらがあるので非常に複雑です。
また、mRNAやDNAワクチンの場合は
生きたウィルスを使うわけではないので
おそらく「アドジュバント(免疫補強剤)」が必要です。
このアドジュバントが上の要因にどのように関わっているか?
それを考えると状況はさらに複雑になります。
そのような複雑性の中においても
「抗原認識を効率化させる鍵となる部分」
「抗体分泌を効率化させる肝となる部分」
これらを掴むためには
一つ一つ丁寧に考えていく必要があります。

アドジュバントはワクチン接種において
抗体を生み出すプロセスの中で
T細胞やB細胞が抗原認識するまでの初期過程に
大きくかかわる物質で
この選択、組み合わせが不適合であれば
抗体を生み出す効率が大きく下がることになると考えられます。
Steven G Reed氏、Mark T Orr氏、Christopher B Fox氏
研究グループは各ワクチンに対して
アドジュバントを設計、適用するときの
どのような要因を考える必要があるか?
それについて総括されている(1)ので
本日はその情報の一部を読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は私の追記、考察

//各種類のアドジュバントの特徴//-------------
(アルミニウム塩)
アドジュバントとして広く使われるアルミニウム塩。
電荷を強く帯びていて、伝導性であるので
粒子一つ一つの相互作用が強く凝集する傾向にあります(1)。
-----

輸送の際に血液中にある他のタンパク質やDNAなどを
引き付けて、それらを装飾した状態で運ばれることもある
と思います。またどれくらい凝集しやすいかによって
塊としての大きさも異なると思います。
そうした中で、標的とする自然免疫系の
Toll様受容体(TLR)の認識度も変わってくると考えられます。
-----

(乳液)
1990年代までは承認されることがありませんでした。
今使われているのが中油水とよばれる
水と油を混在させた物質で
水系の物質の中に体に無害な界面活性剤で乳化させた
ナノサイズの油の液滴が含まれています。
-------------

//アドジュバントの設計因子//---------------
物理的要因
・粒子サイズ・多分散性・形・表面電荷
・標的性・化学的構造
組み合わせ要因
・抗原・免疫調整分子・投与のルート
これらは
・自然免疫系の細胞(マクロファージ、樹状細胞など)による
取り込み(2-4)
・リンパ節までの輸送、胚中心での信号伝達(5-7)
・免疫反応の質、持続性(8,9)
・有害性(10)
これらの要因に関わります。
---
(例)
オボアルブミン抗原(※)を搭載した
「230nm」の脂質ベースのナノ粒子において
「708nm」のナノ粒子よりも
・樹状細胞、マクロファージに効率的に取得
・リンパ節まで効率的輸送
・強いIgG抗体の誘発
・細胞毒性T細胞の反応の強化
これらにつながりました(4)。
(※)
オボアルブミンは卵白などのタンパク質で
ワクチン接種におけるカギとなる物質です。
---
(例2)
スクアレンベースの乳液は
マラリアやインフルエンザのアドジュバントとして使われ
IgG抗体量の向上や、抗体分泌期間の延長などがありました(11)。
-----

従って、ワクチンに対するアドジュバントの選択で
抗体量だけではなくワクチンの抗体の持続時間にも
効果がある事が示されています。
-----
---
(例3)
ポリマーナノ粒子に包まれたCpG(※)と抗原の組み合わせ輸送で
細胞毒性のT細胞の活動が顕著に向上しました(12)。
(※)
自然免疫系がパターン認識するための受容体(TLR9)
のリガンドとして働きます。
CpG oligodeoxynucleotide (ODN),
---
免疫機能に認識されるまでのルート、
どのような組織を通過する必要があるか、
宿主のタンパク質や核酸などの吸収は設計の上で
非常に重要な要因となります(13,14)。
例えば、
リンパ節に直接接種した場合と
皮下注射した場合では抗体の発現量が異なる
という報告もあります(15)。
-----

新型コロナウィルスの場合は肩の筋肉注射ですが
身体は完全に左右対称ではないので
左肩に接種するか、右肩に接種するかで
抗体量などに影響がある可能性も否定はできません。
ただ、感染予防に影響を与える程度の
変化かどうかはまた別要因の部分があります。
-----

//アドジュバント設計検討要因(まとめ)//------------
(生物学的な反応)
・安全性
・免疫細胞までの経路
・抗原の適切な投与量
・抗体反応
・細胞を介した免疫
・免疫反応の質
・免疫反応が弱い免疫細胞の反応強化
---
(材料的な要因)
・材料
・製造性
・粒子の表面状態
・抗原の互換性、相互作用、相乗効果
・安定性
---
(参考文献(1) Table.2より)
------------

