いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスの治療薬として
レムデシビル、デキサメタゾン、アクテムラ、
ヘパリンなどが使われますが、
これらは新型コロナウィルスのために開発された薬ではなく
他の目的で使用されてきた薬をリパーポスとして使用されています。
このように薬理を考えながら
新型コロナウィルスの治療に生かせそうな薬を選び出すことは
緊急的な使用には適していると考えられます。
なぜならすでに他の目的では承認されている薬であるからです。
新型コロナウィルスは
基本としてはレムデシビルのように
抗ウィルス性があってウィルス量を減らす薬が
薬剤開発の基本としてあると思います。
しかし、現状では顕著な効果がある薬はまだなく、
重症化する患者(さん)においては
免疫機能が乱され、肺、血管を始め
様々な臓器、組織に支障をきたします。
新型コロナウィルスの患者の様子をメディアなどで拝見すると
症状の程度に関わらず、咳こむ方が多いと感じます。
その原因の一つは肺にあると考えられます。
肺炎を併発しやすい感染症である事には間違いないので
類似性が一定程度認められる
新型コロナウィルス以外の原因で生じた肺疾患に対する
臨床研究などは、適用検討の余地があります。
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Aaron Waxman氏らアメリカ合衆国の医療、研究グループは
間質性の肺線維症や閉塞性肺疾患を主に伴う
動脈の肺高血圧症について
血管拡張薬であるトレプロスチニルの吸入投与の効果を
二重盲検比較試験おいて確認しています(1)。
新型コロナウィルスの状況を踏まえ、
追記、考察を加えながらその内容の一部について
読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は筆者の追記、考察です。
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//重要な結果概要//ーーーーーーーー
トレプロスチニル投与群において16週後の評価の結果
6分間歩行距離が31.12m、非投与群(偽薬)に対して平均改善しました。
肺高血圧症は運動機能が低下する事が知られているので
歩行距離が改善する事は症状が改善したことを示す
一つの機能的要因であると評価できます。
またその運動能力は非投与群では
治療初期に比べて低下している一方で
投与群では4週目から8週目に一気に歩行能力が改善しています。
その後緩やかな改善が見られています。
(参考文献(1) Figure.2より)
また、血流を送る心臓の負担を示すマーカーである
脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)は
投与群では15%低下、非投与群では46%増加となっています。
--
副作用として投与群が相対的に多いものは
・咳・頭痛・喉の炎症・口咽頭の痛み
これらとなっています。
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//肺高血圧症とその経緯について//ーーーーーー
肺高血圧症は肺の動脈圧と血管抵抗が上昇する事です(2)。
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⇒
血管抵抗を示す要因は様々ですが、
一つは血管(周辺)の筋組織などの柔軟性などが関係している
と考えられます。従って組織の線維化など
新型コロナウィルスの肺炎として考えられる症状は
血管抵抗を上昇させる懸念があります。
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WHO(世界保健機関)は肺疾患による肺高血圧症は
グループ3に分類しています。
このグループは主に慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患
にあたります。
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⇒
新型コロナウィルスと動脈性肺高血圧症の関連については
今のところ明確な報告は揃っていない状況である
と考えています(3)。
しかし、間質性肺疾患は別名で肺線維症と呼ばれます。
肺胞、肺胞の周りの血管、気道の周りの間質と呼ばれる
組織が損傷、炎症することで生じるとされています。
新型コロナウィルスでは胸部CT画像において
組織の硬化を示す白色の部分が所見されます。
それが肺に存在する肺胞、血管、気道などの硬化を
示しているとするならば、間質性肺疾患と重なる部分がある
と評価できるのではないかと考えられます。
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間質性肺疾患を持つ患者の86%は
・運動能力の低下・酸素補充要・生活の質の低下・命を失う
これらのいずれかが確認されています(4-6)。
しかしながら
現状では「承認されている治療法はありません。」
-
今まで臨床研究として試された薬剤として
・Soluble guanylate cyclase stimulator:Riociguat
(可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬:リオシグアト)
がありますが、重篤な副作用が確認されたため
使用が停止されている状況です(7)。
--
Aaron Waxman氏らが参考文献(1)で効果を確認した
トレプロスチニルはプロスタサイクリンの安定類似体で
-
・肺や動脈の血管を直接的に拡張する
・血小板の凝集を抑制する
-
これらの薬理があります(8)。
吸入器による投与によって
グループ1の肺高血圧症(突発性やHIV感染症など)において
治療から12週間後に運動能力が向上したことが
報告されています(9)。
--
