2021年1月6日水曜日

抗体評価温度条件における留意点

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

実際にワクチンの開発をするときには
新型コロナウィルスのSタンパク質を
まずは試験内で構造や細胞との結合性を評価します。
その時にタンパク質ですから
金属のように固く、安定ではないので
構造が自然のまま残るように「安定化」させる必要があります。
その時に
・安定化するように構造を一部改変する
このような事を行います。
そうして構造を安定化させた後
そのエピトープに親和性の高い抗体を開発します。

Robert J. Edwards氏ら研究グループは
低温にすることで構造の安定化のために改変した部分が
構造変化しやすくなることを示しました(1)。
そういった中で、
抗体を入れた時の新型コロナウィルスとACE2受容体の
結合の評価をするときには温度37℃程度まで
上げてから行うことが推奨されています。

Sタンパク質の構造安定化のために行われるのは
two proline(2P)substitutions
つまり二つのプロリンが入れ替えられます。
しかしながら、
このように安定化するための構造改変は
温度依存性があり、4℃での貯蔵時において
急速な構造の変性が起こることが確認されています。

それによって
ACE2受容体と結合する受容体結合面(RBD)がある
Sタンパク質のS1サブユニットに結合する抗体(CR3022)
に関しては、低温にすることで抗体が結合しやすくなりました。
一方、細胞膜とウィルスの融合の際に使われるとされる
S2サブユニットに結合する(2G12)については、
結合性は下がってしまいます。
37℃、22℃、4℃という温度変化を加えることで
同一の抗体の結合性が変わってしまいます。
(参考文献(1) Fig.1(d)より)
従って、温度の影響を受けないように
温度管理を厳密にした状態で抗体の評価をしないと
実際とは異なる結果を生むことになります。

/私の追記、考察/
このような温度依存性は、
実際に人工的に加えられた改変によるものだけではなく
ウィルス株自身のSタンパク質の構造でもあるかどうか?
この点が気になります。
日本の東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県を中心に
感染が広がっています。
要因は一つではないと思いますが、
低温であることが何らかの影響を与えているか?
その点に関わるからです。
参考文献(3)では
・スパイクのタンパク質は10~50℃まで安定
・S1サブユニットは変化しやすい
このようになっており
S1サブユニットは温度によって感受性が変わりやすい
という「コンピューターシミュレーション」があります。
(参考文献(3) Fig.2(a)より)
今は、外気温は多くの時間で10℃以下ですから
その状態において夏の時期と
新型コロナウィルスのSタンパク質の構造は変わるかどうか?
それによって感染性はどうか?
ということです。
ただ、外から吸い込んでから
身体に入ってしばらく経つと体温で温められるので
その経路での温度変化というのもあると考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Robert J. Edwards, Katayoun Mansouri, Victoria Stalls, Kartik Manne, Brian Watts, Rob Parks, Katarzyna Janowska, Sophie M. C. Gobeil, Megan Kopp, Dapeng Li, Xiaozhi Lu, Zekun Mu, Margaret Deyton, Thomas H. Oguin III, Jordan Sprenz, Wilton Williams, Kevin O. Saunders, David Montefiori, Gregory D. Sempowski, Rory Henderson, S. Munir Alam, Barton F. Haynes & Priyamvada Acharya 
Cold sensitivity of the SARS-CoV-2 spike ectodomain
Nature Structural & Molecular Biology (2021)
(2)
Yongfei Cai et al.
Distinct conformational states of SARS-CoV-2 spike protein
Science  25 Sep 2020: Vol. 369, Issue 6511, pp. 1586-1592
(3)
Soumya Lipsa Rath, Kishant Kumar
Investigation of the effect of temperature on the structure of SARS-Cov-2 Spike Protein by Molecular Dynamics Simulations
bioRχiv https://doi.org/10.1101/2020.06.10.145086


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