2021年1月30日土曜日

複製に関わる構造と機能、抗ウィルス薬剤について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

実際に新型コロナウィルスに限らず
薬剤を開発するときには
条件を任意に変えて総当たり的に調べられていく
発見的問題解決を基礎とすることもあると思います。
しかし、Srinivas Niranj Chandrasekaran氏らは
イメージベースの薬剤開発について総括しています(8)。
その一つの指針としては
構造解析を精度良くして、空間的な分子、位置情報に基づいて
薬剤の作用を想定して、結果を構造でも分析します。
そのうえで生理的、薬理的な機序を考えるということです。
この場合、特定の薬効の数値だけではなく
画像ベースのデータに基づいた評価も行われることになります。
実際に新型コロナウィルスでも
抗体が新型コロナウィルスのSタンパク質に結合する様子などが
低温顕微鏡やX線結晶評価などによって画像化されています。
さらに様々なスケールで動的なデータも含めて
構造的に薬剤の作用を評価できれば、
より効果の高い、あるいは汎用的な
薬剤の開発に貢献する可能性があります。
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イギリスのケンブリッジ大学(現:アメリカ-プリンストン大学)
オックスフォード大学の
Aartjan J. W. te Velthuis, Jonathan M. Grimes, Ervin Fodor
(敬称略)からなる医療、研究チームは
新型コロナウィルスを含むRNAウィルスの構造について
詳細に総括しています(1)。
その内容の一部を新型コロロなウィルスの状況を考慮しながら
特に複製機能に着目して、追記、考察しながら抽出しました。
本日は、それについて読者の方と情報共有したいと思います。
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ウィルスの増殖はRNAポリメラーゼと呼ばれる酵素が関わっていいます。
そのRNAの複製においてはアンチゲノムと呼ばれる複製時の
中間生成物が関与しており、
これがRNAゲノムのコピーを生み出す
前記ポリメラーゼによって使用されます。
このアンチゲノムは相補鎖と呼ばれます。
分子生物学における相補性とは鍵と鍵穴のような関係を示している
とされています。その相補的な塩基対の形成によって
遺伝子情報をコピーする事が可能になっています。
鍵と鍵穴ですからそれぞれの塩基配列が
互いに親和性を持って結合するようになっており、
その結合した状態から複数の同じ配列の遺伝子がコピーされることになります。
但し、稀にここでコピーミスが起こることがあり、
それが今問題となっている新型コロナウィルスの変異株の
一つの原因となっていると考えられます。
実際のこれらの1本鎖のRNAは複合体となっていて
重合体となっている核タンパク質に包まれるような形となっています。
(参考文献(1) Box1より)
従って、細胞内に新型コロナウィルスが感染した時に
エンベロープタンパク質が溶けて、
中のRNAが解放された時、その複製過程において
RNA自身だけではなく、複合体として形成されている
核タンパク質の役割を考える事も重要になります。
--
ウィルスが細胞内に感染した時に、
このような核タンパク質とRNAの端(?)に
複製時の物質の反応に関わる酵素であるポリメラーゼが
結合すると考えられます。
このポリメラーゼにはその反応に関わる
いくつかの活性サイト(触媒残基)があるとされています(2-4)。
--
実際に新型コロナウィルスで使用されている
レムデシビルなどはこのような複製を抑制する働きがありますが、
RNAポリメラーゼに作用すると考えられています。
またMproなどのプロテアーゼが標的とされることもありますが、
これらは「Non-structural protein」と呼ばれ
定義によると「ウィルスの構造の一部ではない」とされています。
これは宿主によって制御されるとあるので
ウィルスが細胞内に感染した時に
核タンパク質が放出されて複製するときに
宿主の細胞から受けとるたんぱく質の事であると考えます。
--
これらのRNAポリメラーゼには4つのチャンネルがあり
そこからRNAを出し入れできるようになっています。
(参考文献(1) Fig.1a,b一番右の図より)
従って、核タンパク質にまとわりつくように
存在するウィルスのRNAはポリメラーゼによって
引き付けられ、ポリメラーゼのチャンネルを通して
出し入れされ、複製されると考えられます。
実際にポリメラーゼによって
RNAが伸張、終端されるときには
それぞれの機能に従って
ポリメラーゼは構造を柔軟に変える事が知られています(5,6)。
--
実際にShin-ichiro Hattori氏らの研究によれば
Mproを標的とした5hという薬剤が
新型コロナウィルスにおいて
レムデシビルよりも抗ウィルス効果が高い可能性がある事が
示されています(7)。
レムデシビルはポリメラーゼに作用する薬で
Mproは宿主のタンパク質であるプロテアーゼに作用する薬です。
実際にプロテアーゼ、ポリメラーゼの
分子量、活性サイトのアクセス性によって
薬剤として標的としたときの薬効が変わる可能性があると思います。
またポリメラーゼはRNAを複製する際に
様々な段階を経て、言い換えれば様々な機能を発揮します。
(参考文献(1) Fig.5より)
どの段階のプロセスに抑制性を持たせるかによって
薬剤としての効力が変わる可能性があると考えられます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Aartjan J. W. te Velthuis, Jonathan M. Grimes & Ervin Fodor 
Structural insights into RNA polymerases of negative-sense RNA viruses
Nature Reviews Microbiology (2021)
(2)
Hengrung, N. et al.
Crystal structure of the RNA- dependent RNA polymerase from influenza C virus. 
Nature 527, 114–117 (2015).  
(3)
Peng, Q. et al. 
Structural insight into RNA synthesis by influenza D polymerase. 
Nat. Microbiol. 4,  1750–1759 (2019).
(4)
Reich, S. et al. 
Structural insight into cap-snatching and RNA synthesis by influenza polymerase. 
Nature 516, 361–366 (2014)
(5)
Wandzik, J. M. et al. 
A structure- based model for the complete transcription cycle of influenza polymerase. 
Cell 181, 877–893 e21 (2020).  
(6)
Kouba, T., Drncova, P. & Cusack, S. 
Structural snapshots of actively transcribing influenza polymerase. 
Nat. Struct. Mol. Biol. 26, 460–470 (2019).
(7)
Shin-ichiro Hattori, Nobuyo Higashi-Kuwata, Hironori Hayashi, Srinivasa Rao Allu, Jakka Raghavaiah, Haydar Bulut, Debananda Das, Brandon J. Anson, Emma K. Lendy, Yuki Takamatsu, Nobutoki Takamune, Naoki Kishimoto, Kazutaka Murayama, Kazuya Hasegawa, Mi Li, David A. Davis, Eiichi N. Kodama, Robert Yarchoan, Alexander Wlodawer, Shogo Misumi, Andrew D. Mesecar, Arun K. Ghosh & Hiroaki Mitsuya 
A small molecule compound with an indole moiety inhibits the main protease of SARS-CoV-2 and blocks virus replication
Nature Communications volume 12, Article number: 668 (2021) 
(8)
Srinivas Niranj Chandrasekaran, Hugo Ceulemans, Justin D. Boyd & Anne E. Carpenter 
Image-based profiling for drug discovery: due for a machine-learning upgrade?
Nature Reviews Drug Discovery (2020)


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