-----

//追記、考察//
実際にはToll様受容体の型によって
どの自然免疫系細胞がパターン認識して
獲得免疫系の抗原認識性を高めるかは異なります。
実際には自然のウィルス感染によって
パターン認識する受容体はTLR2が主要であると考えていますが、
アドジュバントの標的ではTLR4が多いです。
(参考文献(1) Table 1より)
その理由はおそらく
TLR4の方が多くの免疫細胞が持っている受容体であり
多面的な機序で抗原認識から抗体発現まで
促すことができるというのがあると思っています。
しかし、こうした差異が
どのような影響を与えるか?未知の部分があると思います。
また、
自然免疫系がパターン認識する場所と
獲得免疫系が抗原認識する場所は異なります。
主に獲得免疫系の抗原認識から
メモリ細胞までの発展までは
2次リンパ組織であるリンパ節の中の胚中心で
行われると理解しています。
そうした中で
アドジュバントと抗原を
自然免疫系細胞との連携を含めながら
どのように輸送すればいいのか?
これに関して効果的なワクチン開発のためには
細かく考えていく必要がある部分があると思います。
-----

以上です。

(参考文献)
(1)
Steven G Reed, Mark T Orr & Christopher B Fox 
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(2)
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Alkilany, A.M. & Murphy, C.J. 
Toxicity and cellular uptake of gold nanoparticles: what we have learned so far? 
J. Nanopart. Res. 12, 2313–2333 (2010).
(11)
Fox,  C.B.,  Baldwin,  S.L.,  Duthie,  M.S.,  Reed,  S.G.  &  Vedvick,  T.S. 
Immunomodulatory  and  physical  effects  of  oil  composition  in  vaccine  adjuvant emulsions. 
Vaccine 29, 9563–9572 (2011).
(12)
Beaudette,  T.T.  et  al.  
In  vivo  studies  on  the  effect  of  co-encapsulation  of  CpG DNA  and  antigen  in  acid-degradable  microparticle  vaccines.  
Mol.  Pharm.  6, 1160–1169 (2009).
(13)
Walczyk, D., Bombelli, F.B., Monopoli, M.P., Lynch, I. & Dawson, K.A. 
What the cell “sees” in bionanoscience. 
J. Am. Chem. Soc. 132, 5761–5768 (2010).
(14)
Zhang,  H.  et  al.  
Quantitative  proteomics  analysis  of  adsorbed  plasma  proteins classifies  nanoparticles with different surface properties and size. 
Proteomics 11, 4569–4577 (2011).
(15)
Mohanan, D. et al. 
Administration routes affect the quality of immune responses: A  cross-sectional  evaluation  of  particulate  antigen-delivery  systems.  
J.  Control. Release 147, 342–349 (2010).


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筋萎縮性側索硬化症を回復軌道に乗せる事を目指す

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

医学研究を始め、様々な大学、企業の研究は
20年、30年の世界だと言われます。
しかし、
2020年の今年は東京オリンピックが開催予定でしたが
未曾有のパンデミックによって延期になりました。
「今年はコロナ一色だった。」
と考える方も多いと思います。
このような危機は医療だけではなく
経済、余暇にも影響を与えます。
その中で何十年も世界情勢は待ってくれません。
そういった状況下で「奇跡」とも言われていますが、
1年でワクチンの接種実現まで進んでいます。
今までの数十年といった時間単位が大きく短くなりました。
社会がそれを切に必要としていました。
そのような偉業が実現されたことは
未来に対して大きな可能性を示しました。
今、新型コロナウィルス以外でも多くの難しい病はありますが、
ひょっとするとそれも今から数十年という時間スパンではなく
数年という単位に時間を短くできるかもしれません。
色んな取り組みが必要だと思いますが、
その重要なカギは「開けたネットワーク」だと思っています。

人の脳は無限の可能性を示してくれます。
人工知能では決してできない創造性があります。
また人にしかできない団結力があります。
それは脳神経が開けたネットワークに基づいて
動いているからかもしれません。

インターネットは世の中を一変させました。
世界のスピードは速くなったといわれます。
それも「世界規模でのネットワーク」を形成できるからです。
このメッセージもうまくいけば
多くの方に届けることができます。
それもインターネットに依存する部分があります。

大きなレベルで見れば世界の国のつながり
そして大学、研究機関、産業のつながり
その中の個人個人のつながり
インターネットのつながり
人工知能、仮想空間でのつながり
、、、、
そういったネットワークが
今までの常識を覆すスピードの実現に貢献する可能性があります。

日本には年間数千人の方が
筋萎縮性側索硬化症(ALS)に発症すると言われています。
人によって偏差はあるものの
運動機能が脳神経の傷害によって徐々に衰えていく病です。
進行を遅らせることはできても
根本的な治療は今のところないと理解しています。
アメリカでも10万人の患者さんがいるといわれています。
10万人あたり4~6人と言われており、
一生に発症する確率を考えると決して少ない数ではありません。
もし、今までの科学のスパンで何十年という単位で見ていたら、
今から20年後には
40歳のALSの患者さんは60歳になってしまいます。
その間、身体の機能はどうなるでしょうか?
仮に一人の医学研究者が必死で取り組んだとして
それが臨床で応用できるまで何年かかるでしょうか?

