2021年1月21日木曜日

感染症、ワクチンを通した自然免疫系改変

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

日本医師会の中川会長は、今の医療の現状に対して
「医療崩壊が日常化、常態化している」
このように明言されています。
最近、メディアで医療現場の様子が報道されることが
少なくなりましたが、
少なくとも年末よりも今の方が状況は厳しいはずなので
視聴者である私たちに定期的に状況、現場の声
を届けてほしいと思います。
一方、
昨日、飲食業を代表される数名の方が
飲食業も限界に達しているという話をされていました。
この両立しづらい状況を改善するには
感染拡大を抑えるしかないわけですが、
そのために経済活動を一気に抑えるにしても
その補償に伴った大規模な金融緩和が必要で、
財政面で大きな問題が出ると考えられます。
仮に、強いハンマーを打ったとしても、
欧州のロックダウンと感染者の推移を見てみても
感染が収まるかどうかは懐疑性が残ります。
ただ、人の接触機会が減れば、
それに応じて感染が収束に向かう事は
間違いありません。
従って、人との接触機会を減らすことと
マスク、手洗い、消毒、3密回避など
基本的な感染対策は引き続き必要不可欠です。
一方、
繰り返しになりますが、
医療、経済の健全性の両立を図るためには
「1日も早いワクチンによる集団免疫」が必要です。
科学データは、ワクチンは感染抑制の顕著な効果がある
と示していますから、それに従うと
8割程度の方がワクチンを接種すれば、
おそらく感染は収まると考えられます。
しかし、ワクチン接種も手続き上の問題や
副反応などの安全性の問題など課題が山積しており、
今年の後半には医療と経済が回復しているという
状況を実現するための道は極めて険しいと考えられます。
これは政府、地方自治、市町村職員、医療機関、大学、
保健所など環境を整える方々だけではなく
下述するように接種を受ける国民の協力も欠かすことはできません。
--------
昨日、メディアで神奈川県海老名市の市職員の方の
ワクチンに対する取り組みが紹介されていました。
海老名市ではワクチン担当のチームを組んで
迅速な接種に向けて緻密な準備が進められています。
会場の確保だけではなく、
会場内での人員や設備の配置など細かく考えられています。
全国47都道府県には1718の市町村があります。
各都道府県、市町村には知事、市長など代表の方を先頭に
様々な方針があるとは拝察しますが、
ここは国難を乗りきるということで一丸になって
ワクチンの環境整備に取り組んでほしいと願います。
もちろん私を含め市民、町民、村民が
それぞれ迅速かつ円滑なワクチン接種のためできることがあります。
例えば、
「指定された会場に時間通りに行く。」
このような事も挙げられます。
時間がバラバラになれば、人数をコントロールできなくなりますから
ちゃんと市町村から指定された条件を満たすことが大事です。
後はワクチン接種に当たり、
仕事などの調整は企業の理解、協力も欠かせません。
河野大臣が言われている「国民の協力」というのは
このような事も含まれると考えます。
--------
もし、新型コロナウィルスのワクチンがなく
このままの状況が続くとすれば、
下手したら数年、今のような状況が続く可能性があります。
そうすると当然、国は崩壊してしまいます。
今、世の中に普通に存在する風邪ウィルスは
私たちの先祖がひょっとすると
今と同じような脅威を乗り切って、
遺伝的に安全に体が反応できるようになったかもしれません。
そのためには多くの人が実際にその風邪ウィルスに罹患して
免疫を獲得する必要があります。
結局、このパンデミックを乗り切るためには
ここまで世界的に流行したことを考えると
-
〇新型コロナウィルスに実際に罹患する
〇ワクチンによって免疫を手に入れる
-
この2つしか道はありません。
私たち一人一人の選択としてどちらがいいか?ということです。
日本では罹患したことによって
今、毎日100人程度亡くなられる方がいます。
後遺症で悩まされている方もいます。
一方、ごく一部ですがワクチンで
アレルギー反応がでることがあります。
1日、2日程度、発熱や倦怠感が出る事があります。
その2択ならばどちらがいいか?
ということです。
-----
今やグローバル社会で、発展途上国の生活も
おそらく10年、20年後には改善されて
そこで日本の企業もビジネスを展開することが考えられますから
世界の人の移動は活発になります。
もちろん検疫などがありますが、
その中で感染症のリスクは上がる可能性もあります。
また、気候変動などによって
今まで、世界や日本で確認されなかったような
ウィルスがまた登場するかもしれません。
今はとくかく世界的に新型コロナウィルスを
1日でも早く収束させることが最優先ですが、
これだけ大規模にワクチンを接種する事は
今までなかったわけですから、
これを機にワクチン、それに付随する免疫機能について
再び考える事の重要性は高まっています。

