2021年1月7日木曜日

発症後早期の血漿療法の治療効果

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

1月6日現在、
東京都の重症病床数は220で
重症者数は111人(使用率50.5%)
-
大阪府の重症病床数は208で
重症者数は161人(使用率77.4%)
-
最も深刻なのが神奈川県です。
重症病床数は93で
重症者数は86人(使用率92.5%)
-
東京都の人口が約927万人ですから
人口当たり0.0023%しか重症病床はありません。
つまり42136人に1人しか最大で用意できません。
でも220病床は目安ですから
10万人に1人くらいになります。
日本は高齢の方が多いですから、
もし、西浦博先生が計算されているように
実効再生産数が1を上回るようなことがあれば、
重症患者を受け入れられないということが起こりますし、
そうではなくても重症患者数は「遅れて増えてきます。」
今から1週間、2週間後に重症になる患者さんは増えるということです。
そうなると非常に問題があります。
従って、感染者数を減らすという事が基礎として
必ず存在するものですが、
医療的な観点としては軽症、中等症の方を
如何に重症化させないか?というのが重要になります。
また、この記事で紹介する内容にあたる
軽症から中等症への進行も同様です。
レムデシビルが中等症に対しても投与可能になるという報道があります。
すでに現場ではそうなっているかもしれないですが、
治療の選択肢を増やしていく事は
今後すぐに収束が見通せない中で重要になります。

R. Libster, G氏ら医療、研究グループは
回復者血漿療法の軽症患者へ早期投与の奏功について報告しています(1)。
その内容の一部を読者の方と情報共有したいと思います。

//結果概要//ーーーーーーーー
65歳以上の高齢の方に対して
「症状が現れてから72時間(3日)以内に」
回復者から集めた抗体を含む血漿を投与したところ
15日後までに重症化(日本では中等症)するリスクは
投与しなかった群に対して約半分になりました。
血漿が投与された患者の抗体量は4桁以上の偏差がありました。
その中で特に血漿を投与された中で
抗体量が中央値よりも高かったグループでは
重症化するリスクは
投与しなかった群に対して1/4程度(0.27)でした。
この治療による重い副作用は確認されませんでした。

但し、この間どのような薬剤で治療されていたかという
情報は記載されていません。
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回復者の血漿から集めた抗体量は偏差が大きいので
それによって投与された中での抗体量のばらつきになっている
と考えられます。
武田薬品工業社(さん)が開発されている
血漿分画製剤「TAK-888」は抗体量が濃縮され
偏差が少なくなるように制御されている(3)ので
それによる奏功は中央値よりも高かった結果に近いものが
反映される可能性があります。
一方、重要なのが
参考文献(1)Figure.1で示されているように
中等症に発展する患者さんの時期は
症状が現れてから10日間がその後5日間に比べて
頻度が2倍程度大きいので、
症状が現れてから「1日、1時間でも早い」抗体による治療が
その後の症状の現れ方に影響する可能性があります。
実際に中和抗体量は重症度と正の相関が見られます(2)。
従って、抗体量が自然に上がる前に
それよりも顕著に高い抗体量を実現することが重要です。
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//条件//ーーーーーーーー
(時期)
2020年6月4日~10月25日
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(場所)
アルゼンチン(医療施設、高齢者施設)
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(投与のタイミング)
「症状(※)」が現れてから72時間
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(回復者血漿について)
・感染してから10日以上
・症状が消えてから3日以上
・PCR陰性
これらが満たされる
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(評価期間)
投与から15日後まで
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(症状(※)の定義)
・体温37.5℃以上
・理由不明の発汗
・悪寒
・食欲不振
・咽頭痛
・味覚障害
・嗅覚障害
・鼻漏
これらの最低1つの症状が現れてから48時間より短い
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つまり、血漿が投与されるまで
最大で症状が現れてから5日となります。
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(重症化の定義)
・呼吸数 30回/分以上
・酸素飽和度 93%以下
これらの少なくとも1つが該当
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日本では酸素吸入が必要が「中等症」であるとするならば
ここでいう重症化は中等症にあたります。
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(患者の年齢)
65歳以上、75歳以上(約半数)
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(治験の規模)
①回復者血漿療法:80名
②偽薬:80名
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(頻度の高い併存症)
高血圧治療中:①78%、②65%
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//結果//ーーーーーーーー
(15日以内の臨床効果)
重症化人数/治験人数
①回復者血漿療法:13/80
②偽薬:25/80
相対リスク:0.52
(参考文献(1) Table 2より)
-
①-A:抗体量が中央値よりも大きい 3/36
相対リスク:0.27
-
①-B:抗体量が中央値よりも小さい 9/42
相対リスク:0.69
(参考文献(1) Table 3より)
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抗体量が高ければ治療の効果は大きいことが示されています。
3名の方は重症化(日本では中等症)されていますが、
高齢であることから年齢、併存症、性別、既往歴など
個別の要因を分析することで治療の効果をより
正確に把握することができると思います。
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(IgG抗体量)
①回復者血漿療法:平均-10^5.7(10^3.5~10^8.5)
②偽薬:平均-10^3.9(10^3.5~10^8.5)
※投与から24時間後
相対リスク:0.69
(参考文献(1) Figure 3より)
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偽薬でもある程度抗体価が上がっているので
もっと早いタイミングで投与すれば
この治療の奏功が変わる可能性があります。
また、抗体量の偏差が非常に大きいことから
これが結果に影響を与えている可能性は考えられます。
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(副作用)
・体液量過剰
・アレルギー反応
・静脈血栓症
・迷走神経の異常
・注入箇所の血種
・神経傷害
・過呼吸
これらのいずれの副作用、副反応はありません。
(参考文献(1) Supplementary appendix Table S6より)
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(参考情報)ーーーーーーーー
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回復者血漿療法は
・はしか
・B型肝炎ウィルス
・Argentine hemorrhagic fever
これらにおいて治療効果は確認されていますが、
奏功を得るためには、感染後「すぐに」
投与されなければならないとされています(4-6)。
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2020年11月24日の同じアルゼンチンからの報告で
回復者血漿療法が効果がないと発表されていました(7)。
この報告では
すでに
・鼻カニューレ
・Nonrebreather mask(酸素供給)
これらが施されております。
従って、すでに参考文献(1)で定義される重症にあたる
条件からの治験参加となっているため、
「投与のタイミング」として大きく条件が異なります。
これは、上述したように
感染後「すぐに」投与しないと効果が現れないとされる
過去の治療実績や今回の結果を示唆するものです。
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以上です。