安全性の問題から煩雑な事も含めて色んな手続きはありますが、
その期間を短くできるカギとなる要素は前述した
「開けたネットワーク」だと思います。
新型コロナウィルスに関する報告では、
世界の主要論文誌がすべてオープンになりました。
それが迅速な状況改善に貢献する可能性は大いにあります。
すでにそうであれば、それが証明しています。
インターネットもそうです。
21世紀になり世界がこれだけ迅速に変わったのは
インターネットの貢献は大きいです。
そのような背景も踏まえ、
私の今まで書いてきた記事、あるいはこれから書く記事が
「開けたネットワーク」による
顕著な迅速化の一助になれば嬉しいと思います。

今述べた筋萎縮性側索硬化症について
様々な情報共有、考察を提供していこうと思っていますが、
本日述べたい事が一つあります。

脳神経と人工知能が重ねて考えられることがありますが、
その理由はともにネットワークを基調としたモデルであるからである
と考えている部分があります。
神経細胞と非神経細胞の違いは
細胞同士のつながりの部分だと思っています。
非神経細胞もカドヘリンなどを通した連結部があり
電気的な信号のやりとりは可能かもしれませんが、
神経のように多機能で太いものではありません。
細胞の形も大きく異なります。
そういった中で
神経系の疾患を考えるときには
「パターン」「ネットワーク」の視点が重要だと考えています。
ものすごく単純化した例ですが、
百個のノード(点●)があって
それを精緻につなぐエッジ(線ー)があるとします。
厳密にはフィルムのように静止画にすることはできませんが、
仮にできたとして、
刹那の思考、動き、感情などは
それらのネットワーク空間による
一つの模様として示せると考えています。
もちろん単純化した考え方です。
線にも太さがあるかもしれないし
それだけでは示せない他のパラメータ(要因)があると思います。
単純化した思考モデルです。
仮に
目の前のテーブルにコップがあります。
それを右手で取ろうとします。
その一連の動きでは
脳、脊髄、末梢神経系などのネットワークにおいて
時空間での一つの模様があると考えます。
それによってその動きが実現されると仮説を立ています。
その時に仮にそれにかかわる系(神経細胞群)の中に傷害、機能不全があって
それを迂回、パターン修正しないといけない箇所が多いと
感覚として
「コップを取りにくい」という事が起こるのではないか?
そのように考えました。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんには
運動に関する神経細胞においてそのような事が起こっているから
様々な運動に障害が出るという事ではないかと思います。
そうすると
その筋委縮性側索硬化症の症状を回復軌道に乗せていくためには
ベースとしては主に運動機能に関わる
神経細胞、連結部、間質の状態を回復させて
そのうえでリハビリなどで一つ一つの動作を思い出して
それを実施して、それらが機能するようになるか?
ということです。
そして上述したようなそれぞれの動きに必要な
時空間の神経パターンが実現されれば、
リハビリを通じて症状が少しずつ回復していくかもしれないと
「現時点では」考えています。

こういったことを踏まえながら
明日以降、情報取得、学習を重ねていきます。
細胞特異的輸送系統ができる事を考えながら
開けたネットワークの中で
現実的に状況を良くしていく事が出来ないか模索していきます。

以上です。

 

2020年12月25日金曜日 0 コメント

再感染のリスクの評価(医療従事者のケース)

今、日本全国的に感染が広がっていて世界でも同様です。
感染の勢いは衰えることなく
むしろ強まっている印象なので
都市がロックダウン状態の国もありますし
日本でも医療緊急事態宣言が出ています。
医療関係者の方を始め
自粛生活を余儀なくされている方、
経営、経済的に問題のある方など
医療、経済、生活を著しく脅かしていますが、
「この状態がいつまで続くのか?
事態が収束することはあるのか?」
という事を考える人は多いと思います。
特に医療をされているの方は疲労が限界にきていると報道されています。
特効薬や標準的な治療ガイドラインが
定まるまで時間がかかると思いますし、
中等症や重症の患者数が増えていることから
感染初期の圧倒的に多い患者(さん)に対しての
治療まで手が回らないことから
ワクチンによる集団免疫の構築が
今、収束のためには必要ではないかと思います。
しかし、ワクチンを接種して
社会の感染の状況が収まるかどうか?
それに対しては治験において良い結果が得られていますが、
実際に社会で接種を進めていった時に感染の状況がどうなるか?
というのは未知の部分があります。
その中で
新型コロナウィルスに罹患したら
しばらく感染することはないのか?
ワクチンを接種したら新型コロナウィルス感染は防げるのか?
またそれはどれくらいの期間維持されるのか?
それについて注目が集まるところです。

S.F. Lumley氏ら医療、研究チームは
医療に従事される方の一万人以上の大規模な調査によって
感染により抗体を保持しているグループと
抗体を保持していないグループにわけ
それぞれの再感染のリスク
あるいは感染した時の症状の度合いについて
比較評価しています(1)。