また間質性肺疾患などを伴う肺高血圧症である
グループ3についても血流や機能的な改善が
罹患している患者さんにおいて診られたとされています(10-13)。
ーーーーーー
//条件//ーーーーーー
①投与群②偽薬群
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(評価期間)
2017年2月3日~2019年8月30日まで
※従って新型コロナウィルス流行前
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(人数)
①130人②128人
※16週の治療を完了した人数
--
(年齢)
18歳以上
中央値:①65.6歳②67.4歳
65歳未満:①64人②48人
65-80歳未満:①83人②100人
80歳以上:①16人②15人
--
(性別)
女性比率:①52.1%②41.7%
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(肺疾患の原因)
突発性間質肺炎:①39.9%②49.7%
肺線維症と気腫:①25.8%②24.5%
結合性組織不全:①24.5%②19.6%
慢性過敏性肺炎:①6.1%②5.5%
職業性肺疾患:①3.1%②0.6%
--
(突発性間質肺炎のサブカテゴリ)
突発性肺線維症:①22.7%②33.7%
突発性、かつ非特異性肺炎:①12.9%②9.8%
--
(他の薬物治療(Background therapy))
特になし:①81.6%②73.0%
--
(酸素補充装置の使用)
①73.0%②69.9%
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(トレプロスチニルの投与方法)
吸入(Inhaled)
濃度(0.6mg/ml)
超音波、パルス輸送吸入器
(Ultrasonic, pulsed-delivery nebulizer)
1呼吸当たり6μg
1回目:3呼吸
その後、1時間経過観察
3日おきに徐々に投与量を増やす
最大投与量12呼吸(24μg)
※ただしターゲット投与量は患者によって異なる
1日4回
16週まで継続投与。
--
(運動能力測定条件)
6分間歩行
直近の投与から10分から60分後
(正確にはトレプロスチニル血漿濃度最大値から)
運動の前後、運動中には
パルスオキシメーターで酸素濃度をモニター
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//結果//ーーーーーー
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((運動能力))
治療開始時から6分間の歩行距離の差
4週後:4.79m
8週後:22.84m
12週後:29.2m
16週後:30.97m
(参考文献(1) Supplementary appendix Figure S3より)
-
<より効果的だった群>
女性:36.9m
ベース歩行距離350m以下:33.8m
血管抵抗が高い群(4 wood unit以上) :40.8
-
<最大薬剤投与量依存>
4-6 breath:-9.5m ※ただし人数が①6人②2人と少ない
7-9 breath:17.7m
10-12 breath:33.7m
(参考文献(1) Supplementary appendix Figure S2より)
-----
⇒
重要なのが薬剤の吸入投与量によって
結果が大きく異なる事です。
従って、治療を行う際には
薬剤投与量をしっかり最適化する事が求められます。
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((NT-proBNP))
動脈を通して血液を送る心臓の負担についてのマーカー
①投与群
ベースライン:2118.75(pg/ml)
8週後:1915.35(pg/ml)
16週後:1957.75(pg/ml)
-
②偽薬
ベースライン:2106.05(pg/ml)
8週後:2347.6(pg/ml)
16週後:2737.45(pg/ml)
(参考文献(1) Supplementary appendix Figure S4より)
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((副作用))※相対的に投与群が多いものを抽出
・咳(43.6%)
・頭痛(27.6%)
・喉の炎症(12.3%)
・口腔咽頭の痛み(11.0%)
-----
⇒
特に喉や口腔咽頭の痛みは差があるので
口から吸引する際にこれらの器官に
若干の負担がかかることを示している可能性があります。
ただし、頻度としては多くありません。
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⇒
//筆者の追記、考察//ーーーーーーーー
新型コロナウィルスの回復期の治療において
医療機関でのリハビリテーションとかねて
トレプロスチニルの吸入による治療は検討される価値はある
と考えます。
その際、運動時の酸素飽和度の測定や
NT-proBNPなどのバイオマーカーをできれば検査しながら
実際に効果があるかどうかの確認が必要だと思います。
基本的には血管拡張効果があるので
血栓や炎症などが考えられる症状において
一定の奏功を示す可能性があると考えます。
ーーーーーーーー
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以上です。
(参考文献)
(1)