(参考文献)
(1)
R. Libster, G. Pérez Marc, D. Wappner, S. Coviello, A. Bianchi, V. Braem, I. Esteban, M.T. Caballero, C. Wood, M. Berrueta, A. Rondan, G. Lescano, P. Cruz, Y. Ritou, V. Fernández Viña, D. Álvarez Paggi, S. Esperante, A. Ferreti, G. Ofman, Á. Ciganda, R. Rodriguez, J. Lantos, R. Valentini, N. Itcovici, A. Hintze, M.L. Oyarvide, C. Etchegaray, A. Neira, I. Name, J. Alfonso, R. López Castelo, G. Caruso, S. Rapelius, F. Alvez, F. Etchenique, F. Dimase, D. Alvarez, S.S. Aranda, C. Sánchez Yanotti, J. De Luca, S. Jares Baglivo, S. Laudanno, F. Nowogrodzki, R. Larrea, M. Silveyra, G. Leberzstein, A. Debonis, J. Molinos, M. González, E. Perez, N. Kreplak, S. Pastor Argüello, L. Gibbons, F. Althabe, E. Bergel,  and F.P. Polack, for the Fundación INFANT–COVID-19 Group*
Early High-Titer Plasma Therapy to Prevent Severe Covid-19 in Older Adults
The New England Journal of Medicine  January 6, 2021,
(2)
Vincent Legros, Solène Denolly, Manon Vogrig, Bertrand Boson, Eglantine Siret, Josselin Rigaill, Sylvie Pillet, Florence Grattard, Sylvie Gonzalo, Paul Verhoeven, Omran Allatif, Philippe Berthelot, Carole Pélissier, Guillaume Thiery, Elisabeth Botelho-Nevers, Guillaume Millet, Jérôme Morel, Stéphane Paul, Thierry Walzer, François-Loïc Cosset, Thomas Bourlet & Bruno Pozzetto 
A longitudinal study of SARS-CoV-2-infected patients reveals a high correlation between neutralizing antibodies and COVID-19 severity
Cellular & Molecular Immunology (2021)
DOI:10.1038/s41423-020-00588-2
(3)
東京理科大学名誉教授 千葉丈
コロナ回復者の血液使う治療法、「神頼み」からの脱却
日経バイオテクオンライン 2020年9月25日掲載
(4)
Arciuolo RJ, Jablonski RR, Zucker JR, Rosen JB. 
Effectiveness of measles vaccination and immune globulin post-exposure  prophylaxis  in  an  outbreak  setting — New York City, 2013. 
Clin Infect Dis 2017; 65: 1843-7.
(5)
1Centers for Disease Control and Prevention. Recommendation of the Immu-nization  Practices  Advisory  Committee (ACIP) postexposure prophylaxis of hepatitis B. 1984 
(https://www . cdc . gov/  mmwr/ preview/  mmwrhtml/  00022736 . htm).
(6)
Maiztegui JI, Fernandez NJ, de Damilano  AJ.  
Efficacy  of  immune  plasma  in treatment of Argentine haemorrhagic fever and association between treatment and a late neurological syndrome. 
Lancet 1979; 2: 1216-7.
(7)
V.A. Simonovich, L.D. Burgos Pratx, P. Scibona, M.V. Beruto, M.G. Vallone,C. Vázquez, N. Savoy, D.H. Giunta, L.G. Pérez, M..L. Sánchez, A.V. Gamarnik, D.S. Ojeda, D.M. Santoro, P.J. Camino, S. Antelo, K. Rainero, G.P. Vidiella, E.A. Miyazaki, W. Cornistein, O.A. Trabadelo, F.M. Ross, M. Spotti, G. Funtowicz, W.E. Scordo, M.H. Losso, I. Ferniot, P.E. Pardo, E. Rodriguez, P. Rucci, J. Pasquali, N.A. Fuentes, M. Esperatti, G.A. Speroni, E.C. Nannini, A. Matteaccio, H.G. Michelangelo, D. Follmann, H.C. Lane, and W.H. Belloso,  for the PlasmAr Study Group*
A Randomized Trial of Convalescent Plasma in Covid-19 Severe Pneumonia
The New England Journal of Medicine  November 24, 2020


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