//結果概要//---------------
新型コロナウィルスに感染した人(血清抗体陽性)の
その後の感染のリスクは
そうではない人に対しておおよそ1/10(11.8%)である。
感染した1265人のうち2人しか再感染していません。
再感染した2人とも症状は「無症状」です。
少なくとも再感染を評価した期間は
平均して139日です。
従って、4~5か月程度は
少なくとも再感染のリスク、感染しても症状が現れる
リスクは低い、ほとんどないということになります。
---------------

//条件//-------------
(場所)
英イングランド南東部の州の複数の病院
オックスフォード、
チャーウェル、
ベイル・オブ・ホワイト・ホース、
西オックスフォードシャー、
南オックスフォードシャー
※オックスフォード大学病院が主導
---
(評価期間)
2020年4月23日~11月30日
---
(年齢)
平均:38歳
(16~86歳)
----
(性別)
女性74.1%、70.9%(各比較条件)

医療従事者なので女性が多い
---
(人種)
白人73.7%、59.7%(各比較条件)
次いでアジア系
---
(職業)
看護師、アシスタント:34.9%、47.5%
次いで医師
---
(評価期間、PCR検査頻度)
2週間に一回
※血清の検査2か月に1回
---
(人数)
血清抗体陰性:11543人
血清抗体陽性:1172人
---
(再感染評価日数)
血清抗体陰性:200日(IQR:180~207日)
血清抗体陽性:139日(IQR:117~147日)
---------------

//結果//---------------
-
血清陰性グループ
新型コロナウィルスに感染していない
新型コロナウィルス免疫、抗体がない人
11543人中226人感染(PCR陽性)
1.10/10000 days at risk
1万日過ごしたら1,1回感染する頻度
おおよそ1年間で100人に1人感染する頻度
100人:無症状
123人:有症状
----
血清陽性グループ
新型コロナウィルスに感染している
新型コロナウィルス事前免疫、抗体を保持
1172人中2人感染(PCR陽性)
0.13/10000 days at risk
2人:無症状
つまり症状のある再感染者はいない
-----

第二波がイギリスで訪れた
9月~11月に感染者が増えている
---------------

//追記//
新型コロナウィルス陽性のグループ1172人の中において
32%は無症状であり、残りの群の中には
軽症で済んだ方もいると思います。
新型コロナウィルスの回復期の
抗体量、中和能は症状の程度によってレベルが異なる
というデータはある程度共通していて
無症状、軽症の方は少ないのが一般的です。
ワクチンで実現される抗体量、中和能は
無症状、軽症の回復期の方よりも高い値が実現されているので、
結果に対して慎重な見方はあるものの
治験の結果と合わせると
十分な感染予防効果を発揮する可能性は高い
と考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
S.F. Lumley, D. O’Donnell, N.E. Stoesser, P.C. Matthews, A. Howarth, S.B. Hatch, B.D. Marsden, S. Cox, T. James, F. Warren, L.J. Peck, T.G. Ritter, Z. de Toledo, L. Warren, D. Axten, R.J. Cornall, E.Y. Jones, D.I. Stuart, G. Screaton, D. Ebner, S. Hoosdally, M. Chand, D.W. Crook, A.-M. O’Donnell, C.P. Conlon, K.B. Pouwels, A.S. Walker, T.E.A. Peto, S. Hopkins, T.M. Walker, K. Jeffery,  and D.W. Eyre, for the Oxford University Hospitals Staff Testing Group
Antibody Status and Incidence of SARS-CoV-2 Infection in Health Care Workers
The New England Journal of Medicine  December 23, 2020,

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B細胞癌、ウィルス、癌関連抗原について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスの世界的流行で
私も含め多くの方が知るようになった免疫。
免疫細胞は体中を巡っていると言われています。
それは血液、リンパ液、間質液など
様々な流れに乗って全身を流動しているということであり、
常に体を「監視している」ともいえます。
監視しているので何か身体に異常があるとそれを感知して
様々な種類の免疫細胞が正常に戻すように活性化されます。
その時に免疫細胞は人で言う「目」を持っていませんから
異常があることを光の信号だけで理解することは
多分難しいのではないかと思います。
身体の中は光は多くはありません。
その時に「何か異常を示す物質」を認識して
それで免疫機能が活性化されると考えられます。
例えば、免疫細胞の一つであるマクロファージは
M2型に関して細胞の修復機能があると言われています。
例えば、新型コロナウィルスに感染して
肺炎などの症状が落ち着いた後には
損傷を受けた肺胞の組織を修復するような働きがあります。
その時にDamage-associated molecular patterns
という損傷を受けた部位の分子パターン
あるいはそこから放出される物質を
マクロファージなどの自然免疫系が
パターン認識受容体(PRR)で認識して
活動が活性化され組織の修復を実現します(2)。