Andrew R. DiNardo氏、 Mihai G. Netea氏、Daniel M. Musher氏
L. Longo氏(Editor)
からなる医療、研究チームは
ウィルスに対して全般的に反応する自然免疫系を中心に
感染症罹患やワクチン接種に対して
どのように体内の免疫系、それを支える遺伝子が改変するか
について包括しています(1)。
本日はその内容の一部について
追記しながら読者の方と情報共有したいと思います。

厚生労働省の情報によれば、
今、日本で生後1歳に至るまでBCGワクチンの接種が
行われているということです。
結核を防ぐワクチンですが、
BCGはT細胞やB細胞などリンパ球に作用して
獲得免疫、抗体を生み出すような機序とは独立して
単球、NK細胞、樹状細胞といった自然免疫系を刺激、訓練し
ウィルス全般に働くような免疫機序を生み出すとされています。
-----
今述べたBCGワクチンは
参考文献(1) Table 1(下から2段目)で示されるように
H3K4というクロマチン位置
(参考文献(1) Figure 1参照)にメチル基が3つ結合して
後天的に遺伝子改変を行います。
それによってウィルスを攻撃する
TNF、IL-6分泌の活性化が実現します(2,3)。
実際にこれらの炎症性サイトカインは
結核以外のブドウ球菌、ガンジダ菌に対しても
活性に反応したことが人のケースで確認されています(2)。
他には、南アフリカの若い人に対してBCGワクチンを
接種したところ、上気道の呼吸器感染症のリスクが
72%低減したという報告もあります(8)。
-----
さらにBCGワクチンによって
新型コロナウィルスに対するリスクがどう変わるかというのは
今研究が進められているところです(9)。
日本でも子供の時期に様々な指定されたワクチンを
接種しますが、そのワクチンに使われている
自然免疫系を刺激するアドジュバントが
新型コロナウィルスへの抵抗性に関係している
可能性は考慮に入れられています(10)。
-----
このような後天的な変化を通した
転写因子、代謝機能などの変化は
広く免疫細胞に分化する造血系幹細胞に影響を及ぼし
その中で自然免疫系である単球に対して
抗ウィルス性攻撃能力が向上したことが報告されています(4-7)。

一方、このような免疫機能の改変は
必ずしも良い作用をもたらすものではないとされています。
実際にワクチンにおいては
「中和抗体能が低く、抗体の質が低い場合には特に」
抗体依存性感染増強が起こる可能性も示唆されています。
生み出された抗体自身がFcドメインなどを通して
自然免疫系を含む、免疫系を刺激することで
逆に免疫的な弊害を生む可能性が一つとしてあります。
------
参考文献(1)では肝炎ウィルス、麻疹などの
感染症罹患による他の感染症に対する免疫機能が
抑制される効果がいくつか紹介されています。
実際にMichael J. Mina氏ら医療、研究グループの報告では
日本でも報道されましたが、
麻疹(はしか)に罹患すると
過去の免疫機能がリセットされる可能性が示唆されています。
従って、麻疹に罹患すると過去受けた予防接種の効果が
一部失われる可能性があるということです(11)。
しかし、重要なのは
麻疹のワクチンではこのような免疫機能リセットは
見られなかったという事です。
このことから麻疹においては、
ワクチン接種で予防する事の利点が非常に高いことを示しています。
参考文献(1)でもワクチン接種による
顕著な他の感染症のリスクの増加については記載がありません。
前述したようにワクチンはパナシーアではないと
考えられますが、麻疹のケースで代表されるように
「実際に罹患する」場合と
「ワクチンで予防する」場合では
体内の免疫機能の発展が異なる可能性があります。
冒頭で述べたように
新型コロナウィルスなど世界的に流行した感染症に対しては
「どうやってリスクの低い過程で免疫を獲得するか?」
このことが重要になります。
リスクをゼロにすることはできませんが、
麻疹のケースのようにワクチンの方が顕著にリスクが低ければ
ワクチン接種の価値は非常に高まっていく事になります。
このような事も考えると
なぜ麻疹に罹患すると免疫がリセットされるのか?
麻疹に罹患した時の自然免疫細胞、リンパ球などの
分子メカニズムを理解することで
今後のワクチン開発に役に立つ可能性があります。
例えば、
「自然免疫系をある特定の機序で惹起させると
免疫抑制や免疫記憶のリセットが生じる。」
もしこのようなことがわかれば、
避けなければならないアドジュバントの生理機序などを
特定する事ができ、よりリスクの少ない
未来へのワクチンによる免疫発展に貢献すると考えられます。
-----
但し、ワクチンに関しては
女性に対しては他の感染症に対するリスクは
男性よりも慎重に経過観察していく必要があります(12)。
新型コロナウィルスのワクチンであれば
T細胞やB細胞は新型コロナウィルスを始め
コロナ系ウィルスに交差性を持ちながら発展していくと考えられます。
従って、治験データでもあるように
年齢、性別関係なく新型コロナウィルスに効果があることは
ほぼ確定的です。
一方で、上で主に述べてきたように
自然免疫系は感染症全体に関わる部分なので
性差について考えるときには
自然免疫系のX染色体、Y染色体それぞれの
ワクチンに対する応答を見ることで
その機序について詳しく考える糸口になる可能性があります。
-----

