いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
昨日の東京都の感染者数は2001人でありました。
神奈川県が最近多くなっています。
病床の逼迫状況なども鑑みると
状況としては全国で特に深刻である都道府県の1つではないか
と考えられます。
感染者数は曜日によってばらつきがありますから
週ごとの感染者数の平均を分析する事が正確性を上げます。
しかし、実際に無症状のわかりにくい患者をどれくらい拾ったかにもよるので
数字と実情が比例しない部分があると思っています。
一方で、中等症、重症患者においては、
家で急速に悪化される方もいますが、
基本的には実情をより示していると考えられます。
現時点では軽症の早期の治療が難しい状況であるので
治療の改善によって中等症になる前に軽症で済む方が増えている
というのは顕著ではないと考えているからです。
従って、中等症、重症患者数をしっかり見ることが大事です。
ただ、この数も1,2週間の遅れがあるので
感染状況の正確な評価というのは思っている以上に難しいです。
しかし、去年の暮れから明らかに増えている事は間違いありません。
今できる事というのは
〇中等症や重症の病院で治療が受けられる患者さんへの医療の改善
〇社会経済活動の中で如何に感染を減らすか
ということです。
今は状況から考えると、一部の知事の方が言われているように
人の流れを抑制することに重きを置かれる必要がある
という事だと思います。
経済の問題もあるので難しい選択ではありますが、
感染が広がるとより減らすことが難しくなり、時間もかかるので
今の段階で止める事が得策であるということです。
それでもすでに遅いという指摘もあります。
他方、今の段階で予備的にできる他の事があると思っています。
もう少し状況が落ち着いてきたときには
「リスクのある患者さんを中等症、重症になる前に早期に治療する。」
このことが望まれます。
もちろん、その上位にはワクチンがあって
「そこまでいかず発症もしない」という状況がさらに好ましいですし、
多くの方がそうならないと日常生活は戻ってこない
と思われます。
そうなったとしても発症する人は一部ではいると考えられますから
その次の段階として医療の介入、治療があると思っています。
そうするためには
新型コロナウィルスの増殖のプロセスを深く理解する事と
その中で免疫機能がどのように応答するか
を考える必要があります。
-
下述する重要な免疫機能(Ⅰ型インターフェロンなど)に
もともと異常がある人は治療による介入がより必要になります。
また、軽症であっても後遺症の問題がありますから
それについても現在進行中の方の治療と
これから生じる後遺症をどう防ぐか、治すか、軽くするか。
それについても考える必要があります。
スウェーデンのPetter Brodin氏は
新型コロナウィルスの重症化に関わる免疫の観点での
決定因子について今までわかっていることを総括しています(1)。
その内容の一部
(自然免疫系、Ⅰ型インターフェロン、後遺症)
これに対して追記を加えながら
読者の方と情報共有したいと思います。
//自然免疫系//ーーーーー
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体内にウィルスが入ってきた時にはその門番として
マクロファージ、樹状細胞、NK細胞といった自然免疫系が
ウィルスを「体内にない脅威のもの」と認識して
免疫機能を発動させます。
その時にはToll様受容体(TLR)が働きます。
Toll様受容体は現在では13種類確認されていますが、
その中でコロナ系ウィルスに関わるとされるものは
TLR3、TLR7、TLR8、TLR9です(2)。
(他にRIG-Ⅰ、MDA5があります)
これらのToll様受容体は
すべて細胞のエンドソーム(内腔)に存在する受容体なので(3)
マクロファージが食作用によってウィルスを取り込み
細胞内にできたエンドソームに存在するToll様受容体で
免疫機能を発動させます。
この中でTLR7などは
抗ウィルス性を示して、ウィルスの数を減らすと考えられる
Ⅰ型インターフェロン遺伝子発現、分泌に関わります(4,5)。
しかしながら、同時にTLR3はNLRP3の活性化を通して(6)
炎症性に関与するので血栓などを引き起こす
サイトカインストームとの関与が考えられます。
(参考文献(1) Fig,1(a)(b)参照)
その中で、新型コロナウィルス感染の重症化との関連が指摘されています(7)。
-
従って、
Ⅰ型インターフェロンの発現、分泌が
感染早期に行われることが非常に重要です。
しかし、新型コロナウィルスはⅠ型インターフェロンの
分泌を遅らせる機序を持っています(8,9)。
(参考文献(1) Fig.1(c)参照)
ゆえにその影響を受けやすいリスクのある人を選び出し
Ⅰ型インターフェロンの適切なタイミングでの分泌を促す
薬剤などの治療が必要になります。
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//Ⅰ型インターフェロンについて//ーーーーー
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参考文献(1) Fig.1(c)のようにⅠ型インターフェロンの反応が遅れると