健康で問題のない人でも極めて少ない量ですが、
身体には癌細胞があるといわれています
しかし、非常に少ないので消えたり生まれたりの
繰り返しの中でほとんど問題がない可能性があります。
その時には上述した体を監視する
免疫細胞が働いていると考えられます。
その場合においても癌細胞は
「何らかの信号を出して」
それを免疫細胞が検知していると考えられます。
その信号の一つは
「Tomor associated angtigen (TAA)」と呼ばれます。
この癌が出す抗原を認識して
免疫細胞はその癌細胞を特異的に攻撃するような
細胞の発展が生まれます。
このような癌細胞が特有に出す抗原(TAA)は
細胞の中で癌化した時に起きる遺伝子異常に
端を欲すると考えられますが、
このような癌に関連する遺伝子異常のトリガーは
「ウィルスによって」起こることもあります。
例えば、
私たち日本人になじみのある「ヘルペスウィルス」
正式名称は「エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)」
と呼ばれ、日本では成人までにほぼ100%の人が
感染しているといわれており、
ウィルスは終生にわたって持続感染しているといわれています。
このEBVウィルスはB細胞などの免疫細胞に感染するのですが
「体の中の制御が崩れた場合には」
いくつかの癌と関連があることが知られています(3)。
またB細胞に感染しますから
自己免疫疾患の原因になることもあります(4)。
しかし、ほとんどの人がそうならない理由の一つは
T細胞が活性化して(5)、
ウィルス感染したB細胞の量を調整しているからである(1)
と考えられます。
おそらくこのような事は免疫系でもっと一般化できて
EBVに感染している免疫細胞とそうではない細胞細胞
あるいはそれを自己調整できる免疫細胞があって
生成と消滅のバランスが問題にならないように
均衡状態が保たれていると考えられます。
実際に子供や若い人の例では
EBVに感染している免疫細胞の割合は小さいと言われています。

そこでIl-Kyu Choi氏ら研究グループは
上述したEBVウィルスが
B細胞とT細胞の間でどのような相互作用を生み出しているか
その機序について実験を通じて確認しています。
さらにその機序から
B細胞に関連する癌に対する治療について提案し
それについての効果を検証しています(1)。
本日は、その内容の概略について
読者の方と情報共有したいと思います。

EBVウィルスに感染すると
LMP1が発現されてそれがT細胞の反応を促して
LMP1を発言しているウィルス感染B細胞を
反応して活性化したT細胞が細胞死させます。
従って、このLMP1を欠乏させると
感染B細胞が増殖し、リンパ腫を引き起こすことは
知られていました(6,7)。
その時に、
参考文献(1) Extended Date fig.6に示すように
LMP1はがん関連遺伝子で有り
それによって生まれた
上述した癌関連抗原(TAA)を細胞内外に放出し
それがMHC2,MHC1と結合することによって
CD4+、CD8+T細胞が特異的に認識するようになります。
それによって生まれた
CD4+T細胞:OX40, CD27, LFA-1, CD28
CD8+T細胞:OX40, CD27, LFA-1, CD28, 41BB
これらのT細胞の表面にある受容体が
ウィルス感染B細胞:OX40, CD70, ICAM-1, B7, 4-1BBL
とそれぞれ結合することで
CD4+、CD8+T細胞がウィルス感染B細胞を死滅させます。

従って、B細胞に関連する血液性の癌治療において
LMP1癌遺伝子を発現している患者さんにおいては
このようなT細胞を使った治療が有効である可能性があります。
しかしがなら、
・Diffuse large b-cell lymphoma
・ホジキンリンパ腫
これらにおいてはMHC-IがB癌細胞表面に欠如している(8,9)ことから
MHC-Ⅰを活性化のために必要とするCD8+T細胞は
使えないという事になります。
そこでCD4+T細胞を「マウスに」細胞移植させて
より患部でCD4+T細胞がLMP1によって生じた
癌関連抗原(TAA)の反応を多く検知するようにしたところ
B細胞に関連する腫瘍組織の進行を抑えることができました(1)。
(参考文献(1) Fig.3 (h))
しかしながら
このCD4+T細胞はPD-1という癌に対する
免疫機能を阻害する受容体が多く発現しています。
その阻害を弱めるために
PD-1の機能を弱めるような物質を付けて効果を確認したところ
B細胞に癌が生じているマウスの延命が可能になりました(1)。
(参考文献(1) Fig.3 (i,m))
これを人に適用する場合には
癌関連抗原(TAA)に対する免疫細胞の結合面が多くあるため
それをCD4+T細胞が認識するためには
その結合面の情報を体内に入れる前に
憶えさせておく必要があるということです(1)。

