2021年1月27日水曜日

ウィルス株変異の影響と対策

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

今、イギリスで主に発生が確認されている変異株(VUI-202012/01)や
南アフリカ主に発生が確認されている変異株(B.1.351)を始め
変異株の脅威が高まっています。
VUI-202012/01変異株では感染力が70%も高いということでした。
現時点で確定的な事は言えまんが、
自然に考えると感染力が高いとは
--
〇空気中での寿命(半減期)が長い
〇細胞への感染能力が高い
〇細胞内での増殖力が高い
--
これらの事が可能性としては考えられます。
いずれにしても感染力が高いというのは
体内でのウィルス量が増えやすいという事を意味しますから
もしウィルス1株当たりの身体に対する負担が変わらず
かつウィルス量と重症度に正の相関性が一定見られるのであれば、
それに対して重症化や亡くなるリスクも上がる
ということになります。
確定的な報告を確認する前に
過度な不安を煽ることは避けたいですが、
自然に考えれば可能性としては否定はできないということです。
--
南アフリカの変異株はワクチンの効果が落ちるかもしれない
という話があります。
実際に2021年1月19日南アフリカのConstantinos Kurt Wibmer氏らの
発表によれば、回復期血漿から取り出した抗体に対しての
中和能力が下がった(2)と言われています。
その抗体は
CA1、LyCoV016、CC12.1、BD23、C119、P2B-2F6
これらが挙げられています。
これらの中和能力を下げる主要要因は
新型コロナウィルスのエントリー受容体(ACE2)の結合面である
RBD(受容体結合ドメイン)が変異する(構造が変わる)ことです。
南アフリカであれば
K417、E484、N501という参考文献(2)Fig.1aに示される
受容体結合面の構造が変わっています。
それによって抗体の親和性が下がり結合しにくくなる
ということが一つとして考えられます。
実際にはワクチンの標的とするRBDは
それぞれ細かく見れば異なるので、
効果が落ちにくいワクチンとそうではないワクチンが存在する
と考えられます。
実際にモデルナ社(さん)のワクチンでは
中和活性が1/6に減少したので
ワクチンの接種回数を3回にすることで
抗体量を増やして対抗しようとしています(3)。
--
ここで先に述べますが、
おそらくもっと有効な方法は中和抗体を混ぜることです。
中和抗体を混ぜることで変異に対する中和能の変化が小さくなる(1)
と考えられています。
従って、この効果を今後のワクチン接種でどのように生かしていくか
を考える必要があります。
--
ただ現時点では南アフリカ株は気を付けたほうがいいです。
実際にイーライリリー社(さん)の治験第3相に進んでいる
ワクチンLY-CoV016もK417という南アフリカ株に含まれる
RBDの変異に対して中和能が落ちることが確認されています。
(参考文献(1) Fig.1B,Cより)
--
今、日本は感染対策の要としてワクチン接種を掲げていて
政府の方々、地方自治を担う方々、全国市町村の職員の方々
医療に関係する方々、保健所の方々、大学の方々
関連企業の方々、NGOの方々など多くの人が
国家プロジェクトとして動いています。
これを成功させるためには
現時点ではワクチンの効果に影響があるかもしれない
南アフリカ株については特に
水際対策をしっかりして感染が広がらないように監視する事が大切です。
--
また後述しますが、抗体は特異的に設計されているので
RBDの変異が起こる場所によっては中和能はどうしても変わってしまいます。
(参考文献(1) Fig.1Bより)
従って、複数の抗体を混ぜて接種する事もそうですが、
ワクチンは万能ではないという認識のもと
〇手洗い・〇消毒・〇マスク
これらの対策は引き続き徹底する必要があります。
〇3密に関しては今はもちろん回避すべきですが、
ワクチン接種が行われて医療の状況、感染状況が改善してきたら
段階的に考えられていく要因だと考えます。
また、
ワクチンだけではなく、
治療薬の開発も引き続き進める必要があります。
--
ただ、一つ断わっておきたいことがあります。
モデルナ社のワクチンで中和能が落ちたという話があります(3)。
しかし、中和能が落ちても
それは抗体自身がワクチンを半分にする能力が落ちた
ということを「独立に」評価した指標にすぎません。
他にもTh1のT細胞の活性やB細胞の活性
あるいはマクロファージ、NK細胞、樹状細胞など
様々な免疫細胞の作用もあるので
仮に1/6になっても6倍感染しやすくなるというのを
示すものではないということです。

ーーーーーーーー
アメリカ合衆国のTyler N. Starr氏ら医療、研究グループは
新型コロナウィルスの受容体結合面(RBD)の変異に種類に対する
指定された抗体の中和能への影響について調べられています(1)。
その内容の一部について読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は筆者の追記、考察です。
ーーーーーーーー

//概要、重要な内容について//ーーーーーーーー
基本的には抗体の種類によって
RBDのどの部位に変異が入った時に中和能が変わるかという
各部位における感受性は抗体によって異なります。
比較的、影響を受けやすい抗体もあります。
しかし、確実にいえることは
抗体を混ぜる(REGN10933+REGN10987)ことで
変異に対しては強くなると考える事ができます。
ーーーーーーーー

//評価プロセス、方法//ーーーーーー
・酵母の表面上にRBD変異ライブラリーを作製
・蛍光発光によって細胞を活性化させて分類
・RBDの構造、ACE2親和性、抗体結合性の変異の影響を解析
・遺伝子配列解析を行う
参考文献(4)(5)に従う。
---
選び出された抗体は
REGN10933、REGN10987、REGN10933+REGN10987(混合)
LY-CoV16(イーライリリー社)
これらの抗体。
ーーーーーー