Aaron Waxman, M.D., Ph.D., Ricardo Restrepo-Jaramillo, M.D., Thenappan Thenappan, M.D., Ashwin Ravichandran, M.D., Peter Engel, M.D., Abubakr Bajwa, M.D., Roblee Allen, M.D., Jeremy Feldman, M.D., Rahul Argula, M.D., Peter Smith, Pharm.D., Kristan Rollins, Pharm.D., Chunqin Deng, M.D., Ph.D., Leigh Peterson, Ph.D., Heidi Bell, M.D., Victor Tapson, M.D.,and Steven D. Nathan, M.D.
Inhaled Treprostinil in Pulmonary Hypertension Due to Interstitial Lung Disease
The New England Journal of Medicine 2021;384:325-34.
(2)
Simonneau G, Montani D, Celermajer DS, et al.
Haemodynamic definitions and updated clinical classification of pulmo-nary hypertension.
Eur Respir J 2019; 53: 1801913.
(3)
Samar Farha, Gustavo A. Heresi
COVID-19 and Pulmonary Arterial Hypertension: Early Data and Many Questions
Ann Am Thorac Soc. 2020 Dec; 17(12): 1528–1530.
(4)
Nathan SD.
Pulmonary hypertension in interstitial lung disease.
Int J Clin Pract Suppl 2008; 160: 21-8.
(5)
Nathan SD, Hassoun PM.
Pulmonary hypertension due to lung disease and/or hypoxia.
Clin Chest Med 2013; 34: 695-705.
(6)
King CS, Shlobin OA.
The trouble with group 3 pulmonary hypertension in interstitial lung disease: dilemmas in diagnosis and the conundrum of treatment.
Chest 2020; 158: 1651-64.
(7)
Nathan SD, Behr J, Collard HR, et al.
Riociguat for idiopathic interstitial pneumonia-associated pulmonary hypertension (RISE-IIP): a randomised, placebo-controlled phase 2b study.
Lancet Respir Med 2019; 7: 780-90.
(8)
Whittle BJ, Silverstein AM, Mottola DM, Clapp LH.
Binding and activity of the prostacyclin receptor (IP) agonists, treprostinil and iloprost, at human pros-tanoid receptors: treprostinil is a potent DP1 and EP2 agonist.
Biochem Pharmacol 2012; 84: 68-75.
(9)
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Addition of inhaled treprostinil to oral therapy for pulmonary arterial hypertension: a randomized controlled clinical trial.
J Am Coll Cardiol 2010; 55: 1915-22.
(10)
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Inhaled treprostinil in pulmonary hypertension associated with lung disease.
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(11)
Agarwal M, Waxman AB.
Inhaled treprostinil in group-3 pulmonary hyper-tension.
J Heart Lung Transplant 2015; 34: Suppl: S343. abstract.
(12)
Bajwa AA, Shujaat A, Patel M, Thomas C, Rahaghi F, Burger CD.
The safety and tolerability of inhaled treprostinil in patients with pulmonary hypertension and chronic obstructive pulmonary disease.
Pulm Circ 2017; 7: 82-8.
(13)
Wang L, Jin Y-Z, Zhao Q-H, et al.
Hemodynamic and gas exchange effects of inhaled iloprost in patients with COPD and pulmonary hypertension.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2017; 12: 3353-60.
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