//追記、考察//
この結果でもあったように
人の場合、Tomor associated antigen(癌関連抗原)の
結合面が多様であるとありました。
B細胞の癌に限らず、他の癌でもTAAの放出はありますが、
実際には免疫細胞がそれを認識して
癌細胞に対して細胞傷害性を示すには十分ではない場合もあるようです。
従って、癌細胞に対して
その増加を抑え、退行に向かわせるような免疫系統を築くためには
化学療法、放射線治療、外科的な切除も当然ありますが、
免疫だけでみれば、
自然免疫系統、獲得免疫系統から
幅広く特異的な癌傷害性を示すような環境を作ることが
大事だと考えられます。
例えば、冒頭で述べた様に
自然免疫系は特異的なパターン認識によって
機能が高められるケースがありますが、
その機序を詳しく把握することによって
今述べたT細胞などの獲得免疫機能だけではなく
NK細胞、マクロファージ、樹状細胞などの自然免疫による
免疫療法の展望も広がると考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Il-Kyu Choi, Zhe Wang, Qiang Ke, Min Hong, Dereck W. Paul Jr, Stacey M. Fernandes, Zhuting Hu, Jonathan Stevens, Indira Guleria, Hye-Jung Kim, Harvey Cantor, Kai W. Wucherpfennig, Jennifer R. Brown, Jerome Ritz & Baochun Zhang 
Mechanism of EBV inducing anti-tumour immunity and its therapeutic use
Nature (2020)
(2)
Tao Gong, Lei Liu, Wei Jiang & Rongbin Zhou 
DAMP-sensing receptors in sterile inflammation and inflammatory diseases
Nature Reviews Immunology volume 20, pages95–112(2020)
(3)
Maeda E, Akahane M, Kiryu S, Kato N, Yoshikawa T, Hayashi N, Aoki S, Minami M, Uozaki H, Fukayama M, Ohtomo K 
Spectrum of Epstein–Barr virus-related diseases: a pictorial review. 
Japanese Journal of Radiology. 27 (1): 4–19., (2009).
(4)
Toussirot E, Roudier J  
Epstein–Barr virus in autoimmune diseases. 
Best Practice & Research. Clinical Rheumatology. 22 (5): 883–96 (2008).
(5)
Long, H. M. et al. 
CD4 + T-cell clones recognizing human lymphoma-associated antigens: generation by in vitro stimulation with autologous Epstein–Barr virus-transformed B cells. 
Blood 114, 807–815 (2009).
(6)
Zhang, B. et al. 
Immune surveillance and therapy of lymphomas driven by Epstein–Barr virus protein LMP1 in a mouse model. 
Cell 148, 739–751 (2012).
(7)
Yasuda, T. et al. 
Studying Epstein–Barr virus pathologies and immune surveillance by reconstructing EBV infection in mice. 
Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol. 78, 259–263 (2013).
(8)
Challa-Malladi, M. et al. 
Combined genetic inactivation of β2-microglobulin and CD58 reveals frequent escape from immune recognition in diffuse large B cell lymphoma. 
Cancer Cell 20, 728–740 (2011).
(9)
Roemer, M. G. M. et al. 
Major histocompatibility complex class II and programmed death ligand 1 expression predict outcome after programmed death 1 blockade in classic Hodgkin lymphoma. 
J. Clin. Oncol. 36, 942–950 (2018).
 

2020年12月24日木曜日 0 コメント

24歳若年男性の頭痛の診断のケーススタディー

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスの特徴的な症状として
倦怠感、頭痛、身体の脱力感、吐き気、発熱などがありますが、
そのような症状というのは後遺症として続くこともあります。

本日はアメリカのマサチューセッツ総合病院で行われた
新型コロナウィルス陽性の
一人の若年男性の診断の過程について
詳しく記述されています(1)ので、
医療従事者の方と情報共有したいと思います。
その患者の経歴、環境、様々な検査結果から
様々な可能性を除外して、
最終的な診断につなげるという過程が踏まれています。
内容の一部を紹介しますので
後遺症を含めた今後の治療の一つの情報として頂ければ
と思います。
(※)
=====の⇒は私の追記、考察部分です。

