2021年2月25日木曜日

mRNAワクチン(BNT162b2)のイスラエル大規模疫学調査

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

日本でも先行して行われている
医療従事者の方へ1万人を超える方が
新型コロナウィルスのワクチン接種を終えています。
ワクチンのタイプはファイザー製のmRNAワクチンです。
これと同様のタイプのワクチンで
世界で人口比で最もワクチン接種が進んでいる
イスラエルがあります。
イスラエルはワクチンの接種データを提供するという
契約を結んでいます。
比較群を含めると
100万人を超える規模のデータが2月24日付で
The New England Journal of Medicine誌に
報告されています(1)。
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Noa Dagan, Noam Barda, Eldad Kepten(敬称略)ら
イスラエルとアメリカの医療研究グループは
そのデータを詳しく掲載、分析ししています(1)ので
その内容の一部を読者の方と情報共有したいと思います。
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//重要な結果//ーーーーーー
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・感染予防において9割程度の効果が出るまでは
1回目接種から28日(2回目接種から7日)程度かかります。
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・1回目接種から2週間までの効果は低い
従来の治験結果から示されるように
抗体価が上がるまである程度時間がかかると考えられます。
(参考文献(3) Fig.4より)
--
・重症化のリスク因子があるほどワクチンに対する
反応が遅い傾向にあります。
--
(訂正)
・入院、重症の患者さんは一部は陽性判明からイベント発生まで
時間がずれている可能性があります。
従って、初めの一週間が発生率が下がっています。
逆に初期のデータは急速に病状が悪化した患者さんの
データである可能性が高いです。
無症状、軽症の患者さんに比べて
入院、重症に対してのワクチンの効果が
接種開始から早く上がってくるのは
初期に感染しても無症状や軽症で終わっている患者さんが
多いことを示していると考えます。
--
(追加)
・無症状に対するワクチンの効果は
有症状のワクチンの効果よりも遅延します。
従って、市中感染を完全に抑えるためには
ワクチンを接種してから1か月程度は
感染対策を今までと同じレベルでする必要があります。
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//条件//ーーーーーー
①ワクチン未接種群/②ワクチン接種群
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(接種期間)
2020年12月20日~2021年2月1日
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(ワクチン)
ファイザー製mRNAワクチン
BNT162b2
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(人数)
①596618人/②596618人
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(スクリーニング)
事前の感染(PCR陽性歴)はなし
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(年齢)①、②完全に一致
16歳以上
45歳(中央値)
16-39歳:35.7%
40-49歳:21.9%
50-59歳:14.3%
60-69歳:14.8%
70-79歳:9.5%
80歳以上:3.7%
--
(男女比)①、②一致
1:1
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(人口区分)①、②一致
ユダヤ系:77.6%
アラブ系:20.3%
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(CDCに基づくリスク因子)
0:56.7%
1:23.6%
2:9.3%
3:4.9%
4以上:5.4%
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(過去5年間インフルエンザワクチン接種歴)①、②一致
0回:58.9%
1~2回:19.5%
3~4回:8.5%
5回以上:13.2%
--
(CDCが定めるリスク因子)5%以上のもの抽出
慢性腎疾患:①6.8%/②6.8%
心疾患:①6.6%/②6.5%
肥満BMI30~40:①16.9%/②17.7%
喫煙:①19.9%/②16.4%
2型糖尿病:①11.1%/②11.0%
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(その他の特性)5%以上のもの抽出
高血圧:①16.9%/②17.3%
肥満BMI25~30:①34.1%/②35.7%
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//結果1//ーーーーーー
リスク比
(1回目接種から14~20日まで)
感染:46%
有症状:57%
入院:74%
重症:62%
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(1回目接種から21~27日まで)
※2回目接種から7日まで
感染:60%
有症状:66%
入院:78%
重症:80%
--
(2回目接種から7日後以降)
感染:92%
有症状:94%
入院:87%
重症:92%
--
(参考文献(1) Table 2より)
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//カテゴリ別結果2//ーーーーーー
①1回目接種から14~20日まで
②1回目接種から21~27日まで
③2回目接種から7日後以降
数字はリスク比
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(男性)
①41%/②57%/③91%
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(女性)
①50%/②63%/③93%
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(年齢16-39歳)
①49%/②64%/③94%
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(年齢40-69歳)
①47%/②58%/③90%
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(年齢70歳以上)
①22%/②50%/③95%
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(リスク因子なし(No coexisting condition))
①49%/②66%/③91%
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(リスク因子1つか2つ)
①43%/②56%/③95%
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(リスク因子3つ以上)
①37%/②37%/③86%
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(肥満)
①49%/②48%/③95%
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(2型糖尿病)
①25%/②49%/③91%
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(高血圧)
①28%/②45%/③93%
--
(参考文献(1) Table 3より)
--
(筆者の考察:結果2に関して)
女性はやや男性に比べてワクチンに対する
反応が「早い」可能性があります。
--
高齢になればなるほど
ワクチン接種に対する免疫反応の応答が
遅くなる傾向にあります。
従って、特に高齢の方は
ワクチンを接種してしばらくの間は
接種する前と同様の感染対策が必要になります。
しかし、それは
全対象者でいえることです。
--
リスク因子が多くなると
ワクチン接種後の免疫反応の応答が
遅くなる傾向にあります。
従って、2回目接種から7日後までは
接種する前と同様の感染対策が必要になります。
--
肥満、2型糖尿病の方は
ワクチン接種後の免疫反応が遅いです。
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//結果3//ーーーーーー
参考文献(1) Supplementary appendix Table S7
この生データを元に計算。
ワクチンの効果
①モデル1
その期間での累積発生率の変化の比率から計算
②モデル2
その期間でのイベント発生率の比率から計算