//結果評価//ーーーーーー
参考文献(1)Fig.3の横軸は変異の頻度(起こりやすさ)
縦軸に関しては変異に対する中和能の影響を
見ている(と理解しています)。
つまり、変異の頻度と中和能の影響が高い
右上の点の変異は脅威が大きいことを示しています。
例えばLY-CoV16(イーライリリー社)の抗体であれば
K417Nが一番、変異が起こりやすく脅威があるということです。
実際、ここは南アフリカで変異している部分で
すでに社会で影響を与えています。
他にはY453F、N439K、N501Yも変異の頻度が高く
注意が必要です。N501は南アフリカですでに起こっています。
Y453はREGN10933において中和能への影響もあるので
注意が必要です。
--
しかし、REGN10933+REGN10987(混合)に関しては
参考文献(1)Fig.3からわかるように
影響が大きな変異に対しても極めて頻度が低いことがわかります。
従って、抗体のカクテルは
今後変異が考えられる新型コロナウィルスの脅威を
下げるものであると考えられます。
ーーーーーー

-----

//追記、考察//ーーーーーーーー
実際に抗体を混ぜた時になぜ変異に対して強いか?
このことに対しては今後詳しく治験なども含めて
調べられていくと考えますが、
Zhiqiang Ku氏らの指摘によれば、
異なる抗体が「同時に」「異なる場所で」結合することで
変異に対して抗体能が落ちにくくなるということです(6)。
従って、性質が極めて近い抗体の場合は
重複する部分があり同時結合が実現しない可能性も
否定はできないので、
どの抗体を組み合わせるのか?
この点においては「同時結合」を一つの判断基準として
考える必要があります。
参考文献(6)ではK444R、E484Aという
それぞれ単一の抗体CoV-06、CoV-14では中和能が大きく
低下した変異に対して、
この抗体を二つ組み合わせたことで
これらの変異に対する中和能の低下は顕著に抑えられています。
(参考文献(6) Fig.5(b)より)
それぞれの抗体は上述したように同時に結合しますが、
低温電子顕微鏡の構造が参考文献(6)Fig.3dに示されています。
ーーーーーーーー
-----

以上です。

(参考文献)
(1)
Tyler N. Starr, Allison J. Greaney, Amin Addetia, William W. Hannon, Manish C. Choudhary, Adam S. Dingens, Jonathan Z. Li, Jesse D. Bloom
Prospective mapping of viral mutations that escape antibodies used to treat COVID-19 
Science 10.1126/science.abf9302 (2021).
(2)
Constantinos  Kurt  Wibmer,  Frances  Ayres,  Tandile  Hermanus,  Mashudu  Madzivhandila,  Prudence Kgagudi, Bronwen E. Lambson, Marion Vermeulen, Karin van den Berg, Theresa Rossouw, Michael Boswell, Veronica Ueckermann, Susan Meiring, Anne von Gottberg, Cheryl Cohen, Lynn Morris, Jinal N. Bhiman, Penny L. Moore
SARS-CoV-2 501Y.V2 escapes neutralization by South African COVID-19 donor plasma 
bioRχiv  January 19, 2021.
(3)
AFP BB News
モデルナのワクチン、英・南ア変異株にも有効と発表
https://www.afpbb.com/articles/-/3328298
(4)
T. N. Starr, A. J. Greaney, S. K. Hilton, D. Ellis, K. H. D. Crawford, A. S. Dingens, M. J. Navarro, J. E. Bowen, M. A. Tortorici, A. C. Walls, N. P. King, D. Veesler, J. D. Bloom, 
Deep  mutational  scanning  of  SARS-CoV-2  receptor  binding  domain  reveals constraints  on  folding  and  ACE2  binding.  
Cell  182,  1295–1310.e20  (2020). 
doi:10.1016/j.cell.2020.08.012 Medline 
(5)
A. J. Greaney, T. N. Starr, P. Gilchuk, S. J. Zost, E. Binshtein, A. N. Loes, S. K. Hilton, J. Huddleston, R. Eguia, K. H. D. Crawford, A. S. Dingens, R. S. Nargi, R. E. Sutton, N. Suryadevara, P. W. Rothlauf, Z. Liu, S. P. J. Whelan, R. H. Carnahan, J. E. Crowe Jr.,  J.  D.  Bloom,  
Complete  mapping  of  mutations  to  the  SARS-CoV-2  spike receptor-binding domain that escape antibody recognition. 
Cell Host Microbe 29, 44–57.e9 (2021)
(6)
Zhiqiang Ku, Xuping Xie, Edgar Davidson, Xiaohua Ye, Hang Su, Vineet D. Menachery, Yize Li, Zihao Yuan, Xianwen Zhang, Antonio E. Muruato, Ariadna Grinyo i Escuer, Breanna Tyrell, Kyle Doolan, Benjamin J. Doranz, Daniel Wrapp, Paul F. Bates, Jason S. McLellan, Susan R. Weiss, Ningyan Zhang, Pei-Yong Shi & Zhiqiang An 
Molecular determinants and mechanism for antibody cocktail preventing SARS-CoV-2 escape
Nature Communications volume 12, Article number: 469 (2021) 


0 コメント:

コメントを投稿

 
;