2021年1月24日日曜日

肥満のリスク、合併症、社会的状況、対策

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

日本医師会の釜萢敏先生が先日テレビ出演されていた際に
ワクチンの優先接種の要件として
身長と体重から算出されるBMI>30以上の肥満(2度)に当たる方
というのが一つとして挙げられていました。
この水準は
170cmの方が87kg以上であった時の水準なので
筋肉量にもよるのですが、
日本ではかなり太っているほうであると考えられます。
これらは自己申告で特に医師の診断書などは
今のところ想定されていないという話でした。
しかし、
他の優先接種の対象となる基礎疾患
慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患など
と並べてこの肥満が挙げられています。
従って、コロナ禍において無視できる因子ではありません。

Norbert Stefan氏, Andreas L. Birkenfeld氏, Matthias B. Schulze氏
ドイツ、イギリスの医療、研究グループは
新型コロナウィルスと肥満の関係について
リスク、他の疾患との関連、社会的状況、対策など
詳しく包括しています(1)。
本日はその内容の一部について読者の方と情報共有したいと思います。
(※)
=====の⇒は筆者の追記、考察です。

//肥満のリスク//ーーーーーー
参考文献(1) Table 1に
新型コロナウィルス重症度とBMIの関係についての
コホート研究がまとめられています。
おおよそ2400万人規模の患者のデータである
OpenSAFETYによるまとめによれば
日本で基準とされているBMI>30では
おおよそ1.5~2倍程度、亡くなられるリスクがあがります。
(参考文献(1) Table 1より)
例えば、重症とされるICU(集中治療室)に関するデータでは
アメリカの調査では2491人の調査(3)で
BMI≧30 1.31倍のリスク
イギリスの827万人の調査(4)では
BMI≧30 2.59倍のリスク
これらとなっています。
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//肥満と他の疾患の関連//ーーーーーー
--
(心臓)
肥満は血管の凝固を高め、血栓や動脈硬化の原因の
一つとなります。
さらに新型コロナウィルスは
血管の内皮細胞へのACE2受容体を通した感染により
血栓のリスクを上げると考えられています(5)。
また血管の炎症や組織を硬化させる物質
心筋の炎症が重症患者で確認されています(6-11)。
従って、肥満は新型コロナウィルス感染を通して
心疾患のリスクを高める可能性があります。
--
(腎臓)
元々、腎臓は高血圧、高血糖症、インスリン抵抗性など
肥満と関連が高い血液の異常に対して
慢性疾患を抱えるリスクがあると考えられています(12,13)。
腎臓を形作る様々な細胞には
新型コロナウィルスに関わるACE2受容体があり(14)
それによって糸球体、尿細管、線維化などのダメージが
このようなACE2受容体を介した感染によって
引き起こされている可能性が示唆されています(14)。
従って、腎臓に負担を掛けるとされる肥満による血液異常は
新型コロナウィルスにおける腎臓への影響の
感度を上げる可能性が考えられます。
--
(肝臓)
肥満による糖の代謝、脂質の異常などは
非アルコール性脂肪肝と関連があるとされています(15,16)。
非アルコール性脂肪肝と新型コロナウィルスの
リスクについてはいくつかの報告があります(17,18)。
従って、非アルコール性脂肪肝のリスクを
通常の状態でも高めるとされる肥満による
糖、脂質代謝異常は、
新型コロナウィルス感染に対する非アルコール性脂肪肝
へのリスクを高める可能性が考えられます。
--
(消化器、胃腸)
肥満に食生活に関わる高脂肪食などは
腸の炎症作用に関わるとされています。
腸の組織のバリア、障壁機能が乱されると
内部組織に新型コロナウィルス、あるいは腸内細菌などの
病原体が入り、免疫機能を惹起させてしまう可能性があります(19,20)。
--
(膵臓)
膵臓は循環代謝に関わる臓器の一つです。
膵臓のβ細胞の異常は2型糖尿病に関わります。
従って、他のリスク要因とされる糖尿病と関連の深い臓器です。
高血糖、高血圧などの血液の異常が慢性化することで
2型糖尿病などのリスクが上がると考えられます。
そうした中で新型コロナウィルスに感染する事は
双方向的なリスクにつながる可能性があります。
実際に新型コロナウィルスに罹患したことで
新たに糖尿病に罹患した患者(さん)も一定割合います(21)。
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//肥満と生活環境//ーーーーーー
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日本においても外出自粛、テレワークなどによって
運動の機会が減っています。
家の限られた空間の中では歩行数も少なくなり
日々の基本的な運動が妨げられます。
特にリスクの高い高齢の方は、
運動しなくなった時の筋力の低下などが懸念されます。