//ケースの提示//
24歳男性
2020年4月に入院
新型コロナウィルス陽性
入院「3週間前から」健康上の異常を自覚
--
(入院前5日診療所で)
体温36.8℃、酸素飽和度98%、自然に呼吸
身体的な検査では普通
血液検査、尿検査⇒目立った異常はない
(参考文献(1) Table 1)
筋肉中にケトロラク投与、
Quarantineを推奨され帰宅
(※)新型コロナウィルスの伝染を防ぐかもしれない
と考えられている薬
--
(入院前4日)
鼻腔スワブで新型コロナウィルス陽性が見つかる
診療所に対して遠隔治療を受ける
頭痛、吐き気、食欲不振、脱力感あり
--
(入院時)
倦怠感、脱力感、頭痛がひどくなる、失神寸前の状態
筋肉痛、吐き気、嘔吐、食欲不振
息切れ、胸膜痛の症状がある
熱、咳、下痢はない
イブプロフェン、アスピリンで症状の改善はなし
--
(入院後2週間)
頭痛、脱力感は続く
息切れ、胸膜痛、食欲不振が進行
--
(患者さんの身体的な条件)
目の後ろに痛みがあり
子供のころ虫垂切除術を受けている
内科的な疾患、既往歴はない
アレルギーはない
--
(患者さんの環境条件)
中米生まれ
入院3か月前にアメリカ移住した
彼は造園師として働いていた
異性との接触はあったが避妊具を装着
非喫煙者
アルコールも飲まない
不正薬物の使用もない
家族と一緒にくらす
家族の既往歴については知らなかった
--
(検査結果)
体温36.1℃
血圧134/90mmHg
心拍62 beats/min
呼吸数 16回/min
酸素飽和度 99%
自然に呼吸ができる
BMI 21.3
肺は透明
血液、尿検査は正常
(参考文献(1) Table 1)
--
(診察時の症状)
発汗、
時折動揺する
会話中に眠る(昏睡状態)
目をぎゅっと閉じる
自分の頭をたたく
瞳孔は偏らない
光に反応する
頂部硬直はない
頭を回す、足を上げる時、頭、目、首に痛み
--
(治療)
アセトアミノフェン、静脈内輸液、投与
失禁をしたので
応急的な処方として
Intravenous vancomycin
Ceftriaxone
Acyclovir
これらを処方
--
(CT検査、診断)
造影剤を使わない
頭蓋内出血はない
塊、梗塞はない
脳幹神経節の密度がわずかに粗である
Globeとトルコ鞍の後部が平坦化
--
(MRI検査、診断)
造影剤前後で行う
Globeと横静脈胴の後部が平坦化
尾状核と果核に複数の小さな白色部あり
いくつかの部位に嚢胞性のパターンがあり
散発性の白色部が
放線冠、前頭葉の皮質下、室周囲の白質にある
所々ブドウのような斑点が見える
(参考文献(1) Figure 1)
--
(脳脊髄液の検査 by 腰椎穿刺)
着色はない
タンパク質 47mg/dL (通常 5~55)
グルコースレベル 42mg/dL (通常 50~75)
白血球 108 cells/μL (通常 0~5) 
81%:リンパ球 18%:単球
-----
⇒白血球が明らかに多いので
MRIと合わせると脳の炎症により
脳内の免疫機能が活性化されている可能性がある
リンパ球性髄膜炎の可能性
-----

//鑑別診断//--------------
(新型コロナウィルスと関連性評価)
胸部X腺から不透明部は所見されない
酸素飽和度は通常
Dダイマーレベルは通常
重度の肺炎に関連する脳炎はない
静脈血栓はない
---
(リンパ球性髄膜炎に関連する他の疾患の評価)
造園での仕事との関連も考えられるが
新型コロナウィルスの都市封鎖の中で
仕事ができない状態だった
-
脳血管炎、ロッキー山発疹熱は
発熱、発疹を伴う事から除外
-
アナプラズマ病は
白血球減少、血小板減少症
アミノトランスフィラーゼ上昇を伴う事から除外
-
ピロプラスマ症は
貧血の度合い、アミノトランスフィラーゼ
乳酸脱水素酵素の水準から除外
-
Powassanウィルスは
側頭葉に兆候が表れることから除外
このウィルスの蔓延は
周辺地域で確認されなかった
-
ライムポレリア症は
大人よりも子供に泡われる事(2)
あるいはMRIのパターン(3,4)により除外
-
スポロトリクム症(造園から)
皮膚の状態から除外
-
HIV、ヘルペス、梅毒
これらの可能性は口腔、性器の
関連する症状、紅斑性発疹がないので除外
-
結核は脳脊髄液のタンパク質が上がる事
胸部X線、MRI、CTの脳幹神経節の状態から除外
-
パラコクシジオイデス症(中米風土病)は
神経性症状があまりで出ない
リング状増強病変が通常所見されることから除外
-
クリプトコッカス症、ヒストプラスマ症
これらによるリンパ球性髄膜炎は除外できない(5)。
-
発熱や血液の炎症マーカーが正常なので
中枢神経系のリンパ腫を疑う必要がある。
-

(発症が疑われるクリプトコッカス症)
脳幹神経節に嚢胞、ブドウのような白色部が存在
原因としては頭蓋内の圧力が高まっている事(6)。
一見健康な人に起こる疾患で
24歳よりも高齢の方が発症する傾向
HIVなど免疫抑制が生じている患者に多い
⇒今のところそれらしき症状はない
(高ガンマグロブリン血、リンパ腫など)

//臨床的な印象//------------
患者の経歴、脳の画像、脳脊髄液の結果から
ウィルスや真菌性の髄膜脳炎と判断。
脳の検査結果から頭蓋内の圧力が上がっているので
その様に判断。
新型コロナウィルスが大脳内の部位に
影響を与えるケースはほとんど報告されていません。
新型コロナウィルスと
傍感染性の脳炎は区別できる診断であると考える。