日数は1回目接種からの期間
カッコ内は②モデル2のデータ
(イベント発生数/検査件数 A:接種なし、B:接種あり)
--
(感染:全て)
1~7日:①14.5%/②16.8% (A:2362人/209214人 B:1965人/209143人)
8~14日:①7.0%/②2.5% (A:1609人/136698人 B:1568人/136603人)
15~21日:①50.0%/②47.7% (A:1133人/65512人 B:591人/65396人)
(2回目接種)
22~28日:①57.9%/②58.3% (A:671人/83739人 B:281人/84093人)
29~35日:①86.3%/②81.9% (A:278人/68265人 B:51人/69108人)
36~42日:①92.0%/②91.7% (A:47人/25054人 B:4人/25718人)
--
(感染:無症状)
1~7日:①6.4%/②8.6% (A:943人/209340人 B:862人/209311人)
8~14日:①-9.0%/②-10.9% (A:635人/137065人 B:704人/137026人)
15~21日:①34.7%/②31.0% (A:447人/65860人 B:308人/65781人)
(2回目接種)
22~28日:①52.4%/②50.2% (A:317人/84638人 B:158人/84726人)
29~35日:①77.2%/②71.4% (A:129人/69465人 B:37人/69687人)
36~42日:①92.9%/②91.0% (A:22人/25668人 B:2人/25903人)
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(感染:有症状(軽症、入院、重症))
1~7日:①20.0%/②22.2% (A:1419人/209364人 B:1103人/209290人)
8~14日:①17.0%/②11.2% (A:974人/137081人 B:864人/136998人)
15~21日:①60.4%/②58.7% (A:686人/65737人 B:283人/65685人)
(2回目接種)
22~28日:①62.7%/②65.4% (A:354人/84365人 B:123人/84628人)
29~35日:①93.8%/②90.7% (A:149人/68986人 B:14人/69634人)
36~42日:①91.2%/②92.1% (A:25人/25408人 B:2人/25885人)
--
(感染:入院)
1~7日:①43.8%/②46.5% (A:58人/209489人 B:31人/209454人)
8~14日:①24.8%/②31.3% (A:67人/137439人 B:46人/137409人)
15~21日:①74.4%/②71.2% (A:73人/66064人 B:21人/66054人)
(2回目接種)
22~28日:①71.2%/②78.3% (A:46人/85206人 B:10人/85231人)
29~35日:①78.9%/②83.4% (A:12人/70087人 B:2人/70179人)
36~42日:①100%/②100% (A:3人/25952人 B:0人/26057人)
--
(感染:重症)
1~7日:①63.4%/②64.7% (A:17人/209490人 B:6人/209458人)
8~14日:①58.5%/②50.0% (A:40人/137445人 B:20人/137417人)
15~21日:①69.1%/②66.7% (A:57人/66071人 B:19人/66064人)
(2回目接種)
22~28日:①88.7%/②83.7% (A:43人/85222人 B:7人/85246人)
29~35日:①86.8%/②78.6% (A:14人/70118人 B:3人/70189人)
36~42日:①100%/②100% (A:3人/25976人 B:0人/26064人)
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//副反応について//ーーーーーー
詳細なデータはありません。
ーーーーーー

