2021年1月26日火曜日

重症患者の系統的インターフェロン抑制因子、薬剤開発、治療

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

1月25日現在の全国の重症患者の数は1017人で
昨日よりも10人増えています。
重症の患者さんに対する治療は約1か月と長くかかるので
なかなか空床となりません。
その中で一定の割合の方が重症化すると、
重症患者(さん)はどんどん増えていきます。
その中で重症の患者さんに対する
より有効な治療が強く求められる状況です。
埼玉医科大学総合医療センター感染症科の岡秀昭先生によれば
重症の患者さんに対する治療は
レムデシビル、ヘパリン、デキサメタゾン、アクテムラなどを
併用しながら行わているということでした。
ウィルスの増殖、血液の凝固を抑える、
免疫炎症を抑制して調整する役目の薬が使われることです。
今後はワクチンによって
恐らく重症化する患者は減ると思われますが、
それでも南アフリカ株で確定的ではないですが、
ワクチンの効果が減少するという変異が指摘されています。
このような事が起こらないとは言えないので
ワクチンに頼るだけではなく、
特効薬の開発や
特に重症化した時によく効く薬が強く求められます。
重症化した時に特効性を示す薬剤を開発するためのヒントは
重症化した人が共通で持っている特有の信号を掴む必要があります。
それが分かれば、そこから治療薬への道が開けることになります。
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アメリカ合衆国のAlexis J. Combes氏ら
医療、研究グループは重症患者特有の免疫的な特徴を見つけ出し
その原因について非常に重要な発見をしています(1)。
その発見は新型コロナウィルス重症患者に特効性を示すかもしれない
薬剤の開発に貢献するものだと考えられます。
その内容の一部について読者の方と共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は筆者の追記、考察です。
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//概要、重要な結論まとめ//ーーーーーーーー
新型コロナウィルスの重症の患者さんでは
好中球、単球、リンパ球(T細胞、B細胞)など
様々な免疫細胞のインターフェロン刺激遺伝子の発現が抑えられ
それによってインターフェロンの働きが
系統的に抑えられていることがわかります。
この傾向は、新型コロナウィルス非感染の急性呼吸器疾患を
持っている患者さんには診られません。
従って、新型コロナウィルス重症患者特有です。
インターフェロンの発現が弱いのは以前から指摘されていました。
--
ここからが重要です。
そのインターフェロンは重症患者(さん)が発症間もなく
発現する新型コロナウィルスに対する抗体によって
系統的に弱められている可能性が高いという事です。
抗体にはFabドメイン、Fcドメインがありますが、
新型コロナウィルスのSタンパク質に結合するFabドメインではなく
Y字型抗体の根元のFcドメインが
FcγRIIb(CD32b)という受容体に結合し、
この受容体の機能を高める事によって、
インターフェロンの分泌が抑制されています。
従って、
免疫細胞のFcγRIIb(CD32b)に結合し、
機能を弱めるモノクローナル抗体(抗CD32b)が開発されれば
重症の患者さんのインターフェロンを高める事が出来
それによって症状改善に貢献する可能性があります。
他の提案としては
抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブが
インターフェロン刺激遺伝子の統一的な標的として
挙げられています。
--
また回復者血漿療法においては
重症の患者さんから集めた抗体については
CD32bを高めてインターフェロンの働きを抑制する可能性があるので
血漿を集める際に患者さんのスクリーニングは
必要な可能性があります。
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//条件//ーーーーーー
健常者:14人
新型コロナウィルス陽性:20人
(うち重症:10人、軽症:10人)
新型コロナウィルス陰性(肺疾患):11人
(うち重症:5人、軽症:6人)
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//結果(インターフェロン)//ーーーーーー
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(好中球中のインターフェロン刺激遺伝子)
7つ亜型のインターフェロン刺激遺伝子で
新型コロナウィルス重症患者では軽症に比べて
全てにおいて優位にその機能が抑制されています。
(参考文献(1) Fig.1gより)
--
(単球中のインターフェロン刺激遺伝子)
新型コロナウィルス陽性で軽症の方は
単球中のインターフェロン刺激遺伝子は
陰性の人よりも多く、個人差があります。
しかし、陽性で重症のケースでは
軽傷にケースに比べて全体的に少なくなっています。
(参考文献(1) Fig.2aより)
--
(T細胞、B細胞中のインターフェロン刺激遺伝子)
新型コロナウィルス陽性で軽症の方は
T細胞中のインターフェロン刺激遺伝子は
陰性の人よりも多く、個人差があります。
しかし、陽性で重症のケースでは
軽傷にケースに比べて全体的に少なくなっています。
B細胞も同様です。
(参考文献(1) Fig.2cより)
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(血小板のインターフェロン刺激遺伝子)
新型コロナウィルス陽性で軽症の方は
血小板中のインターフェロン刺激遺伝子は
陰性の人よりも多く、個人差があります。
しかし、陽性で重症のケースでは
軽傷にケースに比べて全体的に少なくなっています。
(参考文献(1) Fig.2eより)
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//結果(免疫細胞の数)//ーーーーーー
新型コロナウィルス陽性、陰性の
重症の患者では好中球が多く、
T細胞、NK細胞が少なくなっています。
(参考文献(1) Fig.1bより)
新型コロナウィルス陽性に限れば
T細胞、NK細胞の数が軽症の方は多くなっています。
(参考文献(1) Fig.2f-hより)
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//結果(抗体とインターフェロンの関係)//ーーーーーー
新型コロナウィルス陽性、重症、軽症の患者さんにおいて
血液中の抗体の有無においてのインターフェロン関連
タンパク質(IFITM3)のレベルを検出しました。
その結果
重症の患者の血液では
抗体がある状態ではインターフェロンの減少が示唆されます。
しかし、抗体がない状態では減少量が顕著に少なくなります。
軽傷の患者の血液では抗体有無に対して
インターフェロン膜貫通タンパク質の増減は
重症患者ほど多くありませんでした。
(参考文献(1) Fig.3gより)
免疫細胞に存在するFc受容体(CD16/CD64/CD32)のどれが
働いているか調べられました。
その結果CD32を機能を抑制した時に
重症患者におけるインターフェロン膜貫通タンパク質の量に
大きな変化がありました。
(参考文献(1) Fig.4eより)
このCD32のうちFcγRIIb(CD32b)は
樹状細胞や単球においてインターフェロンとの関連がある
ということが従来から知られています(3)。
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実際にこれがなぜ重症の患者さんにだけ生じているのか不明ですが、
B細胞によって生み出された抗体の種類が異なる可能性があります。
患者さん自身の免疫細胞のFc受容体の構造や感受性が異なる
可能性ももちろん考えられますが、
Alexis J. Combes氏らの指摘を踏まえると
自己抗体も含めた産生されている抗体の方に原因がある事が
考えられます。
従って、結びの所ではB細胞の反応を抑える薬剤
リツキシマブの使用が提案されています。
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//インターフェロンの一般的な説明//ーー
インターフェロンは細胞の間を伝達する小さな胞のである
サイトカインの一種で病原体を消滅させる役割があります。
ウィルスにおいては細胞を保護する事によって
ウィルスの複製を防ぐ役割があります。
一つの具体的な機能としてはウィルスが細胞質に入るのを
防ぐ役割があります(2)。
また、NK細胞やマクロファージ
あるいはMHC受容体を通じてT細胞など
多様な免疫細胞を活性化させる作用があります。
一般的に感染症にかかった時に熱や筋肉痛が生じるのは
一つの原因としてはインターフェロンの産生が挙げられます。
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新型コロナウィルスに対して発熱が生じるのは
免疫細胞が産生されている証拠ではあります。
しかし、熱が下がらず慢性化する場合には注意が必要です。
上の結果でも示されているように
NK細胞の数に軽症と重症の患者さんにおいて差があったのは
インターフェロンの産生量を相関がある可能性があります。
Ⅰ型インターフェロンはNK細胞の機能を
感染細胞特異的に働くようにMHCクラスⅠ分子の発現を
増加させて調整するので
インターフェロンとNK細胞の働きは
新型コロナウィルス感染細胞を不活性化、死滅させるうえでは
重要な役割を果たしていると考えられます。
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//追記、考察//ーー
Alexis J. Combes氏らによってインターフェロン抑制との
指摘がされているFcγRIIb(CD32b)が
どの免疫細胞に発現されているかというと
好中球、好酸球、好塩基球、
単球、マクロファージ、樹状細胞、B細胞
これらとなっています。
T細胞にはFc受容体の発現は陰性となっています。
(参考文献(4) Fig.1より)
T細胞におけるインターフェロン刺激遺伝子に関しては
違う経路か間接的に作用している可能性があります。
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以上です。