新型コロナウィルスの重症化のリスクが上がる可能性が高いと
という複数の報告があります(9-12)。
実際に新型コロナウィルスによる大規模な遺伝子検査の結果
一部の人に
Ⅰ型インターフェロンに関わる生理の先天的な異常(13)、
それに対する自己抗体の保有(14)
があるとされています。
参考文献(14)では
結果的に肺炎を伴う重症になった患者(さん)
987人のうち101人と約10%の人が
「感染前から」自己抗体を持っていることがわかりました。
つまり、感染前から
Ⅰ型インターフェロンの働きを抑える抗体が体の中にあるということです。
これは、663人の無症状の患者(さん)にはありませんでした。
従って、
特に高齢で、基礎疾患のある
新型コロナウィルスに対してリスクのある人は
血液検査などでⅠ型インターフェロンの自己抗体の有無を
予め調べておくことが重要になるかもしれません。
自己抗体が無ければ重症化しないというわけではないですが、
少なくともそれがあれば、リスクは非常に高くなるということです。
そうすると継続的なワクチン接種の重要性が
該当する方においてはより高まります。
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//後遺症//ーーーーー
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後遺症は参考文献(1)では「Long COVID」と表現されています。
症状としては基本的には罹患時の症状と類似します・
・倦怠感
・筋肉痛
・頻脈
・体温調整の乱れ
・腸の調子不良
・肌荒れ
などです(15)。
主にこれらは免疫系の活性によって起こるとされています(16)。
一般的に重症化のリスクは男性が高いと言われていますが、
後遺症に関しては女性が多いとされています(17,18)。
例えば、
TLR7(toll様受容体)はX染色体の上に発現されるために
X染色体を多く持つ女性に影響を与えている可能性があります(19)。
これはインターフェロンに関わる受容体なので
女性が重症化しにくいことと関わっている可能性がありますが、
一方でこのような染色体起因の免疫機能の偏差が
後遺症と関わっている可能性は否定はできません。
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ーーーーー
以上です。
(参考文献)
(1)
Petter Brodin
Immune determinants of COVID-19 disease presentation and severity
Nature Medicine volume 27, pages28–33(2021)
(2)
Lim, Y., Ng, Y., Tam, J. & Liu, D.
Human coronaviruses: a review of virus–host interactions.
Diseases 4, 26 (2016).
(3)
Hanako Ishida, Jinta Asami, Zhikuan Zhang, Tomohiro Nishizawa, Hideki Shigematsu, Umeharu Ohto & Toshiyuki Shimizu
Cryo-EM structures of Toll-like receptors in complex with UNC93B1
Nature Structural & Molecular Biology (2021)
(4)
Fitzgerald, K. A. & Kagan, J. C.
Toll-like receptors and the control of immunity.
Cell 180, 1044–1066 (2020).
(5)
Berghöfer, B. et al.
TLR7 ligands induce higher IFN-α production in females.
J. Immunol. 177, 2088–2096 (2006).
(6)
Nieto-Torres, J. L. et al.
Severe acute respiratory syndrome coronavirus E protein transports calcium ions and activates the NLRP3 inflammasome.
Virology 485, 330–339 (2015).
(7)
Rodrigues, T.S. et al.
Inflammasomes are activated in response to SARS-CoV-2 infection and are associated with COVID-19 severity in patients.
J. Exp. Med. 218, e20201707 (2021).
(8)
Miorin, L. et al.
SARS-CoV-2 Orf6 hijacks Nup98 to block STAT nuclear import and antagonize interferon signaling.