//病理の議論//---------------
遠心分離機で脳脊髄液の細菌の分析
円形のグラム陽性の細菌が観測
(参考文献(1) Figure 2(a)より)
クリプトコッカス抗原テスト陽性
HIV-1テスト陽性。
CD4+ T細胞 16 cells/μL
(Acquired  immunodeficiency  syn-drome (AIDS))
HIVの患者は
クリプトコッカス症の髄膜炎
脳トキソプラズマ症、
結核性髄膜炎に対するリスクが高いと言われています(7)。
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//管理の議論//---------------
髄膜脳炎の原因となる頭蓋内の圧力が上がることは
脳脊髄液のくも膜顆粒内での吸収が不足している
ことに起因しています。
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吸収が下がるということは
脳脊髄液の液圧が上がるので
それによって頭蓋内の圧力があがるということでしょうか。
これはMRIで見える脳の外側の白色部(組織の硬化)
と関連があるでしょうか?
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腰椎穿刺を複数回行い脳脊髄液の液圧を
低下させる処置が考えられます(8)。
この患者(さん)に対して
2日連続でこの処置を行いました。
この脳脊髄液転換は
クロプトコッカス髄膜脳炎において
救命介入にあたります(9,10)。
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逆に脳脊髄液が減少しすぎても頭痛の原因となるので
適性な液圧をモニターしながらの
処置が必要になると考えられます。
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従って、側臥位で患者の
Opening圧力、Closing圧力を測り
腰椎穿刺を行う頻度を決定します。
薬剤による液圧の低下も併用します。
HIV患者にはグルココルチコイドは禁忌なので
処方、投薬できません。
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(新型コロナウィルス感染と傍感染髄膜炎の関連)
新型コロナウィルスに関連の深い
息切れは回復したが、
髄膜脳炎に関連がある頭痛、倦怠感、嘔吐は
数週間続いた。
新型コロナウィルス感染が
クリプトコッカス髄膜炎を増強したか?
CD4+T細胞の減少が
CD8+T細胞の減少に比べて
顕著に下がっていいて、HIV感染の症状と
大きく重なるので可能性としては低いと判断。

//その後の経過、治療//-----
クリプトコッカスを殺菌した後
抗レトロウィルス療法によってHIVを治療。
その後、症状は回復し、仕事を再開。
長引く神経学的欠損は存在しません。

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//追記//
後遺症として
頭痛、吐き気、発熱、倦怠感が続く場合は
胸部、脳の画像検査、
血液、尿、脳脊髄液などの検査
これらを総合して
他の疾患との関連の可能性を疑いながら
診断していく事になると考えます。
それによって異常がわかれば、
それを取り除く治療ができるならば
それを実施して回復に向かわせることができるか?
という事だと思います。
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以上です。

(参考文献)
(1)
Howard M. Heller, M.D., M.P.H., R. Gilberto Gonzalez, M.D., Brian L. Edlow, M.D., Kevin L. Ard, M.D., M.P.H.,and Tasos Gogakos, M.D., Ph.D.
Case 40-2020: A 24-Year-Old Man with Headache and Covid-19  
The New England Journal of Medicine 2020;383:2572-80.
DOI: 10.1056/NEJMcpc2027083
(2)
Nord JA, Karter D. 
Lyme disease complicated with pseudotumor cerebri. 
Clin Infect Dis 2003; 37(2): e25-e26.
(3)
Hildenbrand  P,  Craven  DE,  Jones  R, 
Nemeskal P. Lyme neuroborreliosis: manifestations of a rapidly emerging zoonosis. 
AJNR Am J Neuroradiol 2009; 30: 1079-87.
(4)
Lindland ES, Solheim AM, Andreassen S, et al. I
maging in Lyme neuroborreliosis. 
Insights Imaging 2018; 9: 833-44.
(5)
Medina N, Samayoa B, Lau-Bonilla D, et al. 
Burden of serious fungal infections in Guatemala. 
Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2017; 36: 965-9.
(6)
Xia S, Li X, Li H. 
Imaging characterization of cryptococcal meningoencephalitis. 
Radiol Infect Dis 2016; 3: 187-91.
(7)
Bowen LN, Smith B, Reich D, Quezado M, Nath A. 
HIV-associated opportunistic CNS infections: pathophysiology, diagnosis and treatment. 
Nat Rev Neurol 2016; 12: 662-74.
(8)
Saag MS, Graybill RJ, Larsen RA, et al. 
Practice  guidelines  for  the  management of  cryptococcal  disease.  
Clin  Infect  Dis 2000; 30: 710-8.
(9)
 Graybill JR, Sobel J, Saag M, et al. 
Diagnosis  and  management  of  increased intracranial  pressure  in  patients  with AIDS and cryptococcal meningitis. 
Clin Infect Dis 2000; 30: 47-54.
(10)
van  der  Horst  CM,  Saag  MS,  Cloud GA, et al. 
Treatment of cryptococcal meningitis associated with the acquired immunodeficiency syndrome. 
N Engl J Med 1997; 337: 15-21.


 
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