(参考文献)
(1)
Alexis J. Combes, Tristan Courau, Nicholas F. Kuhn, Kenneth H. Hu, Arja Ray, William S. Chen, Nayvin W. Chew, Simon J. Cleary, Divyashree Kushnoor, Gabriella C. Reeder, Alan Shen, Jessica Tsui, Kamir J. Hiam-Galvez, Priscila Muñoz-Sandoval, Wandi S. Zhu, David S. Lee, Yang Sun, Ran You, Mélia Magnen, Lauren Rodriguez, K. W. Im, Nina K. Serwas, Aleksandra Leligdowicz, Colin R. Zamecnik, Rita P. Loudermilk, Michael R. Wilson, Chun J. Ye, Gabriela K. Fragiadakis, Mark R. Looney, Vincent Chan, Alyssa Ward, Sidney Carrillo, The UCSF COMET Consortium, Michael Matthay, David J. Erle, Prescott G. Woodruff, Charles Langelier, Kirsten Kangelaris, Carolyn M. Hendrickson, Carolyn Calfee, Arjun Arkal Rao & Matthew F. Krummel 
Global absence and targeting of protective immune states in severe COVID-19
Nature (2021)
(2)
I. C. Huang et al., 
Distinct patterns of IFITM-mediated restriction of filoviruses, SARS coronavirus, and influenza A virus. 
PLoS Pathog 7, e1001258 (2011).
(3)
K. M. Dhodapkar et al., 
Selective blockade of the inhibitory Fcgamma receptor (FcgammaRIIB) in human dendritic cells and monocytes induces a type I interferon response program. 
J Exp Med 204, 1359-1369 (2007).
(4)
Stylianos Bournazos, Aaron Gupta & Jeffrey V. Ravetch 
The role of IgG Fc receptors in antibody-dependent enhancement
Nature Reviews Immunology volume 20, pages633–643(2020)


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