Proc. Natl. Acad Sci. USA 117, 28344–28354 (2020).
(9)
Arunachalam, P. S. et al.
Systems biological assessment of immunity to mild versus severe COVID-19 infection in humans.
Science 369, 1210–1220 (2020).
(10)
Blanco-Melo, D. et al.
Imbalanced host response to SARS-CoV-2 drives development of COVID-19.
Cell 181, 1036–1045 (2020).
(11)
Lucas, C. et al.
Longitudinal analyses reveal immunological misfiring in severe COVID-19.
Nature 584, 463–469 (2020).
(12)
Vabret, N. et al.
Immunology of COVID-19: current state of the science.
Immunity 52, 910–941 (2020).
(13)
Zhang, Q. et al.
Inborn errors of type I IFN immunity in patients with life-threatening COVID-19.
Science 370, eabd4570 (2020).
(14)
Paul Bastard, Lindsey B. Rosen, Qian Zhang, Eleftherios Michailidis, Hans-Heinrich Hoffmann,Yu Zhang, Karim Dorgham, Quentin Philippot, Jérémie Rosain, Vivien Béziat,Jérémy Manry, Elana Shaw, Liis Haljasmägi, Pärt Peterson, Lazaro Lorenzo, Lucy Bizien,Sophie Trouillet-Assant, Kerry Dobbs, Adriana Almeida de Jesus, Alexandre Belot, Anne Kallaste, Emilie Catherinot, Yacine Tandjaoui-Lambiotte, Jeremie Le Pen, Gaspard Kerner, Benedetta Bigio,Yoann Seeleuthner, Rui Yang, Alexandre Bolze, András N. Spaan, Ottavia M. Delmonte,Michael S. Abers, Alessandro Aiuti, Giorgio Casari, Vito Lampasona, Lorenzo Piemonti, Fabio Ciceri,Kaya Bilguvar, Richard P. Lifton, Marc Vasse, David M. Smadja, Mélanie Migaud,Jérome Hadjadj, Benjamin Terrier, Darragh Duffy, Lluis Quintana-Murci, Diederik van de Beek,Lucie Roussel, Donald C. Vinh, Stuart G. Tangye, Filomeen Haerynck, David Dalmau,Javier Martinez-Picado, Petter Brodin, Michel C. Nussenzweig, Stéphanie Boisson-Dupuis,Carlos Rodríguez-Gallego, Guillaume Vogt, Trine H. Mogensen, Andrew J. Oler, Jingwen Gu,Peter D. Burbelo, Jeffrey I. Cohen, Andrea Biondi, Laura Rachele Bettini, Mariella D'Angio,Paolo Bonfanti, Patrick Rossignol, Julien Mayaux, Frédéric Rieux-Laucat, Eystein S. Husebye,Francesca Fusco, Matilde Valeria Ursini, Luisa Imberti, Alessandra Sottini, Simone Paghera,Eugenia Quiros-Roldan, Camillo Rossi, Riccardo Castagnoli, Daniela Montagna,Amelia Licari, Gian Luigi Marseglia, Xavier Duval, Jade Ghosn, HGID Lab,NIAID-USUHS Immune Response to COVID Group, COVID Clinicians, COVID-STORM Clinicians,Imagine COVID Group, French COVID Cohort Study Group, The Milieu Intérieur Consortium,CoV-Contact Cohort, Amsterdam UMC Covid-19 Biobank, COVID Human Genetic Effort,John S. Tsang, Raphaela Goldbach-Mansky, Kai Kisand, Michail S. Lionakis, Anne Puel,Shen-Ying Zhang, Steven M. Holland, Guy Gorochov, Emmanuelle Jouanguy,Charles M. Rice, Aurélie Cobat, Luigi D. Notarangelo, Laurent Abel,Helen C. Su, Jean-Laurent Casanova
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Science 370, eabd4585 (2020).
(15)
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Ludvigsson, J. F.
Case report and systematic review suggest that children may experience similar long‐term effects to adults after clinical COVID‐19.
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Sex and pubertal differences in the type 1 interferon pathway associate with both X chromosome number and serum sex hormone concentration.
Front Immunol. 9, 3167 (2019).
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