以上です。

(参考文献)
(1)
Andrew R. DiNardo, M.D., Mihai G. Netea, M.D., Ph.D.,and Daniel M. Musher, M.D.  
Postinfectious Epigenetic Immune Modifications — A Double-Edged Sword
The New England Journal of Medicine 2021;384:261-70
(2)
Kleinnijenhuis J, Quintin J, Preijers F, et  al.  
Bacille  Calmette-Guerin  induces NOD2-dependent nonspecific protection from  reinfection  via  epigenetic  repro-gramming of monocytes. 
Proc Natl Acad Sci U S A 2012; 109: 17537-42.
(3)
Benn  CS,  Fisker  AB,  Rieckmann  A, Sørup  S,  Aaby  P.  
Vaccinology:  time  to change the paradigm? 
Lancet Infect Dis 2020; 20(10): e274-e283.
(4)
Kaufmann E, Sanz J, Dunn JL, et al. 
BCG educates hematopoietic stem cells to  generate  protective  innate  immunity against tuberculosis. 
Cell 2018; 172(1-2): 176-190.e19.
(5)
Mitroulis I, Ruppova K, Wang B, et al. 
Modulation of myelopoiesis progenitors is an integral component of trained immunity. 
Cell 2018; 172(1-2): 147-161.e12.
(6)
de Laval B, Maurizio J, Kandalla PK,  et al. 
C/EBPβ-dependent epigenetic memory induces trained immunity in hemato-poietic  stem  cells.  
Cell  Stem  Cell  2020; 26(5): 657-674.e8.
(7)
Cirovic B, de Bree LCJ, Groh L, et al. 
BCG vaccination in humans elicits trained immunity via the hematopoietic progeni-tor compartment. 
Cell Host Microbe 2020; 28(2): 322-334.e5.
(8)
Nemes E, Geldenhuys H, Rozot V, et al. 
Prevention of M. tuberculosis infection with H4:IC31  vaccine  or  BCG  revaccination.  
N Engl J Med 2018; 379: 138-49.
(9)
Alberto Mantovani, M.D., and Mihai G. Netea, M.D.
Trained Innate Immunity, Epigenetics, and Covid-19
The New England Journal of Medicine 2020;383:1078-1080
(10)
Castagnoli R, Votto M, Licari A, et al. 
Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) infection in children and adolescents: a systematic review. 
JAMA Pediatr 2020April 22 (Epub ahead of print)
(11)
Michael J. Mina, Tomasz Kula, Yumei Leng, Mamie Li, Rory D. de Vries, Mikael Knip,Heli Siljander, Marian Rewers, David F. Choy, Mark S. Wilson, H. Benjamin Larman,Ashley N. Nelson, Diane E. Griffin, Rik L. de Swart, Stephen J. Elledge
Measles virus infection diminishes preexisting antibodies that offer protection from other pathogens
Science  01 Nov 2019:Vol. 366, Issue 6465, pp. 599-606
(12)
Benn  CS,  Fisker  AB,  Rieckmann  A, Sørup  S,  Aaby  P.  
Vaccinology:  time  to change the paradigm? 
Lancet Infect Dis 2020; 20(10): e274-e283.


0 コメント:

コメントを投稿

 
;