//定義//ーーーーーーー
--
無症状
以下の症状がない
--
有症状
熱、悪寒、咳
呼吸が浅くなる、困難である
咽頭痛
鼻水
筋肉痛
吐き気
嘔吐
下痢
腹痛、
味覚障害
嗅覚障害
飲食ができない
他、医師が有症と認める
--
(参考文献(1) Supplementary appendix Table S1より)
ーーーーーーーー

//その他//ーーーーーー
ワクチンの効果は変異株も含めて
複数の株による効果であると考えられています。
しかし、
調査機関で中和能の低下が指摘される南アフリカの変異株
Lineage B.1.351の市中感染はほとんどなかった
とされています(2)。
--
イスラエルは委託なしで数時間で
PCRの結果が得られる体制が整っているので
タイムラグの問題はある程度は抑えられていると
考えられます。
ーーーーーー

//筆者の考察、意見//ーーーーーー
日本でも順次ワクチンの接種が始まりますが、
公式な声明を含めて、
1回目の接種をしたらすぐに効果がでるという
間違った先入観は払拭する必要があります。
ファイザー社(さん)が治験で示している
十分な効果が出るまでは2回目接種後
2週間程度は必要とするということです。
また、上述したように
併存症、高齢などリスクが高い人は
効果が出るまで時間がかかる傾向にあるので
特にこの点に関しては注意が必要です。
繰り返しにになりますが、
接種後すぐに効果が出るわけではないので
2回目接種から1週間程度経過するまでは
少なくとも今までと同じレベルでの感染対策が必要です。
ーーーーーー

以上です。

(参考文献)
(1)
Noa Dagan, M.D., Noam Barda, M.D., Eldad Kepten, Ph.D., Oren Miron, M.A., Shay Perchik, M.A., Mark A. Katz, M.D., Miguel A. Hernán, M.D., Marc Lipsitch, D.Phil., Ben Reis, Ph.D., and Ran D. Balicer, M.D. 
BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting 
The New England Journal of Medicine February 24, 2021,
(2)
Hoffman M. Coronavirus: 80 cases of South African variant discovered in Israel. 
Jerusalem Post. February 2, 2021 
(https://www . jpost . com/  breaking - news/  coronavirus - 80 - cases - of - south - african - variant - discovered - in - israel - 657452).
(3)
Mark J. Mulligan, Kirsten E. Lyke, Nicholas Kitchin, Judith Absalon, Alejandra Gurtman, Stephen Lockhart, Kathleen Neuzil, Vanessa Raabe, Ruth Bailey, Kena A. Swanson, Ping Li, Kenneth Koury, Warren Kalina, David Cooper, Camila Fontes-Garfias, Pei-Yong Shi, Özlem Türeci, Kristin R. Tompkins, Edward E. Walsh, Robert Frenck, Ann R. Falsey, Philip R. Dormitzer, William C. Gruber, Uğur Şahin & Kathrin U. Jansen 
Phase I/II study of COVID-19 RNA vaccine BNT162b1 in adults
Nature volume 586, pages589–593(2020)

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