それによってより運動しにくくなる身体状況となります。
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実際に若い健康な男性においても
2週間、日常的な運動が減少すると筋肉量が減少し
内臓脂肪量、インスリン抵抗性、血清脂質が上がる
ことが報告されています(22)。
--
アメリカのテキサス州で都市のロックダウンが行われた際の
人々の行動分析の中で、今述べた運動量低下のありますが、
食糧の買いだめやストレスによる過食が50%
あるいはそれを超える割合の方でみられました(23)。
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従って、運動不足に加えてストレスによる過食などによる
行動自粛による肥満などが懸念されます。
ゆえに下の提案(間欠的、周期的空腹)に加えて、
家の中で出来る運動など工夫して
運動習慣を維持する必要があります。
またストレス解消のためにオンラインを使った
友人との会話や食事も友人と画面を通して一緒にとれば
会話しながら食事ができるので、
ゆっくり食べて、食べる量も制限できる可能性があります。
あるいは、今は冬季ですから、
糖質を含まないコーヒー、お茶、紅茶など
暖かい飲み物を食事の間に組み込むことによって
気分を落ち着けたりする効果が期待できます。
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//提案(日常的に空腹感を得る)//ーーーーーーーー
Valter D. Longo氏ら、医療、研究グループは
間欠的、周期的な空腹感に対する
寿命や病気への影響を包括しています(2)。
--
実際には「マウスなど人以外」においては
カロリー制限や定期的な断食(いわゆるプチ断食)は
寿命を改善させるという報告があります(2,24-30)。
--
人においては効果が見られる一方で
長期的な介入の場合は副作用もあるとされています。
それはもちろん
どれくらい食事を制限するかという程度もあると思います。
--
(筆者の提案)
食事の間隔を1日のうち空ける時間帯を作るということです。
基本的に眠っている時にお腹が空いて
起きて食べる事はほとんどないですから
仮に睡眠時間が8時間だとすると
その8時間を利用して食事の間隔を空けるということです。
例えば、
夕食は早めに18時くらいに食べて、
それから朝の食事を7時にとれば、
夕食から翌日の朝までは13時間空くことになります。
あるいは土曜、日曜、祝日など
食事の時間を動かせる時には
夕食を軽めにするとか
朝食を10時くらいにして、昼ご飯を食べない
などの戦略も考えられます。
朝を10時にすれば前の日に18時に食べたなら
16時間食事の間隔が空くことになるので
血糖値を十分下げる事ができます。
そこで代謝的なリフレッシュが行われる可能性があります。
極端な低血糖は危険であると医師の方の指摘もある
と思いますが、これくらいの程度であれば
おそらく体調を大きく崩すことはないだろうと思います。
逆に、空腹感を日常的に得ることで
コロナ禍においては身体の調子を整える一つのきっかけになる
と考える事もできます。
--
カロリー制限、プチ断食の人への効果に関する報告は
まだ十分ではないですが、
1日おきにカロリー制限を行うことで
体重減少、腹部脂肪、脂質、インスリン感受性が
人のケースで上がったというコホート研究が1つあります(31)。
--
少なくともお腹が空いていない時に食べるとか
あるいは満腹なのにさらに食べるとか
そういったことは特に代謝能力が落ちてくる
40代以降では肥満のリスクが上がってくると思います。
今はコロナ禍で運動の機会も制限されるので
それに従って、摂取カロリーも減らす必要があります。
カロリー制限という選択肢もありますが、
食事の間隔を空けるというのも一つの方法だと思います。
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以上です。

(参考文献)
(1)
Norbert Stefan, Andreas L. Birkenfeld & Matthias B. Schulze 
Global pandemics interconnected — obesity, impaired metabolic health and COVID-19
Nature Reviews Endocrinology (2021)
(2)
Valter D. Longo, Maira Di Tano, Mark P. Mattson & Novella Guidi 
Intermittent and periodic fasting, longevity and disease
Nature Aging volume 1, pages47–59(2021)
(3)
Kim, L. et al. 
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Clin. Infect. Dis. https://doi.org/10.1093/cid/ciaa1012 (2020).
(4)
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