2021年1月3日日曜日

後遺症の診断を含めた脳の検査

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスにおいて後遺症に
悩まされている方は多くいます。
今のところ明確な治療のガイドラインはなく
後遺症専門外来の数も限られている状況で、
治療が難しい状況であると理解しています。
厚生労働省は後遺症について今調査中であるという
発表をしています。
後遺症の中で多いのは倦怠感と言われています。
微熱が続く方もいます。
嗅覚障害なども含め新型コロナウィルスに罹患した時の
症状がすっきり抜けないというのがあります。
PCRが陰性になっても症状が続くのは
・免疫機能が乱れたままである
・組織が炎症、損傷して回復していない
などが考えられますが、
罹患した時に軽症だった若い人でも残ることがあります。
そのような事も含めると
特に後遺症に関しては、脳の状態がどうであるか?
という点が気になるところです。

Myoung‑Hwa Lee氏ら医療、研究グループは
新型コロナウィルスによって亡くなられた患者さんの
脳の状態の分析をしています(1)。
MRIなどでもある程度診断が可能かもしれないことを
示しています。
(※)
=====の⇒は私独自の追記、考察

//観察部位//--------
新型コロナウィルスの患者(さん)に対して
高感度MRIで脳の病理組織学な検査を行いました。
観察した部位は
・嗅球
・脳幹
これらです。
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嗅球は嗅覚に関わる部位で目のすぐ後方にあります。
新型コロナウィルスでは嗅覚に関わる障害がでることがあります。
従って、この部位に何らかの変化がないか?
調べられました。
-
脳幹は呼吸、心拍数、血圧などの制御をおこなう部分です。
重症患者では呼吸、心拍数、血圧などに異常が見られることが
あります。血管そのものの傷害によって起こっている
可能性もありますが、その司令塔としての機能については
どうかということだと考えられます。
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//結果概要//---------
嗅球において細胞外にあるたんぱく質、フェブロネクチンの
柔組織への浸入がみられます。
その周りでは血管の詰まりがみられています。
また脳幹において微小血管からの出血がみられました。
血管の周りには免疫細胞の惹起、星状膠細胞の異常が見られました。
従って、脳の血管に異常が生じていると所見されると考えます。
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//条件//--------
(人数)
13人
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(平均年齢)
50歳
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//結果//--------
新型コロナウィルスで命を落とされた方の脳の状態
--ー
(嗅球) 
多重免疫蛍光検査
multiplex immunofluorescence imaging
この検査によれば
蛍光発光が斑上に強い部分があり
それが細胞外マトリックスの材料である
フェブロネクチンの柔組織への浸入(リーク)を示している
ということです。
線状のフェブロネクチンの信号の間に
うっすら広がっている緑の点状の信号が
フェブロネクチンのリークを示しているということです。
上皮細胞によって分泌された細胞外マトリックスの層である
基底膜の薄膜化が確認されています。
(参考文献(1) Figure.1(B)(B1)(B2)より)
またフェブロネクチンの周辺の領域では
血管の詰まりが確認されています。
(参考文献(1) Figure.1(C))より)
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(脳幹(髄質))
MRIによる黒く見えている部分(Hypointensity)
は微小血管における出血を示しています。
(参考文献(1) Figure.1(F)より)
脳幹神経節の血管周囲に
・活性化されたマイクログリア、マクロファージ
・異常肥大した星状膠細胞
これが確認されています。
(参考文献(1) Figure.1(G)(H)より)
活性化したマイクログリアは神経細胞侵食する作用があります。
その部位は、嗅球、黒質、迷走神経、脳幹(髄質)を含みます。
臨床症状としては
spontaneous rhythmic breathing
つまり、自発的に呼吸がリズムを刻むようになります。
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・CD3+、CD8+T細胞
これが血管周囲に確認されました。
(参考文献(1) Figure.1(I)(J)より)
これが血管への損傷に関与している可能性があります(2)。
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PCRによって脳内のウィルスは検知されませんでした。
患者さんが命を落とす前にウィルスが免疫機能によって
排除、もしくは検出限界以下になったと考えられています。
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上述したようなマイクログリア、マクロファージ、
あるいはT細胞などの免疫系の細胞が
血管を通して侵入してきたウィルスを
それらが過剰発現することで攻撃したということが
考えられるか?ということです。
星状膠細胞の機能は血液脳関門、髄液脳関門の閉鎖機能が
挙げられています。
この細胞が異常になることによって
脳の血管内壁の状態が壊れている事を示唆している
可能性もあります。
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(追記)
脳の血管の状態を詳しく検査できる方法があるか?です。
例えば、脳血管造影検査(MRA、CTA)というのがあります。
また、脳の血管の異常を特異的に示すバイオマーカーがあれば
血液検査によって脳の状態を診断できる可能性もあります。
一方、脳脊髄液の検査を腰椎穿刺によって行えば
神経系の情報だけ排他的にとることができると理解しているので
それによって炎症を示すバイオマーカーを検出することが
できるかということです。
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以上です。

(参考文献)
(1)
Myoung‑Hwa Lee, Ph.D. Daniel P. Perl, M.D.Govind Nair, Ph.D. Wenxue Li, Ph.D. Dragan Maric, Ph.D. Helen Murray, Ph.D. Stephen J. Dodd, Ph.D. Alan P. Koretsky, Ph.D.Jason A. Watts, M.D., Ph.D. Vivian Cheung, M.D.Eliezer Masliah,M.D.Iren Horkayne‑Szakaly, M.D. Robert Jones, M.D.Michelle N. Stram, M.D.Joel Moncur, M.D.Marco Hefti, M.D.Rebecca D. Folkerth, M.D.Avindra Nath, M.D.
Microvascular Injury in the Brains of Patients with Covid-19
The New England Journal of Medicine (2020)
(2)
Varga Z, Flammer AJ, Steiger P, et al. 
Endothelial cell infection and endotheliitis in COVID-19. 
Lancet 2020; 395: 1417-8.


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